少女の時間 (創元クライム・クラブ)

著者 :
  • 東京創元社
3.46
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本棚登録 : 108
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025489

作品紹介・あらすじ

月刊EYESの小高直海経由で、大森で発生した未解決殺人事件を調べ始めた柚木。二年前、東南アジアからの留学生を支援する組織でボランティアをしていた女子高生が被害にあった事件だが、調べ始めたとたんに関係者が急死する事態に。事故か殺人か、二年前の事件との関連性は果たして? 美人刑事に美人母娘、美人依頼主と四方八方から美女が押し寄せる中、柚木は事件の隠された真実にたどり着けるのか──。“永遠の38歳”の青春と推理を軽やかに贈る、最新長編。柚木草平初登場作『彼女はたぶん魔法を使う』を思わせる、ファン必読の書。

感想・レビュー・書評

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  • 作者である樋口有介氏への手紙に代えて───。

    冒頭───
     スカイツリーより東京タワーのほうがレトロでおしゃれ、というのはどういう価値観だろう。中年女ならまだしも小学六年生の加奈子がいだく感想としては、生意気すぎないか。俺のほうは高所恐怖症だから東京タワーでもパスしたかったが、「月に一度は父娘でデート」という契約だから仕方ない。別居してから三年、その契約がいつ成立したかは知らない。
    ──────

    と、いつものように冒頭を引用しましたが、いきなり加奈子ちゃんとの楽しい会話が出てくるので、そちらも引用。

    「ねえパパ、あのこともあるし、パパのほうから電話してくれない?」
    「今はちょっと体調が悪い」
    「ママの話になると、いつもパパ、体調が悪くなるよね」
    「自己防衛本能かな」
    「ずるいだけでしょう」
    「あらゆる手段と能力を駆使して自己の生存を保障する。動物的に正しい反応さ」
    「都合が悪くなると、いっつも言葉でごまかすんだから」
    「言葉でごまかすのが商売だ。ジャーナリストとして有能な証拠でもある」
    「有能なジャーナリストがどうしていつも貧乏なのよ。オーストラリアのカモノハシだって、まだ見にいけない。わたし、来年にはお老婆ちゃんになっちゃうよ」
    (P4)


    ようやく帰ってきた柚木草平───。

    樋口さん、待ちましたよ。
    いつ以来ですかね? 
    調べたら、加奈子ちゃんが主役の「片思いレシピ」を別にすれば、「捨て猫という名前の猫」(2009年3月)以来なので7年振りですね。
    ずっと待ち焦がれていたのですから、柚木草平シリーズの復活を。

    もう読み始めたら止まりません、このシリーズは。
    相変わらずの柚木草平の洒落た台詞。
    娘の加奈子ちゃんが小学六年になったのだから、柚木さんも永遠の38歳ではなく、40代になったということですね。と思ったら、あれ、まだ38歳だ。加奈子ちゃん、前から小学六年生でしたか?

    女子高生の未解決事件の調査から始まるとなれば、そこから先はお決まりの美女軍団の登場と当然期待が高まります。見事にその期待通りの、下は美人女子高生から上は40代の色気をあわせ持った女性まで。

    いつもいつも柚木さんがうらやましくて仕方ありません。
    しかも、そのうちの誰かとはすぐにいい仲になってしまう。
    今回は登場する美人キャラの書き分けがまた絶妙です。
    刑事も美人、さらには担当記者小高さんの大学時代の友人まで出現。
    そして、その美人刑事と小高さんが柚木さんの住まいで鉢合わせ対決するとは。

    展開するストーリーも興趣をそそりましたが、なんといっても、柚木さんと加奈子ちゃんや美女軍団との洒落た会話のキャッチボールを書ける作家は、樋口さん以外に今のこの日本に存在しません。

