ミツハの一族

著者 :
  • 東京創元社
3.50
  • (10)
  • (24)
  • (39)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 201
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027469

作品紹介・あらすじ

未練を残して死ぬと、鬼となって水を濁す。その者を常世に送る宿命を背負った2人。大正時代の北海道を舞台に、水辺を守る一族を鋭く描いた著者渾身の連作ミステリ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • むっちゃ面白かった。乾さんの性別を勝手にずっと男性だと思っていた。しかも表紙からして金魚の怪異とかそんな感じかと思っていました…二つ合わせてごめんなさい。

    設定をもっときつめにした方が好きかも…。読み始めて2章目あたりからミステリーなんだと…知った。なんかちょっと惜しい。ミステリーも鬼の存在も手に持つカンテラの灯みたいに弱々しくてあやうくて。強い風が吹くと消えてしまいそうで、やきもきしたりそわそわしたり。けどその脆さがすごく好き。古くから伝わる「烏目役」と「水守」の因習。

    水面水鬼○
    黒羽黒珠○
    母子母情◎
    青雲青山○
    常世現世◎

    読んでいて最後にはまさかあういう展開になるとは思っていなかったので予想外で、驚き半分、つらさ・切なさ半分でもだえてしまった。

    教えれば教えるほど、近づけば近づくほど水守は孤独にさいなまれるんじゃないか…と不安に思ったけど、水守は想像以上に強くて、周囲の歴代烏目役の方が惑わされている。水守って初めから座敷牢の中の傀儡のような存在だったから闇と孤独なんて当たり前のようなものだったのかもしれない。

    わからなかったことは水守の耳の件と父親。あと表紙は全部読み終えるとちょっとえぐいかな…と感じたり。

    烏目役の欲深さと葛藤が人間らしくて、真の主人公は水守なんじゃないかな…と思えたりしたけど「現世の千里は常世の一歩…」の約束は読んでいてその決断に思いが焦がれてしまった。ネタバレになっちゃうからもうこれ以上書けない。ので非公開の読書メモにつらつらと書く。

  • 未練を残して死んだ者は鬼となり、井戸の水を赤く濁す。
    そのままでは水源は涸れ、村は滅んでしまう。鬼となった者の未練を解消し、常世に送れるのは、“ミツハの一族”と呼ばれる不思議な一族の「烏目役」と「水守」のみ。

    舞台は、大正時代の北海道の開拓地。
    当時は今より闇も深くて、「鬼」が出た、といわれても、そういうこともありそうだ、と思ってしまう。
    きっと、独特な因習が残っている地域も実際にあったのでしょうね。

    闇の中では目が見えない烏目と、
    光の中では目が見えないむくろ目。

    それらの目を持って生まれたがために、特別な存在である彼ら。それを、遺伝による目の病気なのでは、とますます眼科医になる意欲を高める清次郎の存在からもわかるように、時代がちょうど移り変わっていくのを肌で感じられました。
    制限の多い時代から、前例に縛られることなく扉を開いて進んでいく勇気のある時代へ。

    この物語のおもしろいところは、ミステリー仕立てにもなっているところ。
    まずは、鬼が誰なのかを推理する。
    そして、どんな未練があるのか、その未練を断ち切る方法を推理する。
    死は誰にとっても平等に訪れるけれど、私は強い未練を残さずきちんと死ねるだろうか、なんて思考をふわふわ彷徨わせながら読みました。

    そして、美しい水守の存在感が何よりも大きい。
    知の光を手に入れたことで辛いこともあるだろうけど、それでも光を手に入れたことを幸せと想い続けてくれたらいいなと、祈るように思いました。

  • 大正時代。
    北海道帝国大学医学部に籍をおく清次郎。彼は一族から烏目、と言われる目を持つ青年。
    彼らの一族は信州から北海道にやってきた開拓民。なぜなら、それは水が涸れたから。
    彼らの因習では、死人に妄執があれば、鬼となって水辺に立ち、放っておくなら水を涸らし、毒となす。
    なので、鬼を見る役目を背負ったむくろ目を持つ「水守」と「烏目役」と呼ばれる者が鬼を常世へと送る。

    鬼が水辺に立つと呼び出される清次郎。
    最初は義務感から鬼を送るが、水守の少女の境遇を知るにつれて同情し、愛しく想うようになる。
    閉ざされた環境から、少しでも自由を、と小学校の教科書を手に入れて教える清次郎。
    彼は、最初に少女に約束していた。
    「君の苦しみを、いつか必ず取り除く」と。

    烏目役が青年で良かった、というのが率直な感想でした。
    もしこれが、男女逆であったなら、女性は即決タイプが多いので、水守の目に包帯でも巻いて、
    「私と一緒に逃げましょう!」ってなことになりかねないな、と。
    そうなったらギャグだ…
    烏目役が清次郎だったからこそ、清らかな物語になったなぁ〜、と思う。

