- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488016791
作品紹介・あらすじ
悩める人々に文学作品を処方する読書セラピーを始めたヴィンチェ。彼のスタジオの階下の女性が失踪、状況証拠から夫が疑われる。読書家の彼女が読んでいた本のリストからヴィンチェは真相を探り出す。失踪女性の物語は、「失踪」「別の人生」「入れ替わり」が大きなテーマだ。人々の様々な悩みと彼の処方する作品の数々は味わい深い。シェルバネンコ賞受賞のビブリオ・ミステリ!?
感想・レビュー・書評
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文学の豊富な知識を持ちながら国語教師の常勤採用に至らず、恋人とも別れて人生の袋小路にはまっているヴィンチェは、ローマのアパートの一室でなけなしの金をはたいて読書セラピー業を開業する。
悩みを持ったさまざまな女性が彼の元を訪れるが、相談者の心の奥底にある思いをくみ取れず、見当違いの本を勧めて激怒されたり、がっかりされたりの日々。そんな中、アパートの下の階に住む女性が失踪し、夫が殺害容疑をかけられる。ヴィンチェは、彼女が失踪前に借りていた本のリストをもとに真相を解明しようと試みる。
「ビブリオ・ミステリ」と銘打っているが、ミステリとしてではなく、人生の局面に応じた本を紹介する小説として読んだ方がしっくりくる(必ずしもその紹介が適切だとは言えないが)。日本の小説もちらっと紹介されていてなんだかうれしい。
フォローしている人のレビューに、ホーソーンの『ウェイクフィールド』を先に読んでおいた方がよい、と書いてあったが、そのとおりだった。読んでいなくても内容がわからないわけではないが、『ウェイクフィールド』のストーリーが女性の失踪の背景を明らかにするキーワードになっており、さらに文中で本屋のエミリアーノが『ウェイクフィールド』についての解釈を数頁にわたりとうとうと述べる部分もあって、事前に読んでいないと面白さが半減するような気がする。
それにしても、イタリア人はもっと陽気な人種なのかと思っていたのだが、それは一面的な見方だったようだ。若さを失うことへの恐れ、裏切った夫に対する憎しみ、不治の病の苦しみ、身体のコンプレックスなど、本書で描かれる悩みの数々には国境を越えた普遍性があり、親近感を覚えてしまう。
正直言うと、本書はいまいちはまり切れなかったところもあるのだが、シリーズ化されているようなので、もう一作読んでから判断してもいいかな、と思っている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ローマのアパートで読書療法のスタジオを開いたヴィンチェ・コルソを訪れる文学に救いを求める女性たちに適切と思われる本を紹介する物語。アパートに引っ越してきて2週間後、近所の老婦人パロディの失踪事件が発生し、真相を探ることにもなる。物語のストーリーよりもクライアントに勧める様々な本、未読の本に興味をそそられる。
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元国語教師のヴィンチェは、恋人と別れ、職もなく、ローマのワンルームで読書セラピーを開業する。
癖の強い女性客を相手に内心冷や汗をかきながら対応する日々。
そんな中、階下に住む、老婦人が失踪した。
警察や隣人たちは同居の夫が殺したのではと疑うが。
ヴィンチェは行きつけの本屋の友人から、失踪したパロディ夫人が残した小説のリストを手に入れ、彼女の失踪を考え始める。
心理的症状を緩和する本を薦める読書セラピストが、失踪した老婦人の謎にせまるというので、もっと淡々と冷静に展開していくかと思えば、生い立ちから彼女との確執とか悶々と長々と語られて、何度も挫けそうになった。
欧米文学もあまり読んでないから、詳しい人はもっともっと楽しめるんだろうなあ。続編もあるようだし。
「彼女の身体は、T.S.エリオットの『荒野』に劣らず荒れ果てていて、オフェーリアと同じ狂気を、あるいは五十九歳でウーズ川に身を投げたヴァージニア・ウルフの最後の視線、あるいは、マルデルプルタの波に身をゆだねたティチーノ州生まれの若き女性詩人、アルフォンシーナ・ストルニの最後の視線を含んでいた。
いくつもの溺死の例がぼくの心に浮かんできた。自宅プールに落ちるグレート・ギャッツビー、深淵に飲み込まれるエイハブ船長、身投げするマーティン・イーデン、首に石をつけられ沈むピノッキオ。」
「想像するとか、思うとか、違いないとか…自分が物語の語り手と同じ表現を使っているのに気がついてる?」 -
タイトルに惹かれて読んでみたものの…(最近、本や図書館絡みの外国文学を読み何となくがっかりが続いているような…)思ったよりはぐいぐいと読めたものの…面白かったかと言えばそうでもなかった。
