犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
3.62
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本棚登録 : 992
感想 : 190
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017187

作品紹介・あらすじ

何か自営業を始めようと決めたとき、最初に思い浮かべたのはお好み焼き屋だった。しかしお好み焼き屋は支障があって叶わなかった。そこで調査事務所を開いた。この事務所"紺屋S&R"が想定している業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。それなのに、開業した途端舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして-いったいこの事件の全体像は?犬捜し専門(希望)、二十五歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。『さよなら妖精』で賞賛を浴びた著者が新境地に挑んだ青春私立探偵小説。

感想・レビュー・書評

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  • 勝手に短編集かと思っていたら、ちゃんと長編。
    読みはじめたらやめられないじゃん。

    ひどい皮膚炎で仕事をつづけられなくなった紺屋くんが地元に戻り、犬捜し専門の調査事務所<紺屋S&R>を開業します。
    けれど来た依頼は失踪した若い女性を探すこと、神社で見つかった古文書の解読。
    高校の後輩のハンペーに古文書を任せて、それぞれ依頼を調査していくと、最終的に実は周到に練られていたある計画にいきつくのですが。

    なかなかダークな結末ですね。
    真相を知っても謎解きしない探偵さんに、罪を糾弾されない犯人と、最終的には浮かばれない被害者。
    こわい。

    軽いノリと古めかしい雰囲気は好きですね。
    紺屋くんが桐子に自分を重ねていくところは切なかった。
    これ絶対続くだろって感じなのに、まだ続巻がないのね。
    チャット相手の<GEN>とかなんかあるかと思ってたのに結局何者?
    シリーズとして次が出るのを期待してます。

  • ひゃ〜、やっぱり米澤さんって感じのオチでした。背中に冷たい濡れタオルを置かれた様な寒気を感じました。

    人生のレールから脱線してしまった主人公が、社会復帰の為に始めた調査事務所。主な仕事は“犬探し”をするつもりが、友人の口利きで集まってきた依頼人は探偵事務所と勘違い。失踪した女性を捜すことになります。

    ここまでは普通のミステリーと同じ。
    段々真相が見えてきて、そういう事だったのかー!と怒涛のラストへ…と思いきや実はこうだったんだ!みたいな。
    ま、ここもありきたりな感じではあります。

    しかしさらに続く心理的な駆け引き。

    こわいよー。

    でもこの嫌な余韻がまたいいかも。

    なんか癖になりますね〜米澤作品。

    ひとつ不満があるとすれば、登場人物の年齢設定が若すぎるんじゃないですかね?25歳…、とてもそんな若造には見えなかった。どう考えても40前後でしょ。そこだけ違和感ありでした。

  • 全体が309ページ。
    その2割ほど読んだところで、付箋を貼るのをやめた。
    このペースでは後で抜粋しきれないと思ったから。

    共通で好きな作家のいる知人が、面白かったと勧めてくれた本。
    読み始めてすぐに、好みの文体だ、と感じた。
    私たちが好きな作家の文体に似ている、とも。


    チャットの描写も懐かしい2004年。
    なりゆきで「探偵」になってしまった無気力男と、
    憧れで探偵を始めたフリーター男が請け負った
    2つの依頼の顛末が淡々と語られる。

    真夏の話にもかかわらず
    風景が常に薄雲を帯びている印象があるのは、
    表紙のせいもあるだろうか。

    その表紙に「1」とあるので、これはシリーズものになるのだろう。
    だから、明かされないアドバイザーの正体は、
    おそらく続きの話に持ちこされる。

    もう一つ明かされない、最終的なトリックの内容については、
    読者の「想像の余地」として残されているに違いないのだが、
    私はまだ、自分を納得させられる答えを見つけられていない。

    ***
    語彙の少ない人間に一人称で語らせるのは難しいと聞く。
    言い訳のような設定はされているものの、その意味で
    フリーター男のパートは最後まで違和感を拭えなかった。

    っていうか、人の話を聞くときはメモ取ろうよ……!
    と、作中で思うこと数知れず。
    なので、そういう展開にイライラしてしまう人にはお勧めできない。

    ***
    ほとんど一気に最後まで読んで、そして思う。
    「いいタイトルだ」

  • ラストの展開に驚きあり
    犬探し専門の探偵を目指したのに、何故か人探しをすることになった開業したての探偵
    シリーズ化も可能な設定だけど、続編は出ていないのか
    ただ一点、犬に噛まれたら病院行って狂犬病のワクチンや検査しないと危ないと思うのです 笑

  • 主人公の都会に敗れて?少し投げやりな感じと、相方ポジションの子のハードボイルドな感じが良かった。
    ただ、軽い話かと思ったら、結構重いので注意。

    探している女性が、まああまり登場していないからしょうがないけど、ほとんど印象がない。冷静すぎて人間味がないからか?

    異常なほどの冷静さもこの事件のせいなのか。

  • 面白かった。
    2004年の設定なのでパソコンに関しての記述がちょっと古かった(電話回線につなぐとかw)けど、ネットのリスクは今も変わっていない。少し前の地震で停電したとSNS書き込んだ女性が、それは住居の特定に繋がる危険行為と指摘されてたのを思い出した。弱いものが自分を守る手段についての中世の歴史が世界情勢と重なった。昔も今も、自分を損なうものから尊厳を守るために戦う人の姿勢は変わらない。

  • 犬を探す会社<紺屋S&R>をはじめた紺屋長一郎。
    最初に来た依頼は失踪した女性を探すことだった。
    紺屋、その部下の半田平吉(ハンペー)、
    の一人称で二つの事件が交互に語られる。

    ここに出てくる脇役達がなんともいい感じで好きだ。
    妹の梓、コーヒーを淹れるのに深いこだわりを持つその旦那の友春。
    ネットでのよきアドバイザー<GEN>。
    熱心に紺屋の会社を宣伝してくれる友人の大南(出てこないけど)。
    探偵物としても、主人公の紺屋のなんとも覇気のない感じがたまらなくいい雰囲気になってる。

    こう、なんていうか、無理がなくてスルスルっと頭に入ってくる感じで読みやすかったし内容もとっても面白かった。

    シリーズ化するかなぁ?

    次でたら絶対読みたいな。
    こういう、脇役がしっかり個性的なのって面白いから。

  • 初めの内はどこかのほほんとした印象の探偵モノだったのだが、残りページが少なくなってからヒリヒリする緊張感に見舞われた。
    まさに予想していた先に急に落とし穴が出現した感覚だった。
    読み終えて自分の呼吸が浅くなっている事に気付いた。
    久しぶりにこういう作品に出会えて、とても面白かった。

  • (2020-12-03L)(2020-12-24L)

  • だんだんと2つの依頼が重なっていくのが面白かったです!
    ハラハラドキドキ感もあって、最後は間に合って欲しいような間に合って欲しくないような何とも言えない気持ちになりました…!
    読後感のもやっとした後味が良いのか悪いのか微妙な感じが相変わらず好きです。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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