シャーロック・ホームズの誤謬 (『バスカヴィル家の犬』再考) (キイ・ライブラリー)

  • 東京創元社
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本棚登録 : 71
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488015329

作品紹介・あらすじ

『アクロイドを殺したのはだれか』で、エルキュール・ポワロの推理に異を唱え、アガサ・クリスティ『アクロイド殺害事件』の真犯人を暴き出した"推理批評"家バイヤールが、今回はシャーロック・ホームズに挑戦する。シリーズ中の代表的長編『バスカヴィル家の犬』を俎上に、ホームズの推理の疑問点、矛盾点を指摘し、事件の真相に迫るのみならず、ホームズとドイルの関係をも分析するという知的スリルに満ちた現代文学批評の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • "I have, at least, a well-polished, silver-plated coffee-pot in front of me,” said he.

  • 図書館
    挫折

  • 島田壮司「新しい十五匹のネズミのフライ」を楽しめるような知識とユーモアを携えたシャーロキアンであり、ホームズの無謬性や正典の記述の絶対性を疑わないような原理的信者でなければ本書を充分に楽しめるだろう。「バスカヴィル家の犬」の肩透かし感を、コナン・ドイルの当時の心理状態と文章の内容から強引で緻密な推理を展開し「本当にこうだったんじゃないだろうか」くらいの逆転推理劇を見せてくれる。高度な頭の体操と言って良い。

  • 「バスカヴィル家の犬」の”真犯人”を明らかにする、ホームズ研究書。バイヤールは文学教授にして精神分析家で、過去にはアガサ・クリスティのアクロイド殺しの犯人、更には「ハムレットでクローディアスは殺人を犯していない」「オイディプスは父親を殺していない」などと論破しているそうだ。えーっ王殺しの真犯人は誰?とそっちが気になるのだが・・・
    薀蓄部分が長すぎるのは欠点なのだが、推理になるとバイヤール探偵は切れ味鋭く、確かにこっちの結論のほうが面白い!遊び心と知性をもって高度にアプローチしたシャーロキアン本だ。下手なパスティーシュや「ワトソンは女だった」的珍説ではなく、こういうのを読みたい。
    バイヤールが大胆に持ち出すのは、文学的虚構と現実のあわいにある「中間的世界」。そこでは登場人物が自律的に行動し、ホームズが死ぬとファンが喪章を付けるといった、双方の世界の混合がある。シャーロキアンとして真犯人探しをするバイヤールも、それを読む私たちも、その世界に遊んでいる。さらに、冒頭とラストに劇中劇ならぬ物語中物語の「少女」のエピソードをファンタジックに挿入し、現実と虚構のあわいををもうひとひねりしているところはまったく巧い。

  • 犯人がいた場所に縛られて残されている人はたいてい相当な確率で真犯人である。『バスカヴィル家の犬』を最近再読した時に、まったくなんということもなくスルーされていたので違和感は感じたのだが、まさしくこの本ではこの直感を裏付ける推理が展開される。けっこう説得力があって面白い。

  • ホームズは間違っていた!バスカヴィルの犬の真犯人を暴く!という事で前フリは長いが、いざ本題に入ってからのすっと入ってくる納得感や切れ味はとても良かった。後半部分だけでもいい気がする。
    バスカヴィルの犬(原作)を読み終えてあんまりスッキリしなかった人におすすめ。

  • むむ?
    これは、あの「読んでいない本について堂々と語る方法」のピエール・バイヤールではないかいな?

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著者プロフィール

1954年生まれ。パリ第八大学教授(フランス文学)、精神分析家。『アクロイドを殺したのはだれか』、『読んでいない本について堂々と語る方法』等、多くの著作がある。

「2023年 『シャーロック・ホームズの誤謬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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