ジェリーフィッシュは凍らない

著者 :
  • 東京創元社
3.56
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  • (7)
本棚登録 : 1185
感想 : 192
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025519

作品紹介・あらすじ

第26回鮎川哲也賞受賞作
特殊技術で開発された、小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、次世代型ジェリーフィッシュの長期航空試験に臨んでいた。ところがフライト中に、密室状態の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行プログラムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が……。精緻な筆致で描く本格ミステリ、新時代の『そして誰もいなくなった』登場!

感想・レビュー・書評

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  • クローズドサークルにSF設定を持ち込むのって流行ってるの?
    ねぇ流行ってるの?

    面白かったです!
    面白かったですが全体的に粗かったかな
    特に人間描写が浅いかな?と思ったりして
    探偵役の3人のキャラクターがもうちょっと深く魅力的に描かれていれば物凄い傑作になってたと思いますが、そこは作者の技量というよりは応募作ゆえのページ数の制限により優先順位をつけざる得なかったと好意的に解釈して次回作を楽しみにします

    と、偉そうな書評はここまでにして素晴らしかったところを
    とにかく発想が素晴らしかったです
    斬新なうえによく練りこまれてました

    まずは「ジェリーフィッシュ」クローズドサークルを構成する舞台装置でありながら動機でもあり仕掛けでもあるという文字通り物語の核となる存在
    こいつをいかに自然に成立させるかが腕の見せ所なんですが作品全体をある種の胡散臭さで覆うことで不自然さを目立たなくすることに成功してると思います
    大きな不自然の中に小さな不自然を隠してるんですね

    そして3つの時間軸で進む構成
    これ自体は特別目新しい訳ではありませんが
    このそれぞれの時間軸の中での読者へのファクトの提供のタイミングがかなり考えられて絶妙なので「謎解き」の難易度設定がちょうどいいって感じました
    そしてちょうどいいはちゃんと面白いに繋がってると思いました

    そしてそしてクローズドサークルというのは言ってみれば引き算の物語なんです
    繰り返される引き算の途中でいかに早く引き算の答えを見つけるか
    もしくは巧妙に隠された偽りの引き算を見つけるかが作者と読者の勝負なわけですがここに本作は途中に足し算を持ち込んでるんです
    そして足し算を明かすタイミングも絶妙です

    「謎解き」として素晴らしいアイディアに満ちた新しいワクワクする作品でした
    ほんと次回作が楽しみ!
    すでに出てるのでもちろん読みますよ

    • autumn522akiさん
      ひまわりめろんさん こんばんわっ

      読み始めてしまいましたね、このシリーズ。
      さすが考慮が深い。ひまわりめろんさんは、分析力がすごいす...
      ひまわりめろんさん こんばんわっ

      読み始めてしまいましたね、このシリーズ。
      さすが考慮が深い。ひまわりめろんさんは、分析力がすごいすね。

      本シリーズもどんどん面白くなりますよ!
      2022/05/30
    • ひまわりめろんさん
      autumn522akiさん
      おはようございます

      akiさんきっかけで手に取った本なのでakiさんからのコメントなんか殊の外うれしっす
      読...
      autumn522akiさん
      おはようございます

      akiさんきっかけで手に取った本なのでakiさんからのコメントなんか殊の外うれしっす
      読みたい本ばっかり増えて困りますw
      2022/05/30
    • autumn522akiさん
      こちらこそです~
      ひまわりめろんさんの本棚も、超おもしろそうな本ばっかりじゃないすかっ

      読む時間がいくらあっても足らない><
      こちらこそです~
      ひまわりめろんさんの本棚も、超おもしろそうな本ばっかりじゃないすかっ

      読む時間がいくらあっても足らない><
      2022/06/01
  • ※若干ネタバレしてます!

