赤朽葉家の伝説

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488023935

感想・レビュー・書評

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  • 高度成長期に製鉄という象徴的な産業、そこへ嫁いだ、千里眼の娘。迷信と科学が入り混じる祖母万葉の時代だった。娘の時代は高度成長期。そしてバブル。ひとのこまやかな感情をあえて表に出さず、理不尽なまでに事実だけが物語をすすめていく。赤朽葉家という山を背負った、たたら場が、おどろおどろしく思われたのは祖母の語りのうまさか。現代に近づくにつれ、最後が淡々としてくるのは、最初の章は聞き書きという理由があった。聞いているのは現代の孫娘。書いているのは現在。聞き手が本当のことを言っているのかはわからない。何かを隠しているのかもしれない。それが、この手記のはじまりだったのだろう。個性的な人物が数多く出てくるが、混乱はしない。それほど、キャラクターがたっている。最後まで楽しめた。

  • 山陰地方の製鉄会社の城下町を舞台に、その製鉄会社を経営する名家に輿入れした女から始まるその孫娘までの三代記。

    何しろ製鉄会社なので、日本が戦後復興する流れが、実にドラマティック。
    戦後の経済情勢が、地方の視線から実にうまく捉えられていて、製鉄業を生業とする名家の浮き沈みとともに、個性的な登場人物達も山あり谷ありの過酷な運命に翻弄される。

    地方にまつわる伝説を下敷きとしたファンタジー的要素が満載なのに、不思議とリアルに物語が迫ってくる。それはそんな時代背景が適切に描かれているためであろう。
    悲惨なエピソードだらけなのに、作者の目線がどこまでも優しい。

    また、赤朽葉万葉とその親友みどりが家族の遺体を探しに二人で山に入り、一面に鉄砲薔薇が咲いている場面が幻想的でため息がでるほど美しい。オイラ的ベストシーンです。

    最終章の孫娘の物語は悲惨で暗い現代の若者にエールを送る物語となっているように感じた。
    読み終えて、清々しい気持ちになれた一冊。

    今を受け入れ、そこから何とか明日を見いだそうとする人には救いになるのではないかなあ。

  • 一族の物語…読み始めたら一気読み間違いなし!!この熱量はすごい!!
    このようなミステリーも良いね~

    ぜひ〜


  • 2022年も後半にして初の徹夜本登場…

    1部の戦後間もない動乱の時期を生きる祖母万葉、
    2部の80年代のヤンキー・ファンシー文化を駆け抜けるは母毛鞠、
    3部の90年代の労働・就活と個性がもてはやされる時代を生き、これから令和を生きていく「私」こと瞳子。

    1部のノスタルジックな時代背景に酔いしれ、
    2部では笑いながら、「このミス」入りと聞いていたので伏線があるのかも…と気をつけて読んでいたら3部で急展開が。

    ミステリーとしては弱めかもしれないけど、
    女と男、女と家、女と仕事をめぐる歴史物語として
    とても魅力的で、ページをめくる手が止まらなかった。


    時代は変わり続けて、1世代前での常識や悩みはどんどん移り変わっていく。

    3世代の女性の人生を並走しながら、
    かつて確かにいた女性たち、これからいるであろう女性を思う。

    自分のせいぜい3世代前のひいおじいさん、ひいおばあさんさえほとんど覚えていなくて、幻のようだけれど、確かにいて、それぞれ何十年もの喜怒哀楽を生きて、そして私がいるんだということを改めて考えた。


    男性たち、泪さんや、みどりさんの兄じゃも、現在だったらもっと生きやすかっただろうか。(これはまだまだかな…)
    反対に、豊寿さんのように一昔前の価値観でしか生きられなかった人もいる。

    自分は自分が生まれた時代で生きることしかできない。
    その悲しさと、不思議と、奇跡を味わった。



    そして、地元民からするとなんでこんなに山陰の描写が的確なんだ…と思ってたら、桜庭先生、島根生まれ鳥取育ちなのですね。

    山陰文学としても後世に語り継がれるべき名作。

  • 直木賞作家、桜庭一樹の個人的ベスト作品。

    戦後日本の社会史と、山陰の旧家の女系の個人史が縦糸横糸になって物語が進みます。少し記紀神話っぽいところもいいですね。

    この人の作風は本当に不思議。読んだだけでおそらくものすごい読書家であろうことは分かります。

  • 製鉄業で名をなし、時代とともに滅びていく旧家、赤朽葉家。その運命を時にとんでもない方向に動かすのは、いつも女性…。
    山の捨て子として赤朽葉家に嫁いだ万葉の記録から、話が始まる。その娘、毛毬の話は「製鉄天使」のエピソードですね。もしくはものすごくよくできたパラレルワールドか…。現代の瞳子がこれからどう生きていくか、楽しみなところ。殺人者の話では、こないだ読んだ「少女には〜」を思い浮かべたけど、違った!いい意味で裏切られました。ボリュームあるけど一気に読みました。様々な作品を出してる方なのでその作品によっていろんな意見があると思いますが、読ませるのがうまい作家だなと思います。

