エクソダス症候群 (創元日本SF叢書) (創元日本SF叢書)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 344
感想 : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488018184

作品紹介・あらすじ

第1作『盤上の夜』、第2作『ヨハネスブルグの天使たち』が連続して直木賞候補となり、それぞれ日本SF大賞、同特別賞を受賞した驚異の新鋭が放つ、待望の第1長編
すべての精神疾患が管理下に置かれた近未来、それでも人々は死を求めた。
地球での職を追われた青年医師は、生まれ故郷の火星へ帰ってきた。かつて父親が勤務した、開拓地で唯一の精神病院へ赴任するが。精神医療とその歴史に挑む。

感想・レビュー・書評

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  • SFミーツ精神医療。
    面白かった~。
    私の好きなこの作者の『彼女がエスパーだった頃』と通じる部分もある。
    科学と非科学の対立と融和。
    精神医療の歴史は興味深かった。
    火星に馬車が通っているところも理屈じゃわかるが面白かった。

  • なんかよくわからないままずるずるすいこまれておもしろかった。この人は何者でしょう?
    私が精神科領域にいるので、展開にいつも以上にはまり、
    現実かすぐ来る未来か単なる創作か、
    これどうなっちゃう?と。
    明るい終わり方でよかった。

    他の著作も読みたい。
    伊藤計劃さんを思い出した。

  • 近未来植民地と化した火星の精神病棟を舞台にした医療ミステリー。宮内悠介は「盤上の夜」「ヨハネスブルクの天使たち」もそうだったが、心理描写というか人間の書き方に味があるなぁ。

    テーマがメンタルな部分にグサっと触れてくるので、感想が書きづらい。この作品を読んで気を悪くする人もいるんじゃないかなと思うような描写もあるし、病んでる人を材料にエンターテイメントを描くこと自体が「弱者を見世物にしている」と解釈できなくもないからなぁ。

    少なくともそういうデリケートなテーマで小説をかいて、ここまでに仕上げること自体凄いことだと思う。精神医療・心理学・メンタルトレーニング等を悪用する事の危険性、そしてそういうヤカラが現実にいるということも踏まえて、SFを読みなれている人は一読の価値があると思う。

  • もっと難しいかなと思ってたけど、世界観もきちんと説明があってスラスラ読めました。

    どれだけ科学や技術が進歩しても、精神疾患はなくならず、寛解したのに自死する人が絶えない…精神医療の歴史をSFミステリの形で読めたのは興味深かったです。

    とにかく、世界観とか人物、特にカズキの心情表現とかも、最後にすごく腑に落ちるうまい描き方だなと感じました。
    ただ、あっさりと事件が起きて解決されてという感じがしたので、クライマックスあたりの展開がもっと厚い記述でじっくり読みたかったかなと思いました。

    個人的には閉鎖病棟でのチャーリーとのシーンすごく好きでした。
    あと、患者が口にする言葉が、繰り返し羅列されているのも、独特の雰囲気を醸し出していて好みでした。

  • 図書館で。
    やっぱりこの人の小説スゴイな。世界観が物凄いきっちりしているし、登場人物の職業背景とかを丁寧に書いてくれるから物語に入っていきやすい。引き込まれるように読み終わりました。

    火星に移民している人達のドームが泡シェルターって発想も面白いなぁ。そして辺境になればなるほど物資は供給量が足りなくて現場が逼迫する… ううん、リアルだ。

    外的要因からの傷病治癒率が上がった時、最後に人間を殺すのはヒトが自身の中に持っている菌であったり、精神的打撃かもしれない。そう言う意味では集団という生物と同じような構造を持つ組織にも精神療法は効果的なのかも?
    面白かったです。

  • せっかくならもう少しきちんと最新の
    精神医学について学んでから書いて欲しい。
    参考文献が多いだけでは意味がないし、
    古いし片寄ってる。
    最近では精神疾患とされている病気のうち多くが
    脳の機能疾患とされ始めているのに
    西暦2140年にその観点がない時点でお寒い。
    むしろ未来でなく過去の話のように読んだ。
    しかも前提がこれだから結局何がいいたいかわからない…
    きちんと取材すればちゃんとしたもの書けるのにな〜と思った。

