現代詩人探偵 (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 232
レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017903

感想・レビュー・書評

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  • 金沢でこの本を見つけました。作者さんの地元なんですね。詩と死で韻を踏んでいるような物語で、重い場面が多かったように思います。けれど、詩を書くことを題材にしているので、言葉との向き合い方、言葉に対する想いみたいなところで共感できる部分もありました。面白かったです。

  • 死人となった詩人たち。その死の謎に迫る臆病な詩人が探偵役だ。

    ミステリーを期待して読むと拍子抜けだろう。これは詩人の生き様、その呪いの一つを垣間見る物語だ。明かされるは死の動機、隠れてしまった心を探り当てるというミステリーなのだろう。

    全編的に暗いトーンで綴られ、随所に感じる詩や言葉の呪いに陰鬱な気持ちになってくる。それでも読むのを止められないのは、自分もまだ作り手であり物語の語り手でありたいからだからかも。

    最後のカタルシスにそれなりに意外性はあったが、これもミステリー的というよりは純文的だった。

    余談だけど。個人的に「詩」そのものは苦手というか、ワシの感性では理解が難しいものなのだが、詩人のひねり出す言葉の力は凄いと思っている。自分と向き合い、心の深層から言葉を紡ぎ出すその力。

    そして自分と向き合うことは、生と死に向き合うことかもしれないな、と本作を読んで改めて思った。

  • 「将来的に、詩を書いて生きていきたい人」が集まったSNSコミュニティ「現代詩人卵の会」。10年ぶりに集まったオフ会では10年前に集ったメンバーの約半数が故人となっていた。
    「詩」は人を殺すのか。「僕」は自分がかつて書いた詩の「探偵」のようになって、故人たちの「死」の経緯を探り始める。

    ***

    冒頭の「僕」が詩について述べた部分が印象的だった。

    ''詩を書きたくて詩人になった人間なんていない。僕はずっとそう思っている。(中略)
    数多の表現の中で、詩を、よりにもよって詩を選ぶということは。
    詩しかなかった、ということなのだろう。特別なことでなく、詩以外があるならばそうしていた。他のすべてが出来なかったから、最後に、あるいは早々に詩にたどりついたのだ。''

    人によって詩に対するイメージは違うと思うけど、私は何となくこの作品の「詩」に対するイメージに共鳴する。なぜか私の中で「詩」はほんのりと暗く、少し哀しい。

    それはやはり、既存の言葉や、表現の方法では表せないもやもやを抱えた人の「違和感」からきている表現であるような気がするからだ。
    はみ出したものの悲哀なのかな。

    この作品は詩という「表現方法」「芸術」に作者が向き合った作品なのかも。
    そして人が「死」に向き合うということにも。
    だから昨今よく見る日常系ミステリには物足りなさを感じるんだけど、この作品は読みごたえがあった。
    作中で延べられるように「僕」が繋ぎ合わせた故人たちの「死」の顛末には救いはないかもしれないけど、少しだけ、希望と呼べそうな一筋の光もあったのも良い。
    最終章で「僕」の語られなかった秘密が明かされる構成も上手い。

    個人的に好きなのは第三章の夏炭氏の切ない婚約指輪のエピソードと、第四章の≪真っ暗なパーティ≫という詩。
    どちらも暗闇の中で僅かに鈍く反射する光のような哀しい魅力がある。

  • いたい、物語だった。
    生きることと、書くことと。

  • まさか詩人会のみんなが認識してる“探偵くん”が草間とは別人だったなんて気付かなかった。
    伏線あったのかな?それすらも分からなかった。
    櫻木さんが常に見守る姿勢もそういうものだと思ってたし。
    詩人会のみんなも知ってたのかな?
    今思えば、もしみんなが知っていたならみんなの態度も色々含みがあったように思えてくる。
    舵さんの世話焼きも、ビオコさんの優しさも、近藤さんの諌めも…。

    それにしても草間、ほんとに探偵みたいだ。
    いや、探偵だ。
    分かっている事実、調べ上げた事、そこから推測される真実。
    草間には天性のものがあるんだな。
    そういう閃きや考えは誰にでも出来ることじゃない。
    草間が解き明かしたことで、救われた人もいて、草間がしたことは意味のあったことだった。
    草間にとっても、詩人会にとっても、残された者にとっても。
    星子ちゃんとの仲間意識は失くなってしまったかもしれないけど、星子ちゃんの将来を思うと、草間のしたことはとても意味のあることだった。
    彼女はきっと死んだお父さんと同じように詩を書いていく。
    夏炭の彼女、希砂も、きっと前に進める。
    夏炭が身体は女でも死ぬことによって男の詩人になったことが分かったから。
    確かに自分に贈る指輪だと分かったから。
    明日田の死も解き明かされ、近藤の中に溜め込まれたドロドロとしたものが消化された。
    まさか明日田が遠野の詩を盗作して、遠野が殺して、そして自殺したことには驚いたけど。
    2人の死が繋がってたとはな。
    舵さんも、小木屋のことが分かったから納得出来たと思う。
    最後の詩を書くために死んだ、最後まで詩人だった。
    “探偵くん”として解き明かすことで解放された人がいて、草間もまた解放された。
    盗作について分かったから。
    まさかみんなの認識してる“探偵くん”が草間と同級生で、草間の詩を盗作してたとは思わなかったけど。
    そして、草間に指摘され自殺してたなんてな。

    棗は残酷だな。
    “探偵くん”である蓮見よりも草間の方に才能を見出し、蓮見を糧にさせるなんて。
    すべては草間のため。
    草間が詩を書くため。
    でも、棗の傲慢なまでの草間の詩の肯定は羨ましいなぁ。
    草間にはそれはとても必要なもので。
    棗にもまた、それは必要なことで。
    草間は一人でも詩を書いていける、棗がいなくとも。
    棗は傲慢なまでに草間の詩を肯定することで、草間と繋がろうとしてるんだよな。
    きっと草間はこれから棗とともに歩んでいくんだろうなぁ。

  • 多少なりとも詩を書いている者として、文章を大事にしたい者として、胸が苦しくなるようなところがあった。
    人気の作者さんということで少し身構えていた部分もあったけれど、思ったより淡々とした文章でよかった。

  • 私もミステリには騙されたい方で、自分の見立てに反した結末にたどり着くほど面白かったなぁと思う。そういう意味で、このお話の結末は面白かった。

  • 「僕」は詩を書かずにはいられない。が、詩人、ではない。

    ミステリって珍しいな!って思ったら初だった。なるほど。
    しかしどうにもミステリっぽくないなーと思って読んでいったら最後にやられた。
    そうきたか・・・。

    「生きて書け。それだけでお前の勝ちだ」

  • 詩と、死。終始曇天模様。パラレル西遊記?

著者プロフィール

1984年、石川県金沢市出身。金沢大学文学部卒業。『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞・大賞を受賞し、デビュー。その後も、逆境を跳ね返し、我がものとしていく少女たちを描き、強固な支持を得ている。

「2019年 『悪魔の孤独と水銀糖の少女II』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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