江神二郎の洞察 (創元クライム・クラブ)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 952
レビュー : 153
  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025403

作品紹介・あらすじ

その人の落とした『虚無への供物』が、英都大学推理小説研究会(EMC)入部のきっかけだった-。大学に入学した一九八八年四月、アリスは、江神二郎との偶然の出会いからEMCに入部する。江神、望月、織田とおなじみの面々が遭遇した奇妙な出来事の数々。望月の下宿でのノート盗難事件を描く「瑠璃荘事件」をはじめ、アリスと江神の大晦日の一夜を活写する「除夜を歩く」など、全九編収録。昭和から平成への転換期を背景に、アリスの入学からマリアの入部までの一年を瑞々しく描いた、ファン必携のシリーズ初短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 学生アリスシリーズの短編集。
    アリスの入部を描いた「瑠璃荘事件」からマリアの入部を描いた「蕩尽に関する一考察」まで、全九編収録。

    季節は春から次の春へ。
    アリスが「有栖川君」から「アリス」になるまで、マリアが「有馬さん」から「マリア」になるまでのお話にとても感動。
    長編のような大きな事件は起きないけれど、この短編のような時間が推理小説研究会の絆を強くしているんだな。
    推理ゲームや肝試しのような遊びに私も参加したくて仕方ない。
    それにモチさんの下宿や江神さんの下宿等々、物語の舞台が登場人物への理解を深めてくれるのも嬉しい。
    犯人の推理では役に立たない想像力を駆使して頭の中で生き生きと話すEMCのメンバーを妄想しました。

    濡れ衣を着せられたモチさんの無実を証明するべく力を合わせる「瑠璃荘事件」。
    モチさんと同じ下宿の学生との喧嘩の原因がくだらなくて、とてもいい。
    モチさんの可愛さにキュンとします。

    とても綺麗な「ハードロック・ラバーズ・オンリー」。
    さらりと終わってしまうけれど、絵が浮かぶ素敵なお話。

    第一次夏合宿と称してモチさんの実家に泊まりに行く「やけた線路の上の死体」。
    夏休み!って感じでとてもいい。あぁ…またこんな時間を過ごしたい。
    いや、死体には遭遇しなくていいけれど。
    モチさんのお母さんに緊張する信長さんが可愛い。

    石黒さんの謎が解けた「桜川のオフィーリア」。
    「女王国の城」に繋がった。
    事件はとても複雑で切ない。
    こんなに綺麗に描写される死体って初めてかもしれない。

    この短編集の中で1番好きかもしれない「四分間では短すぎる」。
    もう皆可愛い!
    そして会話がすごくいい!
    アリスが駅で聞いた意味不明な言葉から繰り広げられる推理ゲーム。
    先輩達のチームワークに圧倒されます。
    そして『九マイルでは遠すぎる』を読みたくなった。

    え?怪談?と驚いた『開かずの間の怪』。
    江神さんが素敵すぎる。
    どうしてあの状況で笑えるのか。尊敬の一言です。
    そして「スッポン」。私もそう呼んでしまうかもしれない。

    身代金が千円の誘拐事件を描いた「二十世紀的誘拐」。
    明かされる前にトリックが分かってちょっと嬉しかった。

    モチさんのミステリー小説が読める「除夜を歩く」。
    かなりの力作!ちゃんと読者への挑戦もあって楽しめました。
    犯人は分からなかったけど、モチさんはとてつもなく可愛いということが分かった。(そんなことばっかり考えてるわけで…)
    江神さんとアリスの会話が意味深で、三十歳になった時に江神さんがどう変わるのかとても気になった。
    どうしても幸せになってほしいと願う。

    マリア入部の『蕩尽に関する一考察』。
    やはりモチさんが可愛い。(しつこい)
    マリアの下宿も外観だけだけど登場。オシャレな雰囲気。
    事件はとても辛い。
    やり場のない怒りを持て余して相手に痛手を負わせるために破滅していってしまうこと。
    やり遂げたって救われないけど、何もしないでもいられない。
    想像するととても痛い。
    最後にマリアが言った言葉に救われる。
    それしか救いがないように思う。
    痛くても苦しくても、どうにか自分を納得させていかないといけないことってたくさんあるんだ。

    あとがきに次の短編集が<卒業アルバム>になるとあって、早く読みたいような終わってほしくないような複雑な気持ちになった。
    愛しくて仕方ない英都大学推理小説研究会の面々にまた会いたい。
    叶うなら1日も早く。

    • 九月猫さん
      takanatsuさん、こんばんは♪

      わあ、ありがとうございます。
      暑いのがダメなくせに冷房がニガテなのですけれど、
      今年のこの暑...
      takanatsuさん、こんばんは♪

      わあ、ありがとうございます。
      暑いのがダメなくせに冷房がニガテなのですけれど、
      今年のこの暑さは冷房なしでは過ごせなくて。
      暑さでぐったり→冷房でだるだる……の夏バテスパイラルに
      入ってしまって(^-^;) 軟弱なんです(笑)

      takanatsuさんも、ノド、気をつけてくださいね!!
      冷房、すごく乾燥しますものね(ノω・、)

