現代詩人探偵 (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017903

作品紹介・あらすじ

とある地方都市でオフ会を開いた、『現代詩人卵の会』のメンバー9人。約束を交わし訪れた10年後の再会の日、当時書いた詩から「探偵くん」と呼ばれる僕は、メンバーのうち4人が自殺したことを知る。彼らはなぜ死ななければならなかったのか。詩を書いて生きることは不可能なのか。疑問を抱いた僕は、彼らの死の謎を探り始めるが……。史上最も切ない動機で謎を追う、孤独な探偵が見た真実とは? 気鋭が描く初のミステリ長編。

感想・レビュー・書評

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  • 詩人たちを襲った死の原因を探り当てるミステリ。正直なところ、ミステリとしては弱めかな、という印象でした。繊細で不安定な詩人たちを巡る物語。作中の詩も印象的なものが多いです。
    たしかに詩人、というと夭折のイメージがあるし、死と詩って一番繋がっている部分もあるんじゃないかと思うけれど。生きることと死ぬことのはざまで揺れる彼らの姿は、悲しいような勇壮なような。死ぬことが美しいのだとは思えませんが。魅せられてしまう部分は、わからないでもないかなあ。

  • 「第一章」
    残された人々。
    何故こんなにも当時あったメンバーが減ってしまったのか、共通点は詩しかないが答えは見つかるのだろうか。

    「第二章」
    忘れたいもの。
    こんな風に取り残されてしまったら、誰だって二度と想い出話としてすら語ることすら拒絶したくなるだろう。

    「第三章」
    心と体は違い。
    考えたくもない仮説ではあるだろうが、もしも言い合いの内容が答えだったのであれば悲しい結末になったな。

    「第四章」
    一人だけ違う。
    死因は知らされていたとしても、それ以外の情報を地道に集め続けたからこそ気付いてしまった答えなのかも。

    「第五章」
    偽物の探偵は。
    連絡を取り合っていなかったのであれば、実際に何が苦だったのかなんて想像でしか考える事が出来ないよな。

  • SNSのコミュニティ「現代詩人卵の会」のオフ会に集まった9人。10年後の再会を約束し集まった時に、その半数が既に亡くなっていることを知る。
    彼らは何故死ぬことになったのか。詩は彼らの死に関与するのか。そして何故詩を書くのか。
    詩を書くことに疑問を抱くようなっていた僕は、彼らの死について調べることにした。

    全編に「何故」という思いが満ちた物語。その「何故」がミステリとしての骨格を持ちながら、詩に対峙する僕の心情に影響を与える。
    詩人の死は自死、変死が重なり、遺された親しい人たちに話を伺い真実をさらけ出すことは、新たなキズを生み出すことにもなる。それでも僕は知りたいと思う。
    何故そこまで知りたいと思うのか。これもまた物語の骨格となり、終盤ミステリ的な意味も持つ。ミステリらしくない物語であり、驚愕の仕掛けや壮大なカタルシスがあるのでもない。それでもこれはミステリでしか書き得なかった物語でしょう。

    暗く重く陰鬱な印象が強いのに、引き込まれて読み進めてしまう。そんな作品でした。

  • 金沢でこの本を見つけました。作者さんの地元なんですね。詩と死で韻を踏んでいるような物語で、重い場面が多かったように思います。けれど、詩を書くことを題材にしているので、言葉との向き合い方、言葉に対する想いみたいなところで共感できる部分もありました。面白かったです。

  • 最後のあとがきに記載してあったが、気晴らしに読むにはじっとりとした新しいタイプのミステリでした。晴れやかな気持ちになったり、泣きそうなほど感動したりはしないが、明日も生きようかな、と思える。

  • 現代詩人卵のオフ会から十年、再び集まったものの半数が自殺をしていた事を受けその理由を僕が探る。遺された妻子や性同一性障害。盗作の境の薄さ。死ぬから詩人なのか。そこはかとない違和感からトリックには来たー!と思ったけれど真相はそこまでではなかった。孤独な雨の夜中みたいな鬱々とした静謐さと湿度に没入した。

