- Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488016753
作品紹介・あらすじ
アーシュラは臍の緒が首に巻きつき、産声もあげずに死亡した。しかし、もし死ななかったとしたら……。幾度も生まれ、様々な死を迎え、幾つもの別の生を生きる一人の女性。スペイン風邪で、溺れて、屋根から落ち、ロンドン大空襲で……、デジャヴュとは生き続けられなかった生のかすかな名残なのだろうか? 運命のすべてを受け入れる〈アモル・ファティ〉の考え方に正面から挑む、人生の分かれ道について考えさせられるコスタ賞受賞の傑作!
感想・レビュー・書評
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1910年、雪の日にイギリスで生まれたアーシュラは、臍の緒が首に巻き付いていて、すぐに死んでしまう。
ならばと次は、医者が間に合って危機を脱する生を与えられる。
そうやって、ここが違っていたらどうなっていただろうという彼女の人生をいくつも見ていく。
幼い頃は流行病や事故で、生き延びるのが今よりもっと難しい時代だ。
大人になってからは戦争が始まって、また死が身近に迫る。
何度か繰り返しても同じ時点での死を免れられないと分かると、もっと前からやり直させるなど、なんだか作者が人生ゲームの駒のようにアーシュラをつまみ上げてはマスを戻しているみたいだ。
しかし死に向かう一つの分岐点をやり過ごしたからといって、その後の人生がうまくいくとは限らない。記憶を持ったまま過去に戻るわけではないからだ。
また、全然違う方向に向かっていくこともあって、そうなるのかと、面白かった。
アーシュラが人生を何度も繰り返すうちに、ふと現実に立ち返って、今ここでこうしているのはほんのちょっとした偶然や選択の積み重ね、ほんの少しの差の結果なんだなと、不思議な感覚になった。
読み終えても、彼女の人生はまだ続いているような気がしている。
見事な作品だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
命は儚い。
生と死を分ける分岐点。それは、事故や病気かもしれないし、結婚や戦争かもしれない。
「人生とはいまこの瞬間の経験を生きることなのだ。」
読み終わっても、パリンプセストのような主人公アーシュラの人生が、まだまだループして終わらない気がする。
とても面白かった。 -
面白い
重量級のボリュームなので一気に読みきるのはなかなかしんどいが中盤以降特に引き込まれた。
何回も人生を繰り返してもおそらく正解は無い。
どの分岐を選んでも全ての人が幸せ自分も幸福な事はなかった。
歴史的事実を背景にしているので知っていれば面白い。スペイン風だったりロンドン大空襲だったりヒトラーの愛人がエヴァだったり。
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面白くはあった。
500頁ちょっとで二段組みとボリュームはあるけど、サクサクと読み進めることができる。
個人的にはイギリス中流家庭の女性から見た20世紀の市民生活を描いた歴史物としての面白さが際立っていた。
けど、なんか大味なんだよな。
ボリュームがある割りには食い足りないというか、踏み込みが浅いというか。
ただ過去の一場面を少し離れたところから眺めているだけというか、淡々と流れていくものをぼーっと見続けているだけのような……。
あと、一番の売りであろう。ループものという点に関しては、ありきたりというか創意も独創性もなかった。
この手のループものって、ループがなぜ起こるかとか、それを使って何をやるのかとか、ループ設定を使ってどんな物語を展開させるかが腕の見せ所とと思うんだけど、これは潔いほど何も無し。
最初は単なる匂わせだけで、ラストのどかんと何か仕掛けるのかと思ったけど、何もなかった。
この同じようなところを少しずつの変化を交えながら何度も通っていく感じは、昔流行った(今もあるんだろうか?)ADVゲーム、それもグラフィックノベルというやつをやってるときと似ていた。
ゲームオーバーになったらまた最初から、というのを作り手が決めた終わりを見つけるまで延々繰り返す感じ。
良作ではあると思うけど、見返しに書いてあるような「圧倒的独創性に驚かされる比類なき傑作」ではないと思う。
けっして悪くはなかったし面白いとも思ったけど、残るところがほとんどない小説ではあった。
たぶん、次の本を読み出したら、この本の大半は忘れてるだろうな、と思う。
あと、この「ちくちくする」感じの文章は、ああイギリスの女性作家だな、とも思った(笑)
とにかくものの見方というか描写の一つ一つが「意地悪」(笑)
これは「歯に衣着せぬ言い方」でも「冷徹な見方」でも「あけすけな物言い」というものでもない。
「意地の悪い」としか言いようのない文体がイギリスの女性作家の文章には多いような気がする。
ついでに言うと、その意地の悪さは主人公や主人公が好意を抱く人(あるいは作者が?)にはけっして向けられないところも……。 -
本文2段組・550ページに及ぶ大作。購入後すぐに読み始めたのだが、まとまった時間を取れないと訳がわからなくなりそうで一旦放置し、年末休みを利用して読了した。これは1910年2月21日に生まれたアーシュラ・トッドの人生の記録である。いわゆる“ループもの”で、彼女は死ぬたびに同じ人生を生き直す。他の類似作と異なるのは彼女にその自覚がないこと。そのため過去に経験済みの事態でもうまく対処できない。まあそこは多少の逃げ道(既視感とか第六感)も用意されてはいるのだが……。繰り返される生はなんのためなのか。言及はないが「これかな?」と見当はつく。成就したら人生は全うできるのか? わからない。不確かな時代を生きるぼくも、もう一度人生の意味を考えたい。
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主人公は物語の初段で二度死亡する。
以降.夫からのDV他の理由により何回も亡くなってしまう。過去の微かな記憶を持ちながら死んでしまう。面白い物語ではないが感動はある。
もう一度読み返したいかと言われたら拒否するが駄作でないことは間違いない。 -
一人の人間(1910年生まれ女)が何度も死んで何度も生き返って人生をやり直すパターンの連続。よくあるドラマとかの展開では「前回までの失敗した記憶はそのままに時間だけリセット」という、いわゆるゲームのリセットボタン形式ではなく、ただただ淡々と産まれ、いろんな理由で死んで、また初めから生まれて生きるというパラレルワールド形式でした。これを他の作家がやったら、とんでもなく緞帳に退屈で脳味噌沸騰しそうだが、この作家の場合、独特に洗練されていて、全然イライラしなかった。
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