叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 1315
レビュー : 307
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017590

作品紹介・あらすじ

砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇…ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。選考委員を驚嘆させた第五回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理誕生。大型新人の鮮烈なデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 漫画家浦沢直樹の傑作『MASTERキートン』が本格ミステリになったらこんな感じ。わくわくする面白さ。
    異文化圏だからこそ成り立つ、強烈なWhydunit (なぜそのような犯行に至ったのか)の連続。

    サハラ砂漠を行くキャラバン、中部スペインの風車の丘、凍てつくロシアの修道院、先住民族が暮らす南米アマゾン盆地、そして......
    世界を股にかける探偵が織りなす、目くるめく謎解きの物語。

    「世界を股にかける探偵」なんて書き方をしてしまったので荒唐無稽な冒険譚を想像する方もいるかもしれない。
    しかし冒頭で『MASTERキートン』を引き合いに出したように、照りつける太陽や風の匂いを感じさせる地に足のついた描写と、脳みそから快楽物質が出まくるような展開に満ちた極上のミステリ短篇集。

    斉木の勤める会社は、海外の動向を分析する雑誌を発行している。
    NPOや政府関係機関も一目置く情報誌の質を維持するためには相応の取材が必要になり、入社三年目の斉木もまた頻繁に海外に駆り出される。
    年間百日以上を海外で過ごす彼は、ときに不可解な事件に巻き込まれることもあり、謎を解かなければならない状況に陥るのだった。

    五篇収録。

    『砂漠を走る船の道』
    サハラ砂漠にて塩を交易する商隊に同行取材する斉木。
    そのキャンプ中に遭遇する殺人事件。
    砂漠があまりにも広大すぎて密室と同じ状況になっているという面白さ。
    また少人数のキャラバンという犯人を特定されやすい状況でなぜ犯行に及んだのか。そしてそれでも深まる「犯人は誰か」という謎。
    犯人側のWhydunitもさることながら、斉木がなぜ探偵をやるのかというWhydunitもいい。
    夢の啓示により解決の糸口を得るというのもエキゾチックな雰囲気を醸し出して素晴らしいが、もちろん謎解きはロジカル。流麗な文章に紛れ込ませた憎い伏線の数々。
    そして真相解明からのダイナミックで疾走感のあるクライマックスが最高。あらためてタイトルが活きてくる。
    なお、この短篇では「あるトリック」がとてもユニークな使われ方をしていてそこも読みどころ。ラストの盛り上がりにも一役買っている。

    第5回ミステリーズ!新人賞受賞作品。
    デビュー作がこのクオリティというのは凄い。

    『白い巨人(ギガンテ・ブランコ)』
    巨大な風車群がひしめくスペイン郊外、レエンクエントロの街。学生時代の友人たちと旅行で訪れた斉木。
    一転して歴史ミステリ。
    イスラム教勢力とキリスト教勢力がスペイン全土で争っていた時代。
    イスラム軍に追われていたキリスト教側の若き兵士が、逃げ込んだレエンクエントロの風車小屋で消失したという伝説。
    友人たちとの多重解決風の推理合戦から、終盤のぞっとする展開に思わず「うわっ」と声が出た。そして見事な着地。

    『凍れるルーシー』
    ウクライナに隣接する南ロシア丘陵地帯に位置する女子修道院。
    そこに安置されているという、修道女リザヴェータの不朽体(生前の姿を留める遺体)の聖人認定の調査に同行する斉木。そこで遭遇する異様な謎。

    2014年版の本格短編ベスト・セレクション(http://booklog.jp/item/1/406277755X)にも選出された傑作。
    一番のお気に入り。
    実はこれを読みたくて積読の山から引っ張りだしてきたのです。

    『叫び』
    アマゾンの先住民族「デムニ」の村。
    そこで発生したエボラ出血熱。
    全滅に瀕した村で起こった連続殺人。
    放っておいても死に逝く運命にあり、しかも血液感染の恐れのある村人たちをなぜ無惨にも斬りつけていくのか。

    『祈り』
    旅人の運命とは。


    文庫版(http://booklog.jp/item/1/4488432115)の瀧井朝世さんの解説も良かった。
    実は文庫化されるまで単行本を放置してしまっていたのだが(それもどうかと思うが)、もっと早く読めば良かった。
    すべて素晴らしいが『砂漠を走る船の道』と『凍れるルーシー』が際立っている。
    梓崎優の作品をもっと読みたい。

    (余談だが『放課後探偵団』http://booklog.jp/item/1/4488400558 収録の、梓崎優「スプリング・ハズ・カム」は学園ミステリの隠れた傑作だと思っているので、ご興味のある方は是非。)

    • 円軌道の外さん

      kwosaさん、お久しぶりです!
      元気ですかーっ!(笑)(^o^)

      私事ですが、実は先週、住み慣れた大阪を離れて
      花の都、大東...

      kwosaさん、お久しぶりです!
      元気ですかーっ!(笑)(^o^)

      私事ですが、実は先週、住み慣れた大阪を離れて
      花の都、大東京へ上京したので
      あります(笑) 
      (アラフォーにして!)

