スチームオペラ (蒸気都市探偵譚)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488023096

作品紹介・あらすじ

毎朝配達される幻灯新聞が食卓に話題を提供し、港にはエーテル推進機を備えた空中船が着水・停泊。歯車仕掛けの蒸気辻馬車が街路を疾駆する-ここは蒸気を動力源とした偉大なる科学都市。進路に頭を悩ませる女学生エマ・ハートリーは、長旅から帰還した父を迎えに港への道を急いでいた。父が船長をつとめる空中船"極光号"の船内で不思議な少年・ユージンに遭遇したエマは、ひょんなことから彼と共に名探偵ムーリエに弟子入りし、都市で起きる奇妙な事件の調査に携わることになる。蒸気機関都市を舞台に贈る、少年少女の空想科学探偵譚。

感想・レビュー・書評

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  • 途中にカタカナで英語フリガナがあった時マジで頭いかれてんなと思ったんですけど、最後のことを思えばまあ必要だったんでしょうね。でもカタカナで書いてあるあの言語は英語なんですけどどう説明つけてるの?
    あと、一人称の話が苦手なだけだと思うのですが、例えば学生でめちゃくちゃ頭が良いわけではない女の子が、その世界がどういう風に成り立ってるかを一人称で説明して、途中の会話では感情をむき出しにして、と話を進めるとちぐはぐな気になります。
    設定が無理やりかなあ、と思われる部分は多々あるのですがあまり小難しいと読みにくいし仕方ないですね。
    こちらの世界が先進国のように描かれてるのも不思議なんですけど、やりたい学問とは違って適正で仕事を選ぶ世界ってSFの面白そうな素材だっただけに、見習いという賃金の発生しない制度に労働時間を当てはめるのとか、法制度に問題がありそうなのが残念です。こんな細かいところどうでもいいだろって感じですかね?


    でもスチームパンク小説は読みたかったのでかねがね満足です。

  • ★教えて、ユージン。あなたはいったい何者なの?

    ■要点■
    (一)スチームパンクの魅力的な世界、エーテルが宇宙を満たしているレトロな世界観でのミステリ。
    (二)エマと謎の少年ユージンと連続殺人事件と思われる一連の事件と名探偵バルサック・ムートリーとエマの友人サリー。
    (三)いちばんのミステリ成分はなんでしょう? もうちょっとスチームパンクっぽいギミックがいっぱい活躍してほしかったかも?

