ティンカー・ベル殺し (創元クライム・クラブ)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 875
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025649

作品紹介・あらすじ

日常では理系の大学院生、しかし夢の中では間抜けな〈蜥蜴のビル〉となって不可思議な世界を渡り歩いている井森建。彼はある日の夢の中で、ピーター・パンという無邪気な少年とウェンディという優しい少女、そして妖精ティンカー・ベルに拾われる。彼らに連れられてやってきたのは、海賊や妖精をカジュアル感覚で殺して回るピーター・パンによって修羅の国と化した〈ネヴァーランド〉という場所だった……『アリス殺し』シリーズ第四弾!

感想・レビュー・書評

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  • トカゲのビルが今回流れ着いた先はピーター・パンのネヴァーランド。登場時食べられそうなのはお約束。今回の被害者はティンカー・ベル。犯人探しの過程で探偵役のピーターパンが息をするように暴力を振るい、敵も味方も殺害するので現実世界での井森参加の同窓会でも死体がどんどん転がる。ピーター・パンのこの性格原作準拠なのに驚き。ディズニー仕事し過ぎだろう。誰が誰のアーヴァタールなのか?がこのシリーズの肝なので注意はしていたんだけどこう繋げるか、とにやり。設定に慣れたはずなのに違和感流し読みしてしまった。ラストに井森が自分の境遇を打破するきっかけを匂わせているけどどんな展開だったのだろう。「ドロシィ殺し」での予想通り作者逝去で展開は闇の中。悲しい。

  • クララ…が合わずに離れていたけど、今回のは面白かった。グロさと非道な世界観、嫌いじゃない。
    動機やアリバイなどの推理も面白いが、結局誰が誰のアバターかってところが1番面白い謎。
    最後はある意味勧善懲悪で良かった。

  • 裏切らない面白さ。
    「アリス殺し」「クララ殺し」「ドロシィ殺し」大好きな3作の続編です。
    誰が誰のアーヴァータールかを推理しながら用心深く読み進めました。
    が、そこかぁ!思わずとツッコミをいれてしまいました。
    人を殺す事を何とも思わない純粋無垢なピーター。
    強力な独裁者である彼に、従わない訳には行かない迷子達。
    ピーターに思いを寄せるウエンディとティンカーベルとタイガーリリィ。
    ピーターにかなわない海賊達。
    残虐な行為をした「報い」は、いつものようにさらに残虐な手口で返ってきます。
    描写のグロテスク感も、ミステリ感も満載で、とても好きなシリーズです。

  • このシリーズの醍醐味は「誰が誰のアーヴァタールなのか」と、夢世界のビルと登場人物との噛み合わない受け答え。今回はネヴァーランドで起きたティンカーベル殺人事件。基本的に地球での名前は犯人には当てはまらない鉄則…
    ピーターパンの話、実はあんまり詳しく知らなかったけど、最後の解説見たら元祖ってちょっと悲しげな物語なんだな、と思った。

  • シリーズ4作目。作者は亡くなられてしまい、続編が出ず残念。
    シリーズの狂言回しである大学生井森くんと、アバターのトカゲのビルが、ピーター・パンの世界に迷い込む。
    ピーター・パンがとにかくヤバい大量殺人鬼として、ネヴァーランドで大活躍すると、現実世界でも人がどんどん死んでいく。
    コミカルなのだが結構グロい小説。
    ピーター・パンとビルの間の抜けたやり取りがイライラしてしまうので、道中はかなり辛い。
    ミステリ的な仕掛けは突然の伏線が露骨で、シリーズの流れから推察はつくが、独特の味を楽しむ小説かも。ここまでの3作が合わないかたは多分合わない。

  • 蜥蜴のビルにイライラさせられたのは遠い昔。今は可愛くって仕方ない。寧ろ、ピーターパンより賢いのでは?!
    今回は奇妙奇天烈な会話は少なめで、ビルが割とマジメで大人しめ。グロさも鳴りを潜め、ムカムカ具合もそこそこだけど、安心して読めるものも悪くない。
    しかし、ピーター…ね。引っ掛かりは覚えてたけど、今回もやられた。

    • mach-readさん
      小林泰三さんのご冥福をお祈り申し上げます…。
      ビルは永久に不滅です。
      今はどの世界を渡り歩いていることやら…。
      小林泰三さんのご冥福をお祈り申し上げます…。
      ビルは永久に不滅です。
      今はどの世界を渡り歩いていることやら…。
      2021/09/04
  •  今回のビルが迷い込んだのは「ネヴァーランド」。 
     いわゆるピーター・パンの世界であるネヴァーランドと、ネヴァーランドの住人のアルヴァタールが住む「地球」の2箇所で起こる惨劇。
     過去作は、不思議の国やホフマン宇宙などの「お話の世界」で起きた殺人事件を、トカゲのビルがお話の世界を、大学生の井森が地球を捜査することで犯人を突き止めようとする。お話の国で凄惨な殺人事件が起こっても地球では理不尽な事故で死ぬことが多く、井森が自発的に事件を捜査しようとして殺されることはあったものの、基本的には大学生としての日常を送っていられることが多かった。
     しかし、今回はネヴァーランドの閉鎖性が反映されているのか、同窓会のために集まった旅館が大雪が閉鎖されてしまい、地球でもクローズド・サークルが発生したため地球でも緊張感が生まれている。死に方はフグにあたったり高所から落ちたりと、理不尽な事故が多いため、捜査はあくまでネヴァーランドで起きたティンカーベル殺しだけだが。
     また、今回のティンカーベル殺しの犯人は、最初の方から描写されている。ピーターが殺していると、神視点で描かれているのだ。
     しかし、もちろんビルはその場面を見ていないし、ウェンディから探偵役に指定されたピーター・パンはネヴァーランドでは絶大な権力(というより戦闘力)を持っている上殺した相手はすぐ忘れてしまう。
     ワトソン役のトカゲのビルは当てにならないながら、なんとか海賊たちや赤膚族の証言を集めていく(その過程でピーター・パンは幾人も人を殺していくが)のだが、彼らの証言はピーター・パンのアリバイを証明するものばかり。と、一筋縄では行かない。
     
