怪盗の伴走者 (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
3.70
  • (9)
  • (19)
  • (25)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 138
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017897

作品紹介・あらすじ

高広と礼は、怪盗ロータスが起こした一連の窃盗事件の主任検事となっていた安西と再会する。その折、ロータスが盗みに失敗したとの一報が舞い込んだ。稀代の怪盗らしからぬ椿事を訝しむ高広はこの件を調べ始める。安西は今ロータスと敵対する立場にあるが、かつて何物にも囚われぬ自由な魂に惹かれ、並んで駆けた時代があった。決別した二人が再び相まみえたとき、検事の選択は──。大怪盗の思惑が高広と礼を巻き込み帝都を騒がせる〈帝都探偵絵図〉シリーズ第四弾。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 怪盗ロータスと検事安西のお話。
    絵師も記者もちょいと影の薄い一冊。

  • 君が一緒に走ってくれるなら。

    〈帝都探偵絵図〉シリーズ第四弾。短編3つですが,通して怪盗ロータスこと蓮,検事の安西省吾,二人の関係が軸になっています。

    「第一話 伴走者」蓮と省吾,まだ少年時代のこと。二人の出会いと,友人として関わった事件。省吾が蓮に惹かれるきっかけ。

    「第二話 反魂蝶」蓮の師匠・奇術師の天馬が登場。蓮と省吾は,幻の蝶をめぐる事件を解決する。嫉妬がわからない蓮と,蓮に恐れを抱く師匠と,いつか道が違える予感を覚える省吾。

    「第三話 怪盗の伴走者」怪盗ロータスと浅草の凌雲閣で出逢う高広。ほどなく検事の安西とも再会する。そして怪盗ロータスが盗みに失敗。凌雲閣にある絵を再び狙って,怪盗ロータスが来ると考えた高広と礼は,安西が絵を守る凌雲閣に出向くのだが。
    安西のとった選択。幼馴染への想い,それを完全に読んだ怪盗ロータス。どうか二人の行く末が悲劇でないように願う。

    省吾の恩師マードック先生から凌雲閣の設計者バードンにつながった糸は,幼馴染のアーサー・コナン・ドイルへとたどり着く。友情が生み出す,国や時代を超えて語り継がれる物語。

  • ロータス&安西編といった今作。安西さん、彼としてはこう選ぶしかなかったのだろうけれど・・・、これからどうなるんだろうなぁ。

  • 蓮の子供時代の話しは良かったな。

  • 今回は怪盗ロータスと主任検事安西2人の物語。
    『君なら僕と同じ速さで走ることができる』
    少年時代の蓮(ロータス)が省吾(安西)に伝えた言葉です。この歌のような一文で、ああこれはわたしの好きな展開だわ・・・と確信しました。大好きなアニメのエンディング曲を思わせます。
    2人は少年時代に出会い、ともに事件を解決するなど友情を深めていきました。蓮(ロータス)は何物にも囚われず自由な少年でした。面白ければいいじゃないか省吾(安西)一緒にどこまでも行こうよ。そんなふうに彼は省吾とともに歩んでいきたいと願ってました。一方、省吾にとって蓮は自分を暗闇から救いだしてくれた友人でした。けれども自由奔放で誰をも虜にする魅力を持つ彼に惹かれながらも、誰にも嫉妬したことがないと言う蓮の能力に引け目を感じるようにもなっていました。
    結局彼らは離れてしまいます。そして次に再会したときには、蓮は怪盗に省吾は検事として敵対する関係となっていました。安西にとってロータスは捕まえなければいけない人物だけど、彼のなかにはやっぱり蓮がいて悩み苦しみます。その点ロータスは軽やかで、省吾は必ず自分のところにくると確信をもっているようでした。2人は光と影のようですね。光がないと影は存在できません。安西にとってラストの決断は、自分の立場や蓮の犯罪行為などを全部振り切って、最後に残った本当の想いだったのでしょうか。省吾は蓮と同じ速さで走ることを選んだのです。

  •  明治の東京を舞台とする連作ミステリ、《帝都探偵絵図》シリーズ第四弾。
     今回は、怪盗ロータスがメインとなる番外編の趣。
     怪盗と主任検事として対峙する以前の、蓮と安西の少年時代が描かれる。
     十代の少年の鬱屈と憧憬、喜悦と焦燥が、丁寧かつ平明な筆致で綴られるのは、筆者ならでは。
     心惹かれる相手との伴走を、望みながらも躊躇い、蹉跌しつつも想い焦がれる。
     そんな彼らの姿は、どこか覚えのある切なさと苦しさを、読み手にも呼び起こす。
     主人公コンビ(高広・礼)と対比される二人の選択は、だが前者以上に狂おしく愛おしく、深く結びついた痛苦と恍惚の絆を感じさせる。