    チェストをあけてTシャツや下着類を点検しているとき、上着の内ポケットでケータイが振動する。相手は加奈子だ。
    「パパ、今お電話して、大丈夫?」
    「ちょうどお前の声を聞きたいと思っていたところだ」
    「娘まで口説かなくていいよ」
    「いやあ、つい、習慣で」
    (200P)

    「加奈子なあ、実はパソコンを導入して、今日から伝えるようになった。あとでメアドを送るからお母さんにも伝えてくれ」
    「パパ、最近ケータイとかパソコンとか、頑張ってるね」
    「流行に敏感なんだ」
    「女子高生のカノジョができたとか」
    「あのなあ、どうしておまえは話を・・・・・・とにかくあとで、メアドを送る。だがケータイの件はぜったい、お母さんには内緒だぞ」
    「承知しました」
    (202P)

    「夢のなかで肉ジャガを食べようとすると、ぽろっとお箸から落ちて。また食べようとすると、次もぽろっと落ちて。そんなことを何度かくり返したとき、柚木さんのベッドで目が覚めました」
    「うん、よかった。絶世の美女でも足の中指が長いことに、悩んだりする」
    「でもわたしのつくった肉ジャガより、夢の肉ジャガのほうが美味しいと思います」
    「青木昆陽に伝えておこう」
    「柚木さん、お料理が得意なんですね」
    「そのうちジャガ芋のピザを・・・・・・彼女の名前が思い出せない」
    「死んだ父もお料理が得意でした。学校も近いし、またうかがいます」
    「好きにしてくれ。そのうちジャガ芋のピザを・・・・・・」
    「タバコが落ちますよ」
    「俺は奈落へ落ちていく」
    「父も酔うとだらしのない人でした」
    「俺は酔っても洗濯ができる」
    「わたし、ファザコンなんでしょうかね」
    「そうだろうな。そうか、柑奈くんはもうすぐ、ペルーへ・・・・・・」
    柑奈と千絵と美早がいっせいにスカートをめくり、そろってジャガ芋を踏みつぶしはじめたのは、なぜだろう。
    (269~270P)

    こんな楽しい会話、樋口さん以外誰も書けません。
    今回は前にも増して絶好調の柚木草平。今までのシリーズのなかでも、会話や展開の面白さや楽しさはナンバーワンかもしれません。

    あなたが「ぼくと、ぼくらの夏」でサントリーミステリー大賞読者賞を受賞したとき、故開高健氏が絶賛したのは、このようなキレのある洒落た会話や文章に対してのはずです。

    文中で「風町サエシリーズ」の風町女史も登場していますが、女性一人称のハードボイルド文体は、やはり違和感があるので柚木草平シリーズに集中してください。
    このシリーズを永遠に書き続けてください。
    あなたのデビュー時代からの大ファンである私からのお願いです。

    というわけで、久々の柚木草平シリーズを存分に堪能させていただきました。

    本当に樋口さんに手紙書いて送ろうっと・・・・・・。

    • 杜のうさこさん
      koshoujiさん、こんばんは~♪

      『この世にたやすい仕事はない』へのコメントありがとうございます!

      ご覧になったんですね!隠...
      koshoujiさん、こんばんは~♪

      『この世にたやすい仕事はない』へのコメントありがとうございます!

      ご覧になったんですね!隠してたのに(笑)
      本棚に待機中なの知ってましたから~♪
      大丈夫そうでよかったです(*^^*)

      立て続けのレビュー、うれしいです。
      樋口 有介さん、何作か読んでますが、このシリーズは未読です。

      この軽妙な感じの会話、かなり好きです。
      これは絶対読まなくちゃ!(#^^#)
      2016/02/06
    • koshoujiさん
      うさ子さん、こんんばんは。
      またコメントがブクログから届かなかくて、今気づきました。どうしたんでしょうね? システム崩壊か?
      柚木さんの...
      うさ子さん、こんんばんは。
      またコメントがブクログから届かなかくて、今気づきました。どうしたんでしょうね? システム崩壊か?
      柚木さんの会話は軽妙洒脱というかなんというか、その中でも今回は絶好調です。
      今ならまだ図書館予約もさほど多くないので、早く借りられると思います。
      是非お読みください。これまでのシリーズのなかでも最高傑作かもしれません。
      2016/02/09
    • 杜のうさこさん
      koshoujiさん、こんばんは~♪

