- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488024895
感想・レビュー・書評
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どうしても1作目と比べてしまうので、インパクトがないぶん、アドバンテージはあちらにあるのは致し方なし。
けれど、結末を早く知りたいとページを繰る手をとめられなくなってしまうので、面白さは変わらずです。
なんとなく意味がわからないところもあるけれど、2度3度と読むと、理解度が深まるかな。
今作も表紙が美しい。単行本でそろえたいシリーズであることに変わりはない。
キアルス(同一人物)が出てくるので、連作といえなくもないけれど、これはこれで独立した世界、ここから読んでも齟齬はないはずです。
次の太陽の石も読むのが楽しみ!さっそく図書館に予約しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
発売と同時に購入して、今まで放置していたのは確実に面白いことはわかっているけれど、読んだら終わってしまうじゃないか……! という、矛盾した気持ちの表れであるわけで。
結論から言うと、以前から唱えているように、「食べ物・食事の描写がおいしそうにされている作品に外れなし」というジンクスは、やはり破られることがなかった。パンの描写だのカラン麦だの、読んでるとおなかがすいてくるんだよちくしょうううううううorz まずそうな食べ物もちゃんとまずそうだし!
それはさておき。
ファンタジーの一番の面白さというのは、未熟者がさまざまな出会いや経験を重ね、そして成長してゆくところにあると考えている。
そういう意味でこの小説(シリーズ)は、ファンタジーの王道中の王道を行っているわけ―――なのだが。
だがしかし、その「経験」は、過去の人物の体験を共有するものであったり、他人の生き様を再体験するものであったりするので、多少読みにくいといえば読みにくい。
注意深く読み進めないと時系列が混乱し、どの時代の誰の話だかごっちゃになってきてしまうのだ。
物語の先が気になって、ついつい速読してしまう自分のようなタイプとは、ちょっと相性が悪いかもしれない。
でもやっぱり、この本はものすごく面白い。可愛い女の子のイラストが一枚もなくっても、2100円はりこむだけの価値はある一冊である。 -
読み始めはなかなか集中できなかったがどんどん引きづり込まれ背景や描写が細かく日本人の感覚で比喩表現されているので違和感なく没頭する。ただカタカナ名前は最後まで慣れずに調べながらの読書だったので時間がかかった。
十二国記みたいな人間の本性や駆け引きはなく物足りないが教訓などを求めず現実逃避するためだけだと最高の世界観。 -
前作が面白かったので手に取りました。
今回も入れ子構造というか、別の誰かの人生を体験するパートがあって、そこのボリュームが結構ありました。
影の主人公はテイバドールかなと思ったり。
テイバドール編のラストは少し涙ぐんでしまいました。
次作は「太陽の石」だからレイサンダーが主役かな?
彼の行く末も気になるしぜひ読みたいです。 -
一作目だけがすごい作家ではないことが、これで証明された。しかし筆力に関しては前作同様の感想を持っているけれども。ただ、解説を書いていた人は、筆力にも満足しているようで、ファンタジーを専門としてきた人と、私のように純文学を主としている者とでは感じ方が違うのだろうか。
それはともかくとして、光と闇が表裏一体であるということへの言及は、大人が読んでも納得のいく世界観の構築へ一役買っていると思う。魔法というファンタジックな心躍る描写だけでなく、その奥に一つの真理をも包含している奥深い作品だ。そしてなぜ題名が「月」なのかについて。確かに所々で月の描写は出てくるけれども、物語の中でそれほど重要な要素として出てきているわけではない。それでも「月」なのは、満ち欠けする月に光と闇の暗喩を担わせているからではないかと思う。そう考えると、最後の〈暗樹〉の言葉がいかに肝であるかということに思い至る。 -
こんなにも禍々しく、これほど強烈な悪意を発散する怖ろしい太古の闇に、なぜ誰も気づかないのか・・・。繁栄と平和を謳歌するコンスル帝国の皇帝のもとに、ある日献上された幸運のお守り「暗樹」。だが、それは次第に帝国の中枢を蝕みはじめる。コンスル帝国お抱えの大地の魔道師でありながら、自らのうちに闇をもたぬ稀有な存在レイサンダー。大切な少女の悲惨な死を防げず、おのれの無力さと喪失感にうちのめされている、書物の魔道師キアルス。若きふたりの魔道師の、そして四百年の昔、すべてを賭して闇と戦ったひとりの青年の運命が、時を超えて交錯する。人々の心に潜み棲み、破滅に導く太古の闇を退けることはかなうのか?
『夜の写本師』のときも設定の巧みさと独特な言葉の使い方に感嘆しましたが、同じ世界を舞台とした今作も良かった。闇と向かい合い自分なりに闘っていく魔道師たちの姿に、時代や風潮は違っても私たちが何と対面しなければならないのか、本当に恐ろしいものは過信した自分自身であると気づかされる。キアルスの過去がこんなものだったとは・・・ギデスディンの魔法はここから生まれたんですね。最後は怒涛の流れだったので、想像力が乏しいのか、いまいち映像が脳内で再現できない部分もあった。けど同時にこれがこの人の書く文章の魅力でもあるんだろうなぁ。カーランとの幸せな日々がもうちょっと書いてあればなお良かった。 -
読みごたえがあってとても面白かったです。大地の魔術師のレイサンダー、本の魔術師のキアルス、星読みのティバドール、三人の人生が深く描かれていて、大河ドラマを観ているような気になりました。
内容には辛い描写があるものの、常に希望も描かれていて、読む手が止まりませんでした。
個人的に、作者さんのネーミングセンスがすごいと思っていて、作品内で説明無しに単語が出てきても音の響きと前後の描写でなんとなく意味がわかるので、ストレス無く読み進められました。
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読み応えはあります。ただ前作よりも話のレイヤー数が増えている印象で、大体の物語は多くても3レイヤーぐらいなのを、惜しみなく新規レイヤーで乗算で重ねてくるので、体調が万全でないときに読むと私も闇にのまれそうでした。個人的に中学生ぐらいのときに出会いたかったお話です。次作は体調を万全にして臨みます。