テロ

  • 東京創元社
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本棚登録 : 277
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010560

作品紹介・あらすじ

2013年7月26日、ドイツ上空で旅客機がハイジャックされた。テロリストがサッカースタジアムに旅客機を墜落させ、7万人の観客を殺害しようと目論んだのだ。しかし緊急発進した空軍少佐が独断で旅客機を撃墜する。乗客164人を殺して7万人を救った彼は英雄か? 犯罪者か? 結論は一般人が審議に参加する参審裁判所に委ねられた。検察官の論告、弁護人の最終弁論ののちに、有罪と無罪、ふたとおりの判決が用意された衝撃の法廷劇。どちらの判決を下すかは、読んだあなたの決断次第。本屋大賞「翻訳小説部門」第1位『犯罪』のシーラッハが放つ最新作! 原書より、テロリストの襲撃を受け12人の犠牲者をだした「シャルリー・エブド」誌がMサンスーシ・メディア賞を授与された際の著者による記念スピーチ、「是非ともつづけよう」を併録。

感想・レビュー・書評

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  • <帯 見出し文より>
    2013年、7月26日、ドイツ上空で旅客機がハイジャックされた。テロリストがサッカースタジアムに旅客機を墜落させ、7万人の観客を殺害しようと目論んだのだ。
    しかし緊急発進した空軍少佐が独断で旅客機を追撃する。
    乗客164人を殺して7万人を救った彼は英雄か?
    犯罪者か?結論は一般人が審議に参加する参審裁判所に委ねられた。・・・

    という話通り、舞台は法廷、登場人物も限られた数人、構成も脚本仕立てになっています。
    なので、話が掘り下がられて別の次元に飛んだり、焦点を当てた人物を詳しく語ることもなく、ただ淡々と裁判が進んでいくだけなので、話自体もとても短いです。
    起こった事実と、被告はそれを最初から認めているのですから、後は裁く人に全て委ねられるという、とても簡単なそしてとても深い、裁判です。
    人の命を天秤にかけるという事柄の是非。
    果たしてその判決はいかに?

  • 台本形式(戯曲)の書き方なので、芝居(舞台)をあまり見慣れていない人にはとっつきにくいかもしれませんが、法廷劇や戯曲が好きな人なら絶対に楽しめる作品だと思います。

    ドイツでハイジャック事件が発生し、乗客164名を乗せた飛行機が満員のサッカースタジアムへ向かう。7万人の観衆を救うため、空軍少佐は命令に(あるいは憲法に)背いて旅客機を撃墜、164人を殺害した罪で起訴された。彼は大量殺人者か、それとも7万人を救った英雄か。

    検察側、弁護側双方の主張はどちらも説得力がありましたし、(おそらく)観衆の評決によって被告人が無罪/有罪となる2パターンのエンディングが用意されているのも魅力的でした。
    自分でも評決を入れる気持ちになって考えながら読むことができ、頭を使いましたが楽しい時間を過ごすことができました。

    検察官の主張にある、「みなさんを縛るのは、法律となったものだけです。現実に存在する法律は、憲法に合致し、込み入った民主的な手続きを経て、わたしたちの議会によって公布されます。ですからモラルに反して間違っているように思えても、法律は有効なのです。……「モラルとしては正しい」ことでも、その意見が憲法を超えることは決して許されないことです。」という論旨には法治国家としてのあるべき姿を感じましたし、弁護人の主張する「生命を他の生命と天秤にかけることはできないというこの基本的な考え方は、わたしには疑わしいものであり、健全な人間の考えと矛盾するように思います。それに、より小さな悪を優先させることは正しいとする判決が過去に何度も出されています」という英米法の判例も、実生活に即した判断であるように思います。
    それぞれのケースに応じて判断する(だからこそ判決に「揺れ」が生じて議論の的になるわけですが)こと、またその判断が適切であったかどうか検証して次に活かすことこそが重要なのだということを改めて考えさせられました。