    ■スチームオペラについての簡単なメモ■
    【一行目】暗がりの中にあって、そこだけがスポットライトでも浴びせたように、円く明るく浮かび上がっていた。

    【圧搾空気推進超特急】パリと北京を結ぶ。
    【アギトナルド】フィリピン共和国大統領。独立の闘士。
    【アブデュル・ハミト二世】オスマン・トルコの皇帝(スルタン)、カリフ。
    【アブドゥル・アジズ四世】モロッコ国王(スルターン)。
    【アルフォンソ十三世】スペインの少年国王。皇太后は摂政マリア・クリスティーナ。
    【別世界/アン・オートル・モンド】近頃流行っているカフェ兼レストラン。フーリエの思想に基づいたグランヴィルの画文集「アン・オートル・モンド」のイメージ。
    【ヴィクトリア女王】帝国の立憲君主。
    【ウィルヘルミナ】オランダ女王。夫はメクレンブルク公ハインリヒ。
    【ウーゴ・サイモン】哲学博士、数学博士、理学博士。著名らしい。小柄で魔女めいた老人。
    【ウンスロボガース】ズールー族の漆黒の戦士にして族長。身長一九〇くらい。戦斧の武術指導のために来た。戦斧の名は「インコシ・カース(女族長)」
    【ウンベルト】イタリア国王。王妃はマルゲリータ。
    【エーテル】宇宙に満ちているとされている何か。異世界(マイケルソン―モーリー空間)にあるらしい。
    【エーテル推進装置】宇宙まで行ける(かもしれない)飛空船の推進装置。マイケルソン―モーリー空間にあるエーテルに干渉するためほぼ異世界に移行している状態となる。現在エジソン式とニコラ・テスラ方式の二種がある。エマはニコラ・テスラ方式の方がいいと考えている。
    【エマ・ハートリー】主人公。蒸気都市を気に入っている。技芸学校(ポリテクニック・スクール)に通う。「情念引力」が四方八方に向かっているらしい好奇心旺盛な少女。背が高い。あるとき将来探偵になりたかったのだと気づいた。
    【オスカル二世】スウェーデン=ノルウェー国王。王妃はゾフィア・フォン・ナッサウ。
    【カイゼル】ドイツのヴィルヘルム二世皇帝のこと。平和を希求している世界のなかで火種を撒き散らしている。
    【キッチナー博士】帝国科学省長官。
    【極光号】キッチナー博士が調査のため乗り込んだ船。ロビュール=モルス型空中船。多くの成果を上げたが今度エーテル推進機(スクリュー)を装備し宇宙にも飛び出した。エマの父、タイガー・ハートリーが船長を務める。
    【金・馥(きん・ふー)夫妻】妻は雷呉(れいう)。色白で美男美女の清国人夫婦。
    【クリスチャン九世】デンマーク国王。
    【警視庁の蒸気自動車】黒塗りで頑丈で前から見ると甲冑武者の顔みたい。
    【ゲオルギオス】ギリシャ国王。
    【光緒帝/こうしょてい】大清帝国の立憲君主。高齢女性が苦手。
    【サリー・ファニーホウ】エマのクラスメート。小柄で、エマとは凸凹コンビと言われている。ファニーホウ産業社長令嬢。くるくる巻き毛と秀でたおでこと眼鏡。ただし、実家の財力と関係なしに非常に優秀な経営者でもあり傾いた企業を短期間のうちに一流企業までにのし上げることができる手腕を持つ。「怒りんぼのサリー」の異名をもつ。エマは怒られつつも「かわいい」と思ったりしている。
    【ジーン・モーロイ】実験物理学者。ホテルで殺された。なんか黒くて重い塊を顔面に落とされて死んだらしい。
    【ジェロニモ】北米大陸部族調停者(チーフ)会議代表。「ゴヤスレイ(あくびするもの)」という名を持つ。
    【尚泰王】琉球王国国王。
    【情念引力】それぞれの好き嫌いによって進路を決めるために情念引力が何に向かっているか考えねばならない。
    【スタンダード島】科学の粋を集めたような南国の楽園。今度世界中の首長を集めた「列国議会」が開かれファニーホウが接待を担当するらしい。別名「エリス島」。
    【スチームマン/蒸気人間】フランク・リード型鉄製ロボット。
    【世界議事堂】スタンダード島にある大建築。世界第八の不思議とも呼ばれる。
    【石油】この世界では無駄な資源とされている。
    【ダイアス警部】警視庁の警部。ムートリーの盟友。彼のことを「先生」と呼ぶ。
    【タイガー・ハートリー】エマの父。極光号の船長。
    【大清帝国】開国後アジア有数の蒸気都市となった。
    【報時球/タイムボール】スタンダード島の世界議事堂のそばに建っている不思議な塔。ひとつの団子を串が突き刺しているような形。航海時計(クロノメーター)の時間を合わせるのに必要らしい。
    【地下気送鉄道】地下鉄かな。
    【地理学基金】極光号の冒険のスポンサー。エーテル推進装置としてエジソン式を採用した。総裁はファニーホウ産業社長。
    【トリマー】マチアス・トリマー。工学士。応用蒸気工学。ヘンな死に方をした。
    【ナポレオン四世】フランス大統領。
    【牛津(ニウジン)・剣橋(ジアンチャオ)大飯店(ホテル)】牛津(オックスフォード)と剣橋(ケンブリッジ)の名を冠した清国人向けのハイソなホテル。オーナーはレーン・ファニーホウ。
    【ニコライ二世】ロシアの「皇帝(ツアー)」。
    【新・水晶宮/ニュー・クリスタル・パレス】博物館かな。施設の中には大英生物園もある。
    【バルサック・ムーリエ】→ムーリエ
    【ヒジカタ】蝦夷共和国総裁(プレジデント)。
    【フーリエ】シャルル・フーリエ。今日の世界に最も影響を与えたフランスの思想家。「情念引力」を提唱し未来予想をした。
    【フランツ=ヨーゼフ】オーストリア=ハンガリー二重帝国の皇帝。
    【ベン・クラウチィ】童顔の「絵入り伝声新報」記者。
    【ポリテクニック・スクール】技芸学校。役に立つことならなんでも教えてくれる。エマ・ハートリーが通っている。
    【マールバラー教授】エーテル物理学の異才。大英生物園で殺された。
    【魔神】何かのたとえと思われるが。
    【マックヒラー】実業家。風呂好き。密室状態の浴室で殺された。
    【ムーリエ】バルサック・ムーリエ。名探偵。タイガー・ハートリーの親友。エマの英雄。美形。エマは学校の実地勉強先にムーリエの選んだ。
    【メネリク二世】エチオピア帝国皇帝。
    【モザッファロッメィーン】ペルシャ王国国王(シャー)。
    【ユージン】ユージンという名は自称。宇宙を漂っていたらしい八角錐と八角柱を組み合わせた水晶のようなカプセルに入っていた謎の美少年。カプセル内からエマを見て出てきた。つねに微かな微笑を浮かべているがそれゆえに無表情ともいえる。
    【ラーマ五世】シャム王国国王。奴隷制度を廃止した。
    【劉】蘭芳公司・大唐総長。
    【リリウオカラニ】ハワイ女王。姪のカイウラニ王女は絶世の美少女。
    【ルイージ】極光号の古参船員。
    【ルートヴィヒ】バイエルン国王。一時精神異常が伝えられていた。国全体をお伽の国化しようとしている。新造の飛行船の名前は「新・白鳥城号(ノイエ・ノイシュバンシュタイン)」。
    【レーン・ファニーホウ】サリーの父。ファニーホウ産業社長。地理学基金のトップ。
    【列国議会】世界中の首長を集めた国際会議。フランスのナポレオン三世皇帝が提唱した。世界平和に最も寄与したと言われている。
    【労働時間の厳守】《そう、それがわたしたちの世界を、ほんの何十年か前よりずっと幸せなものにしている数多い秘訣の一つ。》p.122