      今日、はりきって図書館に行ってきました!がっ!
       お 休 み でしたΣ( ̄□ ̄!)がびーん。
      そっかー、図書館もお盆はお休みするのねー。
      ひとつ賢くなった(?)夏でした(笑)

      『五十円玉二十枚の謎』再読なさったのですね。
      楽しい再読だったようで、なんだかわたしも嬉しいです♪
      2013/08/15
    • takanatsuさん
      九月猫さん、こんばんは。
      「暑さでぐったり→冷房でだるだる……の夏バテスパイラルに
      入ってしまって(^-^;) 軟弱なんです(笑)」
      屋外と...
      九月猫さん、こんばんは。
      「暑さでぐったり→冷房でだるだる……の夏バテスパイラルに
      入ってしまって(^-^;) 軟弱なんです(笑)」
      屋外と屋内の温度差もつらいですよね…。
      夏大好きなんですが、ここまで暑いと困ってしまいます。
      「そっかー、図書館もお盆はお休みするのねー。
      ひとつ賢くなった(?)夏でした(笑)」
      なんと!それはショックですね!
      私は毎週日曜日が図書館day(笑)なので、図書館のお盆事情を知りませんでした。
      お盆休みとは…罠ですね。
      「楽しい再読だったようで、なんだかわたしも嬉しいです♪」
      ありがとうございます!
      2013/08/18
    • 九月猫さん
      takanatsuさん、こんばんは♪

      地域によって違いがあるのかもしれませんが・・・
      お盆の図書館、15日「だけ」お休みでした!
      ...
      takanatsuさん、こんばんは♪

      地域によって違いがあるのかもしれませんが・・・
      お盆の図書館、15日「だけ」お休みでした!

      まさかまさか、一日だけのお休みにハマるとは。・゚・(ノД`)・゚・。

      近いうちに出直しますので、レビューした暁には
      「今度はちゃんと開館日に行けたんだな」と(* ̄ー ̄*)ニヤリとしてください(笑)
      2013/08/19
  • アリスが英都大に入学した1988年4月から翌年の春までの期間。9つの短編集。どれも楽しいけれど、「開かずの間の怪」がいちばん笑えて大好きだ!!雑誌などでほとんどの短編は読んだことがあったけれど、一冊にまとまったのは本当に嬉しいな♪ 書き下ろしの「除夜を歩く」も良かった。
    好きなことについて友人や仲間と集い語り尽くす…という学生らしい日常がなんだか眩しくて懐かしい。
    長編読んでいても全然気にしていなかったのだけれど、今回いくつかの短編で昭和最後の年1988年を意識させられる記述があって、これって物語の背景として結構大事なことなんだなと改めて思った。今や身近に無いことを想像できないようなインターネットや携帯電話がまだ一般的ではなかった時代の学生を描いているという点で。
    それから、帯の文を読んで、アリスを女の子と勘違いする人、多いのではないだろうか…と(笑)

  • 待望の実に待望の学生アリスシリーズ短編集。加筆訂正により時系列の流れが作られ、アリスが推理小説研究会に入り、長編「月光ゲーム」を経てマリアが仲間入りするまでの一年間を描く青春小説の色を強くしています。
    もちろんミステリとしても素敵。決して派手さはありませんが、ミステリとは何か、何がミステリの面白さなのかを考えさせてくれる要素が所々に表れます。特に書き下ろしの「除夜を歩く」では作中作を交えてアリスと江神さんがミステリについて語り合うという構成のため、改めてミステリの面白さを再認識させられました。やはり僕は本格ミステリがそして有栖川ミステリが好きなんですね。

  • 学生アリスシリーズ5作目。短編集。
    「瑠璃荘事件」
    アリスが実際に目の当たりにする、江神の探偵としての能力を発揮した事件。
    論理的に推理を進めていく江神だが、仲間を信じるという絶対的に譲れない思いが前提にある。

    「やけた線路の上の死体」
    江神が読んでいたテネシー・ウィリアムズ「やけたトタン屋根の上の猫」にひっかけたタイトル。
    トリックそのものは走る列車を利用したもので、被害者の腕時計が壊れた時間を指し示しているというような、ミステリーアニメのようなトリックだけれど、そこに至るまでの過程を楽しんだ。

    「桜川のオフィーリア」
    ドラマ「臨床犯罪学者 火村英生の推理」の中で、推理作家の有栖川が自身の作品としてタイトルをあげている。
    江神の先輩が相談のために大学を訪れる。
    川の中で亡くなっている美少女が写っている3枚の写真についてだった。
    高校の同級生だった彼女は、ある日突然溺死体となって発見された。
    第一発見者は釣り好きだった担任教師。
    では、写真の持ち主である友人の穂積は、いつ写真を撮ったのか。
    青春時代の淡くも純粋で切ない恋心を描いた物語。