途中でこれは「こういうことなんでは」と言う予測が付き、細かい真相まではわからないものの大筋の予測は間違ってなかった。
ただこれ、ミステリーと呼ぶにはちょっと分かりにくいというか、無理があるというか、要するに読書セラピストである主人公の試行錯誤と挫折だらけの人生の話とその読書という一点における見識の高さを披露したいだけの話だったんではないかと思いました。といって、この主人公に共感も憐憫も羨望も何も感じなかった。云ってみれば「何かうじうじしてキライ」(笑)
訳者あとがきに原題直訳が紹介されており(「姿を消した女性読者」)これがタイトルだったら自分は絶対本書を読まなかっただろうなと思ったことでした。
「自分が生み出す筋書きを読んでくれる読者を人はいつだって探すものです」ある登場人物が終盤で語る台詞ですが、一番共感したのはそこだった。そこしかないと言ってもいい(笑)
巻末に本書に登場する数々の名著がリスト化されており、興味のある人は手にしやすいかも。
自分は読んだことのあるものは一つなく、また本書を読んだからどれか読んでみようとも思わなかった。
あとがきに「ここに登場する本を知ってないと(本書を)楽しめないのか。(そんなことはないというニュアンス)」と言う意味のことが書いてありまして、それはそうだがやはり知っていたほうがより楽しめるんではないかと私は思いました。そして実際に日本の読者でここに出てくる本をほぼ読んだというような人ってそんなにいないだろうな、とも思いました。
外国文学、しばらくいいかな…(笑) -
表紙がハマスホイという時点で買ってしまうわけですが、”読書セラピスト”ってちょっとマユツバ(すみません)などと思いながら読んだ。だって、職業として成り立たせるのは相当難しいよね。まあ、本を紹介するセラピスト、ということで。
ミステリ度は弱いと思うけれど、ミステリ仕立ての読書案内、として面白かった。本の選択も幅広く、意外なものもあるし。出てくる本を知らなくても楽しめるとは思うが、でもやっぱり『ウェイクフィールド』は読んでいたほうが、より意味付けが深まるんじゃなかな。 -
教職の仕事がうまくいかず、新しい仕事を始めたヴィンチェ。
彼曰く、[女性に対して無責任]な主人公は、読書セラピストとして、女性に踏み込んだ助言をして顧客を怒らせてばかり。
仕事では失敗が続き、不安を抱えながらの暮らしの中で、同じアパートに住む老婦人の失踪事件に引き寄せられるように手がかりを集め紐解いていく。
イタリアの街並みの様子や、彼の質素な暮らしを感じる描写から、隠されていた事実が明らかになった時のヒヤリとした静かな感覚は、予想外の恐ろしいものでした。
読書好きな方、ちょっと変わった推理モノを手に取ってみたい方にオススメです。 -
『ウェイクフィールド』を中心に、古今東西、様々な文学作品を織り交ぜた“ビブリオ・ミステリ”。
日本の現代作品も登場、おおこの作家さんが、と嬉しくて思った。
読んだ作品が登場すれば嬉しく、登場人物と一緒にその本について話している気分になるし、未読作品はたまらなく読みたくなる。
ミステリ、と聞いてそのつもりで読んだので、真相とそこに至る経緯はちょっと拍子抜けだったのだけど、単に本にまつわるものとだけ思って読めば、もっと入り込めたのかも。 -
後半ではミステリー要素が漂うものの、ほぼ全編に文学的素養が詰め込まれ、実に豊かな読書体験となりました。これほど教養の何たるかを突きつけられたことはありません。このような会話をしてみたい、と心底思ったし、膨大な読書経験の中からこれと思う場面が引き出せるヴィンチェは尊敬しかできません。たくさん本を読んできましたが、自分の人生を象ってはいないなあ、としみじみ思ってしまいました。ミステリーばかり読んでるから仕方ないんですけどね。ヴィンチェの語りで文学の素晴らしさを改めて感じました。文学を学んでいた学生時代も思い起こされ、素敵な余韻に浸れました。こういう作品も読んでいきたいな、と思えています。そして、私もヴィンチェのドアを開けてみたいです。
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元国語教員で失業中、おまけに恋人とも別れたばかりのヴィンチェは、貸アパートの一室で読書セラピーを始めることにした。ヴィンチェの風変わりな友人達と、何かに縋る思いで訪ねてくる相談者達、さらに失踪した上階の住人を巡って、ヴィンチェは何を思うのか。
なんとも不思議な味わいのお話。
何か解決したようなそうでもないような、、
主人公と一緒に途方にくれながらローマの街を彷徨っている気持ちになりました。
なんと続編が2作もあるそうな。読みたいようなそうでもないような??