  • スチームパンクミステリ。SF。ファンタジー。空想科学。
    著者の作品では『異次元の館の殺人』系統の、変わった世界観でのミステリ。
    本格ミステリファンには反則とも思えるような結末ですが、SFファン的にはアリか。
    難しいことは考えず、主人公エマの冒険譚として読むのも良いかも。

  • おい、オチの探偵の正体、ふざけるな。

    となりました、スチームパンク世界でのミステリ。
    まあ、卑怯っすよね。
    前もあったけど。タイムリープしてたやつ。

    とりあえず、カタカナルビはガン無視して読み進めていきまして、結構面白かったなぁとは思うです。
    卑怯だけど。

    あの串団子は、音速が駄目なら光の反射かなんかだと予想したら間違ってた。

  • 面白かったです。蒸気を原動力にした世界のお話。好きな世界観でした。疾走感があってするする読んでいたら、ラストに向けての謎解きに圧倒されました。やられた。自分の思い込みにびっくりです。登場人物たちもそれぞれ魅力的で、楽しい読書でした。

  • うーん、とりあえず読みましたってところで。

  • 蒸気機関がすべてを支配する世界での、少年少女の冒険ミステリ。SFの要素もあるかな。
    エーテル(名前は何となく聞いたことがあるけど、どんなものなのかhあまり分からなかった)などを用いた奇想天外なトリックには驚き。……と思っていたら、さらなる大仕掛けなトリックにそりゃもう驚き! これはもう予想の遥か上を行っていました。想像の埒外。

  • SFミステリー

  • 蒸気機関で動くさまざまなガジェット、エーテル理論を基にした(我々からすると)奇妙な宇宙理論、そして少女探偵(志願)の繰り広げる、壮大な冒険活劇!……という、盛りだくさんな内容。
    さらに、探偵志願の娘っ子のさらには男装サービス、ボーイミーツガールの逆をいくガールミーツボーイと、作者特有の饒舌な語り口で紡がれる物語に、どんどん世界に引き込まれていく。
    さらに、語られるミステリ的事件は密室殺人、衆人環視下の殺人や、冒険活劇として「攫われた令嬢」といったこれまたステレオタイプながら魅力的な展開。

    しかし、全部読み通して分かるのは、これらのある種過剰なまでの舞台設定は、事件の謎、そして物語全体を支える「ある一つのこと」を隠すために必要不可欠なことだった、ということ。
    謎自体を見れば正直肩透かしなのだけど、この設定で、この語り口で描かれるからこそ魅力的な解決となっていると思う。

    最後の最後の最後で、ボーナストラックのように示されるお遊び趣向、なくてもいいけどあったらあったで面白かったw

  • 毎朝配達される幻灯新聞が食卓に話題を提供し、港にはエーテル推進機を備えた空中船が着水・停泊。歯車仕掛けの蒸気辻馬車が街路を疾駆する―ここは蒸気を動力源とした偉大なる科学都市。進路に頭を悩ませる女学生エマ・ハートリーは、長旅から帰還した父を迎えに港への道を急いでいた。父が船長をつとめる空中船“極光号”の船内で不思議な少年・ユージンに遭遇したエマは、ひょんなことから彼と共に名探偵ムーリエに弟子入りし、都市で起きる奇妙な事件の調査に携わることになる。

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著者プロフィール

一九五八年大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。
一九八六年、「異類五種」が第2回幻想文学新人賞に佳作入選。
一九九〇年、『殺人喜劇の13人』で第1回鮎川哲也賞受賞。
代表的探偵「森江春策」シリーズを中心に、その作風はSF、歴史、法廷もの、冒険、幻想、パスティーシュなど非常に多岐にわたる。主な作品に『十三番目の陪審員』、『グラン・ギニョール城』、『紅楼夢の殺人』、『綺想宮殺人事件』など多数。近著に『大鞠家殺人事件』(第75回日本推理作家協会賞・長編および連作短編集部門、ならびに第22回本格ミステリ大賞・小説部門受賞)。

「2022年 『森江春策の災難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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