     本作の肝はピーター・パンは双子を認識できないという原作のエッセンスを生かした叙述トリック。読んでいる間の違和感が、真実を知ったらすっと解消される。
     
     グロ描写は最後にまとめてあるが、辛いなら読み飛ばせるくらいの量ではある。
     ピーター・パンがどんどん人を殺していくが、描写自体はあっさりめ。

     ピーター・パンのアルヴァタールである日田半太郎は地球でも陽気で考えなしの若者のように描写されているのだが、そんな彼の腕の下に幾多ものリストカット跡があるとわかった瞬間、世界が一変する。
     陽気で悩みの無いように見えた彼が、実は簡単に人を殺すピーター・パンの所業に悩み苦しみ、自分を傷つけ、それでも救われず、だからこそ何も考えないかのように遊び暮らしてきた。それでもピーター・パンの行いは止められない。日田半太郎はピーター・パンではないから。それまで何度も言われてきた、夢の中の(ネヴァーランドの)人物の行った罪を地球の人物に被せるのは意味がないし、夢の中の人物と、地球の人物は別人である。
     ネヴァーランドのピーター・パンの行いに苦しむ日田半太郎は、地球の人物の行いに苦しむウェンディと対比されるような構造になっている。
     ウエンディが地球のアルヴァタールの行いに苦しむ描写は少ないが、日田半太郎のように内心ではどうにかしてやめさせたいと思っていたからこそ、ティンカーベル殺しの犯人を突き止めろとピーター・パンに命じたのかもしれない。
     また、ネヴァーランドの人物の性格や行いが地球のアルヴァタールにも影響を与えるとするなら、ウェンディが永遠の少年ピーター・パンに惹かれたからこそ、ウェンディのアルヴァターレも少年に惹かれた可能性があると思い、その救えなさもいいと思った。

  • 悲惨で見るに堪えないほどグロい。でも読み進めてしまうこのシリーズ。本作の死人は災害級でした。

    アーヴァタールとは記憶が共有される。そのため、悪夢が続く日田の生き地獄を思うとつらい。彼が何をしたっていうんだ。同様にウェンディもきっつい。
    アーヴァタールを自分で選べないのが、一番残酷なのかもしれません。

    最後の井森と亜理の会話からアリス殺しの伏線が見えるのに、続きが読めないのが本当に残念です。

  • メルヘン殺しシリーズの第4弾。今回もピーターパンを読む前にこの本に手を出してしまった。
    舞台がネバーランド(孤島)なので、地球での舞台である旅館も雪に閉ざされてしまう。けっこう残酷…無邪気であるが故の残酷さを感じる。解説を読むと、原作のピーターパンもダークな要素がある感じなのかな?犯人の最期(最期と言っていいのか)がかなり凄惨なので、苦手な人は要注意。

    作者の小林さんが亡くなったため、メルヘン殺しシリーズはこれがラスト。解説を読んだところ、続編の設定もほぼ固まっていたそう。続編のタイトルを見ただけでも絶対面白いだろうなと思える。続きを読みたいけど、メルヘン殺しシリーズは小林さんにしか書けない作品だと思うので叶わぬ願い…。面白い作品を世に生み出してくださり、本当にありがとうございました。

  • アリス殺しから順に再読。

    最初に読んだ時はこの続きが楽しみ!
    と思ったので、作者さんが亡くなったと知ってどれほどショックだったか…

    今までのシリーズと違うところは、ティンカーベル殺しなのに表紙がピーターパンなところ。いや、よく見るとちっちゃくティンカーベルいるけど。

    そして、今までは探偵役というかビルと一緒にあるいは井森と一緒に謎を解き進めて行く人が居たけど、今回は割りと孤軍奮闘だったこと。ネバーランドではピーターパンがいるけど、探偵役にはなり得ないものね。

    そして、ネバーランドが島だからか、地球の舞台も雪に閉ざされた宿という、ある意味ミステリの定番とも言える陸の孤島。

    そしてメインキャラのピーターパン自身が躊躇なくどんどん人殺しをするので、地球でも死体がいっぱい出来て、一気に殺すためには雪崩まで起きる始末。いや、ビル殺されなくて良かった。

    そして、今回はアーヴァタールとの関係が切ないというか辛いというか、動機とかも今まではちょっと現実感ないような感じ(特にアリス殺しとかめちゃくちゃ)だったけど、今回のはやっぱ色々辛いわ。

    話自体はいつもの勘違いが鍵になっている作り。

    ネバーランドの迷子たちの名前とか原作と同じなのかなぁ?
    今回も原作はちゃんと読んだことないわ。ディズニーの絵本とかならあるんだけど。この本によると原作のピーターパンも相当ヤバそう。

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著者プロフィール

1962年京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2014年『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他、『大きな森の小さな密室』『密室・殺人』『肉食屋敷』『ウルトラマンF』『失われた過去と未来の犯罪』『人外サーカス』など著書多数。

「2023年 『人獣細工』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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