バベル オックスフォード翻訳家革命秘史 下 (海外文学セレクション)

  • 東京創元社 (2025年2月12日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784488016920

作品紹介・あらすじ

友情と相剋、そして青春の終わり
極東では大英帝国と清朝政府が戦争の瀬戸際に――
中国が持つ膨大な銀を手に入れ、
銀の魔法を用いた支配を確立せんとする
帝国を止める術はあるのか?
世界二十カ国で翻訳のベストセラー

バベルが供給する、銀を用いた魔法によって世界を支配する大英帝国。通訳として広東を訪れたロビンたちは、イギリスが阿片貿易を口実に清朝政府に戦争をしかけ、中国が持つ膨大な銀をわがものにしようとしていることを目の当たりにする。そしてロビンは、後戻りのできないひとつの決断をする。帰国したロビンたちは、戦争を食い止めるべく奔走するが……言葉の力を巡る本格ファンタジイ。ネビュラ賞、ローカス賞受賞作。

みんなの感想まとめ

物語は、大英帝国と清朝政府の緊迫した関係を背景に、友情や葛藤、そして青春の終わりを描き出します。下巻では、上巻の衝撃的な展開を受けて、ロビンたちが阿片貿易を巡る陰謀を暴き、戦争を阻止すべく奮闘するスリ...

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃の上巻最終シーンを受けて、ひたすら重い下巻。恐ろしいのはあれほど心揺さぶられた上巻が、下巻の“フリ”だったということだ。下巻は上巻の諸々をどっかり受け止めて、さらなるドラマの展開を図る。重いが読むのが憂鬱ではない。期待を裏切らないとはこのことだ。読むべし。

  • ある書評に、ハリーポッターで育った人が次に読む本、とあったけど、まさにそんな感じのファンタジーだった。

  • 上巻の大学生活中心の話から一転して、陰謀を暴き戦争開戦を阻止しようとする流れになっていき、非常にスリリングな展開となる。

    きっかけは大英帝国と清国との阿片貿易において、清国が所有する大量の銀を入手するために武力による制圧を数年前から計画されていたのをロビンが知ったこと。その陰謀にバベルのある人物も関わっていた。上巻の最後にも触れてしまうので、何が起きてどうなっていったのかは書かないが、かなりシリアスな話になっていく。

    物語として不満は全くないのだが、ロビンが戦争を止めるためにした行動は、果たしてこれ以外に方法がなかったのかと思わされる。ここに至るまでに起きたことを考えるとそうなっていく気持ちや理由は分かるのだが、犠牲が大きすぎるし、なにより支持を得なければならない人々のことを考えればすべきではなかったのではないかと思ってしまう。でも、それは平和な国に暮らすものの考えなのかもしれない。他に方法がなく、目的のためには仕方のなかったことなのかもしれない。なんとも難しい。

    上下巻通して、人種による立場や言動、考え方はずっと重要な要素になっていることは多くの箇所で感じる。努力によって手の届く憧れを自分の中で守ることと、憧れを作り出している世界を壊すことは、どこか結びつく気持ちはあったのだろうかと本筋には関係ないことも想像してしまう。

  •  “銀の棒が震えながら歌っていた。自分たちに関する筆舌に尽くしがたい真実を表現しようとしているかのようだ。それは翻訳が不可能だと言う真実だった。翻訳がとらえ、表現する純粋な意味の領域は決してわからないだろうし、わかりようがないことを。
    というのも、アダムの言語なんてものがどうやったらあり得るのだろう? 生得的で、完璧に理解可能な言語なんてものは存在しない。そんな言語になり得る候補なんてない。威張りちらし、一つのものになろうとして、吸収できるような言語はない。
    言語はたんなる相違なのだ。千もの異なる見方、世界の動き方がある。いや、ひとつの世界の中に千の世界がある。そして翻訳は、どれほど無駄であろうと、異なる世界の間を行き来するために必要な努力なのだ。”

     “翻訳とは、まさにそういうことなんだ。話すと言うことはそういうことなんだ。他人の話に耳を傾け、自分の偏見を超えて、相手が言おうとすることをわかろうとすることだ。自分自身を世界に示し、他の誰かが理解してくれることを期待するんだ。”

    広東からきた孤児のロビン、カルカッタからきたイスラム教徒のラミー、祖国ハイチから宗主国であるフランスへ連れてこられたヴィクトワール、そしてイギリス旧提督の娘であるレティの四人は、それぞれ有色人種であること、女性であること故にイギリス社会で不当に扱われてきた。
    必死の努力と生まれ持った能力でオックスフォード大学最高峰のバベルにて己の価値を証明したとき、自らを否定してきた社会の一員として進むのか。それとも、社会を糾弾する側に立つのか?

