夜の国のクーパー

著者 :
  • 東京創元社
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レビュー : 777
  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488024949

感想・レビュー・書評

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  • これはもしかして寓話?と思いつつ読み進む。半分まで来てもダイナミックな動きはなく、オーデュポンやゴールデンスランバーとは一線を画す作品なんだと理解。でも、よもや「透明の兵士が苦境を救ってくれると村人は思ったけど、実は猫とネズミが大活躍の話」だったら萎える…と不安がよぎったが、それは杞憂に終わり、残り3分の1くらいでちょっと盛り上がる。本当に残り数ページになるまで、いったい何が描かれてるのか掴めないままだったけど、複眼隊長が塀の外へと出かけるところで、ぼんやりと自分は何かを受け取った気になって、頬がゆるんだ。
    内容を、北の某国とか、民族紛争とか、になぞることもできそうだが、個人的に読み終わって強く思ったのは、猫に本気で話しかければ、で、向こうも本気になったら、もしかして言葉が通じるかも?!ってことだった。
    時々だけど、猫って本当に必死で鳴きかけて(話しかけて?)くることがあるから、そんなときは、とりあえず耳をすませてみようと思う。

  • 初伊坂作品。

    戦争で負けた国と、猫と、私の物語。
    語り手である猫がいい味を出していてとても可愛い。
    この国の秘密。猫と鼠。そして私。
    童話のような世界観の中に、物事の本質のようなものが垣間見えた。

    どういった物語を描く作家さんなのか全くわからず読んだため、
    けっこう深読みしながら読んでいたのだけど、
    大筋は序盤に感じたものに近かったかな。

    帯に書いてある「誰もがまったく読んだことのない」
    というよりは、誰もが読んだことはあるけれど全く未知の物語。

    帰ろう。
    毎日のように聞いてきた言葉がどこか懐かしくも切なくもある。

    こんな素敵なお話を作り出す作家さんなら、どんどん読んでみようかな。

  • 伊坂幸太郎待望の新作は、なんと猫が主人公のファンタジー。
    前半を読んだ段階で感じたのは、「あ、オーデュボンだ」という、伊坂フリークであれば
    当たり前の感情。実はあの世界、凄いとは思いつつもあんまりハマらなかった覚えが・・・。
    ということで、先行きが若干不安だったのだけど・・・。

    ・・・文句ありません、コレ♪
    そもそも伊坂作品には必ずあった童話的な要素が、とんでもなく高いレベルで昇華してる。
    本当に幼い頃に貪るように読んだアンデルセンやグリムと同様の高揚感が。
    ここに国家の在り方のようなやや重いテーマが絡んで来るのに、散漫な印象が無い。
    このビシッとした芯の通し方は相変わらず見事。さすがとしか言いようが無い。

    語り部に猫を持ってきたのも正解。何が起こってもほぼ自分のペースを崩さず、
    正しく猫のように話す主人公・トムは、この物語に無くてはならないストーリーテラー。
    決め台詞は「欠伸が出る」。・・・もう、最高。

    とにかくこの作品は、伊坂流ファンタジー・・・いや、伊坂流童話の完成形と言って良い。
    オーデュボンの世界にハマれた人はもちろん、僕のようなそうでも無い人にもオススメ。
    ・・・そうそう、終盤何故かちょっと泣けました(^^;)。

  • デビュー作「オーデュボンの祈り」を彷彿とさせるようなファンタジー。主人公と一緒に読者も異世界に迷い込みます。まるで村上春樹作品のように、物語の世界にトリップする快感だけが残る…そんなはずはないよなぁ、絶対どこかに伏線があって、どこかが根本的にウソで、読者をミスリードに誘う、そんな仕掛けがあるはず…鼠が猫にリーダーがウソをついて生け贄を差し出す…あ、それだ!クーパーなんているはずなくて、クーパーの兵士は鉄国へ差し出した奴隷で、複眼隊長はそれで利権を得ていて…え、占領していた兵士が実はクーパーの戦士!?「私」の他にも海客はいるだろうし、流された現代人がクーパーの伝説になったところまでは読めましたが、まさか小人の国だったとは…
    仲間を裏切続ける、小物の酸人が町を支配し、思わず騙されてしまう人の心と立ち向かう小さな勇気を持った人達が無残にも虐げられていく話にならなくてほっとしました。
    支配の仕組みについての警句はまさしくいつもの伊坂節。日本は今でもアメリカと中国に占領されていて、貢ぎ物をしているだけで、為政者はそれを知っていて、国民はみんな騙されているだけと隠喩しているというのは読み過ぎでしょうか?
    もう一つの主題は「帰る」でしょう。この辺は家庭を大事にする伊坂幸太郎らしいです。猫とですら話せたのだから、浮気した妻とも話しは可能だろう…ていうのは、酸人の例を考えると…騙されるだけになるのでは…

  • 猫の視点で描かれる、戦争と、世界の秘密についての物語。
    普段はハードカバーをあまり買わないのですが、「世界の秘密」というワードに惹かれてすぐ購入を決断。

    気になる「世界の秘密」についてはいろいろと予想のできるポイントが多く、読んでる間はずっと楽しかった。
    とにかく自分の予想に対する答え合わせがしたくて読むのを止めることができず、何日かかけて楽しむつもりだったのに1日で読み終わってしまうはめに。

  • なかなか話が先に進まず、伊坂作品好きの私にしては珍しく、途中で読むのを断念しようとしたが3分の2を過ぎたあたりから俄然面白くなり、そこから一気読み。

    猫のトムといえばトムとジェリー。
    「壁に激突する。衝撃で身体はぺしゃんこになって、壁に貼り付く。薄い布さながらの形になったが、そのうちに、頭の部分がめくれるように、剥がれ始める。山折り谷折り繰り返しながらその場に沈む。」
    このあと猫はペラペラの布状だった姿から、ポン、と音を立て元の形に膨らむところまで、まさしくあのアニメそのもので懐かしかった。

    p378
    「ああそうか、クーパーの兵士は本当に透明になったのだな、と思った」
    p399
    「猫と話が通じたくらいなんだから、その細君と話すのも訳がないだろうに」

  • 2019.08.06読了。
    今年26冊目。

  • だいたいのオチが読めたのと、物語が本格的に動くのが全体の半分を過ぎてからのため、かなり中だるみしたのがもったいない所。ただ小説の構造上の部分としては非常に興味深く、単なるエンタメで切り捨てることのできない話にはなっている。作者の小説を長く読み続けてきた人間には感慨深い物語かもしれない。

  • 動物の方が人間らしいような物語。人の当たり前と思っている事がパタパタとひっくり返される、冒険活劇。

  • 伊坂作品では時々現れる『現実世界と繋がっている異世界(?)』が舞台のお話。
    世界設定としてはオーデュボンの祈りに近いかな?

    今作ではその不思議な世界で事件が起こるわけではなく、(その国が隣国と戦争してるのを事件と呼ぶなら事件はあるけど)日本から迷い込んだ男が、その国の様子を伝え聞くところからお話が始まる。
    その話は、所々違和感や謎がある。
    最後には、その謎が全て明かされる仕組み。

    登場人物のうち半分ほどが猫なのだけど、猫の習性や仕草が盛りに盛り込まれていて想像しただけで可愛い。
    伊坂先生、猫飼ってるのかな。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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