製鉄天使

著者 :
  • 東京創元社
3.23
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488024505

作品紹介・あらすじ

辺境の地、東海道を西へ西へ、山を分け入った先の寂しい土地、鳥取県赤珠村。その地に根を下ろす製鉄会社の長女として生まれた赤緑豆小豆は、鉄を支配し自在に操るという不思議な能力を持っていた。荒ぶる魂に突き動かされるように、彼女はやがてレディース"製鉄天使"の初代総長として、中国地方全土の制圧に乗り出す-あたしら暴走女愚連隊は、走ることでしか命の花、燃やせねぇ!中国地方にその名を轟かせた伝説の少女の、唖然呆然の一代記。里程標的傑作『赤朽葉家の伝説』から三年、遂に全貌を現した仰天の快作。一九八×年、灼熱の魂が駆け抜ける。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和の時代の爆走レディース『製鉄天使』を築き上げた赤緑豆小豆の一代記。
    昭和テイストの言葉遣い(「~してちょ」や「~ぜよ」や…)は読んでいて気恥ずかしくなる程。今では絶滅してるんじゃないかと思う、80年代の特攻服を着て鉄パイプを振り回すような不良が山程出てくる。自分からは遠い世界だけれど、これも青春なんだろうな。

  • >東海道を西へ西へ、中国山地を越えて、
    >さらに下ったその先、地の果てみたいな、
    >日本の最果て……鳥取県に、
    >すげぇ女たちがいたのを知ってるかい?
    >そいつらはエンジンを唸らさせ、
    >鉄の武器を自在に操っては血みどろの戦いを繰り広げ、
    >そして……アリゾナみたいに広かった中国地方の制覇に挑んだものの、
    >ある夜、とつぜん、全員でもってどこかにきえちまってねぇ。
    >そのせいで、族のあいだじゃ、
    >永遠の伝説ってやつになったのさ。

    という、燃え盛る魂「赤緑豆小豆」の、爆走する青春を描く物語。

    「赤朽葉家の伝説」のスピンオフ、だったと思うけど舞台以外の繋がりが思い出せない…。


    「族」の時代から「イジメ」の時代への過渡期、という時代感を背景にした、いつもの桜庭一樹です。つまり描くのはオンナの生き様。

    主人公、小豆の人生記が始まるのかなと思っていたら、青春記だったので、ちょっとだけ拍子抜けしたでござる。

    ストーリーとしては、鉄を操る主人公が夜な夜なバッタバッタと敵を倒してまわるってだけで特別「こりゃあすげぇ」という感じもないですが、この空気はすきだな~。と思います。

    超能力バトルなんかやってるもんで、普段よりちょいと軽めで読みやすくもありました。
    オチも好きですよ。

    ずーっとテーマが同じ作家って、珍しいのか良くいるのか、どっちなんでしょう?


    「あたしら、ハイウエイに恋してる!
    純情咲かせにゃ、十三歳がなくぜ!」

  • 丙午(ひのえうま)生まれの赤緑豆小豆ちゃんが、
    暴走族人生を謳歌するという、とても刺激的なお話です。

    そうそう、丙午生まれの小豆ちゃんは私の2才先輩に当たります。
    当時の2才先輩はカッコよかったなあ。
    私たちの時代は「喧嘩上等!」
    いじめというより、対外的に戦って、実際に血を流して。
    でもほんとうに人を殺すまではいかなかった。
    自分で痛みを知っているからですよね。
    「弱い者を助けて、強い者と戦う」
    その精神が浸透していたように思えます。

    複雑な家庭環境で、自己愛が傷ついているような子たちも
    暴れて戦って、それで昇華させていた。
    いじめで埋めようとはしていなかった。

    大人たちも、それを見て見ぬふりをしていた。

    日本の、そして島根という小さな世界での、ありえないようなでっかい物語。
    こんな世界があったことを、今に悩む中高生にも知ってほしいくらいです!

  • 桜庭一樹さんの『製鉄天使』

    ぱらりらぱらりら。
    ぱらりらぱらりら。

    国道4649号線が走る辺境の地、鳥取県赤珠村で製鉄会社を営む家庭に長女として生まれた赤緑豆小豆が、中学1年のときに起きたとある事件をきっかけにレディース「製鉄天使」を結成。初代総長として中国地方制圧に乗り出す。

    地元の「エドワード族」、岡山の「薔薇薔薇子供(ばらばらベイビー)」、広島の「裸婦(らぶ)」など、硬派な女子がしのぎを削る物語。

    暴走族に、インベーダーゲームに、徳川埋蔵金まで、1980年代に青春時代を送った人には「あの頃はバカやったなぁ」と楽しめる一冊ですよ。

  • なんともすごい、としか言いようのない感じ。
    走り続ける、暴れ続ける、それでしか生きていけない少女の荒ぶりまくる魂のパワーが破天荒、の一言。それでいて友情を大切にしたり、兄弟間の他愛ないやりとりが微笑ましかったり切なかったりと、それなりの人間性もみせるあたりがかわいいともいえるかも。
    話としては「なんじゃこりゃー」で終わってしまうところもあるけど、その「なんじゃこりゃ」なノリで突き抜けてしまったというのも、スゴイとしかいいようのない気もします。

  • 赤朽葉家の伝説と一緒に借りて、間をあけずによんだ。
    不良を題材にした小説は初めてよんだけど、けっこう面白かった。
    なんとなく、その時代の空気を感じられるような気がした。

    大人になった匂いかあ・・・。
    自分は、いつ大人になったのかなぁ。とか考えちゃった。
    自分にも熱い魂とかあったかな。
    情熱とか漠然とした根拠のない自信とか・・・

  • 『赤朽葉家の伝説』の作中作の少女マンガという前提で読まないといけない作品。設定はかなりぶっ飛んでいる。
    内容は『赤朽葉家の伝説』の1テーマをクローズアップして長編にしたという感じ。おまけ位に思えば楽しめる。

  • 赤朽葉家の伝説がかなり好きだったので、これを読んで少しショック
    漫画を文章で表現する、という試みだったのでしょうが、これは文章よりも漫画で読みたかったです
    赤朽葉の第二章の主人公蹴鞠がどんなことを思いながらこの漫画を描いたのか、と想像しながら読むと面白いところはあるのですが
    こういう形ならスピンオフは出さなければよかったのではと思います

  • もう一度あの世界に浸ることができて楽しかった。

  • 「赤朽葉家の伝説」のスピンオフ。
    丙午(ひのえうま)生まれの赤緑豆小豆がレディース暴走族「製鉄天使」の総長となり世界(中国地方)を統一するという喧嘩上等の暴走族ファンタジー。

    アニメっぽい仕上がりを見事に文章だけで表現しているのは本当に素晴らしいし、散りばめられた伏線(いかにもなヒントではなく、あーそういえば的な伏線)や起承転結まとめかたがさすが桜庭一樹。完璧過ぎる。

    そして、1980年代の昭和の田舎の暴走族臭プンプン。
    「〜してちょ」「〜ぜよ」とか気恥ずかしくなるような懐かしい昭和ワードの連発。
    その時代を生きていても、なかなか「やめちくりっ」はさすがに出てこない。これには本当にやられた感。

    小豆がスミレっ子の存在を2度も失ったくだりは、私もかなり切なくなった。

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著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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