      また障害ですか。今回、私の方は今のところ大丈夫です。
      困りますよね。使いづらくなっただけでも大...
      koshoujiさん、こんばんは~♪

      また障害ですか。今回、私の方は今のところ大丈夫です。
      困りますよね。使いづらくなっただけでも大変なのに~。
      やっぱり経営統合が響いてるんでしょうか?

      あっ、でもコメントは気にしないでくださいね。
      音沙汰なくても、またなにやらお忙しくされてるんだなぁと思ってますから(#^^#)
      ちなみに「お雑煮離婚」面白かったです!
      ”私感”も含め楽しませていただきました♪

      『ネオカル日和』にいいね!をありがとうございます!
      読み終えてからkoshoujiさんの感想を知りたくて、本棚で探したんですが残念。
      『図書館で暮らしたい』早速予約しました。

      柚木草平シリーズも早く読みたいです。
      やはり一作目から読んだ方がいいですよね。
      2016/02/10
  • 柚木草平シリーズ。相変わらずの軽妙で少しシニカルでウィットに富む会話の数々に魅了される。あまりにも美女ばかり登場するのは如何なものか、とは思うが。吹石刑事が良い味付けになっている。追う事件のプロットはかなり弱い気がするが、そこはまあそれとして。会話の妙だけで十分楽しめる。

    • koshoujiさん
      初めまして。wake様、全く同感です。私も樋口さんの会話の大ファンです。来月には柚木草平シリーズの新刊が発売されますね。とても楽しみです。
      初めまして。wake様、全く同感です。私も樋口さんの会話の大ファンです。来月には柚木草平シリーズの新刊が発売されますね。とても楽しみです。
      2019/06/09
  • 女たらしの警官上がりのジャーナリスト 柚月草平
    ある意味 男にとっては憧れ(笑)
    いろんな美女に囲まれながら
    四苦八苦しつつも 事件の真相を突き止め
    美女たちと 時を過ごしていく。
    ああ
    いいなあ(笑)

  • +++
    月刊EYESの小高直海経由で、大森で発生した未解決殺人事件を調べ始めた柚木。二年前、東南アジアからの留学生を支援する組織でボランティアをしていた女子高生が被害にあった事件だが、調べ始めたとたんに関係者が急死する事態に。事故か殺人か、二年前の事件との関連性は果たして? 美人刑事に美人母娘、美人依頼主と四方八方から美女が押し寄せる中、柚木は事件の隠された真実にたどり着けるのか──。“永遠の38歳"の青春と推理を軽やかに贈る、最新長編。柚木草平初登場作『彼女はたぶん魔法を使う』を思わせる、ファン必読の書。
    +++

    柚木草平、相変わらず女性にマメである。というか、女難の相が出ているとも、個性的な女性に囲まれる宿命にあるとも言えるかもしれない。ともかく、女性の方から近づいてくるのだから、避けようがない、といった風でもある。だが、ひとたび事件が絡むと、目のつけどころは的確であり、――そうは見えないが――意外にフットワークも軽く、見事な推理で真実に近づいていく。警察にはなかなかできない融通の利く調査で、真相にたどり着いたとしても、罪を問う義務はない。今回も、その先どうなるのかは想像するしかない。それがまた人間臭くていい。娘・加奈子との関係がこの先どうなっていくのかも気になるシリーズである。

