カールの降誕祭

  • 東京創元社
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (93ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010508

感想・レビュー・書評

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  • 初めてこの作者の作品を読んだけれど、どうも前に出てる作品とリンクしているらしい。それらを読んでいなくても全然問題なく読めた。ただ気になるので読んでみたい……のだけど、解説読むと話の内容がつらそうな印象受けるので躊躇う。
    この本に限らずいずれも実際にあった犯罪を、同定されないように変更して書いているというだけあって突飛な犯罪はない。
    たぶん誰もがほんの少し道が違ったらたどるものだと思った。
    これを読むと今まで読んできた犯罪を取り扱った小説を思い出し、秩序と混乱って本当に表裏一体で、他者から見たら混乱でもなにかしらの秩序・筋道があるんだなと。
    気になるのは一作目の豹のペンダントの男と、日本人女性。被害は男だけだったのかな。


  • 対岸の火事だと思いながら読了したが、あとがきを読んでぎくりとした。
    「人は薄氷の上で踊っている」
    著者が、私たちの現実の危うさを語った言葉だ。
    パン屋の主人のような加害者に、私は絶対にならないと言い切れないのかも。
     
    タダジュンさんの挿画が怖い(好き)
    モノクロなのに血の赤を感じさせるとは。

  • 簡潔な文体で淡々と綴られる3つの静かな狂気。タダジュンさんの異国感漂う版画(夢の中では成立しているという感覚)はシーラッハ世界にとてもよく似合う。『パン屋の主人』の彼は、長編『コリーニ事件』にも登場していて、主人公ライネンを励ます役どころになっている。ここでは彼が『コリーニ事件』で語っていた「まともなパン屋でいられなくなった事情」が明かされる。

  • 目次
    ・パン屋の主人
    ・ザイボルド
    ・カールの降誕祭(クリスマス)

    短編が3作。
    ぜんぶ合わせても100ページにも満たない。

    そして犯罪が3つ。
    そのうち殺人が2件。
    しかし悪意をもった犯罪者はいない。

    悪意をもたずに起こす殺人。
    それは、犯人にとってはやむを得ない行動であるのだが、第三者からすると、行為に手を染めてしまうその一線が、壁の薄さがうすら寒い。

    もう一人の犯罪者は…彼の犯した罪は、本当に社会悪だっただろうか?
    しかし信念を持って起こした行動を、彼がずっと守ってきた法律が犯罪と断じた時、彼の中の何かが壊れてしまった。
    彼の充実した人生は、一体どちらにあったのか?

    短い小説ばかりだけれど、読んだ後に残されたものはとても重い。

  • 3つの短編集です。やたらという簡潔で淡々とした文章ですが、内容は衝撃的です。主人公は、秩序とかルールとか常識とかの中では安定して生きているのですが、その枠組みがなくなった途端に壊れてしまいます。なんとなくドイツ人は日本人と似ている気がします。

  • 薄氷を踏むような危うさ、一度踏んでしまえば、繰り返される麻薬のような体験。日本にも興味があるらしいシーラッハの仕掛も効果的です。

  • かつて読んだ中で、最も陰惨なクリスマスストーリー。さすがシーラッハ。

  •  犯罪、罪悪のような、淡々としてそれでいて怪しさをはらむ数式のような短編集。正直、シーラッハはすごく好きなんだけど前作「禁忌」が個人的にイマイチだったので不安だったが、これはヒット。
     これぞシーラッハ節、というような芸術や文化たる整然さと人の業たるカオスさが混ざり合ってなんとも言えず不気味な雰囲気が全編にあふれていた。まさにブラッククリスマス。満足満足。…だけど、やっぱり最初に読んだ「エチオピアの男」を越える傑作短編は、まだない。
     あれを越える話をこれからも求め続けるのは、シーラッハにハマった読者の業だろうか。来年再来年と、引き続きそれを期待しながら、また訳者の素晴らしくカオスを落とし込んだ日本語にも期待しながら、ゆっくりと過ごしたい。

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