• 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010478

感想・レビュー・書評

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  • 捜査官エーレンデュル邦訳第3弾。前作に続きこれまた切なく哀しい家族の物語。クリスマスで賑わう首都のホテル、地下室住込みのドアマンがサンタクロース姿で殺害される。被害者の人生をかつて華やかに輝かせた知られざる経歴、その裏の父親との関係、奪われた子供時代とその後の孤独な転落人生に胸が痛む。我が子のためを思わない親はいないはずで、絶縁状態の父や姉もまた孤独な被害者である点や、脇で語られる児童虐待事件が物語の深みと重みを増している。エーレンデュル自身の心の傷や娘との関係も少しずつ良い方向に…?いざ次作へ。

  • アイスランドの作家「アーナルデュル・インドリダソン」の長篇ミステリ作品『声(原題:Roddin)』を読みました。

    久しぶりの北欧ミステリを読みたくなったんですよね… 「アーナルデュル・インドリダソン」の作品は一昨年7月に読んだ『湿地』以来ですね。

    -----story-------------
    第7回翻訳ミステリー大賞、第4回翻訳ミステリー読者賞受賞作

    クリスマスを目前に賑わうホテルの地下で、一人の男が殺された。
    ホテルの元ドアマンだったという地味で孤独な男は、サンタクロースの扮装でめった刺しにされていた。
    捜査官「エーレンデュル」は捜査を進めるうちに、被害者の驚愕の過去を知る。
    一人の男の栄光、悲劇、転落……そして死。
    自らも癒やすことのできない傷をかかえた「エーレンデュル」が到達した悲しい真実。
    世界でシリーズ累計1000万部突破。
    『湿地』『緑衣の女』に続く第3弾。
    訳者あとがき=「柳沢由実子」

    *第2位「ミステリが読みたい!2016年版」海外篇
    *第4位〈週刊文春〉2015年ミステリーベスト10/海外部門
    *第5位『このミステリーがすごい!2016年版』海外編ベスト10
    -----------------------

    「エーレンデュル警部」シリーズの第5作目… 翻訳された作品としては3作目のようですね、、、

    ボーイソプラノをめぐる悲劇が殺人事件の背景に秘められていたというミステリ… 面白かったぁ、訳者が同じだからかもしれませんが、スウェーデンの作家「ヘニング・マンケル」の警察小説「クルト・ヴァランダー」シリーズに雰囲気が似ているなぁ、という印象が残る作品ですね。


    物語の舞台はアイスランドの首都レイキャビク… クリスマスの夜、外国人観光客相手に賑わう一流ホテルの薄暗い地下の小部屋で、そこに住み込んでいるドアマン「グドロイグル・エーギルソン」がボランティアで参加する予定だった子どものためのクリスマスイベントのサンタクロースの扮装のまま殺害されているのが発見される、、、

    「グドロイグル」は、半裸で下半身を露出させた状態で、胸をめった刺しにされていた… 20年以上もホテルで働き誰とも交友を持たず孤独な男が、聖夜に一人で死んでいったのだ。

    事件を担当する「エーレンデュル」は、被害者が性器に装着していたコンドームからホテルに出入りする娼婦の関与を疑い、そこに付着した唾液の持ち主を探し出すよう指示する… また、ホテルの従業員全員に被害者と交流のあった者がいないかと訊いてまわる、、、

    やがて、「グドロイグル」が、幼い頃には天才的なボーイソプラノの歌手として“子どもスター”だったことが判明… そして、ホテルの宿泊客でイギリス人の「ヘンリー・ワプショット」が稀少レコードのコレクターで、事件前に「グドロイグル」と会う約束をしていたことが判る。

    「グドロイグル」の歌唱が録音されたたった2枚のレコードは、いまや貴重なものとして高値が付けられているほどだという… なぜそれほどのレア・アイテムとなったのかというと、天賦の才能を開花させて絶頂にあった時期のコンサートの公演中、突然の声変わりが「グドロイグル」を襲って、幼き彼の名声は潰えてしまい、以降、存在すら忘れ去られてしまったからだった、、、

    録音した当人なら貴重なレコードを複数枚所有しているにちがいないと考えたコレクターの「ワプショット」が「グドロイグル」に取引を持ちかけたのである… 「グドロイグル」の父親と姉「ステファニア」もまた、その不幸な出来事以降、関わりを避けるようになってしまい、いまや絶縁状態となっていた。

    妻「ハンドーラ」とはずいぶん昔に離婚し、麻薬中毒となってしまった娘「エヴァ=リンド」とも息子「シンドリ=スナイル」とも疎遠… 自身、家族と難しい状況にある「エーレンデュル」にとっては、この孤独な男の死はたんなる殺人事件というだけでなく、特別な意味のあるものとなっていった――。

    本作品では、「グドロイグル」の生い立ちが明らかになっていくと同時に、同僚「エリンボルク」が担当する児童虐待事件の裁判と、こじれにこじれた「エーレンデュル」と「エヴァ=リンド」の父娘の物語が展開され、この緻密な重層構造が、家族の在り方や人間の生き方を読者にも問うような内容になっていましたね、、、

    さらに、「エーレンデュル」が少年時代に弟の死を通じて受けたトラウマも語られ、彼の内奥で渦巻く精神不安がより生々しくなっていました… 彼の人生は、これからどうなっていくんだろうか、ミステリとしても愉しめる作品ですが、「エーレンデュル」の人生が、これからどうなって行くのか、そっちも気になるシリーズです。


