探偵は教室にいない

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 756
感想 : 93
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025595

作品紹介・あらすじ

謎と出合うたび、少年少女はすこしだけ大人になる。
日常で出合うささやかな謎を通して、少年少女が新たな扉を開く瞬間を切り取った四つの物語。
第二十八回鮎川哲也賞受賞作。
わたし、海砂真史(うみすなまふみ)には、ちょっと変わった幼馴染みがいる。小学校にはいる前から頭の回転がはやく妙に大人びていた彼は、去年中学生になってからというもの、どういう理由か学校に行っていないらしい。しかし、ある日わたしの許に届いた差出人不明のラブレターをめぐって、わたしと彼――鳥飼歩(とりかいあゆむ)は、数年ぶりに再会を果たす。北海道を舞台に、日常で出合うささやかな謎を通して、少年少女が新たな扉を開く瞬間を切り取った四つの物語。第二十八回鮎川哲也賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • う~ん、鮎川哲也賞受賞作品とは相性良いものが多くて、皆さんのレビューも概ね好評で、期待して読んだのだが、残念ながら私には合わなかった。

    中学生が主人公なのだが、どうにも言い回しが中学生とは思えなかった。また男女四人の仲良しバスケ部員の関係がなんだか微妙というか奇妙というか。メンバーの総士の彼女が不安になるのもよく分かるくらい。
    今どきの中学生の男女というのはこんな感じなんだろうか。
    第一話のタイトル『Love Letter from …』を見て思わず「カナダ~♪」と頭の中で続けてしまった世代だからしょうがないのか。

    タイトル通り学校に通っていない少年が探偵役なのだが、彼の変わったキャラクターの方がむしろ受け入れられて、主人公の真史(まふみ)や英奈(えな)の思考回路の方が謎だった。
    私が一番不可解で不愉快だったのは、第三話『バースディ』で、二人が買い物に行った店で総士が「彼女にもらった」と自慢していたスマホカバーと同じものを見つけたときの会話。

    『これさ、京介(仲良しメンバーの一人)の分も買って、わたしたち三人も総士と同じスマホカバーにしない?』
    『なにその嫌がらせ!』
    それはあんまりだ。わたしは吹きだしてしまう。
    『ツボだった?』
    予想以上にウケをとれて気をよくしたのか、エナはちょっと嬉しそうだ。
    『総士は笑ってくれそうだけど、うっかり有原さん(総士の彼女)に見られたらまずいよね』

    と、その「嫌がらせ」をすることは止めるものの、その後もそのやり取りを二人でしては笑い転げる。
    『あとで振り返ってみて、なにがそんなに面白かったのかはわからないけど、友人とのバカ話なんてそんなものだ』と結んであるが、私にとっては面白くないどころか、不愉快極まりなかった。

    たかが中学生の可愛らしい男女交際とはいえ、きっと彼女は一生懸命総士のためにスマホカバーを選んだはずで、そのことを総士も嬉しくて仲良しの仲間たちに自慢したわけで、なのにこの二人はそれをバカにしているのだろうか。
    二人のうちのどちらかが総士を好きで、彼女に対する嫉妬や対抗心という悪意から嫌がらせという発想に至るのならまだ理解出来る。しかし後にモテ男の総士が彼女以外の女の子と相合傘をしているだけで激しく嫌悪感を抱くほど総士と彼女を見守っている二人に何故そんな発想が湧くのが理解し難く二人が気味悪かった。
    同じことをされたらどんな気持ちになるんだろうかと思うと、一気に主人公たちが嫌いになってしまった。唯一メンバーで共感出来るのは京介くらいだろうか。

    肝心の『バースディ』の謎解きにしても、そんなこと素直に言えば良いじゃないか、と元も子もないことを思ってしまったのだが、それでも彼女たちに比べれば一生懸命になっている分、可愛げがあるというものだ。

    謎解き自体はいわゆる日常系で小粒。それをちょっと変わり者の探偵役が上から目線のこまっしゃくれた言い回しながら、彼なりにきちんと解き明かしてくれている。
    スルーしても良いような謎をきちんと解き明かしたところで、という部分もあるがそれが中学生という設定なんだろうか。
    第二話だけはホッとする内容で、解いて良かったと思えたが。

    巻末の加納朋子さん、北村薫さん、辻真先さんの選評を読んでもピンと来なかった。結局のところ好みや相性の問題か。個人的には探偵も犯人も地球外生物という「遠い星からやって来た探偵」、気になるなぁ。