    本書に引き込まれる理由は、四人の若者たちに突きつけられる問いの過酷さと苦しみながらそれぞれが出した答えにある。
    誰しもが同じような疑問を抱き、苦い想いを飲み込んできた経験があるのではないだろうか。
    だからこれは優れた青春小説なのだ。

    硬い友情で結ばれていた彼らが、それぞれに下した選択の痛みが胸を掴んで離さない。

  • 物語の時代背景や人物像をじっくり描いたため、読み応えのあった上巻。ラストの衝撃を抱えたまま、下巻に突入!こちらはこちらで怒涛のスピード感。一気読み必至。これまで観てきた映画やドラマのワンシーンが折々に目に浮かんでは消えた。単純に“おもしろかった”で片付けられない複雑な気持ち。やっぱり豊崎由美さんが絶賛する本にハズレ無しだな。

  • R・F・クァンのアレックス賞受賞作品「Babel」映画化へ? | Librarian Nightbird(2024-02-29)
    https://ameblo.jp/librarian-nightbird/entry-12842572670.html

    Rebecca Kuang(@kuangrf) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/kuangrf/

    Rebecca F. Kuang
    https://rfkuang.com/

    バベル オックスフォード翻訳家革命秘史〈下〉 - R・F・クァン/古沢嘉通 訳|東京創元社
    https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488016920

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【今週はこれを読め! SF編】翻訳の秘術〜R・F・クァン『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』 - 牧眞司|WEB本の雑誌 2025年2...
      【今週はこれを読め! SF編】翻訳の秘術〜R・F・クァン『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』 - 牧眞司|WEB本の雑誌 2025年2月25日
      https://www.webdoku.jp/newshz/maki/2025/02/25/113000.html

      怒濤の改変歴史青春小説R・F・クァン『バベル』に参った! 文=大森望 - 新刊めったくたガイド|WEB本の雑誌(本の雑誌 2025年4月号)
      https://www.webdoku.jp/mettakuta/omori_nozomi/20250423080000.html
      2025/07/01
  • 19世紀、大英帝国がその巨大な力を以て世界に君臨していた時代。
    大英国の力の源は銀と翻訳にあった。同じことを表す複数の異なる言語の単語を銀に刻むと、その言葉の意味の微妙な相違による歪みが力を生み、馬車の速度を早め、船の運行を円滑に行い、大砲の狙いの精度と威力を増していた。
    オックスフォードには世界各地から少年少女たちが集められ、大学構内の王立翻訳研究所バベルの塔で働く翻訳家となるために育成されていた。
    中国の広東省から連れてこられた少年ロビン・スウィフトは中国語の翻訳者としてオックスフォードに入学する。
    しかし、そこにはバベルから銀や蔵書を盗む秘密結社ヘルメス社があることや、英国は中国から銀と交換に英国に阿片を売りつけようとし、それに逆らえば戦争をも辞さない一方的な貿易をしいろうとしていることを知り、バベルの存在に疑問を抱き破始める。

  • 人間同士の意思疎通がどれだけ困難なことかを思い知らされた
    しかしその「翻訳」がいかに無駄であっても、双方が生きる世界を行き来するために必要な努力として、その地位は保たれる

    立場や境遇が違うために、たとえ生活を共にしたとしても価値観が揃うことはなく、分かってくれないことへの恨みや憐れみで武力を行使しだす
    その苦痛を味わったことが無い者には想像すらできず、ただ我儘なだけに思えてしまう

    人間の考えを変えることはとても難しく、正確な意思疎通を取ることも不可能に等しい
    何とも虚しく悲しい話だった

    未来を手にするためには行動を止めてはならず、死という誘惑に抗って進み続けなければならないのだ

  • 下巻に入ると、上巻で語られていた4人の“学生生活”はすっかり消え失せ、清の持つ銀を狙って戦争を仕掛けようとする陰謀が焦点となる。歴史改変ものでもあるため、史実からどこまで外れていくかも読みどころだ。
    想定外の展開が多かった割には彼らの抵抗の行方は大体想像通りだったけれど、希望を感じさせるエピローグがよかった。
    全体を通して振り返ると、スチームパンクの世界観に補強として銀と言語(翻訳語)を用いた魔法をかぶせ、魅力的な4人の学生を配置した感じかな。ハリポタほど魔法色は強くなかった。

  • 世界観が完璧。ハイティーンくらいからおすすめかな。

  • 上巻で学生生活パートがみっちり書かれた後、英国の真の姿や狙いを知った主人公が取った行動、4人の分裂と別れ、そしてクライマックスへ。上巻での仕込みが下巻に活きてます。

    https://historia-bookreport.hatenablog.jp/entry/2025/03/06/225333

  • 上巻と比べると冒険ワクワク感が足りない。
    政治的で観念的な内容が多くなり、塔に籠城してのストライキが延々と最後まで続く。クライマックスがない。

    下巻はやや蛇足で上巻だけ読めば魅力は十分わかる

  • 作品の世界観が斬新で、「翻訳の差異が生む力」を利用するという設定が面白い!難しい内容の本かと思ったが、学園ものファンタジーな感じで、読んでいて楽しかった。

  • アヘン戦争や産業革命の時代の英国を舞台にした魔法使い(翻訳家)たちの物語。中国との戦争を止めるため植民地に出自をもつ魔法使いが中心となってクーデターを起こす。

