- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488024727
感想・レビュー・書評
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右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠をもって生まれてきたカリュドウ。
〈夜の写本師〉となり、大いなる運命をうけとめていく。
ファンタジー。
魔術師が扱う、土地土地のさまざまな魔法は、設定がこまやか。
人の悪意や闇とも真っ向から向き合っていて、大人にも読み応えのある、ダークな世界観。
魔法に対抗しうるのが本である、という設定がよかった。
本の力、文字の力。
魔術師vs魔術師とは違った戦い方が、珍しかった。
転生を繰り返す壮大な物語で、途中人物名がややごちゃごちゃしてしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前々から気になっていた作家さんの初読み。
すでに何作も発表して審査員になっているような方ですが、これがデビュー作。
日本のハイ・ファンタジーここにあり、という鮮烈な印象。
異世界を舞台に、主人公はカリュドウという少年。
右手に月石、左手に黒曜石、口の中に真珠をもって生まれて来ました。
平凡な村人の両親は驚き畏れ、村の魔道師の女性エイリャに預けます。
小さな村ですが、何年生きているか知れない大魔道師アンジストが支配する都市エズキウムが近くにあります。
老いたエイリャに可愛がられ、跡継ぎとみなされて育つカリュドウ。
ある日、アンジストが現れ、エイリャとカリュドウの幼馴染の女の子フィンの命をあっさり奪って去っていく。
カリュドウは逃げ延び、山を超えてパドゥキアへ。
村の魔道師ガエルクの弟子となりましたが‥
心中深く復讐を誓うカリュドウですが、それは容易なことではない。
魔道師としてアンジストの目を逃れるのは難しく、さらにある事件で破門されてしまうことにも。
写本師の修行を勧められたカリュドウはやがて、「夜の写本師」を目指すことに。
魔力の強い女性からその力を奪ってきた大魔道師アンジスト。
彼にも長い因縁があることを知ります。
綾なす言葉のイメージが美しく、精緻に組み立てられた世界観が硬質な印象。
それぞれの世界での修行の仕方がいきいきと描かれていて、興味が尽きません。
(もっと書き込むことも出来そうだけど、そうすると付いて来る人が減る?)
先を知りたくなって、どんどん読み進む状態に。
文章も世界観もタニス・リーを思わせるレベルのハイ・ファンタジーで大きな動きによる悲劇もありますが、会話は現代的でわかりやすく、心情も現実とかけ離れてはいません。
本が貴重品で印刷もない時代設定で、言葉や内容はもちろんのこと、紙や装丁なども大事にする感覚というのも
本好きには嬉しいところ。
これから買うなら文庫かと思いますけど~
この表紙の絵がすばらしくて捨てがたいので、こちらもアップしておきます☆ -
読みたいとおもいながらも魔法の世界は敬遠していたが読後の満足度とゲト戦記以上の壮大な世界観に加え翻訳本より読みやすい文章なのでストレスなく読み終える。
そして名前が覚えられないので行きつ戻りつしながら読むので読み落とした文章から意味が分かったり、復習になったりと今までにない分かりやすく、余韻に残り楽しい時間を過ごす。 -
これがデビュー作!?