  • 初読

    この「テロ」の橋爪功の1人芝居、朗読劇を観ている。
    それはもう、集中して観た。
    幕間で観客が投票し、無罪か有罪かでどちらかのエンディングが演じられる、というもの。
    私は無罪に入れた。結果は有罪。
    かなり多数が有罪票だったようで、この朗読劇は確か全ての回で有罪の結末だったように記憶している。
    そして去年、橋爪功がビーグラー弁護士役で主演、
    1人芝居ではない公演は私は観ていないのだが
    その日の投票結果がTwitterで発表されていて
    日を追うごとに無罪の回が多くなっていった筈。
    この結果は名優橋爪功が弁護人役である、という性質上のものであろうと思うけど
    こちらは観ていないので何とも…というか
    今これを書いていて、何でこちらも観なかったのか…
    「1人芝居観たしいいかな〜」とか思っちゃったんだろう…
    観たからこそ観よう、って話じゃん!ウアァ〜〜〜!
    と後悔。

    さて、舞台を通して聴いた方が初見だった、という事を
    割引いても、戯曲としては成功しているのかも。
    答えが出ない、という答えはともすれば安易に感じられてしまう
    各国で違いがありそうだけど
    日本においてはトロッコ問題も「何もしなければ罰せられない」
    が強い気がする。

  • テーマは面白い。

    テロに遭った飛行機の乗客の命と引き換えに、満員のスタジアムの客を守ることを、法律は認めることが出来るのか。

    命の多さで判断してはいけないという倫理。
    また、より甚大な被害を出さないために小さな悪は許されるとする措置。
    もしも、乗客が自力でコクピットのテロリストを制圧していたとしたら、は「仮定」の話。

    それよりも、スタジアムから誰も避難させなかったという「必然」の方が、罪が大きいと感じた。
    結局、これはコッホというパイロット一人を裁く話ではなく、テロリストという「あり得る」犯罪の中で、遂に働くことのなかったシステムの話なのだろうと読む。

    しかし、国家の罪は問われない。

    人は見えない枠組みは作れても、見えない枠組みを裁くことは出来ない、ということか。

  • 憲法裁判所が違憲の判断をしているのに、それでもその法を執行する可能性を示唆していた元大臣。公然とそれを是認する議論をしていた軍部エリートの勉強会。表面上、旅客機を撃墜してはならないと命じながら、撃墜を前提とするかのように、スタジアムの避難を指示をしていなかった上層部(その判断をしたのは誰なのかは極めて曖昧。)
    一見、被告人個人の有罪無罪が焦点のようだが、実はさらっと描かれている背景の「国家」が、とても怖い。
    テロによる間接的影響として国家自身による民主主義や自由の理念の侵害が、実は一番怖いし、それこそがテロリストの狙いだと、訴える巻末のスピーチがついているのは、偶然じゃないぞ。
    そういえば、「テロとの戦い」って、最近どっかの国の首相が声高に…。

  • "モラル、良心、健全な理解力、自然法、超法規的緊急避難、どの概念も抵抗力がなく、揺らぎがあります。いかなる行動が今日正しいのか、そしてわたしたちの考えたことが明日もなお、いまと同じように有効かどうか、はなはだ心許ないのが現実です。"(p.106)


    "蒙を啓かれた民主主義が、それでもテロリスト、つまりわたしたちの社会を破壊しようとしている人たちに対応するには法という手段しかない、とわたしはいまでも確信しています。"(p.153)

  • 七万人の観客が居るサッカースタジアムを目標とした乗客百六十四人のハイジャックされた飛行機。
    法を破り飛行機を撃墜した空軍少佐は果たして罪に問われるのか?
    人の命の価値を問う裁判が脚本形式で進みます。
    検察官、弁護人それぞれが訴えるものはどちらも説得力があり、結末も有罪無罪の両方が準備されていました。

    どちらの判決を読んでも命と法の重さを考えさせられます。
    一番問われるべきなのはスタジアムの観客を避難させなかった人々だと思うのですが…。

  • トロッコ問題、超法規的緊急避難

    【P158】ベンジャミン・フランクリンの警告「安全を得るために自由を放棄するものは、結局どちらも得られない」

  • テロと法規っていう全く相容れない両者を、哲学的観点から読み解く意欲作。その表現方法としてのト書き形式も、ここでは上手くいっている気がする。結末を2パターン書くというのは、逃げというかちょっと反則な気がするけど、テーマがテーマだけに、仕方ない…のか?とはいえ、単純に物語を楽しむという意味でも、結構満足度は高い作品ではありました。

  • どちらが「正しい」かとは、どういうことを言うのだろうた、

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