ねじまき片想い (~おもちゃプランナー・宝子の冒険~)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027346

作品紹介・あらすじ

おもちゃプランナー富田宝子、28歳。片想い中の西島のため、SP気分で彼に降りかかるトラブルを密かに解決していく。女子への応援賛歌がたっぷり詰まった栄養満点小説。

感想・レビュー・書評

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  • 冨田宝子は、業界最大手の玩具メーカー〈ローレライ〉商品企画室のおもちゃクリエーター。
    同僚やルームメイトそして片想い中の西島さんとの毎日の中で少しずつ成長していく。
    自分のネジを巻けるのは自分だけ。
    柚木麻子さんらしい、マシュマロのようにフワフワで綿菓子みたいに甘ーい物語ですが、最後は元気がもらえました

  • おもちゃ箱のようにイメージ豊かで、楽しかったです!
    タイトルでは内容を想像できなかったんだけど、これが~タイトルそのものの内容でした☆

    富田宝子は大手玩具メーカー、ローレライのデザイナー。
    28歳だがまだ少女のように可愛らしく、美大の頃のままのふわふわした服装。デザインの才能も、少女の気持ちを残しているのが成功の要因だった。
    外注デザイナーの西島に5年も片思いしていて、誰にも知られていないと思っているが、仕事仲間は皆知っていて、ひそかに応援している。
    ルームシェアしている親友の玲奈は叱咤激励するというか、いい加減にしろと遠慮なく言っていました。

    西島の前に出るとうじうじするばかりで本来の明るさも出せない宝子。
    西島の悩みを解決しようと陰で奔走して大活躍。恋には空回りしているのに、ついでに犯罪事件を解決してしまうことになります。
    この意外な展開が軽めだけど楽しくて、アイデアは豊かなだけに猪突猛進するところが可愛い。

    ‥でも若い頃の自分にちょっとだけ似ているところがあるので、いやここまでイタクはない、これは違うよなとたまに悩みながら読んだりして。
    仕事関係の人たちやお客の子供たちはいかにもいそうなリアルさもあるかと思えば、掏りの集団が出てきたり。
    刑事さんとの出会いがよかったので、こっちとくっつくほうが良かったのではという気も。
    いやページ数的に書ききれなかっただけで実はこの後、そうなったんじゃないかなぁ‥(笑)

    たまたま西島と同居する機会が出来たのに、まったく進展せず、宝子は才能まで鈍らせていくという展開。
    自分に自信を失っていきます。
    ルームシェアを解消した玲奈を追って、今度は彼女のためにも活躍する宝子。
    玲奈は、宝子は内面が豊かだから人に与えられる、その豊かさに惹かれたのだ、という言葉をくれました。
    掏り集団のボスのおばあさんが宝子のことを西島に、世界に二人といない宝と告げて背中を押す。

    宝子が自分らしさに気づいて、成長するのがすがすがしい。
    恋愛はちょっとどうなるか曖昧な感じでしたけど、きっちりまとめないのも風通しがいい?
    面白く読めました☆

  • 天才おもちゃプランナーの宝子は、仕事相手のフリーグラフィックデザイナー・西島に片想い中である。
    5年におよぶ片想いは、なんの進展もないまま、今日も続いていた。

    そんなある日、西島をある困りごとが襲う。
    愛する西島を救うため、宝子はこっそりと、困りごとを解決するべく暗躍するのだが…。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    宝子を中心にした連作短編集。
    ちょっとした推理モノでもあるのですが、告白する勇気はないにも関わらず、西島のためにはものすごい行動力・観察力で暗躍する宝子の姿に、「いや行動力つかうの、そこじゃないだろ!!」と、なんだかモヤモヤしてしまいました。

    モヤモヤの背景には、宝子が恵まれすぎた環境にいるせいもあると思います。
    天才おもちゃプランナー、自分の楽しいと思えることを仕事にしている、職場の人間関係には恵まれ、後輩・先輩から守られる愛されキャラ、しかもそこそこの美人で、恋愛以外の方面には行動力がある…。
    なのにウジウジ悩んで、自分からは一歩も恋を動かそうとせず、待ち続ける宝子の姿は、応援したいという気持ちよりも、嫉妬心の方が勝ってしまうのです。

    推理に関してはほどほどにおもしろいので、宝子にイライラしながらも読み終えてしまったわけですが(苦笑)、「どんなに励ましても自分を卑下しつづける人って、こんなにもイライラするんだ…」と学びました。

    長らく日本では、一歩さがって生きる控えめさを美徳としてきました。
    その名残はいまでも残り、ほめ言葉を謙遜する、へりくだることは多々見受けられます。

    「わたしなんて、まだまだです」
    「わたしにはそんな力ないですよ、運がよかっただけです」

    自信満々すぎて傲慢な態度をとる人も嫌われますが、一方で自分を過大に卑下し、過小評価しすぎることは、他人をいらつかせるものだということも、知っておいたほうがよさそうです。
    もし人間関係に悩んだときは、自分を卑下しすぎていないかということも、考えてみてもいいかもしれませんね。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    宝子の恋は、本物の恋という感じがなく、“恋に恋する乙女”の姿そのものです。
    そして最終的に宝子は「自分で自分のネジをまいて、歩いていける人」という風に描かれていきます。
    でもこの物語を読み終えたとき、そんな宝子の生き方に憧れはありませんでした。

