ジェリーフィッシュは凍らない

著者 :
  • 東京創元社
3.65
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本棚登録 : 471
レビュー : 97
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025519

作品紹介・あらすじ

第26回鮎川哲也賞受賞作
特殊技術で開発された、小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、次世代型ジェリーフィッシュの長期航空試験に臨んでいた。ところがフライト中に、密室状態の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行プログラムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が……。精緻な筆致で描く本格ミステリ、新時代の『そして誰もいなくなった』登場!

感想・レビュー・書評

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  • 推理ものは何でも好きだが、
    いつも納得がいかないことがある。

    犯人が、全員に復讐を果たせないところだ。
    死の恐怖を味合わせたいのか、
    何故か一番悪い奴が最後まで生き残っていて、
    そいつに手を下そうとしたところで
    名探偵や刑事が登場する…というシーン、よくある。
    あれが許せない。

    謎解きは目的を果たした後でやってあげてほしいのだ。
    それなりの動機があって、
    復讐したいとまで思うほど大事に思っていた人の為ならば。

    今回はその辺りが大変小気味良い。

    果たしてあの後どうなるのかな。
    願わくば、ジェリーフィッシュと共に逃げ果せてほしい。

  • 思っていたより意外と面白かったと思う。気嚢式浮遊艇(きのうしきふゆうていと読む)「ジェリーフィッシュ=海月」の話だ。いわゆる飛行船のことで、日本でも昔、空を飛んでいたこともある。その時代の航空ミステリーというか化学ミステリーと言えるだろう。しかも、クローズド物で「そして誰もいなくなった」式のミステリーである。
    前半はちょっとあまりにも難し過ぎて飽きるかもしれないけど、中頃から一気に伏線の回収となり、ラストまで一気に読ませる。精巧に事象を組み合わせていく筋書きに驚かされた。まあ、多少辻褄がおかしい場面もあったが、まあそれはご愛敬かもしれない。
    いずれにしても、他とは違った感覚のする作品だと思う。SF好き謎解き好きの方は是非ご一読を・・・。

  • 面白くて一気読み。
    その物語性に引き込まれる。
    クローズドサークルの本格ミステリとしても、読み応えがあった。
    謎解きもすっきりとしていて、鮮やか。
    物語全体に、幻想的な独特の味わい。
    SF特有の複雑なわかりにくさもない。
    第26回鮎川哲也賞受賞作。

  • ジェリーフィッシュとは、特殊技術で開発された、クラゲのような形の小型飛行船のこと。推理物の基本を丁寧に積み上げつつ、このジェリーフィッシュというSF浪漫溢れる要素を組み込んだ一作。

    ジェリーフィッシュの発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、次世代型ジェリーフィッシュの長期航空試験に臨んでいる。その航空試験中の様子がまず冒頭で語られる。試験とはいえただ飛ぶだけで、平凡なフライトと思われたが、しかしその途中でメンバーの一人が死体となって発見される。現場は空の上で、当然外部からの侵入は不可能。犯人は乗組員の中にいるのかと焦る船員たち。
    そんな中さらに自動航行プログラムが暴走しはじめ、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。
    機体を崖に固定して救助を待つしかない中、船員たちは次々と殺されていく。
    不朽の名作「そして誰もいなくなった」のようなストーリー展開です。

    後日。
    6人分の死体とジェリーフィッシュの燃えカスが雪山から発見され、女刑事のマリアと彼女の部下・レンが捜査に向かう。
    現場の状況から見て、誰か一人が5人を殺し、犯人は自殺か事故で死んだのならばすっきりするのだが、現場から発見された遺体は6人とも他殺だった。

    基本的にフライト中に人が殺されていく様子と、マリアたちが捜査する章が交互に続きますが、その合間に、レベッカという女性と大人しい男性が模型を通して絆を深める話が差し込まれます。
    そしてジェリーフィッシュの開発にこのレベッカが深くかかわっており、彼女が不審な死を遂げていること明らかになる。
    レベッカの死に対し怒りを抱いている男性の様子と、レベッカの知り合いの男性・サイモン。
    ジェリーフィッシュ内の連続殺人の動機は、どうやらレベッカの復讐のようである。

    もしジェリーフィッシュに乗っていた6人が全員他殺だとしたら、犯人は逃げ場のない雪山からどうやって逃げたのか。そして犯人は誰なのか。
    つまりHOWとWHOの謎があるわけです。
    実はジェリーフィッシュは2基あった、という驚きの真実が明らかになり、これがHOWの答え。
    6人のうち何人かが国外逃亡を考えており、もともと2基で航行していた(つまり乗組員は二手に分かれていた)んですが、これが殺人のシーンでは巧妙に分からなくなってる。
    そしてWHOの謎。
    途中に挟まってる模型好きの男でしょ? と簡単に片づけていたのですが、これが10歳の少年だったとは!
    サイモンをバラバラにして飛行船内に持ち込んでいたのには気付きませんでした。
    死体をバラす=運搬のためというのは基礎の基礎なのに。

