バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 上 (海外文学セレクション)

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  • 東京創元社 (2025年2月12日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784488016913

作品紹介・あらすじ

【ネビュラ賞・ローカス賞受賞作】

言語の力が世界を支配する
ふたつの言語における単語の意味のずれから
生じる翻訳の魔法によって、
大英帝国が覇権を握る19世紀――
秘密結社ヘルメスは帝国に叛旗をひるがえす。

銀と、ふたつの言語における単語の意味のずれから生じる翻訳の魔法によって、大英帝国が世界の覇権を握る19世紀。英語とは大きく異なる言語を求めて広東(カントン)から連れてこられた中国人少年ロビンは、オックスフォード大学の王立翻訳研究所、通称バベルの新入生となり、言語のエキスパートになるための厳しい訓練を受ける。だが一方で、学内には大英帝国に叛旗を翻す秘密結社があった。言語の力を巡る本格ファンタジー。ネビュラ賞、ローカス賞受賞作。

みんなの感想まとめ

言語の力と翻訳の魔法が交錯する世界を舞台に、主人公ロビンがオックスフォードの王立翻訳研究所での厳しい訓練を受ける様子が描かれています。物語は、異なる文化や言語を持つ仲間たちとの交流や衝突を通じて、翻訳...

感想・レビュー・書評

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  • こいつは久々ガツンときた。上巻約470頁弱、ここまで文字みっしりだとダラダラと無駄な装飾に飽き飽きしそうなもんだけど、全シーンまったく飽きが来ない。後半などは常に胃が痛むほどの緊張感を感じつつ読み耽ることになった。が、決して読むのが辛くない。敢えて言うならウンベルト・エーコ風味のハリーポッター。知的好奇心と友情をない混ぜにして楽しめる贅沢よ。いざ下巻へ続く。

  • 上巻読了。

    通称バベルと呼ばれるオックスフォード大学の王立翻訳研究所での約3年間を中心に描かれている。バベルには、あらゆる知識が蓄積されており、色々な国の言語に精通する教授や学生たちによって研究し討論され、課題をこなしながら翻訳されていっている。そして、対となる言葉の意味のズレから生じる翻訳の魔法のような力が、銀の棒を介すことによって色々な効力をもたらしている世界。派手な魔法ではなく、街の景観を保ったり、動力やエネルギーに使われることが多い世界観にとてもワクワクする。

    主人公の中国人ロビンを含む同級生たちは4人。それぞれ出身国が違うので、それぞれに過去を持ち、人種の違いや考えの違いなどから惹かれ合ったり衝突したりするところは、頭で分かるようで本当の理解はできていない気がする。でも、本文にはたくさんの言語についてのレクチャーがあり、翻訳についての考察も興味深く、読みながらロビンたちと共に言語の研究をしているような気分になれる。ただ、難しくて何ひとつ思い出して言えるものはないのだが…。

    序盤から秘密組織のヘルメス結社が関与してきたり、上巻最後では急に不穏な展開になっていくので、果たしてどうなっていくのか下巻が楽しみになってきた。

  • 外国語ができてもできなくても、知的好奇心をくすぐる仕掛けがギチギチに詰まってて相当手強い!一気に脈拍数が上がったところで、下巻へ続く

  • 同じ意味の単語を二か国語からそれぞれ選んでも、語源を辿ると完璧には一緒の意味を示すことにはならない。言葉は、単語一つ取り出しても歴史的・文化的背景によって本質的に多義的なのだ。この単語のペアに含まれた意味のズレに魔法が宿る、という設定が面白い。これは自分でも考えて作りたくなる。
    例えば日本語と英語のペアでは、こんなのはどうだろう?
    「間」と「gap」をGoogleで調べるとAIがこう回答してくれる。

    「間(ま)」と「gap」は、どちらも「隔たり」や「隙間」を意味しますが、ニュアンスや使われ方が異なります。「間(ま)」は、時間や空間、または心理的な隔たりなど、幅広い意味で使われる抽象的な概念です。一方、「gap」は、物理的な隙間や、数値、能力、意見などの隔たりを指すより具体的な言葉として使われます。

    「間」には、「隣の間で控えください」「間が悪い」といった「gap=隙間」には収まらない用法がある。「space」「timing」が相当するかな。
    それでは、「間」/「gap」を銀棒に刻んで、いざ唱えると、「間」に含まれる意味の違いが発現するはず!