    “——知ってる? 海月って、氷点下の海の中でも泳ぐことができるんだよ。
    ——たとえ凍ってしまっても、温かくなればまた生き返るんだって——(p.323)”

     第26回鮎川哲也賞受賞作。
     新型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その試験飛行中に自動航行システムが暴走し、開発メンバーの6人は雪山に閉じ込められてしまう。救助を待つ彼らだったが、一人また一人と殺されていき、遂には…。
     あらすじから分かるように、本作はクリスティの伝説的名作『そして誰もいなくなった』へのオマージュである。『そして…』のプロットとその提示する強烈な謎は、読む方にとっては勿論のこと書く方にもやはり魅力的なようで、今までに様々なアプローチのオマージュが書かれてきた。少し挙げてみると、日本だけでも、有名な『十角館の殺人』(綾辻行人)をはじめ、『殺しの双曲線』(西村京太郎)、『こうして誰もいなくなった』(有栖川有栖)などなど。仮にもクリスティに挑戦するのだから、ただ単に『そして…』の筋書きをなぞるだけでは不十分で、何か新味のある切り口を読者の前に差し出すことができるかどうかがミステリー作家の腕の見せ所となるわけだ。
     そこで本作だが、犠牲者たちが閉じ込められるのが乗り物であるということがトリックにうまく活かされていて、面白い料理の仕方だと感じた。SF要素を入れているのも、差別化を図ろうという作者の工夫だろう。改めて前半を読み直してみたのだが、伏線がやや控えめなのが不満といえば不満だけれども、注意深く読めばおかしな点に気付けなくもなかったかな、と(2号室の状況とベッドの総数、とか?)。第1章、第3章あたりの記述はかなり慎重かつ巧妙に書かれていると思う。
     書名にもある「ジェリーフィッシュ」というのは、惨劇の舞台となった飛行船のことを指すわけだが、加えて犯人の人物像の描写にも絡んでおり、本作において非常に印象的な単語となっている。終盤、ジェリーフィッシュが空に浮上するシーンでは、鮮やかなイメージが目の前に浮かび上がってきた。

  • 日本の作家さんなのに舞台が海外、
    そして登場する日本人がひとりだけ、
    という出だしが、まず新鮮。
    21世紀の「そして誰もいなくなった」
    という触れ込みにも興味をかきたてられた。

    ラストの謎解きが少し長く感じたけれど、
    赤毛の美人警部とクールな部下にも
    好感が持てた。
    あと2作品シリーズとして出ているようなので
    そちらもチェック。

  • 第26回の鮎川賞受賞作である。新人らしく気負いが見える大型トリックで面白い。現実の世界では成り立たないようなトリックを紙面で違和感なく作り上げるところが本格ミステリの醍醐味だ。その点は本作は成功している。舞台がU国A州などと書かれていることもワザワザ架空のお話ですよということを強調している。そしてそのことが「真空気嚢」という架空技術を受け入れやすくしている。ある意味このSF的ともいえる設定がちょっとした鍵になっているところが面白い。そして、少し理屈っぽ過ぎる感はあるが、緻密に重ねられていく推理の試行錯誤がよく出来ていて面白かった。こういう論理展開を見せられると読者の思考は枠にはめられてしまう。実にうまいやり方だ。惜しむらくは、謎の強調の仕方がイマイチであったことと手掛かりが雑多なものの中に埋もれてしまっていることだろう。そのため、解決が示されても「なるほど」とは思っても、驚愕するような驚きがない。そこが上手く書けていれば、☆☆☆☆であっただろう。ちょっと残念であるが、よくできた作品であることは間違いない。次に期待してしまう。

  • 審査員の近藤史恵先生が好きなので手に取ったら、想像以上の面白さで嬉しくなった本。
    SFなのにしっかりしていて、過去なのに近未来感のあるいい違和感を感じる設定だった。
    事件当事者と警察捜査と犯人の3視点の行き来で、徐々に真相に近づく構成が巧みだった。普通もう少しダルさを感じるところだったと思う。
    「渾身の作品を作ってやる」という気概を感じられてこちらも元気を貰えた。

  • 1983年のU国では、特殊技術で作られた小型飛行船「ジェリーフィッシュ」が脚光を浴びていた。
    開発チームの6人が新型ジェリーフィッシュの最終飛行試験として3日間の任務を遂行中、開発部長の遺体が発見され次々と事件が起こっていく。
    一方警察には、墜落したジェリーフィッシュと6人の遺体が見つかったとの連絡が入り、マリアと九条漣のコンビが捜査を始める。

    舞台や登場人物に日本の要素は少なく、海外ミステリーを読んでいるかのような感覚だった。
    事件パート、捜査パート、犯人パートが入れ替わりで進んで先が気になり、飛行船の仕組み等難しい話もあったがスムーズに読み進められた。
    次々事件が起こり探偵役がそれを止めるべく解決するという形式ではなく、事件パートは時間軸に沿って事件が進み、捜査パートはすでに遂げられた事件の真相を追うという構成で、あまり読んだことがないタイプで新鮮さを感じた。
    読者にはどちらの情報も少しずつ増えるため、犯人や真相は途中で見当がついてしまうのでは?とも思ったけど、しっかり驚かされる展開だった。
    刑事コンビのやり取りもどこかコミカルで良かったので、他のシリーズ作品も読みたいと思う。

