密室の鎮魂歌(レクイエム)

著者 :
  • 東京創元社
3.19
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488023799

感想・レビュー・書評

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  • 第14回鮎川哲也賞受賞作。先日読んだ神津慶次朗さんの「鬼に捧げる夜想曲」とのダブル受賞。
    小説の完成度としてはこちらの方が格段に高い。さすがその後もコンスタントに作品を出している岸田さんだ。

    麻子が友人由加を連れていった友人麗子の個展で、彼女の作品「汝、レクイエムを聴け」を見るなり取り乱した。五年前に密室状態の家から失踪した夫の行方を麗子が知っているはず、その証拠が例の絵にあると言うのだ。しかし麗子は由加ともその夫とも面識はない。そしてその後、由加の夫が失踪した家で殺人事件が起きて…。

    失踪した密室、殺人が起きた密室、そしてまた密室という密室祭。
    いずれの密室も図解付きだし、どのパターンで来るのかとワクワクしながら読んだのだが、正直こっちは肩透かし。

    しかし主人公麻子の、片や彼女の高校時代の友人グループ、片や大学時代の友人グループという、麻子以外は接点のない人々が次々と襲われていく展開は一体どんな秘密が隠されているのかと興味津々だった。実は麻子が…だったりして。いやそんな単純なことはないかなどと思いつつ読んだが、結果的にはやはり麻子は重要パーソンだったのようだ。

    主人公麻子がリストラされて生活もプライドもボロボロな商業デザイナーであるのに対し、麗子は自信家の芸術家だしもう一人の友人一条は芸術家は諦めたが料理人として店を繁盛させている。由加は意識的なのか無意識なのか人を振り回し依存してくる。麗子の子供である双子の息子と娘は対照的ながらこれまた扱いが難しい。
    麻子が強烈な脇役たちに埋もれそうでいて、彼らに頼られたり心を開かれたりしているところは彼女の人間性を表していてホッとする。その割に家族との関係は希薄なのが気になるが。

    ミステリーとしては密室は置いておいても、その他の部分だけでも面白かった。刺青についてはそこまでする?江戸時代じゃあるまいし…と懐疑的なのだが、まあ多少のやり過ぎも良し。しかし最後の二時間サスペンス或いは昼メロのようなドタバタはちょっと興ざめ。結果、犯人の底の浅さを露呈したのだからこれはこれで正解なのか。

  • 主人公はリストラされた商業デザイナーの麻美。
    彼女は同級生の麗子の個展を訪れ、その作品に圧倒される。
    以前の麗子は才能はほとんど目立ってなく、侮っていただけに・・・。

    麻美と一緒にその個展を訪れていた友人の由加はある作品の前で悲鳴を上げる。
    その絵は、髑髏で埋めつくされた壁をバックに奇妙な絵柄の旗を持つ骸骨が椅子に座っている絵だった。
    その後、由加は初対面の麗子に詰め寄る。
    「この女は私の夫をどこかに隠している。夫を早く出して!」
    と-。

    彼女の夫は5年前、密室から忽然と姿を消していた。
    麗子の描いた絵のどこに彼の失踪の謎があるというのか-。

    この後もいくつか密室で事件が起こり、その度に密室の見取り図が紹介されています。
    今までもこういう密室トリックの本は読んだ事があるけど、そういう謎解きは苦手なので早々に放棄しました。
    謎を知ってみると、本格密室トリックという訳でもないものでした。

    私がこの本で面白いと思ったのは人物の描写。
    この話に出てくるのはクセのある複雑な性格の人物ばかりで、特に麗子と由加というタイプの違う嫌なタイプの女性の言動が見ていて楽しめました。
    人を見下す虚栄心の強い麗子と依頼心が強くしたたかな由加。
    他にも皮肉屋の麗子の娘や、その双子の弟で口のきけない少年など、複雑な登場人物が多い。
    クセのある人物ばかりの中、主人公の存在が希薄に感じられました。
    リストラされ、同級生の成功に落ち込むままだし、扱われ方がまるで、かませ犬のようで可哀相だと思いました。
    素直でいい人なだけに・・・。
    せめてラストは彼女目線の話だったら・・・と思いました。

