贖罪 (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 5464
レビュー : 945
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017569

感想・レビュー・書評

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  • 母親の愛情と呪縛、罪、偶然と運命がずっしりと重たい。
    苦しくて目を逸らしたくてじっとり気持ち悪いのに何度も読み返してしまう本。ぐいぐい引き込まれます。
    読後の不快感が凄まじく、個人的には告白を超える「イヤミス」の頂点だと感じました。

    湊かなえの作品によくある 独自形式(章ごとに主人公が変わる)で書かれており、面白さは折り紙付きです。イヤミス大好きで沢山読むのですが一番好きな作品。

    作中のキーポイントとなる「グリーンスリーブス」もまた気味悪さのある美しい曲なので、聴きながら読むと雰囲気倍増します。

  • 長編ミステリー小説。著作「告白」にかなり似ています。

    空気がきれいな田舎町にやって来た転校生・エミリーがクラスメイトの4人の少女と遊んでいるときに「作業服を着た」男に強姦の上殺害される。
    おとなしくて小柄な紗英、長身でグループのリーダー的存在の真紀、自分はくまのようだと思っている晶子、目立たない存在だが感性が鋭く器用な由佳。
    4人の少女にエミリーの母親・麻子が投げつけた言葉が少女たちに深い影を落とすことになる。

    成長した4人が歩んだ道とは。4人と麻子のそれぞれの告白(報告)の形で、あの日4人がとった行動と事件の真相が明らかになる。
    そして彼女たちがたどり着いた「贖罪」とは何か・・。

    「告白」がとても斬新だったので、それに比べると読み慣れてしまった部分もあるけれど、読み進めずにはおられないストーリー展開に今回も釘付けになった。
    ミステリーの種明かしというより(展開は最初の方で大体よめる)、事件後の4人の少女たちの人生がメインストーリーに私には思えた。

  • 一人芝居にしたらどんなに面白いだろう。
    個性的な5人の女性を一人で演じるのだ。
    きっと素晴らしいお芝居になるに違いない。


    『贖罪』罪を償うこと。
    私としては罪は償えないと思っている。
    しかし、正しいことを重ねることでいつかイーブンになるのではないかと考える。
    罪はなくならないが
    正しいこともなくならないのだ。

    僕は彼女たちが罪を償えたとは思えない。
    しかし、責めることもできない。
    苦しむことは罪を償うことではないが
    苦しみに耐える人生は辛い。
    彼女たちは痛みを背負うことで罪を償おうとしたが、それは痛々しい負のループだ。
    同情の余地はある。
    痛みから回復し、正しいことを重ねれば
    それは価値があるのではないだろうか?



    手をあわせること。
    ごめんなさいと素直に言うこと。
    相手を思いやること。
    これが少し欠けてしまった女性達の物語だ。

    悲しくも滑稽だ。

    フィクションの暗さに浸るには素晴らしい作品だと思う

  • 苦しくて重いお話に感じる人はいると思うけれど、個人的には心情もじっとり読めて、引き込まれていく作品。

  • 田舎町に来た都会の子とその家族。子どもの目から見た都会の子と自分たちとの違いがなまなましく書かれていた。後半には都会人から見た田舎出身者との違い。見てないふりをしているだけで、国内でもこんなにカルチャーショックがあるのだ。事件以降、子どもたちに普通の生活は二度と訪れなかった。必死に無意識に償おうとしていた少女たちが痛々しすぎた。

  • 最後まで一気に読めた。
    この先どうなるんだろうって思って止まらなかったです。
    ラストが若干モヤモヤするけど、罪の意識をずっと背負って生きるって
    どういうことだろうって考えてみたりして。

  • 再読。東大生コンパ死亡事件で両親が一緒にいたサークルの人間に慰謝料を求めていた会見をみて、「償いなさい」だなと思いだした。どんな影響を受けるのか認識しているのだろうか。責めることは簡単だ。赦すこと、なぜできないのだろう。放置した?飲ませた?その前に自己責任はないのか?