  • 過去の話の方が、蓮が軽快に動く分話も軽妙になって好き

    ラストで安西がロータスに付いて行くけど、うじうじ悩みながら
    同行してそうで心配、どうせなら色々ふっきって、それなりに
    楽しみながら二人で怪盗やってて欲しい

  • シリーズ4作目。怪盗ロータスと安西検事のお話。主人公達の出番は少々。ロータスは子供の頃からすごかったのね…。そんな友達とずっと一緒に行けると思うが、行くことが出来なくなった時の喪失感はどうなるのか。安西検事の決断にはびっくりしつつ、昔と変わらず思ってもらえててよかったね!とこの先どうするの…と心配。

  • ロータスの過去を描く中短編集。スピンオフという雰囲気。毎度この作家さんの描く青年二人の友情の距離感が絶妙に好みです。(私は腐なモノに理解もありますし好きですが、この作家さんの作品については、BL的な読み方はせず、あくまで「友情」と捉えて、この透明感のある作品世界を堪能してます)
    安西検事とロータス/礼と高広という、2組の対比を交えつつあのラストかー、と。ミステリのトリックとしてはそれぞれ度肝を抜く大作ではありませんが、世界観、時代背景、それらひっくるめた「物語」としてまとめ上げてくる毎度の手腕がステキです。
    続編楽しみにしてまーす。

  • ロータスの過去が描かれた巻だった。
    安西検事と何かあるんだろうなとは思ってたけど、何かあるどころじゃなかった。非常に良質な萌えだった。
    男同士の切っても切れない腐れ縁、友情、絆、非常に尊い。大好物だから堪らなかった。

    ロータスこと蓮と安西検事こと省吾は、自分が思っていたよりもずっと昔からの友人だった。
    まさか中学校の頃からなんてな…。で、20歳近くまでだから、7〜8年くらいの付き合いか。
    あの多感な年頃の友情ってのは特別。
    誰にも執着しなさそうな蓮が省吾に執着したのは、本質的なところもあるだろうけど、やはりその時期に知り合ったのも結構大きいとこだと思う。
    あの頃は一度打ち解けると色々なことを深く共有する。
    そして、蓮と省吾もまた様々なことを共有してきた。
    最初の出会いからそうだよな。
    そこから、米相場、蝶博士の偽物退治、凌雲閣。
    米相場での騒動の時、省吾に氷水屋のおじさんから助けられたあの時に、蓮の中でもう決まってたんじゃないかな。省吾を伴走者にすること。
    確定したのは、蝶博士の偽物退治のとき、炙り出し方を省吾に聞いたら自分と同じ方法を言ったとこ。
    あれで、同じ速さで走れる相手と見定めたんだろうなぁ。
    そのことを巴里へ渡仏してたときに出来た友人、いつだったか礼と高広が解いた事件の人だとは。
    色んなとこで繋がってんだな。というか、蓮の顔の広さが凄いんだ(笑)
    その人に省吾のことを友人といって語るくらいだから、渡仏断られても尚諦めてなかったんだな、って。
    あんな飄々としてる蓮だから、省吾に執着してる行動がより目立つ。

    省吾も、やはり最後は蓮のことを見切りきれなかった。大切で特別な友人のままだった。
    罠にかかるのを阻んでは、この先検事としてやってけないし、どうしても蓮の方へ惹かれて行くよなぁ。
    結局、蓮の思惑通り、省吾は辞表出して蓮のとこへ自分からいっちゃったな。
    それで良かった気がする。検事としての道もあったのだろうけど、今ひとつ蓮のことがどうしても離れないから検事に徹底出来ないだろうなって。

    高広が止めなかった理由、自分も同じように思ったよやっぱ。
    怪盗は孤独の道。この先一生一人はつらすぎる。誰か側にいて支えてあげる人がいたら、とは思わずにいられない。
    それも相手が幼馴染だなんて理想的過ぎる。
    結果を見れば、世間的、道徳的にはよく思われない。
    でも、あれで良かったと思う。

    コナン・ドイルと幼馴染の繋がりにびっくり。
    まさかこんなとこで出てくるなんて。

    はぁ、男同士の切っても切れない縁が非常によろしい巻だった。
    早く文庫化にならないかなぁ。

全28件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1975年生まれ。秋田県出身。2008年、第2回ミステリーズ!新人賞最終候補作となった短編を改稿、連作化した短編集『人魚は空に還る』(東京創元社)でデビュー。他の著書に『クラーク巴里探偵録』(幻冬舎)、『百年の記憶 哀しみを刻む石』(講談社)などがある。

「2019年 『赤レンガの御庭番』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三木笙子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×