    相変わらず、哀しい結末でしたが… テンポが良くて読みやすい作品でしたね、、、

    「アーナルデュル・インドリダソン」の他の作品も読みたいなぁ。



    以下、主な登場人物です。

    「エーレンデュル」
     レイキャヴィク警察犯罪捜査官

    「エリンボルク」
     エーレンデュルの同僚

    「シグルデュル=オーリ」
     エーレンデュルの同僚

    「ヴァルゲルデュル」
     国立病院付属の病理学研究所の助手

    「ハンドーラ」
     エーレンデュルの離婚した妻

    「エヴァ=リンド(エヴァ)」
     エーレンデュルの娘

    「シンドリ=スナイル」
     エーレンデュルの息子

    「ベルクソラ」
     シグルデュル=オーリのパートナー

    「マリオン・ブリーム」
     引退した警察官。
     エーレンデュルのかつての指導官。

    「グドロイグル・エーギルソン」
     ホテルのドアマン

    「支配人」
     ホテルに勤めている人々

    「フロントマネージャー」
     ホテルに勤めている人々

    「コック長」
     ホテルに勤めている人々

    「ローサント」
     ホテルのレストランの給仕長

    「ウスプ」
     ホテルの清掃係

    「デニ」
     厨房の下働き

    「レイニル」
     ウスプの弟

    「ヘンリー・バートレット」
     ホテルの客。株のブローカー

    「ヘンリー・ワプショット」
     ホテルの客。古レコードの蒐集家

    「スティーナ」
     エヴァ=リンドの友人

    「ステファニア」
     グドロイグルの妹

    「グロドイグルの父親」
     グロドイグルに歌の手ほどきをした

    「バルデュル」
     グドロイグルのかつての友人

    「ガブリエル・ヘルマンソン」
     ハフナフィヨルデュル少年合唱団の元指揮者

    「アディ」
     暴力を振るわれた少年

    「アディの父親」
     IT企業の社長

    「アディの母親」
     病気で療養中

  • ストーリー自体は面白いがあまり主人公の魅力で読ませるシリースではないと感じていたが3作目にしてじわりと愛着がわきはじめた。しかしこの人達に幸せは訪れるのかいな。

  •  インドリダソンのアイスランド警察小説第三弾。久々なのでエーレンデュル、エリンボルク、シグルデュル=オーリの三人組が懐かしい。外国人客でにぎわうクリスマス前のホテルが舞台とあってさすがのアイスランドも明るい雰囲気で、これまでの陰鬱な情景とは趣きが違う。地下の一室で殺害されたドアボーイの秘められた華やかな過去とそれをめぐる怪しげな人々。結末や真犯人はわりと意外でミステリとしての出来は前作よりはいいのでは。挿話的に語られるエーレンデュルの家庭問題は相変わらずだが、クリスマスのせいなのかロマンス風の味付けもあって、調子が狂うな。いや作風の転機だとしたらいい方向だと思うけど。

  • お姉ちゃんはツライよ。結局はそれに尽きるかね (^^;) まあそれはともかく、登場する家族が、みんな大小あれども問題や辛いことを抱えていて、生きていくって本当に大変!凶器のナイフの隠し方が「賢いなあ」とつい思ってしまったことよ。

  • 相変わらず高水準。芯がブレへんから安心して読める。

  • 謎解きの面白さよりも登場人物の人生に思いを馳せる時間が長くて、じっくりじっくり読みました。あとがきにもあるように「家族」が大きなテーマなのかな。被害者に起こった悲劇もですが、それよりも姉の人生を思うと切ない。主人公と娘の関係は、前作に比べると随分近づいてきている感じで嬉しかった。ラストに主人公が起こすサプライズも素敵で、ミステリーなのに暖かい気持ちになりました。

  • エーレンデュル捜査官シリーズの第5作目(邦訳では3作目)

    【あらすじ】
     クリスマスを数日後に控えたある夕方、レイキャビクのホテルの地下室で、ドアマンをしていた男の刺殺体が発見された。サンタクロースの衣装を身に纏った遺体には、如何わしい行為の最中に殺されたと思われる痕跡が残っていた。エーレンデュルのチームは捜査を進めるうちに、男の少年時代に起こった”声”に纏わる悲劇を知る。やがて物語は、エーレンデュルに少年時代の悲劇を想起させながら真相に近づいていく。

    【感想】
     登場人物にクセのある人物が多い。そのため、捜査員とのやり取りが印象的で情景が浮かびやすく読みやすいと思う(若干、どちらの発言か戸惑うシーンはあるが)。後半の二転三転する流れも面白かった。
     ホテルでの殺人事件以外に、被害者の過去、エーレンデュルの過去、ある少年の虐待事件が交錯する。ただし、虐待事件のエピソードの役割がいまひとつピンと来なかった。
     ところで、この本に登場する若者はエーレンデュルの娘を含めてクスリや性商売に溺れている。物語の中だけの話なのか、これがアイスランドの実情なのか、気になるところである。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:949.53||A
    資料ID:95160122

    家族関係や個々の過去を中心としたアイスランドの社会問題、あるいはアイスランドの歴史がミステリーの色濃く描かれています。
    (生化学研究室 大塚正人先生推薦)

  • CL 2016.5.28-2016.6.4

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アーナルデュル・インドリダソンの作品

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