出口のない部屋 (ミステリ・フロンティア 22)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 84
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017255

感想・レビュー・書評

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  • 2011/07/19 読了

  •  一つの部屋に閉じ込められた、二人の女と一人の男。
     面識のない彼らの刺々しい告白合戦が同名の作中作として語られ、その『外』で各々の事情と心境が綴られるホラー・ミステリ。
     真相は終盤まで錯綜するが、ミステリを読み慣れている者ならば、エピローグの台詞一つで、三人の接点を連想的に『予感』できるかもしれない。
     おそらく構成としては優れていると思われるが、登場人物の造形や言動に悉(ことごと)く神経を逆撫でされるため、(意図的に?)不快指数の高い小説とも言える。
     ここでは完成度よりも読後感を重視し、敢えて点数を下げておく。

  • 閉じ込められた三人は、たがいの接点を探るためにそれぞれの仕事、家庭のことを話していくというストーリーですが、この三人、どこかが変だと感じさせます。
     時々、それぞれの編を読み返し、納得して先へ進むというふうに読み進めていったので、だいたいの予想はついてきましたが、それでも彼らの関係には驚きでした。
     でもそうなると、閉じ込められた彼らはどうなるのか?と考え、最悪の結果を想像していました。
     全体的に重たい雰囲気の後味悪~い作品だし、スッキリしたかと言えば、スッキリしない結末です。でもとても読み応えがあって面白かった。

  • 一見何の接点もない3人の男女が1つの部屋に閉じ込められる物語の原稿を、美人作家から手渡される編集者。
    話の構成が面白く、それぞれがどう繋がるのかワクワク感があった。
    終盤の勢いにはのめりこんだけど真相の描写が苦手で読後感はイマイチ。

  • 密室に閉じ込められた3人を繋ぐミッシングリングは何か。読者はプロローグで登場した人物をヒントに謎に挑戦することになる。作中作の形を取った虚構と登場人物の語る真実が交互に提示される構成。字体にも仕掛けを施したトリッキーな作りは題名通り出口のない部屋のよう。張り巡らされた伏線が導きだすミッシングリングには確かに驚かされた。これを予想の範疇と言う人はもうどんなミステリーでも驚かないんだろうな。

  • 読み応えあり。
    アイデア一発勝負に終わらない佳作。

  • 作家から手渡された作品「出口のない部屋」
    売れっ子作家と免疫学専門の大学講師、主婦、のまったく面識のない3人が殺風景な部屋に閉じ込められる。
    作中作からあぶりだされる3人の共通点とは?

    てんでバラバラの3人に思われたけれど
    それぞれの話を読んでいくうちに、繋がりが見えてくる。
    でもわりと早い段階で「これは」って思っちゃったなぁ^_^;

  • 新人ホラー作家、仁科千里の原稿をとりにきた出版社の香川。
    彼女に渡された新作は「出口のない部屋」という題名で、一つの部屋に閉じ込められた二人の女と一人の男の物語だった。
    免疫学専門の大学講師、開業医の妻、そして売れっ子作家。
    一体この三人の接点とはなんなのか?そして閉じ込めたのは誰なのか?

    初めての作家さんですが、これはすごかったです!お見事!
    上記のあらすじではなんのことやら説明できていませんが、構成がとても巧い。
    閉じ込められた三人がそれぞれの半生を語るのですが、それがどのように絡んでくるのか、絡んでいないのか。
    そうするうちに作中作と現実との境もあいまいになって、ただひたすら先が知りたくて一気に読んでしまいました。

    そしてあの謎解き!全てがスッキリまとまる爽快感がたまりませんでした。
    巧いなぁ。

    これが二作目ということなので、一作目も遡って読んでみようと思いました。

  • +++
    私に差し出されたのは「出口のない部屋」という題名の原稿。「読ませていただいてよろしいですか?」彼女はロボットのように無表情のまま頷いた。それは、一つの部屋に閉じ込められた二人の女と一人の男の物語だった。なぜ、見ず知らずの三人は、この部屋に一緒に閉じ込められたのか?免疫学専門の大学講師、開業医の妻、そして売れっ子作家。いったいこの三人の接点はなんなのか?三人とも気がつくと赤い扉の前にいて、その扉に誘われるようにしてこの部屋に入ったのだった。そして閉じ込められた。『密室の鎮魂歌』で第14回鮎川哲也賞受賞の岸田るり子が鮮やかな手法で贈る、受賞第一作。
    +++

    『出口のない部屋』という同名の小説が差し挟まれ、読者を現実と虚構のすきまに陥れるような物語である。小説の登場人物であるひとりの男とふたりの女の話と、現実と思われる出来事とを行き来しながら、読者は入れ子構造のような不可思議な恐怖の謎を解いていくことになる。出口のない部屋に閉じ込められた三人の共通点はなんなのか、そしてなにより彼らをここに導いた人物とは、またその理由とはなんなのだろうという怖いもの見たさが先にたち、もどかしくなる。だが、真実を知ったとき、そのあまりに自分本位の理由付けに身震いし、視野の狭さに愕然とさせられるのである。

  • 密室殺人……の話ではなかったのですね。あらすじ読んだらてっきりそうだと。
    それぞれの部分がどこでどう繋がってくるか、というのはある程度読めるんじゃないかな。だけど「やっぱりそうだったのか」と思うと同時に、「え、そこも繋がってたの?」という箇所もあって、かなり楽しめたぞ。
    作中作などがややこんがらかる部分もあるけれど、そこは敢えて深読みしないほうが騙されるかも。

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著者プロフィール

1961年、京都市生まれ。パリ第七大学理学部卒。2004年に『密室の鎮魂歌』で、第14回鮎川哲也賞を受賞。著書に『密室の鎮魂歌』『出口のない部屋』『天使の眠り』『めぐり会い』ほか。

「2021年 『味なしクッキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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