福家警部補の再訪 (創元クライム・クラブ)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025335

作品紹介・あらすじ

鑑識不在の状況下、警備会社社長と真っ向勝負(「マックス号事件」)、売れっ子脚本家の自作自演を阻む決め手は(「失われた灯」)、斜陽の漫才コンビ解消、片翼飛行計画に待ったをかける(「相棒」)、フィギュアに絡む虚虚実実の駆け引き(「プロジェクトブルー」)…好評『福家警部補の挨拶』に続く、倒叙形式の本格ミステリ第二集。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ二作目。順番を飛ばしたけど楽しめる。警備会社社長、脚本家、ベテラン漫才師、天才造形師と福家警部補の対決。クオリティが高く、全編楽しめる。解説がとても興味深かった。コロンボ、古畑と続く倒述ものかつ本格の存在意義について。事件発生が早く、犯人役にも大物を起用できるため、視聴者を飽きさせずTV向きであったこと。隠された手がかりを明かす場合と犯人を罠に嵌める場合の二つの解決パターンがあり、本シリーズはより難易度が高い前者が多いこと。
    そう言われると、倒述ものを書くのって大変ですね。頭が下がります。本作ではベテラン漫才師の話が、ジンときて良かった。

  • ★あんた、面白い刑事やな(p.119)

    ■感想■
    ・福家警部補が魅力的に見えてきました。

    ■内容■
    相手は・・・
    ・元探偵の警備会社社長。
    ・人気脚本家。
    ・元売れっ子漫才師。哀しい。
    ・玩具企画会社の社長。

    ■設定■
    ・倒叙系ミステリ短編集。ほぼ「コロンボ」。道を極めた犯人の方々を一介の警部が徐々に追い詰めていく。
    ・パターン。事件が起こり、福家登場。その時点である程度犯人の目算がついているようでもある。コロンボもそうだったけど一種の超能力? その後福家による様々な人物への聞き込みがあり犯人にじわじわ近寄っていく。容疑者に対して情報と疑問を小出しに開示し圧力をかける。最後は犯人があっさり諦める。

    【福家】警部補。女性。縁なし眼鏡。ショートカット。小柄。三十歳超。鈴のような声。おっとりとして頼りなさそうでパッとせず油断を誘いがちな外観。だが、頭の回転が速く言動が次々に切り替わってゆき犯人や周囲はなかなか追いつけない状態で煙に巻かれている間にしつこくじりじり真相へと近寄ってくる、犯人にとってホラー的な刑事。完徹数日も平気なタフさも持つ。酒に強いことが判明。病院は苦手。映画はかなり好きなようだ。テレビ番組も意外に観ている。漫才にも詳しく一家言ある。特撮系にも詳しいらしい。《あんた、面白い刑事やな》第二巻p.119。《どこか人を安心させる力を持っているようだ。》第二巻p.189。《やれやれ、あんなんに狙われたら、犯人もたまらんで。》第二巻p.228