    1.隣家との狭い壁の隙間が、急に広々となる。
    2.会議と会議の間の貴重な隙間時間に、同僚からムダ話しされるのが回避できる。
    こんなしょぼい魔法が作動するかは全く不明。残念ながら銀工術の試験は落第だろう。

    「バベル」は、難解で混乱しない程度にアカデミックな翻訳を巡る考察と、男女4人のオックスフォードでの学園青春の雰囲気が、とても楽しい。特に翻訳とは原文に対してどうあるべきかの議論のくだりは、海外文学好きとしては興味深いところだ。

    でももちろんそれだけはない。
    原題は「バベル、あるいは暴力の必然性:オックスフォード翻訳者革命の秘められた歴史」なのだから。
    魔法を発動するためには、英語とは成り立ちが異なる言語とネイティブな翻訳者が必要だ。
    しかし、その貴重な言語と翻訳者たちは、“文明化されていない劣等人種の住む植民地”から、大英帝国の繁栄のために供される“資源”に過ぎないとしたら?

    植民地主義とは何か、自由貿易や自由意志という名の下でどれだけ搾取され格差を受け入れてきたのか、富めるものはより栄えて貧しいものは更に奪われる現実を変えることはできるのか。
    暴力と痛みでしか革命は成し遂げられないのか。

    多くのテーマを抱えて物語は加速し、下巻へ進む。








  • 読み始めた時には、大学生版ハリーポッターみたいな流れでそのうえ話しが継ぎ接ぎな章ばかりだなと思いながら読んでいたら徐々に話の焦点にピントが合っていくようになってきて半分過ぎたところくらいから没頭して読むのが止まらなくなってしまいました。それでは下巻へ行ってきます→

  • 19世紀、大英帝国は世界中の銀を手中に収めることで空前の大繁栄を遂げていた。
    そんな中、遥か彼方の中国・広東で死にかけていた少年ロビンが、非印欧語のネイティブかつ英語話者という資質を買われオックスフォード大学教授のラヴェルの元で言語を教え込まれ翻訳家への道を歩み出す。
    だが一方で、帝国に反旗を翻そうとするヘルメス結社の存在があった。

    寮生活で親友たちと一緒、魔法が出てくるということもあって、どこか『ハリー・ポッター』のような雰囲気もあった
    前半・ロビンたちの順風満帆さと、後半・その順風満帆さの裏に隠れた世界の構造との対比がえげつなかった
    時々入る注釈が、『バベル』世界そのものの注釈として(例えばロビンの家族の話だったり)機能しているのが、世界観に浸れて楽しかった
    言語が好きな身として、しばしば入る単語の由来や言語そのものについての解釈は読んでて興味深かった

    下巻でどういった結末にもっていくのか気になる

  • Book Review: ‘Babel: An Arcane History’ by R.F. Kuang — What Is Quinn Reading?
    https://www.whatisquinnreading.com/reviews/babel-book-review

    Translation, colonialism, and nothing happening: Babel, or the Necessity of Violence by R.F. Kuang | The Tech
    https://thetech.com/2024/03/07/babel-review

    「Babel」by R.F. Kuang / レビュー|夜海月|洋書を読む(2023年3月8日)
    https://note.com/subtrans/n/n661086fea433

    二〇二〇年代を代表する作家のひとりになったと言っても過言ではない――古沢嘉通/R・F・クァン『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』訳者あとがき[全文]|Web東京創元社マガジン 2025年2月12日
    https://note.com/tokyosogensha/n/n9230cb84c4a3

    バベル オックスフォード翻訳家革命秘史〈上〉 - R・F・クァン/古沢嘉通 訳|東京創元社
    https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488016913