      ということで相変わらずバタバタとしておりますが
      まだ仕事も決まってへん状況で(笑)
      幸か不幸か、ひさびさに本を読む時間だけはたっぷりある状況です(汗)(‥;)


      てか、この本、
      自分の彼女が持ってて
      つい最近発見したんですが
      ちょっと気になってたんスよ(笑) 

      そんなときに
      まさか kwosaさんの思い入れたっぷりの愛あるレビューが読めるとは、
      なんというグッドタイミング!(笑)

      キートンも大好きな作品やし、
      もしや、コレは
      神に導かれた運命の本なんかも(笑)(^^)


      つか、
      何を隠そう白河三兎も宮下奈都も
      長沢樹も七河迦南も
      犬はどこだも(笑)
      すべて kwosaさんのレビューから
      自分は知ったのですよ!
      (いつもレビュー読ませてもらって
      ビビビときた本は、読みたい本リストにちゃんと控えております)


      はっはっはっはっ~、
      どや、まいったか~(笑)

      ということで
      kwosaさんのレビューを楽しみにしてるブクログユーザーは
      自分以外にも沢山おるハズなんで、
      ムリなく楽しく
      kwosaさんの『好き』を
      また、追求していってくださいね。

      なぜこの作品が好きなのかが
      ちゃーんと書かれたレビューは
      ホンマ貴重なんで(笑)(^^)
      (あっ、テリー・ホワイトの『真夜中の相棒』と友桐夏の『春待ちの姫君たち』をまた読みたいリスト入りしました!)

      あっ、あとあと、
      かなり前にコメントもらった
      『残酷な天使のテーゼ』のレビューに
      返事返してますので、
      また時間ある時にでも見てみてくださいね(^^)

      オススメの音楽また紹介してます(笑)



      2014/09/07
    • kwosaさん
      うわぁ、 円軌道の外さん! お久しぶりです。
      元気です! コメント頂けてとってもうれしいです!!

      ああ、なんだか環境が激変されたよう...
      うわぁ、 円軌道の外さん! お久しぶりです。
      元気です! コメント頂けてとってもうれしいです!!

      ああ、なんだか環境が激変されたようですが、いち「 円軌道の外レビュー」 ファンとしては「 また、あのレビューがたっぷり読めるのかなぁ」って無責任に喜んでいます(すみません)。

      ここ半年近く本から遠ざかる生活が続き、たまに読んでもなかなかレビューが書けず、そして円軌道の外さんをはじめとする大好きなレビュアーさんたちが次第にブクログから離れてゆき、寂しい思いを抱えながら自分自身も次第にアクセスすることが少なくなってしまいました。

      久しぶりにブクログを覗いてみれば「おおっ、 円軌道の外さんが『犬はどこだ』のレビューを書いてる!!」とうれしくなって、おずおずと花丸(いまは「これいいね!」なんですよね)を押した次第です。

      彼女さん、『叫びと祈り』読んでるなんていい趣味してるなぁ。本読みの彼女って最高じゃないですか!!
      これは是非、今夜からでも読むべきです(そして、自分のレビューでも書きましたが『放課後探偵団』に収録の短編も読むべき! アンソロジーだけに埋もれさせるにはもったいない傑作!!)

      うれしくなって読書欲も再燃してきたので、また読んでレビュー書きます。
      あの本は良かった、面白かったって、おたがい語り合えるのは幸せですよね。

      『真夜中の相棒』をはじめとする文春文庫の復刊ラッシュは期待大ですよ。
      そして、友桐夏は『春待ちの姫君たち』よりも、ミステリフロンティアの『星を撃ち落とす』のほうが断然お薦めですのでそちらを是非!!
      2014/09/08
  • ミステリーズ!新人賞受賞作である
    「砂漠を走る船の道」から始まる5編の連作短編集。

    おそらく本書を読むポイントは2つあって、
    1つはミステリーに付き物の「人はなぜ人を殺すのか?」
    というカインとアベルから始まる究極の問いに対する考え方。

    日本では愛と憎しみ、お金、理想のため、あるいは虐待
    ということに殺人の理由を求めてきた感があるけど、
    民族・歴史・環境・信念が変われば思いもかけない理由で
    人は人を殺しうるのだということに改めて気づかせてくれた。