    一つ一つの仕掛けは基本的で、ミステリの教科書のような本だけど、面白みに欠けるということではなく、SFチックな要素などもあってわくわくしました。

  • 第26回鮎川哲也賞受賞作。

    本格的ミステリーが売りの賞ですので、期待して読みました。
    犯行の舞台は1983年だが新発明の飛行船ということで、SFミステリーの分野になると思います。
    犯行パート、捜査パート、過去パートで構成されていて、それぞれがうまく絡みながら真相をあぶりだしていく構成は素晴らしい出来だと思います。
    特に、犯人は誰かを考えながら、といってもエドワードかサイモンかのどちらかなので、その関係性を推測しながら、読み進めて答え合わせをしていくことができ、ミステリーの醍醐味が味わえました。
    それにしても最近、近未来的な、SF的なミステリーを読む機会が続いて、トリックとかの再現検証ができないので、ちょっとずるいような気もしています。

  • 特殊技術で開発された、小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、次世代型ジェリーフィッシュの長期航空試験に臨んでいた。ところがフライト中に、密室状態の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行プログラムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が……。――amazonより

    まさか回想のシーンに出てきた彼が犯人だなんて。
    最後の「あんた誰?」という質問で読み手の疑問を解いてくれていてすっきり。
    専門的な知識が多く書かれていたが、そこは流し読みでもあまり問題なかったかな。
    クリスティの作品「そして誰もいなくなった」のオマージュ作品なので、事件は犯人も自殺して本当に誰もいなくなったかのよう。
    最後の最後で犯人の登場というのは自分の好みではない展開ですが、上記のようにしっかり消化させてくれているので良かったです。

  • 第26回鮎川哲也賞受賞作は「現代版“そして誰もいなくなった”」の名に恥じない(原著は未読ですが)フー/ハウダニットの傑作。鮎川賞応募作品ですから「まずはトリックありき」なのは当たり前。多少の強引さははあるもののそれを超えて面白ければ文句はありません。

  • 架空の乗り物「ジェリーフィッシュ」内で起こる連続殺人事件と、事件後の警察による捜査が交互に進められていくのですが、双方で真犯人の動機が掘り起こされ事件の全貌が明らかになる展開が巧妙で引き込まれます。
    真相は既視感のあるトリックを上手く組み合わせた感じで意表を突くことに成功していますが、辻褄合わせで苦しい部分があり、ややアンフェアに感じてしまうのが残念なところです。

  • トリックもプロットもよく考えられてはいると思う。
    けど、とあるトリック(仕掛け)をサプライズっぽく演出したのはいいんだけど、物語の中でその仕掛けが掛かる部分を強調してこなかったために、作者の意図が伝わり辛くなっているのは残念。

  • マリアと漣の会話が痛くて、うわーやめてくれ、もうそこ掘り下げないでーと悲鳴が出た。漣のマリアに対する皮肉が低レベル(小中学生か?と思われるほど)で、むしろ漣に対して引いてしまう……。

    トリックは“あれ”さえ先に見つかっていれば万事解決だったのでは?と思ってしまい、書き時にアンフェアさを感じてしまった。まあ、自然な成り行きとして有り得ることなので、そう感じたのは私の感性の問題かもしれないが。

    また、文章の論理性がこちらとずれている感じがして、「え?今そういう話をしているの?そこから導き出されるのはそういうことなの?」と戸惑うこと数回。
    説明不足であり詰め込みすぎと言おうか。読んでいてあまり面白くは感じなかった。

    驚かそうという意図を感じる文章に、そこまで驚きを感じなかったのも辛かった。

    答え合わせのページで、ところどころ犯人が上手くいきすぎなのも引っかかった。辻褄合わせの時間が始まったような感覚がしてしまい残念。

    確かにこれはエラリー・クリーンではなくアガサ・クリスティーだ。しかし本家「そして誰もいなくなった」の方が読み物として美しいことは言うまでもない。「21世紀のそして誰もいなくなった登場!」の帯に期待しすぎてしまったかな。

    個人的にだが、買わずに図書館での入荷を待っても良かったと思う作品。
    それでも★3なのは、設定は十分書き込まれているし、本としては成立していると思うから。

    ※ここからややネタバレ※

    単なる希望だが、北山猛邦「『ギロチン城』殺人事件」ばりに、後から読むと気付く叙述があると良かった。来るか!?来るか!?と期待してしまった……。

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