エクソダス症候群 (創元日本SF叢書) (創元日本SF叢書)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488018184

作品紹介・あらすじ

第1作『盤上の夜』、第2作『ヨハネスブルグの天使たち』が連続して直木賞候補となり、それぞれ日本SF大賞、同特別賞を受賞した驚異の新鋭が放つ、待望の第1長編
すべての精神疾患が管理下に置かれた近未来、それでも人々は死を求めた。
地球での職を追われた青年医師は、生まれ故郷の火星へ帰ってきた。かつて父親が勤務した、開拓地で唯一の精神病院へ赴任するが。精神医療とその歴史に挑む。

感想・レビュー・書評

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  • SFミーツ精神医療。
    面白かった~。
    私の好きなこの作者の『彼女がエスパーだった頃』と通じる部分もある。
    科学と非科学の対立と融和。
    精神医療の歴史は興味深かった。
    火星に馬車が通っているところも理屈じゃわかるが面白かった。

  • なんかよくわからないままずるずるすいこまれておもしろかった。この人は何者でしょう?
    私が精神科領域にいるので、展開にいつも以上にはまり、
    現実かすぐ来る未来か単なる創作か、
    これどうなっちゃう?と。
    明るい終わり方でよかった。

    他の著作も読みたい。
    伊藤計劃さんを思い出した。

  • 全ての精神疾患がコントロール下に置かれた地球では『突発性希死念慮』だけが克服できず、火星開拓地では強い脱出衝動を伴う『エクソダス症候群』が今だ跡を絶たない。
    主人公カズキは生まれ故郷の火星に帰郷し、唯一の精神病院であるゾネンシュタイン病院に勤務し始める。生命の樹を模して病棟などの建物を配置している病院。
    語られる精神医療史と、主人公の過去やかつて病院で起こったこと、『突発性希死念慮』と『エクソダス症候群』……など盛りだくさん。
    某ヲタクなので表紙の生命の樹に惹かれて選んだのですが、かなり面白かったです。

    持病があって薬のお世話になってるけど、以前ならロボトミーか私宅監置か…になるので描かれた精神医療史も興味深く読みました。現在の治療も後の時代では否定されるんだろうなみたいなのもなくはないと思います。

    キャラが各々立ってて魅力的でしたし、ストーリーも真面目だけれど重すぎず読みやすい。惹きつけられます。
    正気の暗闇…晴れる日はきそうにないけど、曇天くらいでいいのでぼちぼちやるしかないかな。テラフォーミングみたいに順応させつつ(逆だけど)。
    暗闇を新たな闇で覆うのではなしに。



    (エンパソトミー…恐怖を感じる脳の部位を切り取る、ってあれだドラゴンヘッドと思ったけど海馬を切り取ってたはず。どちらにせよ、恐怖を感じなくなるのはだめだ)

  • 近未来植民地と化した火星の精神病棟を舞台にした医療ミステリー。宮内悠介は「盤上の夜」「ヨハネスブルクの天使たち」もそうだったが、心理描写というか人間の書き方に味があるなぁ。

    テーマがメンタルな部分にグサっと触れてくるので、感想が書きづらい。この作品を読んで気を悪くする人もいるんじゃないかなと思うような描写もあるし、病んでる人を材料にエンターテイメントを描くこと自体が「弱者を見世物にしている」と解釈できなくもないからなぁ。

    少なくともそういうデリケートなテーマで小説をかいて、ここまでに仕上げること自体凄いことだと思う。精神医療・心理学・メンタルトレーニング等を悪用する事の危険性、そしてそういうヤカラが現実にいるということも踏まえて、SFを読みなれている人は一読の価値があると思う。

  • もっと難しいかなと思ってたけど、世界観もきちんと説明があってスラスラ読めました。

    どれだけ科学や技術が進歩しても、精神疾患はなくならず、寛解したのに自死する人が絶えない…精神医療の歴史をSFミステリの形で読めたのは興味深かったです。

    とにかく、世界観とか人物、特にカズキの心情表現とかも、最後にすごく腑に落ちるうまい描き方だなと感じました。
    ただ、あっさりと事件が起きて解決されてという感じがしたので、クライマックスあたりの展開がもっと厚い記述でじっくり読みたかったかなと思いました。

    個人的には閉鎖病棟でのチャーリーとのシーンすごく好きでした。
    あと、患者が口にする言葉が、繰り返し羅列されているのも、独特の雰囲気を醸し出していて好みでした。

  • 図書館で。
    やっぱりこの人の小説スゴイな。世界観が物凄いきっちりしているし、登場人物の職業背景とかを丁寧に書いてくれるから物語に入っていきやすい。引き込まれるように読み終わりました。

    火星に移民している人達のドームが泡シェルターって発想も面白いなぁ。そして辺境になればなるほど物資は供給量が足りなくて現場が逼迫する… ううん、リアルだ。

    外的要因からの傷病治癒率が上がった時、最後に人間を殺すのはヒトが自身の中に持っている菌であったり、精神的打撃かもしれない。そう言う意味では集団という生物と同じような構造を持つ組織にも精神療法は効果的なのかも?
    面白かったです。

  • せっかくならもう少しきちんと最新の
    精神医学について学んでから書いて欲しい。
    参考文献が多いだけでは意味がないし、
    古いし片寄ってる。
    最近では精神疾患とされている病気のうち多くが
    脳の機能疾患とされ始めているのに
    西暦2140年にその観点がない時点でお寒い。
    むしろ未来でなく過去の話のように読んだ。
    しかも前提がこれだから結局何がいいたいかわからない…
    きちんと取材すればちゃんとしたもの書けるのにな〜と思った。

  • とにかく、この著者と相性がいいのだろうか。
    精神医学やSF的舞台設定もさることながら、話全体に哀愁があって、それがグイグイと読ませる。

    「盤上の夜」を読んだ時も思ったが、人間を書くのがとても上手い作家さんだと思う……
    これにミステリー要素や医学、SFといった要素も盛り込まれるのだから、そりゃあ読ませる。
    これからどんな作品を書いてくださるのか、とても楽しみな作家さん。

  • あらゆる心身不調に名前がつけられてしまうことに疑問を感じている人が多い昨今。症例を羅列するだけの研究にも疑問が呈されています。
    火星を舞台に据え、精神医療に対するまとめ、考え方が示されていて、最後の明るさに清々しい読後感でした。
    「狂気は少しの善意から始まる」にはぐぐっときました。

  • 舞台は火星開拓地
    テーマは精神医療史

    未来感希薄
    終わりも盛り上がりに欠ける。
    しかし
    作者の精神医療史に対する造詣は深い。
    登場人物も魅力的で
    続編を期待してしまう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。小説家。著書に『盤上の夜』『ヨハネルブルグの天使たち』など多数。

「2020年 『最初のテロリスト カラコーゾフ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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