カムパネルラ (創元日本SF叢書)

著者 :
  • 東京創元社
3.18
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本棚登録 : 159
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488018221

作品紹介・あらすじ

16歳の僕を置いて、母は逝った――宮沢賢治を生涯にわたって研究した彼女の希望で、花巻まで散骨に訪れたが、事故をきっかけに自分が80年前、宮沢賢治の亡くなる前の日にタイムスリップしていたことに気がつく。そこで巻き込まれたのは、あの〈カムパネルラ〉が殺されたという想像を絶する事態だった。時間と物語の枠を超えて展開する長編SF。

感想・レビュー・書評

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  • 米津玄師さんのカンパネラが頭ん中流れていた時に目に入ったので手にとる。
    いやあ面白かった。
    表題からわかる通り、銀河鉄道の夜、が物語の核をなす。
    銀河鉄道の夜って好きな人はすっごい好き、だよなー。
    私も何度か読んだけど、実のところそれほどおもしろいっとおもったことはないんだよな。
    ただ、ここからいろんな人がいろんな影響をうけて、たくさんの作品が生まれている、ということに、
    すごいなあっと感嘆する。
    私が読んでるのはこの本の中の第4次原稿のことでいいのかなあ。第3次のイメージは全くない、つ。かそこは創作なのか?それともほんとう?
    確かに宮沢賢治の作品は自己犠牲を描いてるもの多い気がする、だけど、特攻を美化して物語るような作品とは全く違うような気がしていて、
    そこから国家への挺身を誘導させる、という物語の設定にびっくり。
    とはいうものの、いわれてもみれば、あり得る、と思ってしまとこが、コワイ。
    ちょっとだけタイムスリップものおもしろそーっとか思ったのだが、外からの声とか、なんか変だなあっと。
    アバターの説明が映画を参照に、との一文に笑った。
    想像より大掛かりな洗脳システムにビビった。
    いややー、ディストピアやあ。
    あーやだやだ。

    だれかの、みんなのほんとうのさいわいとはなんなのか。
    それにたった1つの答えを求めること自体、なんか違うのかも。

    宮沢賢治はそれを美辞麗句で終わらせるのでなく実生活のなかに見いだそうとしたんじゃないのかなー
    なんか不思議なひとだ

  • 久しぶりにSFものを読んだ。
    宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をモチーフにした作品で、賢治をこよなく愛する人からすれば冒涜かと思われる向きもあるかもしれないが、個人的に宮沢賢治の作品はたぶんにSF的な要素が含まれていると思っているので、これはこれで面白いなと感じた。ただ、SFを読みなれていないせいか展開についていけないというか、読み疲れ感あり。

  • タイトルから推測できるように、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」に登場する人物(+風野又三郎)が活躍するSF小説。ある青年がタイムスリップした先は賢治が亡くなる前日の花巻で、しかも青年は「ジョバンニ」と呼ばれ、おまけにカムパネルラ殺しの嫌疑をかけられていた!

    「銀河鉄道の夜」そのものがSF的な面を持っているといえなくもないが、あの寓話をどうやってガチのSFへ持って行ったのか、それは読んでみてのお楽しみ。

    さらにすごいのは、「銀河鉄道の夜」が何度も改稿を重ねているという事実をもとに、「もしも第三稿までしか存在しないことにされている世界があったら」という仮定で物語世界が構築され、その世界の存在によって現代社会を露骨に批判していること。これはサーカスで言えば、綱渡りの最中に後方宙返りをして、成功させるようなものですよ。

    もちろん作家としての賢治の精神性には十分リスペクトが払われているし、第三稿と第四稿(最終稿とされ実際に流布しているバージョン)の間に横たわる深い溝の理由についても、納得できる考察がある。納得できるどころか、その溝がこの物語を動かす原動力になっている。

    宮沢賢治の作品は、人によって好き嫌いが分かれるし、理解できない人にとっては全くダメだし、はまる人はスコーンとはまる。自分の場合は、「やまなし」や「雨ニモマケズ」はOKでも「グスコーブドリの伝記」はNGで、「よだかの星」は若い頃は切ない話だなあ、くらいに思っていたのが今はちょっとねぇ……と感じる。何が気になるかって、自己犠牲の青臭さがどうしても鼻につく。大勢の人々を救うために(取るに足らない存在の)自分が犠牲になる。これは美しい話でだれもおおっぴらには文句のつけようがないのだけど、そこには自己陶酔というワナがあるし、権力がある意図を持って押しつけてくる危うさがある。押しつけられたら最後、自己犠牲なんて美談ですむわけがない。

    この作品は謎解きやからくりが非常に面白いけれど、つきつめれば、警告の書以外の何者でもないな。

  • 宮沢賢治の銀河鉄道の夜をベースにしたSF小説。愛国心教育を宮沢賢治の銀河鉄道の夜の仮想空間に若者を送ることで進める世界で、第3稿と第4稿の違いが不都合なので主人公を仮想現実の世界に送って、第4稿を無かった物にする的な陰謀に気付いた主人公が抗う的な話。著者の宮沢賢治愛とか解釈なのかとか、原作を読んでないから面白さ半減なんだろうなと思った。

  • 37:宮沢賢治が思想教育の要になっている世界で、賢治研究者の母の遺灰を携えて花巻入りした主人公は昭和八年、賢治の亡くなる数日前にタイムスリップ(?)してしまう。しかし亡くなったはずの宮沢トシが生きていて……というところから始まる、「永久に改稿され続ける」銀河鉄道の夜をなぞったSF。風野又三郎が登場し(て「どっどど どどう」って風を吹かせ)たり、トシの娘さそりや、第四稿では存在しないブルカニロ博士がぼく=ジョバンニを惑わせる。
    この「タイムスリップ」と思われたものは実は、と途端にSF的展開を見せるのが熱く、ループものや時空改変ものにも似た、箱庭世界におけるメタ的存在を相手取った奮闘が描かれます。
    エピローグがめちゃくちゃ好き。

  •  宮沢賢治の銀河鉄道の夜を題材にしています。うまく言えませんが、独特の雰囲気があり、好き嫌いが分かれそうな作品。

  • 銀河鉄道の夜を中心においたSF小説。推敲が重ねられたという事実から第三稿と存在しない第四稿の差異に揺れる冒険譚。求めていた内容とはかなり異なっていたが、後半にかけて予想もしない流れは驚いてしまった。一貫して作品の力を描いている作品であるとも思ったので、ラストは好き。

  • 2018.01.17 図書館

  • タイトルからディストピア&サイバーパンクSFものだとは全く思わなかったけれど、うまく『銀河鉄道の夜』の世界と融合していて一気読み。最後、開放感あります。

  • ああ…「銀河鉄道の夜」を読み返してから読むべきだった…。
    曖昧な記憶のままでは何が実際の作品で何が今作の創作なのかがはっきりしなくて、もったいないことをした。
    小説の手法を使った「銀河鉄道の夜」と宮沢賢治論、と言ってもそう過言ではないのでは。
    きっちり独自のディストピア小説でもあるのだけど。

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著者プロフィール

1950年生まれ。74年『神狩り』でデビュー。『地球・精神分析記録』『宝石泥棒』などで星雲賞、『最後の敵』で日本SF大賞、『ミステリ・オペラ』で本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞を受賞。SF、本格ミステリ、時代小説など、多ジャンルで活躍。

「2023年 『山田正紀・超絶ミステリコレクション#7 神曲法廷』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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