  • とにかく、この著者と相性がいいのだろうか。
    精神医学やSF的舞台設定もさることながら、話全体に哀愁があって、それがグイグイと読ませる。

    「盤上の夜」を読んだ時も思ったが、人間を書くのがとても上手い作家さんだと思う……
    これにミステリー要素や医学、SFといった要素も盛り込まれるのだから、そりゃあ読ませる。
    これからどんな作品を書いてくださるのか、とても楽しみな作家さん。

  • あらゆる心身不調に名前がつけられてしまうことに疑問を感じている人が多い昨今。症例を羅列するだけの研究にも疑問が呈されています。
    火星を舞台に据え、精神医療に対するまとめ、考え方が示されていて、最後の明るさに清々しい読後感でした。
    「狂気は少しの善意から始まる」にはぐぐっときました。

  • 舞台は火星開拓地
    テーマは精神医療史

    未来感希薄
    終わりも盛り上がりに欠ける。
    しかし
    作者の精神医療史に対する造詣は深い。
    登場人物も魅力的で
    続編を期待してしまう。

  • エクソダス症候群 宮内悠介著 未来の火星に広がる心の闇描く
    2015/8/16付日本経済新聞 朝刊

     「湯の出ないバスタブ」「明滅する信号」「七人が暮らす六畳間」……宮内悠介の初長編『エクソダス症候群』は、こんな奇妙な言葉で始まる。精神科病院の患者が自由連想法で口にするフレーズ。それが随所に挿入されて、小説に絶妙のアクセントを与える。







     著者は、今もっとも注目される新鋭SF作家。デビュー単行本『盤上の夜』と第2作『ヨハネスブルグの天使たち』が、ともに日本SF大賞を受賞(大賞と特別賞)、直木賞にも2作連続してノミネートされる快挙で、一躍、時の人となった。


     書き下ろしの本書は、未来の火星が舞台。構想は、12年前、著者が早稲田の古いゲームセンターでアルバイトをしていた23歳の頃まで遡るという。


     作中の火星は環境改造が進んでいるが、まだ大気はなく、人間は高分子ポリマー製の巨大な泡(直径数百~2千メートル)の中で生活する。泡の数は1万を超え、推定人口は約60万人。物資が足りず、交通網の整備もままならないため、住民は赤い大地に馬車を走らせる。まるで開拓時代のアメリカ西部のような光景が幻想味をかきたてる。


     主人公は、火星で生まれ育ち4歳で父と地球に移住した若き精神科医カズキ。地球では、多剤大量処方とカウンセリングにより、あらゆる精神疾患が完璧に制御されているのに、突然なんの理由もなくみずから死を選ぶ“突発性希死念慮”が蔓延(まんえん)。それによって恋人を亡くしたカズキは、恋人の父親である担当教授に疎まれて大学病院を追われ、故郷に戻ることに。着任したのは、亡父がかつて勤めていた火星唯一の精神科病院、ゾネンシュタイン病院。10棟の建物は、カバラの“生命の樹”を模して斜面に配置されている。


     題名のエクソダス症候群とは、強い脱出衝動を伴う妄想や幻覚に悩まされる病。火星開拓地に広がり、カズキ自身も罹患(りかん)する。その病理の解明と病院内の不穏な出来事が並行して進む。


     25年前、この病院でいったい何が起きたのか? カズキの父の過去もからんで、物語はミステリー風に展開する。鍵を握るのは、この病院最古参の患者にして第五病棟の長チャーリー。精神医療の歴史をめぐる彼とカズキの議論がかなりの分量を占め、舞台劇(たとえばピーター・ブルックの「マラー/サド」とか)っぽい雰囲気もある。通電療法、ロボトミー、薬物投与、画像診断。やがて起きるカタストロフと、驚愕(きょうがく)の真実。


     270ページのコンパクトな長編だが、他にはない味わいが、読後に強い印象を残す。




    (東京創元社・1700円)


     みやうち・ゆうすけ 79年東京生まれ。作家。92年までニューヨークに在住。早大一文卒。




    《評》翻訳家


    大森 望


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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。2010年に「盤上の夜」で第1回創元SF短編賞選考委員特別賞(山田正紀賞)を受賞しデビュー。『盤上の夜』で第33回日本SF大賞を受賞。2014年『ヨハネスブルグの天使たち』で日本SF大賞特別賞。2017年『彼女がエスパーだったころ』で吉川英治文学新人賞、『カブールの園』で三島由紀夫賞、『あとは野となれ大和撫子』で星雲賞、『遠い他国でひょんと死ぬるや』で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

「2021年 『OTOGIBANASHI』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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