  • 冨田宝子28歳にして少女らしいファッションを貫いてる。
    可憐な容姿は、十代によく間違われる。
    毎朝40分の水上バスで通勤。
    それは、片想いのデザイナー西島の住むマンションが見えるから。
    玩具メーカーのプランナーの宝子はとても優秀。
    職場では西島への片想いは必死で隠し気付かれていないと思ってる。
    しかし、メンバーにはバレバレ…。
    5年もの片想いに会社の皆はヤキモキ…。


    仕事は出来るのに、想いは伝える事ができない宝子。
    片想い中の西島は次から次へと災難に見舞われる…。
    西島のマンションの前に突然貯水槽が設置され
    スカイツリーが見えなくなったと言ってたら、
    殺人事件を解決し、貯水槽をどかし。
    西島の恋人が、犯罪に手を染めそうになった時には、
    お祭りの騒ぎを利用して全力で阻止し。
    大切な思い出のテレフォンカードをすられてしまったら、
    スリに弟子入りし、取り戻す。
    西島の為に、密かにトラブルを解決していく。

    すごくテンポ良くって、面白くって、ちょっとミステリーだったり、
    どーなっちゃうの~ってワクワクしながら読んでた。
    ちょっと、漫画っぽかったかなぁ(笑)
    片想いでも、大好きな人がいるからこそ
    仕事も頑張れてたんだよね。

    玲奈が去って、西島との2年間もの月日には、えーーっどうして…。
    西島の駄目さ加減にも…ん~っ。
    その、淀みの様な生活が宝子のアイデアをも奪ってた。

    最後に、宝子は大切な事に気付けた。
    自分の気持ちにしっかり向き合えた。
    ねじが回転してお互いの歯車がかみ合わなければ、
    いくら、好きな相手と一緒でも、なんの意味もない。
    西島に言った宝子にスッキリした~。


    自分の心にネジを巻いてくれるのは自分だけ

  • 冒頭───

    スカイツリーが浅草の青空をひと突きしている。
    四月とは思えないほど激しい風がフェリーのガラス窓を強く打ったが、富田宝子の高まる期待は少しも損なわれない。もうすぐ、もうすぐあの建物が見える───。勝鬨橋をくぐってすぐの古びた五階建てマンション。その最上階。
    水上バスで通勤だなんて『ワーキング・ガール』のスタン島からフェリーでNYに通うメラニー・グリフィスみたいでちょっと素敵かも、と思っている。お気に入りのリバティプリントのワンピースが視界にお花畑を作っていた。レース編みのニット帽がずり落ちそうになり、慌てて頭を押さえる。

    浅草にある玩具メーカーの商品企画室に勤めるおもちゃプランナー宝子の恋とおもちゃへの憧れを描いた連作短編集。
    初出は2012年の「ミステリーズ!」に連載されたもの。
    柚木さん特有の乙女チックな少しねっとりした作品だ。
    「ミステリーズ!」に掲載されただけあって、多少推理物的な要素もあるが、それはお遊び程度のもの。
    柚木さんの描く若い男は、いつもヘタレ風が多い。
    この作品に登場する宝子の片想いの相手デザイナーの西島もその例に漏れない。
    さあ、ストーカー並みに想いを寄せる宝子の恋の行方はどうなる? というところが読みどころか。
    まあ、軽く読める小品でした。

  • 楽しくワクワク、ドキドキな気分にさせてくれて、想像力、創造力を動かしたい時に読みたい一冊。憎めなくて応援したくなるような登場人物ばかり。宝子の想いがクライマックスで大きく変わる所がとても考えさせられる内容で、納得しながら完読。

  • おもちゃプランナーである宝子さんが
    片想いをしている相手の西島さんに対して、SPばりに
    彼の身辺に起こる不穏な要素を取り払っていく。

    西島さんの住んでる所から、スカイツリーが貯蔵タンクで
    見えなくなれば、タンクごとなんとかし、
    西島さんの彼女が良くないことをしでかそうとするのを
    いち早く察知したり…
    まぁーあり得ないことが起こるけど、おもしろく読めた!!

    個人的にはバズ・ライトイヤーに似ている目黒さんと
    結ばれてほしかったー(*´艸`*)
    西島さんのことは好きでも、それ以上の大きな気持ちで
    生きていこうとする宝子さんは、
    かっこいいなぁーと思えたよ!!

    だけど、片想いに片想いをしているような宝子さんとは
    実際には友達になれなさそうだなぁーと思って、
    ☆3ですー。

  • 表現に 奥行がなく ちと読み応え不足。
    なんて、ナマイキ発言をしてみる。
    でも 宝子には好感をもてる。
    節々に 自分と同じではないか?と感じるところ大。

    ずっと一人かもしれないってすごく怖いよ。
    誰ともちゃんとつながれないまま、
    誰とも心をからませることもないまま、
    自分で自分の心のねじを巻いて

    私、年だけとっていくのかな。。。

    いや、正にワタシだ。
    そして、私は トシくっちゃってるよ。
    あぁ、イタタタ...(´д`|||)
    ガンバレ宝子 ガンバレワタシ

  • 玩具メーカーエースの片想い話

  • 久しぶりに思いっきり読み耽る事が出来た作品です。
    自分自身玩具業界で長いことアルバイトをしていた事があるので、主人公の宝子に親近感を覚えました。また、玩具業界って楽しいところだよなぁと改めて感じることが出来ました。

    後半入るくらいまでは面白くて一気に読んだ感じでしたが、スリの話辺りからんん??と思う部分が出てきてちょっと失速かな、という感じ。

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著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚木麻子の作品

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