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      言葉の魔法巡る歴史改変SF
      <鳥の目虫の目 大森滋樹>「バベル」R・F・クァン著、古沢嘉通訳(東京創元社 上3300円、下2750円):北...
      言葉の魔法巡る歴史改変SF
      <鳥の目虫の目 大森滋樹>「バベル」R・F・クァン著、古沢嘉通訳(東京創元社 上3300円、下2750円):北海道新聞デジタル 会員限定記事2025年4月13日
      https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1146733/
      2025/04/13
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      <トヨザキ社長の鮭児(けいじ)書店>猛暑も吹っ飛ぶ上半期おすすめ海外小説:北海道新聞デジタル 会員限定記事2025年6月29日
      https...
      <トヨザキ社長の鮭児(けいじ)書店>猛暑も吹っ飛ぶ上半期おすすめ海外小説:北海道新聞デジタル 会員限定記事2025年6月29日
      https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1178872/
      2025/07/01
  • イギリスを舞台にしたファンタジー。下巻を読み終えて感想を書きたい。

  • 国が搾取され、そうした現実になんの疑念も抱いていない帝国主義に不信感を持ちつつ、置かれた環境に矛盾を抱えている主人公たちになんとも言えない気持ちになった。。言語がこの物語のキーになっていて、語源とか翻訳についての解説もまた面白かった。

  • タイトルからノンフィクションかと思っていたらパラレルワールド的ファンタジーだった。
    大学、マント、世界中から集められたエリート学生たちの寮生活…とちょっとダークなハリポタっぽいところも。
    一応魔法っぽいのが出るけどこの作品では派手な回復や攻撃が出来るわけではなく、産業革命時の技術に代わるものであって商業商品みたいな意味合いを持っており、それを生み出せたり扱えるのがオクスフォードのエリート、という設定。

    魔法よりもメインになっているのは、扱っているテーマが帝国主義とマイノリティであり、搾取する側とされる側であり、虐げる側と虐げられる側と言う構図であり、幼くして有無を言わさずイギリスに連れてこられたマイノリティ側の主人公が父親との確執を乗り越えようとし、同じく帝国主義に抵抗しようとする…といういわゆる正統派ビルドゥングスロマンの部分。そこはとても説得力がある。

    私は言語学と中国語にも興味があるので、この世界の魔法に関する言葉の語源や変化のお話なども楽しく、割と一気読み出来た。

  • 本が出る前からSNS流れてきて気になっていた。帯の「言語の力」「ふたつの言語における単語の意味のずれから生じる翻訳の魔法」というのに惹かれてた。
    単行本上下巻はなかなか勇気が必要で、まずは上巻だけを味見して失敗…上下で買うべき本でした。読んで良かった。

     翻訳の力が魔法として働く19世紀の大英帝国。大英帝国の植民地支配は広大で、日の沈まない国と言われた時代。
     翻訳の魔法は、銀の棒に同じ意味を含む対になる言葉…適合対…を刻み、それを唱えると発動する。
     扱えるのは言語に精通した者、外国語も英語もネイティブと同じくらい扱える者だけ。その銀工という技術の研究と製作を担うのがオックスフォード大学にあるバベルという機関。魔法に使う英語との適合対は英語から遠い言語であるほど強いという。発動させる側も、母国語で夢を見るくらいの外国人翻訳者であるほど強い力があるという。帝国は広い領土から翻訳者と銀を集め、銀の魔法を占有している。

     そういう舞台装置で描かれる架空歴史学園ファンタジー……いやいや、これは、革命史。そう、タイトルは「バベル オックスフォード翻訳家革命秘史」後書きによれば、英語タイトルでは「バベル、あるいは暴力の必要性 オックスフォード翻訳家革命秘史」だそうで、助長なので「あるいは暴力の必要性」は削られたそう。読後に知ったけれど、たいへん的を射たタイトルだと思った。

     物語全体を通してもっと魔法がばんばん出るのかと最初は思ったけど、銀工を使うシーンはここぞ!という時にだけ登場する。
     銀の魔法が何に使われているのかというと、水や空気をきれいにする、鉄道や船の蒸気機関を速く動かす、病気の快癒、遮音フィールド、建造物の補強などなど、あらゆる場所に様々に使われて、産業の効率化、都市部の快適な生活を支えているらしい。