    真相は「なるほど・・・!」と思うものでした。
    密室が増えるごとに分からない事が増えていくばかりでしたが、ただ一つの事が分かれば意外に簡単に他の事も見えてくる。
    そういう話ですが、その一つのパズルのピースを探り当てるに中々至らない。
    ただ、読み終えてから思えば、チラチラッと謎を解くヒントになるものが散りばめられている。
    注意深く、ひとつひとつの描写を観察し、記憶していれば「もしかしたら・・・」と推理できるかもしれません。
    でも、分からないままの方が引きつけられて面白く読めるストーリーだとは思います。
    分からないまま、一気読みしました。

  • 図書館より
    絵の展覧会で突然倒れた女性。その女性の話によると一枚の絵が密室から忽然と消えた夫の刺青と全く同じだと語る。そして次々と密室殺人事件が起きていくというミステリー。

    次々と起こる密室での事件を描きたかった、というよりも火サス的な人間関係や歪んだ愛情なんかを描いたサスペンスを描きたかったのかな、と読み終えてまず思いました。

    だからと言って話が安っぽいわけではなく、主人公の女性らしい心理描写や、その友人たちの女性の描写が巧く下手なサスペンスドラマよりもよっぽど出来上がっているなと感じます。

    京都の地名や沿線がポンポンと書かれているのも地元民としてはうれしいところ。京都人なら各京都の描写だけでも読んでいて思わずにやついてしまうのではないでしょうか。

    導入部と次々起こる密室事件で本格ミステリ好きとしてはかなりハードルを上げてしまったのですが、そのためか密室の謎やラストの手記は少し迫力不足に感じてしまいました。そこがよかったらもっと評価は高かったかなあ。

    第14回鮎川哲也賞

  • おどろおどろしい装丁のわりには、読みやすく、どちらかというと軽い感じがした。
    密室のトリックを読み慣れていないせいか、謎解きのところは、文章を読んでも状況があまり理解できないところもあった。あ、でも電話の着信の謎はなるほどと思ったけど。
    ラストはドタバタで騒々しい。女3人集まると姦しいって言うし。

  • 5年前に失踪した友人。失踪直前までいたとされる部屋は完全な密室だった。
    今になってその部屋で殺された別の友人、彼等と関係のないはずの友人もまた密室で殺される…。

    ノートに書き綴られた独白として謎解きが語られますが、ちょっと日記にしては長すぎるかな。
    どうなる?とワクワクしながら読んで、オチが超常現象や人格障害だとがっくりすることもある。
    そうじゃないことを祈りつつ読みました。

  • 4488023797 274p 2004・10・22 初版

  •  密室に密室。合間に見取り図が出てきくるので、これに引っ張られてワクワクしながら読みました。
     主人公とその友人二人の関係性も面白かった。
     主人公はこの二人に振り回されるうちに次々と事件に巻き込まれていきますが、その様子がとてもいい人。主人公の夢がかなって幸せになってほしいと思いました。

     

  • 由加の悲鳴に始まり,殺人事件が連続して発生するが,麗子の絵の謎が明かされて解決に至るストーリーだ.一条哲の存在が物語全体のキーポイントだ.これ以上書くと謎解きになるので,ここで終り.

  • 密室にはあまり魅力を感じないが

  • まずジャケット怖すぎるでしょ。
    密室トリックネタはレベルが高くないと楽しめないが、
    その点は悪くなかったと思う。
    女性の視点で描かれてる感じが楽しめる。

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著者プロフィール

1961年、京都市生まれ。パリ第七大学理学部卒。2004年に『密室の鎮魂歌』で、第14回鮎川哲也賞を受賞。著書に『密室の鎮魂歌』『出口のない部屋』『天使の眠り』『めぐり会い』ほか。

「2021年 『味なしクッキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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