カムパネルラ (創元日本SF叢書)

著者 :
  • 東京創元社
3.14
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本棚登録 : 125
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488018221

作品紹介・あらすじ

16歳の僕を置いて、母は逝った――宮沢賢治を生涯にわたって研究した彼女の希望で、花巻まで散骨に訪れたが、事故をきっかけに自分が80年前、宮沢賢治の亡くなる前の日にタイムスリップしていたことに気がつく。そこで巻き込まれたのは、あの〈カムパネルラ〉が殺されたという想像を絶する事態だった。時間と物語の枠を超えて展開する長編SF。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりにSFものを読んだ。
    宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をモチーフにした作品で、賢治をこよなく愛する人からすれば冒涜かと思われる向きもあるかもしれないが、個人的に宮沢賢治の作品はたぶんにSF的な要素が含まれていると思っているので、これはこれで面白いなと感じた。ただ、SFを読みなれていないせいか展開についていけないというか、読み疲れ感あり。

  • タイトルから推測できるように、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」に登場する人物(+風野又三郎)が活躍するSF小説。ある青年がタイムスリップした先は賢治が亡くなる前日の花巻で、しかも青年は「ジョバンニ」と呼ばれ、おまけにカムパネルラ殺しの嫌疑をかけられていた!

    「銀河鉄道の夜」そのものがSF的な面を持っているといえなくもないが、あの寓話をどうやってガチのSFへ持って行ったのか、それは読んでみてのお楽しみ。

    さらにすごいのは、「銀河鉄道の夜」が何度も改稿を重ねているという事実をもとに、「もしも第三稿までしか存在しないことにされている世界があったら」という仮定で物語世界が構築され、その世界の存在によって現代社会を露骨に批判していること。これはサーカスで言えば、綱渡りの最中に後方宙返りをして、成功させるようなものですよ。

    もちろん作家としての賢治の精神性には十分リスペクトが払われているし、第三稿と第四稿(最終稿とされ実際に流布しているバージョン)の間に横たわる深い溝の理由についても、納得できる考察がある。納得できるどころか、その溝がこの物語を動かす原動力になっている。

    宮沢賢治の作品は、人によって好き嫌いが分かれるし、理解できない人にとっては全くダメだし、はまる人はスコーンとはまる。自分の場合は、「やまなし」や「雨ニモマケズ」はOKでも「グスコーブドリの伝記」はNGで、「よだかの星」は若い頃は切ない話だなあ、くらいに思っていたのが今はちょっとねぇ……と感じる。何が気になるかって、自己犠牲の青臭さがどうしても鼻につく。大勢の人々を救うために(取るに足らない存在の)自分が犠牲になる。これは美しい話でだれもおおっぴらには文句のつけようがないのだけど、そこには自己陶酔というワナがあるし、権力がある意図を持って押しつけてくる危うさがある。押しつけられたら最後、自己犠牲なんて美談ですむわけがない。

    この作品は謎解きやからくりが非常に面白いけれど、つきつめれば、警告の書以外の何者でもないな。

  • 37:宮沢賢治が思想教育の要になっている世界で、賢治研究者の母の遺灰を携えて花巻入りした主人公は昭和八年、賢治の亡くなる数日前にタイムスリップ(?)してしまう。しかし亡くなったはずの宮沢トシが生きていて……というところから始まる、「永久に改稿され続ける」銀河鉄道の夜をなぞったSF。風野又三郎が登場し(て「どっどど どどう」って風を吹かせ)たり、トシの娘さそりや、第四稿では存在しないブルカニロ博士がぼく=ジョバンニを惑わせる。
    この「タイムスリップ」と思われたものは実は、と途端にSF的展開を見せるのが熱く、ループものや時空改変ものにも似た、箱庭世界におけるメタ的存在を相手取った奮闘が描かれます。
    エピローグがめちゃくちゃ好き。

  •  宮沢賢治の銀河鉄道の夜を題材にしています。うまく言えませんが、独特の雰囲気があり、好き嫌いが分かれそうな作品。

  • 銀河鉄道の夜を中心においたSF小説。推敲が重ねられたという事実から第三稿と存在しない第四稿の差異に揺れる冒険譚。求めていた内容とはかなり異なっていたが、後半にかけて予想もしない流れは驚いてしまった。一貫して作品の力を描いている作品であるとも思ったので、ラストは好き。

  • 2018.01.17 図書館

  • タイトルからディストピア&サイバーパンクSFものだとは全く思わなかったけれど、うまく『銀河鉄道の夜』の世界と融合していて一気読み。最後、開放感あります。

  • ああ…「銀河鉄道の夜」を読み返してから読むべきだった…。
    曖昧な記憶のままでは何が実際の作品で何が今作の創作なのかがはっきりしなくて、もったいないことをした。
    小説の手法を使った「銀河鉄道の夜」と宮沢賢治論、と言ってもそう過言ではないのでは。
    きっちり独自のディストピア小説でもあるのだけど。

  • 読後感がなんとも言えず独特だった。
    私は基本的に気持ちの良い、すっきりとしたエンディング‪(ジャンルにもよるけれど)‬が好きなので、結末は物悲しさが勝る。

    あまりSFというジャンルを読んだことがない私でも、ストーリーが主人公の語口調で進んでいくのでスラスラと読めた。
    またテーマが宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」だったのも本好き、文学好きにはたまらないのではないだろうか。
    私が読んだことのある銀河鉄道の夜は第4稿に当たるものだったので、ストーリーを読むうちに第1稿からちゃんと読みたいなと思った。
    ゲームや、映像化したら綺麗なんじゃないかなぁと思う。

  • 2016年10月東京創元社刊。書下ろし。妄想世界のような話で、面食らいました。謎解き部分で、しかけは、納得はしたものの、妄想世界のノリは変わらず、それはそれで、それなりに楽しめました。

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著者プロフィール

山田正紀(やまだ・まさき)
1974年、『神狩り』(早川書房)でデビュー、同作は第6回星雲賞日本短編部門を受賞した。『最後の敵』(徳間書店)で第3回日本SF大賞を受賞、『ミステリ・オペラ』(早川書房)で第2回本格ミステリ大賞と第55回日本推理作家協会賞を受賞。「神獣聖戦シリーズ」「五感推理シリーズ」など、多数の著作がある。

「2019年 『大江戸ミッション・インポッシブル 幽霊船を奪え』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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