  • 紅玉いづきさんらしい作品かと言うと、そうではない。新たな境地が見れる。
    詩と死を扱う以上どうしても仕方ないのかもしれないが、主人公に好感が持てなかった。
    ミステリーの中でも、犯行に及んだ動機に心が惹かれる人にはオススメしたい作品。「なぜ」の理由を深く語る。逆に、トリックとかが好きな人には絶対にオススメしない。

  • 詩人とは死ぬものなのか,詩人になるオフ会に集まった9人のうち,10年後には4人が死んでいた.探偵と呼ばれた僕は自身の存在意義をかけて4人の死について調べていく.盗作がキーワード,全体に詩が死に侵食されていくようだ.

  • 詩=死ということが伝えたいのだろうか。句読点の使い方が独特。
    ミステリーだと期待して読むと肩透かしな叙述トリック。

  • 死人となった詩人たち。その死の謎に迫る臆病な詩人が探偵役だ。

    ミステリーを期待して読むと拍子抜けだろう。これは詩人の生き様、その呪いの一つを垣間見る物語だ。明かされるは死の動機、隠れてしまった心を探り当てるというミステリーなのだろう。

    全編的に暗いトーンで綴られ、随所に感じる詩や言葉の呪いに陰鬱な気持ちになってくる。それでも読むのを止められないのは、自分もまだ作り手であり物語の語り手でありたいからだからかも。

    最後のカタルシスにそれなりに意外性はあったが、これもミステリー的というよりは純文的だった。

    余談だけど。個人的に「詩」そのものは苦手というか、ワシの感性では理解が難しいものなのだが、詩人のひねり出す言葉の力は凄いと思っている。自分と向き合い、心の深層から言葉を紡ぎ出すその力。

    そして自分と向き合うことは、生と死に向き合うことかもしれないな、と本作を読んで改めて思った。

  • 詩を読んだのは小学校ぶりでした

  • 薄氷のような、生きている人間の物語だった。

  • 「将来的に、詩を書いて生きていきたい人」が集まったSNSコミュニティ「現代詩人卵の会」。10年ぶりに集まったオフ会では10年前に集ったメンバーの約半数が故人となっていた。
    「詩」は人を殺すのか。「僕」は自分がかつて書いた詩の「探偵」のようになって、故人たちの「死」の経緯を探り始める。

    ***

    冒頭の「僕」が詩について述べた部分が印象的だった。

    ''詩を書きたくて詩人になった人間なんていない。僕はずっとそう思っている。(中略)
    数多の表現の中で、詩を、よりにもよって詩を選ぶということは。
    詩しかなかった、ということなのだろう。特別なことでなく、詩以外があるならばそうしていた。他のすべてが出来なかったから、最後に、あるいは早々に詩にたどりついたのだ。''

    人によって詩に対するイメージは違うと思うけど、私は何となくこの作品の「詩」に対するイメージに共鳴する。なぜか私の中で「詩」はほんのりと暗く、少し哀しい。

    それはやはり、既存の言葉や、表現の方法では表せないもやもやを抱えた人の「違和感」からきている表現であるような気がするからだ。
    はみ出したものの悲哀なのかな。

    この作品は詩という「表現方法」「芸術」に作者が向き合った作品なのかも。
    そして人が「死」に向き合うということにも。
    だから昨今よく見る日常系ミステリには物足りなさを感じるんだけど、この作品は読みごたえがあった。
    作中で延べられるように「僕」が繋ぎ合わせた故人たちの「死」の顛末には救いはないかもしれないけど、少しだけ、希望と呼べそうな一筋の光もあったのも良い。
    最終章で「僕」の語られなかった秘密が明かされる構成も上手い。

    個人的に好きなのは第三章の夏炭氏の切ない婚約指輪のエピソードと、第四章の≪真っ暗なパーティ≫という詩。
    どちらも暗闇の中で僅かに鈍く反射する光のような哀しい魅力がある。