    静謐で、美しい小説でした。

  • 不思議な力を授けられた血筋に生まれてしまった宿命には抗えない。受け入れるしかないのだろう。
    そんな力があるばっかりに、かたやは夜目がきき、かたやは薄暗くなると見えなくなるという両極端な特徴が。
    凸と凹みたいに両極端なものが2つ揃うところに意味があるのか。
    時代が変わり、考えも変わってくる。
    不確かなものではなく確かなもので対処する時機が訪れる。
    そうよ、そうなっていかなければならない時というのは、何事にもあるはず。

  • どなたかのブクログ本棚で見かけて。
    「あ、私この本、好みだと思う!」と感じて、早速図書館で予約して借りました。

    ドンピシャ、好み!(笑。
    師走に、以前から予約していた本がまとめてきてしまい、いっぺんに読み進めて、ほいでもって忙しいのであまりきちんとレビュー書けないんですが。

    ラストが尻すぼみな感じなので☆3つ。
    でも、この世界観が好きです。
    同時期に読んだ、彩瀬まるサン(朝が来るまでそばにいる)とか、桜木紫乃氏(起終点駅)の本は、新年あけて落ち着いたら、また図書館で借りて読もうと思っていますが、こちらは二度読みはないかな・・・。とってもいい世界観なのに、何かいろいろ惜しい感じです。ほんと惜しい!
    でも、好きですが(照)。

    この本をブクログ本棚に入れているかたの本棚を漁って(苦笑)、また好みの本を探していきたいです。

  • 大正時代の北海道
    未練を残して死ぬと、常世へ旅立てずに鬼と化す。
    井戸の水を赤く濁す。
    池に鬼が立つと水が濁る。枯れる。毒が混じる。
    鬼となった者の未練を解消し、常世に送れるのは、
    〝ミツハの一族〟と呼ばれる不思議な一族。
    男の「烏目役」と女の「水守」のみーー。


    黒々とした烏目を持つ北海道帝国大学医学部に通う、八尾清次郎。
    烏目役の従兄・庄一が死んだとの知らせを受け、
    村に赴くが、すでに鬼が池に立っているという…。
    男の烏目は、暗くなっては、ほとんど何も見えず、
    女に出るむくろ目は、男と正反対で昼は眩しくて目を開けていられず、
    闇が深くなればなるほど見えて来る。
    水守は代々醜女との聞いていたのに、
    初めて目にした水守は、最も美しい顔だった…。
    水守に命令する事が出来るのは烏目役のみ。
    池に立つ鬼の姿を水守が見て、烏目役が未練をさぐり、解消し
    常世へと旅立たせる。

    過酷な運命を背負わされた二人。
    清次郎が抱いた気持ちと同じ様に、赤ん坊の時から、
    暗闇でただ生きてきただけのむくろ目の水守が可哀相だと思った。
    最初、嫌々烏目役をやっていた清次郎だが、美しい水守に惹かれ
    水守に沢山の事を学ばせていく姿は良かったなぁ。
    それなのに、最終章ではあまりもの出来事の数々に胸が痛かった。

    何ともいえない不思議な空気感。
    古い因習は消えて行くんでしょうね…。
    この一族は滅びゆくのでしょうね…。
    現世の千里は常世の一歩…。
    切なかったけど、きっと常世で会えるのですね。

  •  乾作品色分けしてますが、これはグレーです。全体的に流れる妖しい雰囲気がいいですね。時代設定にあっています。烏目と水守。清次郎のまっすぐな想い、叶わぬと判っていてももどかしいです。

  • 完成度はイマイチだけど、それでもやっぱ小説は面白い......って、気付かせてくれる作品ヽ(・∀・)ノ

  • どうせなら、結ばれてほしかったとそう願うのは少しわがままだろうか。

  • 未練を残した死人は鬼となり、村の水を濁らせ枯らす。
    大正時代の北海道を舞台に鬼の未練を突き止め成仏させる役割を担う一族「烏目役」と「水守」を描いた物語。

    闇の中では全く見えなくなる烏目、闇の中でしか見えないむくろ目。
    水守は鬼を見るだけ、烏目役は鬼が見えず水守が見たものから未練を推理する役割。なんか効率の悪い因習だなぁと思いつつ読んでた。
    主人公が静かに水守と心を通わせていたんだと物語が収束していく過程は良かった。

全43件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1970年北海道札幌市生まれ。2006年、「夏光」で第86回オール讀物新人賞を受賞。2010年には『あの日にかえりたい』で第143回直木賞候補となる。他の著書に『花が咲くとき』『メグル』『願いながら、祈りながら』『向かい風で飛べ!』『モノクローム』『森に願いを』『ミツハの一族』『奇縁七景』『花が咲くとき』『わたしの忘れ物』など多数。

「2019年 『明日の僕に風が吹く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ミツハの一族のその他の作品

ミツハの一族 Audible版 ミツハの一族 乾ルカ
ミツハの一族 Kindle版 ミツハの一族 乾ルカ

乾ルカの作品

ミツハの一族を本棚に登録しているひと

ツイートする