     上巻はマイフェアレディのような雰囲気で始まり、ハリーポッターのような雰囲気の学園ものになり、イギリス料理にスコーンにボートに進級試験。丘でピクニックする男の子たちとかさぁ…本筋から離れてウキウキしてしまうじゃないですか。女の子たちや、影のある魅力的な男性、ステキな上級生らも登場し、大変だけど充実した学園生活。
     そして何より魅力的なのが、散りばめられる言語や翻訳についての様々な知識。わたしは語源学のくだりが楽しかった。日本になじみの台風の語感についてや、大好きなCoffeeがアラビアからどんな変化をしながら英国へもたらされたかとか。おもしろいけど語源学は「悪魔的にきつい」らしいね。
     楽しい、でも、ひたひたと変化が追ってくる緊張感を感じていた。

    続きは下巻で。

  • タイトルだけ見るとなにやら小難しそうな印象だが、本作は19世紀イギリスを舞台にしたアカデミックなファンタジーだ。著者は前書きに相当する注釈で「スペキュレイティブ・フィクション」と呼んでいる。ネビュラ賞、ローカス賞受賞作だ。
    銀の棒に刻まれた2つの言語による単語の意味の違いから生じる魔法が、イギリスに強大な力を与えていた。オックスフォード大学の敷地内にある研究所〈バベル〉の新入生となった男女4人が、世界中の言語とそれをめぐる陰謀に向かい合う姿を描く。
    上巻だけで467ページもある。注釈も多く、読みやすいとはいえないがおもしろい。下巻へ。

  • 下巻まで読了。

    銀工術と呼ばれる(魔術的な)技術により、ひとつひとつの言葉が翻訳される際に発生する差異を実際的なエネルギーとして活用する方法が確立した世界。
    イギリスは銀工術を用いて(特に非ヨーロッパ世界を支配するためにその土地の言語を利用することで)植民地支配と帝国主義的膨張を進めていた。
    その政策の中心機関であるバベルに集められた翻訳者たちの半ばは、アジアやアフリカなど非ヨーロッパ世界から攫われた孤児たちであり、主人公・ロビンも中国からイギリスに連れてこられ、イギリスによる搾取に加担することを暗黙に強制されていた──
    という筋立てで幕を上げる、壮大で重層的なSFであり、言葉と翻訳を巡るファンタジーであり、人種差別と階層間の貧富の差をテーマにした政治と革命についての小説。

    主人公たちの喜びや悲しみや成長、また出会いと別れの鮮やかさを描く青春小説でもあり、強く結びついた彼らの間でさえ存在する断絶が、国家間や民族間、言語間の断絶とも重なって描かれる。

    しかしその確かな断絶に対して、物語の終盤、革命が悲劇的な形で成就されざるを得ないとき、そもそも「翻訳が不可能だという真実」の前で、ロビンは思う。
    「言語はたんなる相違なのだ。千もの異なる見方、世界の動き方がある。いや、ひとつの世界の中に千の世界がある。そして翻訳は──どれほど無駄であろうと、異なる世界のあいだを行き来するために必要な努力なのだ」と。
    言葉と世界と人間を包む熱量に圧倒され、本を閉じた後、言葉が形を取らずに胸中にわだかまるのを感じる。

    世界に入り込むにも受け止めるにも体力の要る読書だったけれど、読み終わってみて、曲がりなりにも読み通すことができて良かったと思う。

  • 二つの言語での単語の意味のずれから生じる翻訳魔法が支配する世界の中で、多数言語を学ぶ学生たちの物語という導入設定から、ハリポタを大人向けにしたブラックファンタジーと誤解して読み始めたが、開始とともに違和感満載(笑)。その裏には、アヘン戦争時の植民地政策末期での帝国主義のほころびを描いた骨太の展開があった。DEIと真反対の環境下で4人のオックスフォード大学生の視点から描かかれる反乱の萌芽は上巻を通じてゆっくり育っていき、一気にクライマックスへ。上巻と下巻の分量的バランスがこうなったのもよくわかる。嫌な予感がしつつ、これはすごく面白い。下巻へ。

  • 下巻にて。

  • 異なる言語の翻訳の「ズレ」から魔法が生まれるという発想が斬新でファンタジー苦手な自分でもスッと入り込めた。語学好きとしてもとても面白いし、文化の違いや不完全さが力になるという点に希望を感じた。下巻も楽しみ

