悪意

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010867

作品紹介・あらすじ

「トム」、夜中にかかってきた一本の電話、それは二十二年前に死んだはずの息子からのものだった。「レイン」、亡くなった著名な作家の遺作には母国語での出版を禁じ、翻訳出版のみを許可するという、奇妙な条件が付されていた。「親愛なるアグネスへ」、夫の葬式で久し振りに会ったかつての親友、二人の交わす書簡はやがて……。デュ・モーリアの騙りの妙、シーラッハの奥深さ、ディーヴァーのどんでん返しを兼ね備えた傑作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 「トム」
    22年前に不明になった義理の息子トムから電話がかかってきた。しかしありえない話。実は・・ と驚愕の打ち明けがあり、ああこれで終わりか、と思いきや終わりではなく、実は・・ 実は・・ とどんでん返しが続く。最後の実は・・ がいちばんぞっとするだろう。読後はヘヴィーだな。

    ホーカン・ネッセル:1950- スウェーデン生まれ。


    「トム」
    「レイン ある作家の死」
    「親愛なるアグネスへ」
    「サマリアのタンポポ」
    「その件についてのすべての情報」

    2018発表 スウェーデン
    2019.2.22初版 図書館

  • 初めて読む作家さんでしたが、解説によると刊行されているのは、この『悪意』を含めて二作品しかないとのことで。

    ディーヴァーは未読ですが、デュ・モーリアとシーラッハを帯に並べられたら、買わざるを得なかったー。薦められたのもありましたが、読めて良かった。

    二段組の分厚さに、ちょっと手を出し兼ねていましたが、読み始めたら一気!
    「トム」「レイン」「親愛なるアグネスへ」「サマリアのタンポポ」「その件についてのすべての情報」の五作品が収録されています。

    クライマックスまで最も読ませたのは、冒頭の「トム」かなぁ。
    22年もの間、失踪して行方知れずになっていた血の繋がらない息子からの電話。
    妻ユーディットは、その電話に恐怖を感じる所から始まります。

    ユーディットと夫ロベルトの掛け合いから、おおよその流れは見えるのですが、息子からの電話をきっかけに二人の仲が大きく変化していきます。
    そんな二人だけでなく、ユーディットの話を聞く、カウンセラーおばさんマリアのパートも良い。
    マリアだから語れること、そういう「他人」の使い方が上手いな、と思います。

    そして、どんどんと話は外側へ、外側へと膨らんでいく。こうした、話の構造が面白い作品でした。

    なるほど、何を誰に語るのか、って面白い。
    他の作品も、クライマックスの持つ温度感が、すごいです!
    故に、クライマックスまでが冗長に感じる部分もあったので、星四つにしました(笑)

  • スウェーデンを代表するミステリー作家らしいが、日本での翻訳はこれが2冊目。シリーズ物も本国では有名らしいが、これは独立短編集、5編収録。

    どれも秀逸なミステリーで、読ませるなぁという感じ。「レイン」が若干毛色が違って幻想っぽい雰囲気漂わせている…と思ったら、この作品だけ発表されたのがちょっと古いみたい。

    冒頭の「トム」と「親愛なるアグネスへ」、「サマリアのタンポポ」が好みだった。どれも表題の通り人の悪意がにじみ出るミステリーで、なんなく湊かなえ作品を思い出す雰囲気が良かった。北国には凍てつくような人の悪意が良く似合うのかな…。

  • なぜ今まで読まなかったのか自分でも謎だが、結果、実によい時に読めたと思う。
    『殺人者の手記』から、あまり間を置かなかったのだ。
    おかげで面白い発見があった。

    1番気に入ったのは、『レイン』だ。
    幻想的な空気をまとった、ミステリーとでも言おうか。
    するーっと読むことができず、時間がかかったからである。

    主人公は"わたし"なる翻訳者である。
    作家レインゆかりの街A――ヨーロッパのどこかの街に、半年留まることになった。
    ここで、彼の遺作の翻訳をするのである。
    そして、Aの街には、"わたし"自身の大事な用件もある。

    この語り手"わたし"が不親切なのだ。
    自分が今述べているのが、レインの遺作の翻訳文なのか、現在の"わたし"の行動なのか、過去の"わたし"の行動なのか、
    いつのどこのどんな出来事なのか、明らかにしようとしない。
    件の遺作の作風が『重々しく謎めいた文章』だというので(113頁下段)、それに呑まれてしまったのかもしれない。
    "わたし"の語りは、時、所、過去、現在、文章が、すべて境目なくなめらかに繋がっている。

    彼女? 彼女ってどの彼女?
    愛した? 誰が誰を?
    訪れた? いつだれがだれとどこに?
    この名前は――猫! 猫といるのは現在の"わたし"!