    空気のきれいな町に製作所ができて、都会から垢抜けた人たちが入ってくる。エミリ家族もその中にいた。
    紗英、真紀、晶子、由佳とともにエミリが8月14日休み中の学校でバレーボールのパスをして遊んでいた。そこに現れた男性によってエミリが殺されてしまう。
    犯人は見つからず、エミリの母に時効まで犯人を見つけなさい、償いなさい。それができなければ復讐すると言われた4人。4人の人生に強く影響していくエミリの母の言葉。心に傷を負った4人はそれぞれ男性を殺してしまう。エミリの母の復讐か。4人に何か罪があったのか。一番罪深い人はエミリの母じゃないか。

    小説の中ではそうわかることなのに、なぜ現実では赦せないのか。

  • くまの兄妹がすごくすき・・・いい感じに気持ち悪く、いい感じに救われず、壊れてしまった妹、それに気が付かない自分自身の描写が絶妙にうまい。


    空気がうつくしいだけの田舎に親の仕事で引っ越してきたエミリちゃんが殺された。そのとき一緒にいた四人の友達は犯人の顔を見ているも結局犯人は捕まらず、時効間際になったころ、残った四人はそれぞれ男を殺してしまう。
    多かれ少なかれエミリちゃんが死んだときの影響を受けていた四人のその後、そしてエミリちゃんの母である麻子の罪、そういう話。

    現実だったらありえない偶然の掛け合わせで起きてしまった悲劇なんですけども、小説だと面白いです。

  • 我が子を失った怒りを、幼い子供たちにぶつけてそのこどもたちの成長を見続けてきた麻子。
    なんとなく「告白」に似ているような気がした。

    幼い頃に計り知れない傷を負った子供達は、立派に成長をしたかのように感じさせながらも、やはり、何かを失った人として成長していた。

    こどもの心は、良くも悪くも純粋だ。

  • 湊かなえ小説読了後の余韻は、期待していた通りだった。
    この重苦しい雰囲気と苦々しさ、圧倒的。

    麻子という人物は、著者は金持ちのお嬢様に何か恨みでもあるのだろうか、というくらい清々しいまでの悪女っぷりだった。

    私としては、晶子の兄が若葉に対してあのような行為をしていたというのが、若干腑に落ちなかった。
    それを類推する描写がなくて、「かわいい子が身近にいる環境では、男はみんなそう」のような、唐突さを感じた。

    それとは違い、南条の復讐の方法があの手段だったのはなるほど、合点がいった。
    そうなのだ、「復讐」なのだ。
    麻子にそそのかされた男に、秋恵が何をされたのかは想像に難くない。

    田舎独特の空気が様々な小道具でもって表現されている。夕方6時になると流れるいつもの曲、お盆という風習、転校生とのカルチャーショック。
    閉塞感と連帯感、それゆえの息苦しさと安心感。
    表裏一体であるそれらの微妙な感覚を、思春期まっただ中の子供たちが駆け抜けていく。
    この作品では、殺人事件という大きな出来事が彼女らを苦しめるが、それ以外のそこここにちらばる小さな痛みや劣等感は、誰しも身に覚えがあるものではないだろうか。

    やはり、人や場所が変われば、ひとつの出来事をとっても感じ方が違うものだということをまざまざと分からせてくれる内容だった。
    そして、それをみな最悪の形で受容する可能性があるということも。

著者プロフィール

湊かなえ(みなと かなえ)
1973年、広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒。
2005年に第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。2007年には第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。読んだ後に嫌な気分になるミステリー「イヤミス」の優れた書き手として著名。
「聖職者」から続く連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。デビュー作でのノミネート・受賞は、共に史上初。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)、2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。ほか、直木賞で度々候補になっており、2018年『未来』で第159回直木賞に3度目のノミネート。同年『贖罪』でエドガー賞候補となった。
映画化・ドラマ化された作品多数。特に映画では、2010年『告白』、2014年『白ゆき姫殺人事件』、2016年『少女』、2017年『望郷』と話題作が多い。

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贖罪(韓国本) 単行本(ソフトカバー) 贖罪(韓国本) 湊かなえ

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