罪悪

制作 : 酒寄 進一 
  • 東京創元社
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本棚登録 : 744
レビュー : 152
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488013448

作品紹介・あらすじ

ふるさと祭りの最中に突発する、ブラスバンドの男たちによる集団暴行事件。秘密結社イルミナティにかぶれる男子寄宿学校生らの、"生け贄"の生徒へのいじめが引き起こす悲劇。猟奇殺人をもくろむ男を襲う突然の不運。何不自由ない暮らしを送る主婦が続ける窃盗事件。麻薬密売容疑で逮捕された孤独な老人が隠す真犯人。-弁護士の「私」は、さまざまな罪のかたちを静かに語り出す。刑事事件専門の弁護士が、現実の事件に材を得て描きあげた十五の異様な物語。世界各国を驚嘆せしめた傑作『犯罪』の著者による、至高の連作短篇集。ドイツでの発行部数30万部突破。ドイツCDブック賞ベスト朗読賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 体温の低い文章が強烈な印象を残す短篇集。うららかで陽気な祭りの日に起きた、実に愚かしく陰惨な事件のスケッチから幕が開き、この本が、法による裁きと「罪」との間の、決して埋まらない隙間を扱うものであることを告げる。けっしてバラエティに富む短篇集とはいえないものの、ささいなことから人生を決定的に破壊されてしまうひとびとの悲劇を描く「イルミナティ」や「子どもたち」から、タランティーノの映画を見ているような「鍵」まで、どれも見事な手際。そしてしめくくりの「秘密」は、あっと言わせてニヤリとさせる、ちょっとしたボーナストラックみたい。装丁もよく雰囲気をつたえていて◎。

  • シーラッハの「犯罪」に続く第2弾

    今回は、犯罪と立件されたものも、されななかったものも含めて、その中核にある”何が罪悪なのか” という点がクールに、描き出されている。

    人間の営みのなかでの、怠惰やちょっとした悪意が引き起こす悲惨な結果、運命の皮肉など、クールな描写が、本作でも効果的である。

    その中でも、「清算」という一編は、どんでん返しの妙もあり、面白かった。

  • 刑事弁護士である著者が現実の事件をヒントに書いた短編集。『犯罪』に続く第2弾である。
    相変わらず淡々とした語り口で事件を描写してゆき、一編一編はそっけないほど短いのだが深い味わいを残す。後味が悪い話も多く、勧善懲悪とか因果応報など全くないので読むとどんよりするが、それでも面白いという不思議な本。

  • ゾクゾクとヒリヒリと。
    あんまり短くてエッ!っていうのも。
    ほどほど書き込みはやっぱりある程度ほしいかな。
    ショートショートという読み方するにはいまいちビックリがないかな、読み方が悪かったかな~淡々と物語が終わってしまう。

  • 後味悪いのもいっぱい。「犯罪」のほうをまだ読んでないので楽しみ。

  • 日本の法律とは少し違うようだが、アメリカの弁護士ものの「駆け引き」をゲームのように楽しむのでもなく、日本の刑法と言うものからにじみ出る湿っぽい感じもない。弁護士でもある作者の実体験がどこまで反映されているかは不明だが、弁護士としての葛藤や犯罪に抱く感情を一切封印して書かれている中、『家族』の最後の一文に書かれた「私は彼が好きだった。」がずしんと来た。

  • 「犯罪」でいくつかの賞を受賞した、弁護士を営む著者の第二作目。15の短編が修められており、体裁は前作と同様で、淡々と語られる犯罪の顛末に終始する。前回より若干、ドラマティックな印象があるのは、司法の制度に関連する事柄が登場するからだろうか。制度は使いようで、被疑者に有利にも不利にも働く。裁判官との駆け引きや、弁護士ならではの法の操り方というのがもちろんあり、それは国によっても違いがある。前作に比べれば少し、救われる結末になる編が多い。
    最終編の最後の最後で、小さなどんでん返しがあり、思わず笑ってしまった。

  • 犯罪というか、犯罪者にまつわる短篇集。実話ベースらしい。後味の悪さと、妙な余韻が同居する、危ういバランスが魅力的な作品。巻頭作「ふるさと祭り」の吐き気がするほどの不快感、最後の「秘密」の、読者に解釈を任せるラストが特に印象的。なかには「これを読んで、俺に何を感じろと?」と途方に暮れたくなる作品も…

  • 福岡翻訳ミステリー読書会の課題本。

    人間の持つ酷薄さ、怠惰さ、そして不思議な情が、淡々とした簡潔な文章に見事にあぶりだされている。
    それらは一見、ほとんど事実的な事柄を連ねただけのようにも見えるが、その「事実」を立体的に、物語性を持って立ち上がらせるシーラッハさんの筆は見事である。

    私はこの短編集に収録されている作品群に、いたく共感して読んだのだが、読書会のみなさんの感想を聞くと「気持ちはわからないでもないけど、私はこういう気持ちにはならない」という意見も多く(というかむしろ私が少数派?)、ああ、このずるずるとした感情に自分はシンパシーを感じていたのだな、とちょっと複雑な気持ちになった。

    この短編集のタイトルが「罪悪」というのは非常にあっているとは思うけれど、作中で描かれているのはむしろ罪悪感というよりは「虚無感」ではないかと私は感じた。
    自分は確かにそこに存在しているのに、どこかそのことに現実味を感じられない。目の前で起こってる出来事に、どこか自分がそぐわないと感じる。
    しかし逃げるわけでもなく、まして立ち向かうわけでもなく。その時その時の怠惰な衝動に従うまま、罪を犯してしまう人々の姿に悲哀を感じた。

  • 昨年、大いに楽しませてもらった『犯罪』に続くシーラッハの短編集。
    この人は、日常の中から生まれる犯罪や、罪を犯してしまった人の苦悩を描かせたら随一ではないかと思います。15作品収録ということで、前作に比べてオムニバス色が強くなっていますが、どのストーリーも読み応えがあります。

    結局のところ本作は、ドストエフスキーが『罪と罰』で描いた罪悪と苦悩を、軽妙な文体で再現したようなものだと感じました("再現"としたのは自分自身、ドストエフスキーへ深い愛着があるため)。ラスコーリニコフは、どう生きたんだっけ…そんなことを思い出しながら、読み進めました。
    救いようのない事件を扱った幾つかの物語の中には、罪を犯してしまった人の良心や、その後の明るい後日談を想像できそうなものも幾つか収録されています。自分はここに「禁則を犯してはならない、しかし人はやり直すことができるのだ」というような、作者の優しさのようなものを感じました。

    最後に。帯に書かれていた「罪人になるのは簡単なのに…世界は、何も変わらない。」という文句が秀逸なのは言うまでもありません。

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