    「四分間では短すぎる」
    「四分間しかないので急いで。靴も忘れずに。・・・いや・・・Aから先です」
    偶然隣あった公衆電話の会話が耳に入ったアリスは、その会話が気になって仕方がない。
    夜に江神の部屋に集まったとき、その謎を話しだす。
    EMCの4人のメンバーは、会話だけを頼りに推理を重ねていく。
    新入生のアリスを先輩3人が可愛がっているようすがみてとれて、ほほえましいラストになっている。

    「蕩尽に関する一考察」
    ときは春。
    桜は散り、アリスが入学してから1年の時が流れた。
    短編でつづるアリスの大学生としての1年間を追った短編集は、「学生アリス」シリーズを読んでいるといろいろと楽しめる。
    この物語でマリアが初登場する。

    余談だが火村を主人公としたドラマの中で「桜川のオフィーリア」が登場しているので、タイトルだけは知っている人もいるのではないだろうか。

  • 待望の! エガアリシリーズ短編集。
    アンソロジーとかに収録されたヤツの再録もあって、再読も幾つかあったのだけれど、それでもこうして時系列で並べて読むと、彼らの成長物語っぽくて味わい深い。
    ああ、あの長編と長編の間で、アリスたちはこうやって悩み苦しんでたのねーと。

    ふと気づいたのだが、ヒムアリに女性が介入してくるとなんかムカっとするのだが、エガアリでは全然平気なんだな。ってか、マリアちゃん大好きなんですけど。
    なんでだろw

    アリス先生を2冊連続読みしたら、すっごくミステリ成分が充電された気がします。幸せだー♪

  • 読み終わって最初に思ったことは、「私にもこんな先輩がいたらなぁ」であった。
    私の頭に浮かんだ稚拙な推理を、愉快な先輩たちがぽんぽんぽんと否定してくれる様は実に面白い。

    ところで、この作品は昭和から平成に元号が変わる時期を舞台にしている。
    昭和64年の後期は自粛ムードであったという話は聞いたことがあるが、私はまだ幼児であったため記憶にない。
    ただ、その頃は父親が頻繁にレンタルビデオ店に連れていってくれて、家にいる間はずっとアニメを観ていたと記憶している。
    作中に頻繁に自粛ムードがでてくるため、少しでも楽しいものをみせてあげようという親心を、いまさらになって知った。
    ちなみにそのアニメは今も大好きで、グッズを買いあさっている。
    思わぬところで自分の成り立ちに出会って、嬉しい気持ちで読み終えた。

  • 火村英生が出てくる作家アリスとは別の学生アリスシリーズの短編集。
    『女王国の城』を手に取る前に読みたい一冊。ハードロック・ラバーズ・オンリーがとても素敵。
    1つ目の短編の「現実の名探偵は人を信じることができる」というアリスの台詞が印象に残る。
    大学時代がひどく恋しくなるし、無為の会をしたくなる。

  • 江神二郎シリーズ(現時点で)唯一の短編集。
    これまでの長編の間を埋める感じのお話がいろいろと。。アリスが英都大学推理小説研に入部しマリアが入部してくるまでの1年間。
    どの話も非常に面白かったですが、江神二郎とアリスの大晦日の一夜「除夜を歩く」がよかったですね。青春ミステリっぽさが凡百の「青春ミステリ」よりもずっと青春ミステリ感がでていました。
    現時点での最新作「女王国の城」までの間を埋める短編もそのうちでてくるのだろうか?あと数冊で完結してしまうシリーズとのことですが・・・楽しみに待っています。

  • 大学に入ってからの、9つの短編集。

    長いものあり、短いものあり。
    登場人物もサークルの人間が固定されているので
    人が分かりやすかったです。
    人が殺された推理ものは1つだけで
    日常推理状態でした。
    要所要所に、長編の事件と思わしき話をしていましたが
    読んでいなくても大丈夫な流れでした。

    想像しても遭遇しても一番怖いのは
    開かずの間、ですが…。
    いや、きっとあれは見間違い。

  • 短編でさくさく読めるけどちゃんとミステリで面白かった。
    特に「四分間では短すぎる」が良かったかな。

    月光ゲームの後、気持ちが日常に戻り切れないところとか、
    リアルでよかった。
    小説の中の人物たちも毎日生活してるんだと。
    そりゃそうだよね、殺人現場に居合わせたらダメージ受けるよなぁと思ったのがリアルで新鮮でした。

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著者プロフィール

有栖川 有栖(ありすがわ・ありす)
1959年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。’89年『月光ゲーム』でデビュー。’03年『マレー鉄道の謎』で第56回日本推理作家協会賞、’08年『女王国の城』で第8回本格ミステリ大賞、’18年「火村英生シリーズ」で第3回吉川英治文庫賞を受賞。本格ミステリ作家クラブ初代会長。近著に『カナダ金貨の謎』、『こうして誰もいなくなった』など。

「2020年 『インド倶楽部の謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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