  • 幼馴染の中学生海砂真史が持ち込んでくる日常の謎を、学ぶことがないと言って不登校になっている変人の鳥飼歩が、理詰めで解いていくというもの。変人ぶりを発揮しながら、なんだかんだと関わってきて、結局当事者たちの気持ちにも配慮した解決をしてしまうところがとてもいい。真史たち4人仲良しグループの和気あいあいぶりも微笑ましい。極めて健全な中学生たちだ。表紙の教室の写真がなんかレトロでいいなあ。窓の外が雪景色なのもいい。2月に札幌の雪まつりに行ったのを思い出してしまった。雪まつりはとてもよかったけど、その後、コロナで大変なことになってしまっている。早期の終息を願う。

  •  四話からなる連作集。第二十八回鮎川哲也賞受賞作。札幌の同じ中学のバスケットボール部の女子二人男子二人を取り巻く日常系推理小説。四話それぞれに、その四人がメインとして割り当てられている。探偵役は四人とは別の中学の男子(不登校らしい)が担当する。米澤穂信<古典部>シリーズを彷彿させるところもあるのだが、こちらは中学生。それにしては、中学生とは思えない言動が目につく。高校生に設定すると、前述の二番煎じと思われると考えたのかな。
     第一話の「犯人」は、途中で分かってしまいました。が、青春小説としては、けっこう面白かった。

  • バスケ部で活躍する中学生・真史。幼馴染の歩は違う中学だけれど、どうやら学校に行っていないようだ。大人びてて頭が切れて、そして、スイーツ好きな歩に、真史は日々の謎を解いてもらう。青春ミステリ4編。第二十八回鮎川哲也賞受賞作。
    歩が魅力的に書かれていました(中学生って感じしないけどね)。学内のいじめとか、ましてや殺人のことではなく、日常のもの、青春ものの謎で、ケーキとか歩の人柄が混ざり、全体的にバランスが良く仕上がってたかな、難無くページが進んだ。また、北海道が舞台というのもよかったかもね。
    ラブレターの送り主との関係とか、恋愛の模様、それぞのれのその後が気になるのでシリーズ化してもいいかもね。

  • 等身大の14歳の雰囲気が楽しめる日常の謎解きミステリー。キャラクターの個性も読んでいてすんなり受け入れられる。高身長バスケキャラと盛られた設定なのに、いい意味でうみちゃんが普通なところもいい。読後も爽やかで、道が続いている感じがひしひしと伝わってくる。

    探偵役の鳥飼歩は、坂木司の鳥井真一(鳥繋がりかつ引きこもり探偵)と青崎有吾の裏染天馬(空気読まない天上天下唯我独尊的かつ、アニメキャラかスイーツかの違いはあるが、こだわり強い属性)を足して2で割ったよう。それでも独立色強く、嫌味がなく人間的でこんな子いそうだなというキャラ造形。

  • なんだろう
    いい言葉が見つからないけど
    とにかく面白い!
    面白すぎたが続編がなさそうなので星4
    (理不尽)

  • 「古典部」シリーズや「ハルチカ」シリーズに匹敵する
    学園ミステリーの傑作。

    連作短編集の体裁をとっているけど、
    第1話を読んですぐ、これは傑作だと思った。

    「氷菓」に近しい空気感を感じた。

    中学生ならではの友達・同級生との関係性、
    たわいのないやりとり、友情、思いやり、
    そういうピュアで爽やかな読感が
    たまらなく良かった。

  • 2018年136冊目。去年の受賞作と比べちゃいけないんだけど、どうしても地味な印象が残る。主人公グループはとても上手く描けているのに、探偵が推理マシーンになってしまっているのも気にかかる。最後に探偵を掘り下げる短編がもう一つあれば、全体の印象もガラッと変わったと思う。

  • 第28回鮎川哲也賞受賞作。北海道の中学2年生,バスケ部の仲良し男女4人。そのうちの一人,長身の女子・真史の風変わりな幼なじみ(今は不登校)鳥飼歩は些細なことから謎の真相を見破る名探偵。言わゆる日常の謎もの,4つの短篇からなる。ミステリ小説である以上に感性豊かな少年少女たちの成長物語でもある。あたたかな読後感。

  • 中学生主役の日常の謎。
    キャラがたっていて読みやすくデビュー作にしては達者な作品でした。
    面白く読めました。

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著者プロフィール

川澄浩平(かわすみ こうへい)
1986年、北海道生まれの作家・マンガ原作者・フリーター。北海学園大卒。
「学校に行かない探偵」が第28回鮎川哲也賞を受賞し、『探偵は教室にいない』と改題されて2018年10月刊行。

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