- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488017774
作品紹介・あらすじ
僕らは、確かに生きている。君という人間を、僕は憶えている。カンボジアの地を彷徨う日本人少年は、現地のストリート・チルドレンに拾われた。「迷惑はな、かけるものなんだよ」過酷な環境下でも、そこには笑いがあり、信頼があった。しかし、あまりにもささやかな安息は、ある朝突然破られる――。突如彼らを襲った、動機不明の連続殺人の真相とは? 激賞を浴びた『叫びと祈り』から3年、カンボジアを舞台に贈る鎮魂と再生の書。
感想・レビュー・書評
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カンボジアのストリートチルドレンの生きる、あまりに過酷な世界。そこで起きた連続殺人事件。いったいだれが、なぜ?その場に身を落とした日本人少年が追ったその真相とは?
「叫びと祈り」から満を持しての2作目は、ストリートチルドレンを題材にとった長編ミステリ。ミステリの要素よりも、子供たちの世界の特異性が、この日本人の目からはとても痛々しくてたまらない。なにもかもが常識外であるから、一つ一つの彼らの当たり前=諦めがひとつひとつ突き刺さってくる。それでも彼らは生きる。自死という概念の薄いカンボジアで、懸命に生きている…だから。
…その動機については、作中で何度も何度も叫ばれていることでもあったから、なるほどとは思いました。意外性やトリックの独自性を驚くよりも、このカンボジア、この物語世界でしかなしえない動機ではあると感じました。
それにしてもただ重い。主人公の少年も辛すぎる。いったいどうしてこんなに道が分かたれてしまうのだろう、などと答えも出せないのに考えてみたりしてしまった。 -
前作の雰囲気はそのままに今回は長編でカンボジアのストリートチルドレンが描かれます。「叫びと祈り」の中の一編とも取れるように意識して書かれたのでしょうね。今回もこの世界の描写には圧倒されました。日本に生まれ育てば遠い世界のことだと感じてしまうこの情景が日本人の少年が存在するだけで一気に現実味を帯びて伝わってきます。ミステリとして読むと、しっかり騙されたとはいえトリックありきでちょっともったいなかった気がしますがこんな表現のできるこの作家さんの感性はとても好きで、この先も注目していきたいと思いました。
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五感に迫るカンボジアの空気の強烈さに、息が詰まりました。絶望の中で生まれ育った少年たちはどうしてこの現実の中で笑えるのだろう。世界の底から空を見上げる彼らに、優しい雨が降り注ぎますように。
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カンボジアのストリートチルドレン。
ごみの山から再利用可能なエモノを掘り出して換金して生活している彼らの仲間になったミサキ。
そんな彼らの仲間が次々と殺されていく。混乱しながらも、その犯人を暴く。
そんなストーリーですが、最初は社会物の話かと思う位ミサキの目を通して描かれています。ミサキ自身が仲間になった背景の世界の闇の部分を描いています。
欲張りすぎな感はあり、この手のミステリは初めてでしたが、まあ楽しめました。
いくつか出てくる誌的な表現は良かったと思います。 -
<止まらない空の泣き声が,川原に響いていた―>
通勤バスを降りると,空を見上げるようにしている.
そうすると,今日を感じることができるから.
空に,見ていることを知らせてあげることはできないかな,
呵々と笑っていることを,さめざめと泣いていることを,僕も感じているよと,そう伝えることができたら.
空の背負ったものを,包み込むものを,少しでも僕が代わってあげられたなら. -
面白い話では無い。ストリートチルドレンの思考は偏ってるのを描写したい? 不幸な主人公の成長を?人が簡単に殺されていく実情を? 主人公の推理は妄想に囚われているし。もう読まないな。
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『叫びと祈り』に続いて、犯人の動機が一番の謎。
………なんですが、理不尽な世界と劣悪な環境の丁寧な描写に、読むのが大変だった。本当にいい話なんですが…。