    【二岡友成/におか・ともなり】機動鑑識班刑事。福家が来るまで誰にも現場を触れさせないよう目を光らせている。

    【板垣】昨年配属された機動捜査隊員。柔道の元国体選手で大きい。強度の下戸。

    【上司】福家がしつこく質問するときなどにときどき使う言い訳。「うちの上司は細かいもんで」とか。実際はどんな人物か不明。

    【石松警部補】福家の同僚。名前はよく出てくる。中年警部補で最近疲れが取れにくい。

    ■福家警部補についての枝葉末節■

    【天宮祥子/あまみや・さちこ】江波戸図書館館長。先代オーナーを尊敬し宏久が売却しようとしていたのを止めた。
    【新井信宏/あらい・のぶひろ】玩具の企画専門会社「スワンプ・インプ」社長。過去に丸吉のソフビ人形の複製をしていたことを西村に嗅ぎ付けられ殺した。
    【池内国雄/いけうち・くにお】城北大学医学部教授。犯罪学の研究チームでカービングの研究をしていた。ヘビースモーカー。柳田に殺された。
    【石松和夫】捜査一課警部補。
    【市田珠子/いちだ・たまこ】江波戸図書館の事務員。死体の第一発見者。
    【今井圭造】腕のいい強盗犯。殺しはしない。
    【岩澤ゆかり】柿沼恵美の行きつけペットショップニノミヤのアルバイト。
    【内海珠雄/うつみ・たまお】漫才師。山の手のぼり・くだりの一人。天才肌。大洋芸能所属。
    【映画】レンタルビデオショップ「タダヤ」で福家が興味を示した映画は、頓田十絽兵衛監督の「偽金万歳」、小柳信二郎監督の「借金地獄は蜜の味」、近田三角主演の「沈黙の合気道」。うーん、B級っぼさいっぱいや。
    【江波戸康祐/えなみと・こうすけ】ミナト製紙創業者。江波戸図書館設立者。本を愛していた。故人。
    【江波戸宏久/えなみと・ひろひさ】江波戸図書館の現在のオーナー。売りたがっている。天宮祥子に殺された。
    【遠藤孝司/えんどう・たかし】火の玉タクシー運転手。内海=山の手くだりを死ぬ直前に運んだ。
    【大城加奈子/おおしろ・かなこ】藤堂の秘書で愛人。
    【大友哲/おおとも・てつ】燭台コレクター。商社勤務で世界中飛び回っている。
    【大野育子】クリーニング店「コメット」店主。歴史は長い。トラブルを起こさない、が社是。
    【岡山勝己/おかやま・かつみ】ニコニコローン社員。スキンヘッド。ドクロマークのジャンパー。
    【奥村紀之/おくむら・のりゆき】マックスジャパンパーサー。
    【オッカムの剃刀】オッカムの言葉《実在物は必要以上に増殖されるべきではない。》p.81。乱暴な言い方をすると《物事は単純に見ろということだ》p.82
    【小野木マリ子】女優。柿沼恵美を殺す。
    【カービング】復顔術。
    【柿沼恵美/かきぬま・えみ】女優。四十七歳。デビュー作は「女怪盗六〇四」は福家も繰り返し観ていた。オーディションのライバル小野木マリのスキャンダルを探しだしおどす。
    【川上直巳/かわかみ・なおみ】元フリーの調査員。かつて原田明博と組んで探偵と強請屋で稼いだ。
    【川崎吉光】両国演芸場オーナー。パッとしない芸人たちのために赤字続きの昼の部を続けている。夜の部はメジャー芸人たちが登場するので常に大入り。一世を風靡した山の手のぼり・くだりも今は昼の部芸人。オールナイト興行もあり福家はその常連さん。
    【川本典明】城北大学の学生。池内に教わっていた。
    【熊本敏/くまもと・びん】熊本酒店の社長。谷元酒造の製品販売を打ち切った。
    【拳銃トリオ】両国演芸場に出ている芸人。婦人警官ネタばかりやる。福家よりも警官らしい。
    【小寺浩二/こでら・こうじ】模型塗料メーカー「クレオ」の営業マン。新井に商品サンプルを持ってきた。
    【後藤三吉】段ボールハウス住人。今井や田所の知人。
    【小堀秀雄/こぼり・ひでお】ミナト製紙総務部。
    【鷺山良一/さぎやま・りょういち】闇金「ニコニコローン」社員。威圧感がある。
    【佐藤一成/さとう・かずなり】「剛腕佐藤」と呼ばれる東京酒造組合副理事。五十一歳。佐藤酒造は機械頼りの粗悪品しか作っていない。谷元酒造を買収しようとして谷元吉郎に殺された。
    【島田ハナ】マニア向け玩具専門店「島田商店」の店主。お茶の水にある。
    【城北大学】犯罪学の特別課程がある。
    【白石滋記/しらいし・しげき】バー「リッジ」勤務。アルバイトから始めて三年でようやくカウンターを任された。二回出演したので準レギュラー。
    【新開栄/しんかい・さかえ】京都の古物商。辻の能力を買っていた。二回出演したので準レギュラー。
    【須崎知彦/すざき・ともひこ】小野木マリ子のマネージャー。
    【外山菊男/そとやま・きくお】映画監督。
    【曾根卓夫】駐車場経営。五年前、蔵に所蔵されているものを辻に売った。二十歳で亡くなった息子の誠は藤堂と友人だった。
    【高山】マックスのサービススタッフ。
    【多々見正一/たたみ・しょういち】福家を刑事だと見抜いた数少ない人物の一人だが捜査一課とまではわからなかった。特撮ヒーローもの「マスターレンジャー」の人気キャラであるマスターピンクの制服を倉庫から盗み出した。
    【立石浩二/たていし・こうじ】漫才師。山の手のぼり・くだりの一人。大洋芸能所属。努力型。
    【田所均/たどころ・ひとし】とあるマンションの住人。
    【田村拓郎/たむら・たくろう】谷元酒造の蔵人。
    【谷元吉郎/たにもと・よしお】谷元酒造の社長。採算よりも、よい酒を作りたいタイプで自他ともに対し厳しい。
    【月の雫】谷元酒造のつくる名酒。
    【辻伸彦/つじ・のぶひこ】美術骨董の世界では知られており全国を駆け回り掘り出し物を見つけ出してくる目利き。藤堂の原稿(盗作だった)を手に入れ強請に使ってきた。《いまど携帯もパソコンも持たず、メモだけを頼りに日本中を飛び回っている》第二巻p.53。このやり方もいいかもしれません。
    【筒井】城北大学心理学科教授。
    【津村栄吉】警察を退職して十年。ヒマだ。
    【手帳】福家は大事なときには手帳を取り出してメモを取る。記憶力よさそうやし必要ない気もするけどなんかの儀式かもしれない。
    【土井昭輔/どい・あきよし】柿沼恵美のマネージャー。
    【藤堂昌也/とうどう・まさや】脚本家。
    【特急こだま・ひかり】山の手のぼり・くだりの師匠。
    【殿山大五郎】殿山書店店主。江波戸康祐を尊敬していたようだ。ランドール・コルスコ作品集の第七巻を入手し天宮に連絡してくれた。
    【永田】マックスの乗員。
    【中谷良平/なかたに】マックスの船長。
    【中西友也/なかにし・ともや】谷元酒造の見習いだったがクビになった。
    【中野茂】マックスの乗員。
    【鍋谷五郎】全国八十店舗を展開する「リカーショップ ウェアハウス」の社長。
    【ニコニコローン】街金と思われる。社員は鷺山とか岡山とか出てきた。
    【西村浩】新井信宏を恐喝し殺された。
    【則武太郎/のりたけ・たろう】佐藤酒造の警備員。
    【畠山茂/はたけやま・しげる】カメラマン。
    【初田昌子/はつた・まさこ】文具店店主。山の手のぼり・くだりの漫才が好きだった。
    【花園】マックスの三等航海士で衛生管理者の資格を持つ。
    【原田明博/はらだ・あきひろ】ハラダ警備保障の社長。かつて探偵事務所が経営不振だった頃川上直巳と組んで探偵と強請屋で稼いでいた。
    【ピナクル】池内がすっていたたばこの銘柄。比較的珍しい。
    【広川太郎】交番巡査。昇進試験勉強中。
    【ブルーマン】特撮もののようだ。来期の造形を新井が中心になって進めている。
    【マスターレンジャー】特撮ヒーローもの。
    【マックス】豪華客船をイメージしたフェリー。
    【松中】ニコニコローン社長。いまだ姿はみせていない。
    【右田謙三/みぎた・けんぞう】俳優。
    【三室勘司/みむろ・かんじ】俳優。身長一八〇センチ。暗がりでは恐怖を与えるタイプ。
    【森藤サブロウ】レンタルショップ「タダヤ」店主。
    【柳田嘉文/やなぎだ・よしふみ】城北大学講師。通称「教授」。担当している「犯罪学総論」はとても人気が高い。五年前まで科警研科学捜査部主任。
    【山の手くだり】→内海珠緒
    【山の手のぼり】→立石浩二
    【吉野利香/よしの・りか】女優?
    【ランドール・コルスコ作品集】江波戸康祐が生前集めようとしていたが第七巻だけ手に入れられなかった。
    【リッジ】バー。ピナクルという銘柄のたばこを店の前の自販機に入れており、店にも置いている。池内、辻とお得意さんが殺された。
    【レンタルビデオショップ「タダヤ」】→タダヤ