  • いたい、物語だった。
    生きることと、書くことと。

  • 05/13/2017 読了。

    図書館から。

    生きるのに必要なものは、人それぞれに違って、
    死ぬことで詩人になるのというのなら、
    詩はどうしてあるんだろうと。

    探偵君含め、死者の詩は、誰の為になりうるのか。

    淡々と静かに語られる物語だったかと。
    丸い屋根の謎が素敵だったのと、
    最後のオチが意外でした。

  • 死と詩が中心になっているミステリー。暗くて読むのが辛くなるほど。主人公が喋ってるような文体がすき

  • 詩人として生きる人たちにとって、生とはいったいなんなのか。
    「探偵」という名で呼ばれる僕の死を探求していく物語。

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 死と詩がテーマのミステリ。
    淡々とした語り口調ながら詩人たちの死を調べる。
    痛み、性倒錯、そして盗作。ミステリ部分はすくない。それなりのオチは準備されてるものの物足りない感じ。

  • まさか詩人会のみんなが認識してる“探偵くん”が草間とは別人だったなんて気付かなかった。
    伏線あったのかな?それすらも分からなかった。
    櫻木さんが常に見守る姿勢もそういうものだと思ってたし。
    詩人会のみんなも知ってたのかな?
    今思えば、もしみんなが知っていたならみんなの態度も色々含みがあったように思えてくる。
    舵さんの世話焼きも、ビオコさんの優しさも、近藤さんの諌めも…。

    それにしても草間、ほんとに探偵みたいだ。
    いや、探偵だ。
    分かっている事実、調べ上げた事、そこから推測される真実。
    草間には天性のものがあるんだな。
    そういう閃きや考えは誰にでも出来ることじゃない。
    草間が解き明かしたことで、救われた人もいて、草間がしたことは意味のあったことだった。
    草間にとっても、詩人会にとっても、残された者にとっても。
    星子ちゃんとの仲間意識は失くなってしまったかもしれないけど、星子ちゃんの将来を思うと、草間のしたことはとても意味のあることだった。
    彼女はきっと死んだお父さんと同じように詩を書いていく。
    夏炭の彼女、希砂も、きっと前に進める。
    夏炭が身体は女でも死ぬことによって男の詩人になったことが分かったから。
    確かに自分に贈る指輪だと分かったから。
    明日田の死も解き明かされ、近藤の中に溜め込まれたドロドロとしたものが消化された。
    まさか明日田が遠野の詩を盗作して、遠野が殺して、そして自殺したことには驚いたけど。
    2人の死が繋がってたとはな。
    舵さんも、小木屋のことが分かったから納得出来たと思う。
    最後の詩を書くために死んだ、最後まで詩人だった。
    “探偵くん”として解き明かすことで解放された人がいて、草間もまた解放された。
    盗作について分かったから。
    まさかみんなの認識してる“探偵くん”が草間と同級生で、草間の詩を盗作してたとは思わなかったけど。
    そして、草間に指摘され自殺してたなんてな。

    棗は残酷だな。
    “探偵くん”である蓮見よりも草間の方に才能を見出し、蓮見を糧にさせるなんて。
    すべては草間のため。
    草間が詩を書くため。
    でも、棗の傲慢なまでの草間の詩の肯定は羨ましいなぁ。
    草間にはそれはとても必要なもので。
    棗にもまた、それは必要なことで。
    草間は一人でも詩を書いていける、棗がいなくとも。
    棗は傲慢なまでに草間の詩を肯定することで、草間と繋がろうとしてるんだよな。
    きっと草間はこれから棗とともに歩んでいくんだろうなぁ。

  • 多少なりとも詩を書いている者として、文章を大事にしたい者として、胸が苦しくなるようなところがあった。
    人気の作者さんということで少し身構えていた部分もあったけれど、思ったより淡々とした文章でよかった。

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著者プロフィール

1984年、石川県金沢市出身。金沢大学文学部卒業。『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞・大賞を受賞し、デビュー。その後も、逆境を跳ね返し、我がものとしていく少女たちを描き、強固な支持を得ている。

「2022年 『雪蟷螂 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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