    すでに銀を触媒にした魔法は英国のインフラとなっておりストライキによってそのメンテナンスをしないことで混乱を拡大させていく。すでにインフラとなったインターネットやこれからなるであろうAIに置き替えると、職業が失われることがどういうことか、寡占的に起業に技術が集中し資本や政治と結びつくことで権力がどう暴走するのかということを考えさせられる。

    物語として面白いけど前半の丁寧な前提の描写に対して登場人物が簡単に死にすぎだなと感じる。

  • 下巻は息をのむ展開の連続で、まさに「凄絶な青春」だった。言葉は単なる伝達手段じゃなくて、生きるための武器であり、祈りであり、それこそ魔法みたいなものなんだと思い知らされた

  • もし原題のうち省略された部分(バベル、もしくは〇〇)を知っていたら、どういう読書になっていたのか考えてしまう。しかも創元の紹介HPのファンタジーっぽい登場人物イラストとかの騙し要素に完全に誘い込まれたし。で、下巻からは怒涛かつ想定できる厳しい展開で、まさかこうなるとは正直思ってなかった。帝国主義のイギリスに翻弄される革命家たち。4人それぞれの避けられない運命は胸を打つ。現実と虚構を取り混ぜたスケールの極めて大きな異世界が構築されており、素晴らしい小説。この類の読書を習慣とする者は必読だと思う。

  • 以下ネタバレしてます!!!

     架空歴史学園ファンタジー? いやいや、これは、革命史。そう、タイトルは「バベル オックスフォード翻訳家革命秘史」後書きによれば、英語タイトルでは「バベル、あるいは暴力の必要性 オックスフォード翻訳家革命秘史」だそうで、助長なので「あるいは暴力の必要性」は削られたそう。読後に知ったけれど、たいへん的を射たタイトルだと思った。

     上巻は楽しい。でも、ひたひたと変化が追ってくる緊張感を感じていた。ゆっくり澱が形成されていくように。生い立ち、血のつながり、搾取、差別、被支配、暴力、孤独。
     上巻の終わりにそれまで澱のように沈んでいたものが撹拌され、衝撃的かつ決定的な事件が起こり、どうなるんだこれ?と、下巻に入る。
     下巻はもう、心が痛かった… 時間は戻せない。 
     大英帝国の搾取と差別に対抗しようとする「ヘルメス結社」との関わり、個々の立場や想いが交差し、ドラマティックに描かれる。
     そして、この本は「革命秘史」だったねと納得がいった。そして、「暴力の必要性」にも。
     「暴力」が根底に流れるテーマだと読みながら思っていた。そもそもこの物語は「暴力」で始まっているのだし…ロビンの人生自体が帝国とラヴェル教授の搾取という暴力から発生している。
     抵抗と革命のあたり、革命とは暴力的で個人的なものなのだな、と思った。わたしには賛同できる事よりできない事のほうが多かった。それは、どうにもできない状況に怒りを感じていたため。他に方法はなかったのかなと。自分がその立場ならどうするか、彼らはなぜその行動を選んだのか。考えさせられた。塔に残った人、去った人はそれぞれ自身をどう納得させたのか。描かれなかった人々の心情も思う。
     結末は予想のできる事だったけど、そこに至るまでは少し長く感じた。最期は非常にエモーショナルな美しい描写だった。

    ここから更にネタバレ↓








     ラミーがもし生きていたら、たとえレティと分かり合えなくとも、状況は変わったのではとも思う。だけど、どんなに考えても、ラヴェル教授の殺害と死体遺棄をした時点で、詰んでいるように思えるんだ。
     殺害を事故に擬装する事はできなかったのか、酌量の余地を考えなかったのか、相談できそうな支援者はいなかったのか。でも彼らが搾取される翻訳機械であると思えばそれもなかなか難しそうで。
     ロビンは生きるための何もかもを失ってしまったと絶望したし、時間も状況も待ってくれなかった。
     作者は最後の塔の破壊とロビンの自己破壊とあの呪文を揺るがないものにするために布石を打っていて、どうにも救えない。
     有色人種で女性という帝国で非常に不利なヴィクトワールが希望を繋いでくれたのが救いだった。


  • 「ダーク・アカデミア」と呼ばれるジャンル
    知的な(アカデミックな)雰囲気とダークでミステリアスな雰囲気を組み合わせ、学問への情熱と古典的な美意識を修身に据えたサブカルチャー

    上巻は、なかなか読み進まず、辛い読書でもあったけれど、下巻は大きく物語が動いて面白く、3日で読んだ

    幕間の、登場人物視点の話があるのが良かった

  • 後半の怒涛の展開があまりにも良かった。

  • 上巻が467ページなのに対して、下巻は315ページ。でも、ここでしか区切れない、というところで分けられているのは間違えてない。
    そして、底に音をたてて流れる「英国への恨み」としか感じられないもの。
    特に下巻は、辛くて何度も読むのをやめた。だって終わりは分かっている。歴史は変わらないのだから。あとは主人公達がどうするのかだけだ。しばらく放置して仕方なくまた読み出した。それでも辛かった。
    読んだ後も苦いものが残る。あまり人には勧められない。

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著者プロフィール

古沢嘉通:1958年生まれ。コナリー作品の大半を翻訳。

「2023年 『正義の弧(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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