  • 全体の感想は下巻のほうにまわす。上巻のオックスフォードでの学生生活などが下巻の面白さにつながっていく。

  •  魔法が使える19世紀のイギリスを舞台にした歴史改変小説の上巻。よくあるスチームパンク小説、もしくは大人向けのハリー・ポッター小説かと思ったら、魔法の要素はおまけみたいなものだった。言語に秘められた神秘的な力がメインとなっており、並行して帝国主義への抵抗や人種・女性差別の問題がストーリーの底に重く横たわっている。

     死ぬ寸前のところを広東からイギリスに連れられてきた少年ロビンは、オックスフォード大学にある王立翻訳研究所、通称”バベル”に入学させられる。同期生のラミー、ヴィクトワール、レティとともに訓練に明け暮れる毎日だったが、銀を求めて世界中を席巻しようとするイギリスの帝国主義にやがて疑問を抱くようになる。
     この世界の魔法のかけ方が一風変わっている。銀の棒に二つの言語の文字を刻印するのだが、同じ言葉を指す二つの言語の意味の”ずれ”が大きいほど魔法のパワーが増大するようになっており、バベルの研究所員は古今東西の言語の起源や意味を日夜研究し、翻訳の実験を繰り返している。すでに発見された組み合わせは、いわゆる呪文と同じように普通に使えるが、なかなか威力のある組み合わせが見つからない。
     そのため、異なる言語を話せるロビンのような外国人が抜擢されている訳だが、一方でオックスフォードのような街でも外国人に対する差別や偏見は激しく、ロビンたちは自分たちの置かれた立場とアイデンティティに苦悩していく。4人の中で唯一、白人の上流階級で何不自由無く育ったレティも、女性であるが故に差別を受け続けてきたことがわかってくる。
     上巻は、ロビンたち4人の同期生がオックスフォードで学ぶ学園生活が中心に書かれ、出自が異なる彼らが徐々に打ち解けて、反発と和解を繰り返しながら強固な友情を育んでいく過程がいちばんの読みどころだった。

     アメリカで育った中国人の作者ならではの肌感覚と、言語に関する膨大な知識をバックグラウンドとして、作中にはさまざまな言語の起源や意味、どうしても他の言語に翻訳できない微妙なニュアンスの例がふんだんに盛り込まれており、とても興味深かった。
     作中で、ある登場人物が「英語にはうまく翻訳できないな」として日本語の「イバショ(居場所)」という言葉をつぶやいていたが、このような他の言語にうまく翻訳できないもどかしさの奥にあるのがその言語の存在理由でもあり、作者に本書を書かせた原動力にもなっているのだろう。イギリスがやがて覇権を取って世界中が英語という単一言語に支配されていくと、やがて言語間の”ずれ”も無くなって魔法の力も弱まっていくという考察も逆説的で面白かった。

     清国に無理やり阿片を売りつけて、魔法のエネルギー源である銀を収奪しようとするイギリス政府が、ロビンたちを通訳として広東に派遣した際に思わぬトラブルが発生し、非常に不穏な空気を残して上巻は終了。

  • 久しぶりに時間が過ぎるのを忘れるほど夢中になって読んだ。

    基本はハリー・ポッターを思わせる魔法学園ものなのだけれど、帝国主義や階級社会の闇が色濃く描写されていて、現代性が強い。
    主人公を含む同期4人組が男2女2で、1人だけが白人という設定も効果的。かけがえのない友情を育みつつも、互いのマイノリティ間ギャップに苦しみ、栄光と信念の間で悩む姿がリアル。

    なにしろ、銀の棒に適合対となる言語を刻んで魔法を発現させる、というアイデアが発明すぎる!言語の盛衰が魔法に影響したり、英語から遠い言語を扱える者が重宝されたり、魔法によって産業や生活が豊かになっている、という設定がおもしろすぎるし、メタファーとしても優れている。

  • どれだけ理解できているのか自分でもちと怪しい。中国語の知識が少しあるおかげで、助けられている部分もある。難しいとも思える。さて、大きな転換点にやって来たけれども、この後どうなるのか。歴史通りであれば余り後味が良くない結果となるのだろうが……やはり読み進めるしかない。

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著者プロフィール

古沢嘉通:1958年生まれ。コナリー作品の大半を翻訳。

「2023年 『正義の弧(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

古沢嘉通の作品

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