と思わず唸ってしまう濃厚で壮大な物語。
主軸は千年の時をも超える「復讐」
だから時折、エグい表現もあって。復讐するだけの理由づけが必要だからだというのは、大人になったわたしたちだから理解できること。
これは、そういう意味でも、大人にこそ読んでほしいファンタジーだといえる。
しかし、この作品が単なる復讐譚で終わらないのは、さらにその奥底に、さながら大地に育まれた水晶のように純粋で透明な愛があったように思えるから。
斃すべき敵がステレオタイプの悪者で終わらず、
そうならざるを得なかった背景を描いたのもよかった。
いずれにしても、ほめられたものではないけれど、物語に更なる深みを与えている。
表紙の雰囲気もとても素敵。
文庫版も出ているようですが、単行本で手元に置いておきまた読もうと思える、希少な出合いに感謝です。 -
本格ファンタジーとしてお勧めされていたので読んでみました。
異世界、魔道士、呪法、運命の石を持つ生まれ変わり。
古典的で暗くて重たい雰囲気がまとわりついてます。
世界観や人物名も、あるようでない感じで西洋っぽいとか東洋ぽいとか中近東ぽいとかのイメージがなかなか浮かばず、地球上のどことも似ていない世界が広がりました。
話はちょっと難しいというか、よく分からない部分があって消化不良気味ではあったけど、全体的にはおもしろかったです。
そもそも写本師の力とはなんなのか、とか
夜の写本師ってどう特別なのか、とか
どう魔道士に匹敵するのか、とか。
シリーズみたいなので他のも読めばわかるのかな。
運命の石を持つ魔女たちを殺して力を奪い、その呪いを恐れる大魔道士アンジストの壮大な戦いの一方で、育ての親や幼馴染が目の前で殺された仇をうとうとするカリュドウの呪縛された運命が悲しかった。 -
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「洋画みたいなファンタジー」
早く文庫にならないかなぁ~、タイトルと装丁に惹かれてます。。。「洋画みたいなファンタジー」
早く文庫にならないかなぁ~、タイトルと装丁に惹かれてます。。。2013/04/03
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文句なしの★5つ。正統派のファンタジーです。
言葉の使い方も美しく、ストーリーもしっかりしているので
大人の鑑賞にもきちんと耐える作品になっています。
コナン・ザ・バーバリアンがお好きであるらしい作者様。
栗本薫女史の亡き後、チャラついていないがっしりした
ファンタジーの後継者はいらっしゃるんだと。
転生と復讐と、愛の撚り合わされた物語は、ラストに
パンドラの箱のごとく希望をもって閉じられます。
愛と孤独と力に彩られた悲しい物語は、底流に男女が共生
してゆく、未来を紡ぐための方途を探そうとしています。
ゲド戦記・グイン・サーガ・そしてこのシリーズ…。
どれも素敵。和製ファンタジーにも、こんな香り高い本が
あるのですものね。
ストーリーをここに書きたくて書きたくて仕方ないのですけど
ネタバレはもったいなすぎる。
主人公のカリュドウには、先入観なく出会って下さい。
敵役のアンジストも、ちゃんと魅力的なので
何故ふたりが戦うという形で繋がり続けていたのかも
一つの愛の形として、読めると思います。
シリーズなのなら、ぜひ先を読みたい。
期待の作品でした。 -
物語はオーソドックスな、世代と時を超えた復讐譚。月、海、闇の力を秘めた石を持って生まれて来たカリュドウという青年が、はるか過去の呪いを解き放つ物語。魔法の内容もカリュドウが操る写本師の技も面白い。真新しさはないが、ファンタジーの基本的な面白さを忠実に描いているという印象。魔法同士の戦いの描写など、文章も美しい。ファンタジーの醍醐味はその美しい文章なのだから、これはよい。次の作品も読んでみようと思えるデビュー作。解説が井辻さんというのもよい。
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がっつりしたファンタジーが読みたくなって手に取る。せっかくなので読んだことの無いものを。
思ったより王道な流れのハイファンタジーだった。テーマがテーマなだけに残酷な描写も多いけれど、筆致がドライなのでそこまで気持ち悪くはない。かな。
一息に読めたし、世界観も文章も作り込まれていて好感が持てる。
国内ファンタジーにはなかなか無い本格硬派。現実なのか夢なのか、ないまぜになる場面があって詩的。
ただ、地の文が重厚にされている分、比べて会話文が軽いのは気になった。
もう少し登場人物ひとりひとりのことやエピソードが掘り下げられていれば、もっとガツンとした読みごたえなったんじゃないかとも思われてちょっと惜しい!
と、何だか表面的なレビューになっちゃったけど、とりあえずもう一冊読んでみようと思える作家さんでした。