  • 赤朽葉家の女三代記。
    本の分厚さに読み始めるのを躊躇したけど、面白くて、一晩で読んでしまいました。
    ものすごい読み応えがある。
    祖母の万葉の話が特にすき。

  • 一瞬、いつの時代にいるのだろう?と錯覚してしまう。おとぎ話の様で、それでいて段々と現代に近づいていく赤朽葉家、女性3代の物語。ちょっと不思議で独特な世界が赤朽葉家にはあり、代々、家を守り抜く事の大切さがよく書かれおり、本当に素晴らしい作品でした。

    今も昔も変わらないのは、ぷくぷく茶。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ちょっと不思議で独特な世界」
      ズッシリ面白かったぁ~
      桜庭一樹は、多様な世界を描く稀有な作家さんですね!
      「ちょっと不思議で独特な世界」
      ズッシリ面白かったぁ~
      桜庭一樹は、多様な世界を描く稀有な作家さんですね!
      2013/07/19
  • 桜庭さんの著書の(読んだものの)中で1.2位を争いました。
    ちょっと、各章の最後の方は泣きそうになった。
    二段構成なため、あんまり本が好きじゃない人は読みにくいと思う。

  • 山陰地方の小さな村の名家赤朽葉家を舞台に、時代を隔てた女三代の記録。登場人間たちのスペクタクル的人生に魅了されました。ちょっとミステリーが入ってるのがスパイスになってるのかしら。個人的に娘・毛毬の章が好きです。(毛だらけで生まれてきたから「毛毬」・・・。このネーミングセンスに脱帽)
    おかしみと哀しみのバランスが好きだ。

  • 万葉が赤朽葉家の嫁さんで、やっていけるのか心配しました。 毛毱のアイアンエンジェル物語は、のめり込んで読みました。 蝶子さんは、可愛そう!と思いました。


  • 「これは一体どんなジャンルのお話なんだ?」と訝しみながら読み進めたが、中盤以降読み進める手が止まらず一気読み。山陰地方の一族女3代にわたる大河ドラマ的伝奇小説。

    本作の醍醐味はなんと言っても、物語を彩る個性的で破天荒なキャラクター陣だろう。登場人物は多いものの、個性的な名前と巧みな人物描写も手伝って、最後まで混乱することなく読み進められた。個人的に好きなのは“毛毱”編の第二部。周囲の死を境に激変していく人生模様が感動的。また、“孤独”は私と同世代であり、世紀末の終末思想に図らずもシンパシーを感じ、懐かしさも込み上げた。

    戦後から現代まで変遷していく時代を背景とした伝奇小説ながら、終盤でミステリに変化する構成はリーダビリティが高く、前向きな気持ちになれる読後感も良い。

    ようこそ、ビューティフルワールドへ

    週刊文春ミステリーベスト10 4位
    このミステリーがすごい! 2位
    本格ミステリ・ベスト10 19位
    本屋大賞 7位
    ミステリが読みたい! 2位
    日本推理作家協会賞受賞(2007年)

  • 親子三代の物語でそれぞれ個性があり、その時代において一生懸命に生きた。

  • ★2008年3冊目読了『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹著 評価A

  • 旧家に取り込まれた三世代の女性達を取り巻く世界がとても面白かった。神代が不思議で引き込まれたけれど、現実にあった節目節目を登場人物も通ってきたことでよりリアリティを感じられてそれぞれの時代も面白かった。あまり子〜最期まで更にその先、人生を描く物語を読んだ事がなかったのでそういう所でも個人的に面白さを感じた。人と人との繋がりは、不思議で儚く切ないものだが重く掛け替えのないものだ。

  • ライトノベルの作家さん、若い人向けの作家さんだと思っていたのですが、裏切られました。物語としてとても面白いです。ファンになりました。

  • こんなに素晴らしい本に出逢えたことに感謝するし、様々な時代を的確に捉えた桜庭さんを尊敬する。
    3代の女性のストーリーだが、その時代を実際に見たように体験したように、映画を見ているように感じた。それぞれの時代が、こうだったのだなと実感できるような作品。
    それに加えてストーリーも楽しめるなんて秀逸。厚くて堅苦しそうだが、続きが読みたくてたまらなくなる。
    感動して、面白くて、勉強になって、また読み返したい作品だった。
    是非オススメしたい一冊。

  • 読み終わったときの高揚が忘れられない本。こういう作品を読むと「ああ世の中には素敵な本がいっぱいあるな!もっと読もう」と思える。

  • 赤朽葉万葉、赤朽葉毛鞠、赤朽葉瞳子という「赤朽葉家」の三代の女たちをめぐる長編。
    第一部の、万葉についての話が面白かった。神秘的でどこか不気味な雰囲気に引き込まれる。

  • 中学生のころに一度読み、印象に残っていたので今もう一度読み、きっとこれからも何回か読むだろう一冊。

著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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