  • 柚木草平シリーズ最新作。
    ファンには堪らない仕上がり。
    いつもより締感やうら哀しい雰囲気、事件のやるせなさが抑え気味で、代わりに主人公と彼をとりまく美女たちによる喜劇的な要素が大きかった。彼女らの出演に関して、今作はとにかく出し惜しみがなく、主人公を軸にかけあいをするシーンのセンスはとても好みで、いくらでも読んでいられる。
    いつもはどこか寂しげな主人公も、今回は楽しそうにみえたのが、なによりよかった。
    他シリーズのキャラも友情出演するサービス具合にも感激で、初作以来のシリーズ傑作だと思う。
    次回も心から楽しみ。
    5-

  • *月刊EYES編集部経由で、大森で発生した未解決殺人事件を調べ始めた柚木。二年前に東南アジアからの留学生を支援する組織でボランティアをしていた女子高生が被害にあった事件だが、調べ始めたとたんに関係者が急死する事態に。事故か殺人か、美人刑事に美人母娘、美人依頼主と四方八方から美女が押し寄せる中、柚木は事件の隠された真実にたどり着けるのか―。柚木草平初登場作『彼女はたぶん魔法を使う』を思わせる、軽やかな展開がファン必読の長編ミステリ*

    柚木シリーズ。まあいつも通り、軽妙だけど特に残らない、気軽に読めるシリーズ。

  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    月刊EYES編集部経由で、大森で発生した未解決殺人事件を調べ始めた柚木。二年前に東南アジアからの留学生を支援する組織でボランティアをしていた女子高生が被害にあった事件だが、調べ始めたとたんに関係者が急死する事態に。事故か殺人か、美人刑事に美人母娘、美人依頼主と四方八方から美女が押し寄せる中、柚木は事件の隠された真実にたどり着けるのか―。柚木草平初登場作『彼女はたぶん魔法を使う』を思わせる、軽やかな展開がファン必読の長編ミステリ。

    だから、この後どうしたの?
    冴子とはどうなんの?
    夕子さんはレギュラーになるの?
    柚木草平シリーズだと知らずに読んだので得した気分。

  • 柚木草平シリーズです。

    相変わらず 酒と女とちょっとした事件と。
    こんな くたびれた貧乏な男が なぜモテるのか?

    女子高生の 乱れた生活。
    2年前の未解決事件。
    今回の殺人事件。

    草平は あくまでもフリーライターとして
    解決の糸口を探る。
    新たな女刑事(真面目な仕事人間で色気はない)と
    ともに。


    事件自体は そんなもんか。て感じだけど
    書き方かな?なんか飽きずに読めてしまう。


  • 久しぶりの柚木草平シリーズ。
    どんどん年齢が近づいているッ!

  • 相変わらず、美女に囲まれ、それぞれに振り回される柚木。

    本人は大変だ、大変だと言いながら、顔からはニヤニヤ笑いが消えないんだろうな。

    今回は、柚木を振り回す美女の中に、「枯葉色グッバイ」に登場した女刑事、吹石夕子の姿があるじゃないか!!

    樋口作品の中で最も好きな一冊であります。

    そして、今作では、長い付き合いの吉島冴子との関係にも、変化が現れそうで…。時のうつろいを感じるとともに、それでも、次回が楽しみだ。

    柚木は、2年前に大森で発生し、いまだ解決にいたらない女子高生殺人の謎解明に首をつっこんでいく。

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著者プロフィール

一九五〇年、群馬県前橋市生まれ。八八年に『ぼくと、ぼくらの夏』で第六回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞。次作『風少女』が直木賞候補となる。主な著書に『彼女はたぶん魔法を使う』にはじまる〈柚木草平シリーズ〉、『猿の悲しみ』『遠い国からきた少年』の〈風町サエシリーズ〉、時代小説『船宿たき川捕物暦』のほか、『ピース』『金魚鉢の夏』『風景を見る犬』『あなたの隣にいる孤独』『平凡な革命家の食卓』などがある。

「2018年 『亀と観覧車』 で使われていた紹介文から引用しています。」

樋口有介の作品

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