    よく読めば、わかるようになってはいるのだ。
    これを見つけて読み解くのが、難度の高いパズルのようで面白い。
    気を抜けば、靄の街に放り出されてしまうのだが。

    『トム』(2018)
    『レイン ある作家の死』(1996)
    『親愛なるアグネスへ』(2002)
    『サマリアのタンポポ』(2005)
    『その件についてのすべての情報』(2005)

    収められているのは、5編の物語である。
    どれが好きか、どんな印象をもったかで、誰もが熱をもって話したくなるだろう。
    現に、レビューサイトを見れば、皆がそれぞれに気に入った作品について語っている。
    読書会ならば、さらに盛り上がるに違いない。

    『殺人者の手記』から間もなく読んだので気付けたのは、『親愛なるアグネスへ』にも、同じ詩人の名が出てくることだ。

    ミハイル・バリン――その作品は『偉大なポエム』だ。(『殺人者~』上287頁)

    しかし私には未知の詩人だ。
    その名を調べようとしたが、どこを探しても見つからない。
    スウェーデンでは有名なのだろうか。
    あるいはホーカン・ネッセルの頭の中で?

    私はこれからホーカン・ネッセルの新たな本を読むたびに期待するだろう。
    ミハイル・バリンの名と、そのけったいな詩の登場をだ。
    なにせ彼の偉大な詩は、ホーカン・ネッセルの作品でしか読むことができないのだ。

    ひとりの作家の作品を読んでいくと、彼/彼女特有のなにかを見出すことがある。
    象徴的な存在かもしれない、遊び心かもしれない、全作品に通ずるメインテーマかもしれない。
    それを発見するのは、読書というものの大きな楽しみのひとつだ。
    そして、その楽しみを拡げるためには、さらに多くのホーカン・ネッセルの作品を読む必要がある。
    というわけで、このスウェーデンの大ベストセラー作家の作品が、次々と翻訳されることを望んでいる。

    2021年5月現在、この『悪意』は、在庫僅少となっているらしい。
    Amazonでは、古本と電子書籍のみとなっている。
    楽天ブックス、hontoには、在庫がある。

  • なんだかやっぱりスウェーデン作家とは相性が悪いな。中長編がいくつか。どれも映像化を見越したような脚本っぽい雰囲気はなんだろう。役者の染み出る人間臭さを動力としてカウントして書いてる風なんだよな。文章量に対して中身が伴ってない。三個めの「親愛なるアグネス」が感想書きやすい。元親友の往復書簡にて、夫の殺害依頼が行われる。久々に葬儀で会って、喪主である親友に話し掛けないで、のちに、手紙のやり取り始まるが、もうその時点で「利用してやる」感がすごいだろ。ちょっとこの作家は読者を甘くみてる気がする。

  • 本のあらすじ
    デュ・モーリアの騙りの妙、シーラッハの奥深さ、ディーヴァーのどんでん返し。幾重にも巡らされた罠、心の深層に迫る傑作短編集。


    強いて言えば、何気ない日常に、突然ぞっとした気分になる恐怖。あるポイントで突然、ゾッとした怖さに陥る感じ。
    拭い去れない恐怖の鋭利。

  • 自然死以外の死というのは周りの人にも、勿論それを引き起こした本人にもずっとついてまわるっていう話。

    短編集。

    推理小説的だけど、文章が上手くて「親愛なるアグネスへ」と「サマリアのタンポポ」の二作が特に、文学作品としても充分面白かった。

  • ん〜なんといえば良いのだろうか。悪意?というタイトルは正確なんだろうか?
    どちらかといえばブラックジョークな感じかな??
    しかし、余計な装飾が多過ぎて読むのに時間がかかる。

  • CL 2019.7.24-2019.8.9

  • 5つの短編集。どれも、途中で何かが意図的に隠されていることに気づくのですが、簡単には見せてもらえません。後半ぱっと目に見える景色が変わったりざざっと怖気だったり…。それらの原因となっているのは誰にでも持ち得るほんの小さな悪意。淡々とつづられる文章がぐいぐいと私を引きずりました。好みはラスト一行まで気が配られた、死んだ息子がやってくる「トム」。女性二人の書簡による駆け引きが見事な「親愛なるアグネスへ」。4編が三つの映画になるそうです。背景まで綺麗に目に浮かぶ文章でしたので、映画化も納得です。

  • 不穏やわー
    親愛なるアグネスが面白いかな。

  • ちょっとパトリシア・ハイスミス風の『トム』と『親愛なるアグネス』○

  • 帯の惹句は、そうかなぁ~って感じ。架空の国の物語ってのが、俺的にはしっくりこなかったけど、『レイン』以外は楽しめたかな。

  • スウェーデンの有名作家、16年ぶりの邦訳作品。16年ぶりといっても、前回は文庫1冊だけの紹介に留まっているので、殆ど初邦訳のようなものではないだろうか。
    帯の惹句に『デュ・モーリア』『シーラッハ』『ディーヴァー』の名前が載っている。この中で一番近いのはデュ・モーリアだろう。シーラッハとディーヴァーは、共通点はあれど、何か違うような……確かにどんでん返しがどれも巧いが、手つきとしてはジャック・カーリイに近いんじゃないだろうか。また、語り口調というか、作風はホラーに近い。

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