  • 福家警部補が活躍する、倒叙形式ミステリーの第2作です。4作の短編が収録されていましたが、その中では人気脚本家の事件「失われた灯」が一番面白かったです。
    第1作と同様、主人公の福家警部補に現実感がないのが残念。

  • 大好きなシリーズです!

  • 読む前から
    「さー、今回はどんなお話かな」
    と、わくわくしてページを開けるというのは、ほんま楽しいね!!

    今回もかなり面白かったです。
    「相棒」なんてオチが哀しすぎるよね~。

    ただ、二作目とあってあれこれ練らないとあかんせいか、冒頭の犯人と被害者の絡みがわかりにくい話もあった(私の読解力の問題か)。
    もちろん、読んでいくにつれて犯人と被害者の関係もわかってくるけれど、ここの確執にぐっと引き込まれるのがこの倒叙ミステリの味でもあると思うので、ここはついていきたい。

    (シナリオの話と玩具の話が、若干ついていけなかった)

    でも、シナリオの話は犯人の行動が狡猾で、そこはかなり面白かった。

    福家シリーズはこの二冊しかないのかな・・・。
    著者の別シリーズにも手を出していくかー。


    そしてあとがきを読んで
    「なるほど!」
    と、思ったけれど、福家の心情描写だけは絶対にしないのだそうだ。
    なるほどなあ。だからこその倒叙ミステリ、だからこそのここまでの面白さか!

    モノローグとして心境をつらつら並べるんじゃなくて、行動や会話から(主に犯人の)心理を読者に想像させるって、すごいなあ。

    (2016.06.25)

  • 連続テレビドラマをみているような事件と犯人と福家警部補の連続
    犯人の情念が浅いのか記憶に残らない

  • 現在出版されている福家シリーズ3巻はこれで読了。
    ドラマでも良かったが『失われた灯』が一番面白かった。

  • なんだろう
    福家警部補のキャラに何となくあざとさを感じてきて
    前作ほど楽しめなかった。

    いちばん面白かったのは山の手のぼりくだりの漫才だったり(爆)。
    支配人も舌を巻く福家警部補の造詣の深さには驚きだったが。

  • (2014-04-13L)

  • テレビドラマ化されていますが、小説の方はシンプルで読みやすかった。ストーリーも倒叙物として良くできてますね。軽く読めます。

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著者プロフィール

大倉崇裕(おおくら たかひろ)
1968年京都府生まれ。学習院大学法学部卒業。97年、「三人目の幽霊」で第四回創元推理短編賞佳作を受賞。98年、「ツール&ストール」で第二十回小説推理新人賞を受賞。2001年、『三人目の幽霊』でデビュー。代表作である白戸修シリーズ、福家警部補シリーズ、警視庁いきもの係シリーズは、いずれのシリーズもTVドラマ化されている。

「2022年 『殲滅特区の静寂 警察庁怪獣捜査官』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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