- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488010355
作品紹介・あらすじ
クリスマスを控えたある日、とある町で連続爆発事件が起きた。爆発直前の一分という限られた時間の中にひとりひとりの登場人物たちの人生を凝縮し、見事に描いた野心作。
感想・レビュー・書評
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プロローグ 爆破で破壊された9時33分の街の情景
その12分前、2011年12月16日午前9時21分、クリスマスを前にしたハイストリートは日常生活が穏やかに進行している。1分後の悲劇を知る由もない65人の住民一人ひとりの生活が60章に描かれる。
一瞬にして破壊される平穏な生活、ふと東日本大震災そしてウクライナの悲惨な無慈悲な情景が脳裏をよぎる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小さな町で突然起こる悲劇。その一分前、60秒という時間にそこにいた人々がしていたこと、考えていたこと、何気なかったり大変だったりする日常の一コマ。それらを丹念に構成していった小説。
本の終わりには町の人々とすっかり親しくなって、彼らの色々なことを知ったのに、そこで1分の時間が切れてぷつんと彼らの時間が終わってしまうのが悲しい。
人生ってそういうものだけど。 -
引き込まれるようには読み進められず途中で読むのをやめてしまった。
登場人物が多く、決まっている1つの運命に向かっているのがわかっているので楽しく読めなかった。
事実なのかネットで調べたがわからない。
読んだ部分までで思ったことは、災害や事故で亡くなるというのはこういうことかもしれないと思った。
気の毒に思う。
主人公がいてじっくり書いてあったほうが正直読みやすい。
しかしこの本のように自分には慣れない構成で読んだことにより、一層つよく感じられたことがある。
災害や大事故はごく普通の人々のごく普通の一日を、彼らに非があったわけでもないのに無闇に巻き込んで人生を終わりにしてしまうということだ。
悲しい。 -
一分間に詰め込まれた65人。
せっかく作り込んだ彼ら彼女らを最後には消し炭のごとく、爆破で全てをなかったことにしようとする著者の思考。勇気あるけど、勿体ない。それが星5じゃない理由だ。
絶対的かつ当たり前のように存在する死と、それにより浮き彫りになる当たり前の日常の特別感と生の尊さ。
読んだ当初は気づけなかったそれらに、読了数年後に気付いた。 -
同時多発爆発事故(事件か事故かは不明)が起きることになる、クリスマスを目前に控えた、昔ながらの個人経営の商店が立ち並ぶ、近くに飛行場のある小さな街の、その爆発から1分前からの出来事を、1秒を1章単位でカウント・ダウンして描いていく、といった異色の作品。
事故の中間報告を掲載したホームページのアドレスまで載っているが、そのホームページの記載内容も含めて、全てはフィクションである。
街の人々の生活と同時に飛行機の中での不審者についても平行して語られる。
この不審者のエピソードものちに重要になってくるのだが、ネタバレになるので割愛。
ただ、ネタバレ、とはいっても、読者は既にここに描かれている人々が1分後に殆ど全員死んでしまうことが判っている。
そう考えれば、これほど無慈悲で残酷な本も珍しいのではないか。
ここでは休暇旅行を楽しみにしている女性、お腹の中から蹴ってくるこれから生まれてくるであろう赤ん坊をいつくしむ母親、バスの中で大騒ぎする子供たち、母親の井戸端会議を尻目に拙い歌を披露する幼い子供、娘に会うことを心待ちにしている老人、不倫をしている男とその妻、そしてその愛人、認知症の老婆、物乞いの男、久しぶりに再会することになる恋人たち、そういった人々のことが語られている。
なんの変哲もない日常がそこにある。
そこには、僕自身に重なるような人物もいるし、あなた自身に重なるような人物もいるかもしれない。
あるいは自分の母親、父親、兄弟、姉妹、友人、それらに重なるような人物がいるかもしれない。
読者はそんな登場人物たちが、1分後には悲惨な状況で死んでしまうと判っていても、助けることもできなければ、「逃げろ!」と警告を発することも出来ない。
ただただ死に向かってのカウント・ダウンを数えることしか出来ない。
どんな人生を歩んでいようが、どんなに幸せだろうが、どんなにうしろめたいことをしていようが、どんなに夢や希望を抱いていようが、死はそんな個人の都合にはかまうことなく「一括」で処理されてしまう。
そうか、爆弾テロや自爆テロって、こういうことなのだろうな、と思わずにはいられなくなる。
偶然が重なり助かった人や、娘を亡くしながら助かった母親(ただし瀕死の重傷を負う)等もいるが、10名の12~13歳の子供たち、5名の2~3歳の幼児たちを含め、全65名が死んでしまうことになる。
そんな子供たちや幼児たちも含め、登場人物が多数出てくるので、それぞれに深く人物を描くことは出来ていないが、それでもこれだけの登場人物をそれぞれにきちんと描き分けることは出来ていると思う。
また、それぞれの人物の描き方が、終焉を迎えるにつれてどんどんと短くなり、終わり近くの章では、次々に視点が移り変わっていくのだが、それにより、より緊迫感が増してくる。
自爆テロなどのニュースでは「被害者は○○人です」と簡単に纏められて報道されることが多いが(特に海外での事故など)、実際にはそんなに簡単に語れることではないんだよな、と改めて思い知らされる。
読み終った後に、実に色々と考えさせられた作品だった。
星五つは、読み物として、というよりも、この特異な読書体験に対して。 -
爆発事故の1分前から1秒ずつカウントダウンしていく。1秒ごとに切り取られる町の風景が、あまりに雑然としていて、本当に普段の生活を切り取っているような、落ち着かない気持ちにさせる。面白い試みだけど、最後まで慣れなかった。
子どもの未来が根こそぎ奪われるのは、たとえ小説の世界であっても胸が痛む。 -
なかなか面白かった
フィクションかと思ったし -
読み進むページの間に
あちこちで、起こっている
自爆テロで亡くなった人々が見える気がした。
スイッチをOffにされたように
一瞬で命が消えてしまう怖さ、あっけなさ
誰にも明日は約束されていない事を
改めて実感した一冊でした。