    2つ目は、異国情緒あふれる流麗で情緒的な文章と
    ミステリーの融合ということになるのだと思う。

    いわゆるサクサク読める系の描写が少ない文章全盛の中で
    じっくり雰囲気に浸りながら文章を味わうような
    ミステリーをどう評価するかということで、
    小説としての楽しみを味わいながら
    じっくり読める人は高評価だけど
    そうじゃないひとにとっては本書は
    あまり楽しめないものになるのかもしれない。

  • これは久々のヒット!!
    他サイトのレビューを見ると、どうやら賛否両論あるようですね…
    ちょっと毛色の違うミステリを求めていた私には、好みど真ん中でした。

    ある青年が世界各国で遭遇した様々な事件を描いた、連作短編集。

    ◆「砂漠を走る船の道」サハラ砂漠のキャラバン隊で起こる連続殺人。
    ◆「白い巨人」スペインの風車の中で消えた兵士の伝説と、ある女性の謎。
    ◆「凍れるルーシー」ロシアの修道院に祀られた腐敗しない聖人の謎。
    ◆「叫び」アマゾンの奥地、少数民族を襲った恐ろしい疫病。
    ◆「祈り」主人公・斉木を待ち受けていた運命とは…?

    文章の質が高く、どの短編もレベルが高いですね。
    個人的には「砂漠を走る船の道」と「叫び」が、特にお気に入り。
    最後の「祈り」は、何とも言えぬもやっとした読後感でした(笑)

    この作品がデビュー作との事で驚きです。
    歳も近い作家さんなので、これから応援していきたいですね^^

  • 「砂漠を走る船の道」は断トツ面白い。
    なぜ殺したのかがわかった時には驚愕してしまった。そんな理由で!?斬新だ。
    そしてメチャボの正体がまた面白い。隠す必要はないけど、そのおかげでメチャボが助けに来てくれた場面がますます盛り上がったと思う。

  • 雑誌取材の仕事で海外を転々とする斉木を主人公に据えた連作短編集です。
    【砂漠を走る船の道】【凍えるルーシー】【叫び】のホワイダニット(Why done it?)が素晴らしく、特に【砂漠を走る船の道】は衝撃度が別格でした。【白い巨人】は脱力気味、【祈り】は完全に蛇足といった感じで不満が残りましたが、上記三作は必読の価値があると思います。

  • 多言語を操る若者の斉木が、サハラ砂漠、スペイン、ロシア、アマゾン等をジャーナリストのはしくれとして、旅人として、危機的、絶望的状況に遭遇する。文脈とおりに読み進めてゆくと、ちょっと騙される。通勤電車で斜め読みをするよりは、家で前のページに戻りながらじっくり読むミステリー小説。

  • シンプルながらも重みのあるタイトル。それに落ち着いていてしっかりとした文章が心地良かったです。五つの短編連作だったけれど、どの話も面白かったです。めったにないよね。表現や描写も美しくて、情景が鮮明に浮かんだし、季節も感じられました。読後感は、読み終わったっていう清々しさと、ちょっぴり切ないような、優しさでうるってなるような感じです。

  •  世界を渡る“旅人”たらんとする、日本人ジャーナリストが出逢う人々と謎に纏わる連作ミステリ。
     決して謎解きが軸ではなく、寧ろ、それらに附随する人間の生を問うた、心理小説に近く感じられる。
     これは、人間という生き物がもたらす『不可解』という現象に、生身でぶつかり、苦しみ、怖れ、挫折し、再生した者たちの物語なのだと思う。
     第5回ミステリーズ!新人賞受賞作を冒頭に据えた連作形式になっているが、単なる続きものに終始せず、全話でもって、まるで歪な積み木をぎこちなく重ねては、崩壊のカタストロフィーを迎え、またそれらを掻き集めようとする、希望のストーリーにまとめ上げた構成力は素晴らしい。
     推理以外の地文の美しさと奥行きに、筆者の優れた洞察力と表現力が窺える。
     今後の作品展開が楽しみな作家に、また一人巡り逢えたことを嬉しく思う。

  • いろんな言語を操る記者があちこちを旅しながら出会うミステリー。
    独特の世界観がある。

  • 凄く新鮮。

    サハラ砂漠でラクダに跨り塩を運搬するキャラバン隊。
    海外動向をレポートする雑誌の取材のため、
    キャラバン隊に同行する入社3年目の“斉木”。

    とにかく描写が上手い。
    砂漠の厳しさが頭の中で映像化されるぐらい。

    そしてミステリーも異国情緒満載。
    まるで海外作品を読んでいるかのよう。

    連作は、
    スペイン、ロシア、ブラジルアマゾン、東ティモールと続いていく。

    それぞれの作品が、
    その国その地域の色合いを保ち、
    独特な作風が体を突きぬけていく

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