  • 海月なら読むしか…と気になっていた本です。
    面白かったです。この「そして誰もいなくなった」もとても良かったです。
    不時着して雪山に閉ざされた小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉で起こる連続殺人……全員亡くなってるけど、で気持ちよく惑わされました。
    キャラの濃い刑事バディによる推理パートも良かったです。先輩が普段はダメダメなのに頭が切れてかっこいいです。冷静な後輩もよい。
    事件の背景、被害者たちが何故殺されなければならなかったかは腑に落ちますが、確かに何故あなたが殺さなければならなかったのか?は納得しづらいです。でも沸々と怒りを培養してたんだろうな。やっぱり、殺すしかないとなることは悲しいです。
    新型の飛行試験にかこつけた計画もかなり酷いけど。犠牲にするために乗せてる人とか。。乗っ取ったのも解らなくもないな、このせいでやっぱり殺そうという思いを強くしたのかも。
    空に浮かぶジェリーフィッシュ、見かけてみたいし乗ってみたいです。ラストシーンも好きです。

  • 謎解きが面白い。美しいジェリーフィッシュの映像化を見たい。

  • 面白い。
    複数の場面で構成されているのが、私の好み。
    希薄なつながりがだんだん密になると、否応なしに盛り上がります。

  • 「閉じ込められたのだ。この雪の牢獄に」

    H山系の中腹でジェリーフィッシュ(小型飛行船)が燃えている。搭乗者は6名、生存者ゼロ。
    遺体はすべて他殺と認められ、うち1体は首と手足が切断されている…。これは墜落事故ではない。不時着した雪山で一体何が起こったのか⁉︎

    彼らは軍に頼まれある物を作っていた。
    犯人はそれを狙う敵国のスパイか、それともあの13年前の…。

    ひとり死に、ふたり死に、どんどん疑心暗鬼に陥る。
    あぁ、それ飲んじゃダメなヤツやん!と声をかけたくなる。
    外部者の侵入がないか探して痕跡なしとわかった時の絶望感。最後犯人と1対1になった時のドキドキ感。
    これぞクローズドサークルの醍醐味、いいね、いいね。

    犯人は誰というより、犯人はどうやって消えたのか、そして、犯人のある事に驚きます。うまいです!

    レベッカと犯人の間にあったものそれはなんだったのだろう。切ない。

    ずっと気になっていた事があって、そこを突き詰めていればもしかしたら名探偵になれたかも…無理か

    市川憂人さん追いかけたい作家さんになりました。

    ただ、航空科学、合成化学、真空気嚢、この辺の説明も長く時々眠くなります。

    マリアと九条漣の刑事コンビも好きだけど、
    同じような話を繰り返して、もっとスマートに出来ると思う。

    • あいさん
      くるたん♫

      こちらもコメントありがとう(^-^)/
      そうそう、たぶんマリアと九条コンビが出てくると思うけど、読まなくても大丈夫と思...
      くるたん♫

      こちらもコメントありがとう(^-^)/
      そうそう、たぶんマリアと九条コンビが出てくると思うけど、読まなくても大丈夫と思うよ。

      本当は昨年の「グラスバード…」が読みたかったんだけど、貸出中だったのでこちらから読んだだけなんだ。
      私が読んだらまたどうだったかお知らせします(*≧∀≦)ゞ
      2019/02/25
    • くるたんさん
      けいたん♩

      ありがとう‹‹\( ´꒳`)/››
      けいたん♩

      ありがとう‹‹\( ´꒳`)/››
      2019/02/25
    • あいさん
      くるたん♪

      いえいえ、これからも情報交換よろしく(^-^)/
      くるたん♪

      いえいえ、これからも情報交換よろしく(^-^)/
      2019/02/25
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著者プロフィール

1976年、神奈川県生まれ。東京大学卒。2016年『ジェリーフィッシュは凍らない』で、第26回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。他の著書に『ブルーローズは眠らない』、『グラスバードは還らない』(以上東京創元社)、『神とさざなみの密室』(新潮社)など。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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