- Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488013028
感想・レビュー・書評
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音楽家メンデルスゾーンの家系は素晴らしかった。祖父は哲学者、父は銀行家で大変裕福な家庭だったらしい。
彼も音楽の英才教育を受けて、大変幸福な人生を送ったが、若くして亡くなった。彼は子供の頃から死んだように眠る人だったらしい。一度眠ると、起こすのが大変だったとか。
寝る子は育つ、、。 -
そうは言ってもやはりフェリックス中心にはなるのだが、すべての始まりとしてその祖父・モーゼスに関する基礎知識を得ておくのは有益だった。それが現在あまねく知れ渡ったものでない以上、本書の構成は効果的であり、意義がある。
実質「フェリックス・メンデルスゾーンの伝記」である本書だが、それとしても傑作なのは疑う余地とてない。生前から死後しばらくの人気ぶりとその後の反動(ナチス時代に頂点に達する)やら、明るく華麗で洗練された作風(否定的コメントの場合これらの後に「〜なだけの」と付け足される)やら、言わずもがなのユダヤの血統やら、その気になれば煽情的に書ける要素には事欠かないのが、悲しいかなメンデルスゾーンという人だ。しかし訳者あとがきにあるように、その姓からおそらくは自身ユダヤ系でありながら、作者の筆は徹頭徹尾、理性的で公正だ。
本人や家族の書簡をふんだんに引用し、公人としての彼はもとより、魅力的な青年だった私人の顔もいきいきと描き出している。なにかと曲解されることが多く、その一部は今なお解けていないようなメンデルスゾーンの伝記をこの作者がものしてくれたことに、感謝したい気持ちになった。
欲を言うなら、他の同胞についての叙述をいっそう充実させた、文字どおりの「メンデルスゾーン家の人々」を読ませてくれれば…と願うだけならタダなので、願っておきたい。
2011/7/25〜7/27読了