戦場のコックたち

著者 :
  • 東京創元社
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レビュー : 299
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027506

作品紹介・あらすじ

1944年、空挺部隊のコック兵となった19歳のティム。過酷な戦いの間に、気晴らしで仲間とともに「日常」で起きる事件の謎解きに興じるが──気鋭渾身の初長編。

感想・レビュー・書評

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  • 第二次世界大戦にコックとして従軍したアメリカの若者の話。
    日本人作家が丁寧に描いています。

    1944年、ティムの周りでも出征する人が増えてきた。
    徴兵されるより志願するほうがカッコイイかな、とティムも志願することを決めます。
    おばあちゃんのレシピを見るのが好きだったティムは、炊事担当の特技班へ。
    素直なティムには、キッドというあだ名が付きます。

    班のリーダーは冷静な眼鏡くんのエド。普段はおとなしいが頭が切れるホームズ役です。
    班の面々は学園モノっぽい乗りだけど、置かれた状況は‥

    使用済みパラシュートが大量に集められたのはなぜか。
    粉末卵がなくなってしまった理由は?
    軍が駐留する地域の住民にも謎が‥
    戦場で起きる謎というのが一筋縄ではいかず、バラエティに富んでいて、よく調べてよく考えてあると感心しました。

    ごく普通の男の子が、命がけで戦うのもスリルがあってカッコイイかなというぐらいの気分で志願し、ノルマンディー降下作戦に参加。
    ヨーロッパ戦線ねぇ‥ノルマンディーですか‥
    もうすぐ終わる時期ではありますが。

    普通の男の子が経験した戦争。
    直面した状況が詳しく書かれているので、読むのはちょっと大変ですが、良心的な内容を素直に読めるように書いてあると思います。
    なめらかな文章に「翻訳物でもこんな読みやすいのもあるのね」とふと思い、いやこれは日本人が書いたんだったわと気づきました、2度(笑)
    エピローグも良かったです。

  • な、長かった…。心が折れそうになった。地名と人物名の書かれているページを何度も見返した。苦手な2段組みだし入り込めないし途中で「もう無理!」と何度か思った。けど放り出さずに読了できてよかった…。


    序盤から中盤までモノクロで個性もない兵士たちのシーンが続いてつらかった。謎解きも難しいし情景も浮かんでこない。「ミソサザイと鷲」から私の中で登場人物が動き出してそこからは、もう一気読みでした。(それでも返却期間ギリギリ)


    天からの恵みの雨粒は兵士や住民、敵味方関係なく平等にその場にいる人を濡らすのに、人間はいつも変わることなく争い続ける。戦争は憎しみの連鎖しか生み出さない…虚しさを感じた。以前の大戦の悲劇の記憶も薄れ、また同じことを繰り返そうとしている今の世界情勢と、かぶることもありだから心に響く内容のような気もした。


    ラストは狙いすぎているような気もするけど…、あのエピローグがなかったら、読んだ後に安心して眠れなかった…と思う。


    参考文献が膨大で驚いた。面白かったけど苦労した。読み切った!という達成感が半端ない。けど消化できない部分もあって二度読みすればきっとわかるんだろうなぁ…と思うのだけど余力はない。

  • 深緑さんの本は前作がとても良かったのでぜひ読んでみようと思った。
    けど戦争ものだったのでかなり苦戦。しかも海外のだし。
    丁寧に書かれててわからないなりに、圧倒されて読みました。
    エドが死んでしまうのは悲しかった。
    キッドはいい人だ。

    でも戦争は性格を歪めてしまうというか、本当に2度としてはいけないものだ。

  •  この本の紹介に「日常の謎」とあるのだが、これは日常ではない。銃声と無造作に転がる死体、一人また一人と欠けてゆく仲間、荒んでいく精神…そんな状況が日常であっていいはずがないのに日常となってしまった彼等。
     苛酷さを増す現実の中で、それでも繋いだ絆があったのだと、心分け合う友がいたのだと、そのことが塞がらぬ心の傷を抱えて生きる彼等のその後を支えてくれる。
     

  • 第二次大戦、欧州戦線に配属された炊事兵の日常、そして兵士たちの戦いを描く。たわいもない事件の謎解きからゆっくりと始まる作品は、やがてキーとなる人物の突然の退場と、戦友の驚くべき過去を軸に一気に回転し、影の薄い「ワトソン」でしかなかった主人公を名実ともに主役の座に押し上げる。軽妙なタッチでいながら、戦争の矛盾や闇、忘れられた傷病兵の暗い姿、過去から逃れられない帰還兵たちをも同時に描写し、深い味わいを残していく。
    冒険小説のカテゴリーへ入れてもいいと思うが、久しぶりの本邦作家の力作だった。満足です。

  • 第二次世界大戦。欧州戦線に配属された
    兵士たちの戦いを描く。主人公ティモシー(ティム)
    (通称キッド)の特技(コック)兵の日常。

    コックたち、とあったので戦時下などにおける
    料理などの話かと軽く考えていたのですが
    軍隊におけるコックの立場などがメインでした。
    日常の謎というミステリのカテゴリーはあれど
    戦場という非日常における日常の謎、
    というのは新しいように思います。

    さっきまでバカ話をしていた仲間があっけなく死ぬ。
    それが戦争であり戦場であると
    わかって読んでいてもやはり辛いです。
    傷病兵の闇、過去から逃れられない帰還兵、
    軍から逃れられない仲間の過去、戦争孤児。
    ごく普通の若者が人を殺し、殺されるうちに
    狂気に呑まれていく。

    優しくてどこか甘くて仲間からも「キッド」と
    呼ばれ、からかわれていたティムが
    「自分たちの仲間を殺したやつらだから
    無抵抗でも殺して当然なんだ」という思想に
    たどり着いてしまう姿はとても辛かったです。
    冷静で頭のいいホームズ的存在のエド。
    そのワトスン役だったティムが最後には
    しっかりと自分の足で立つようになる姿。

    一瞬、作者さんは日本人だよね…?と
    確認したくなるほど、第二次世界大戦末期の
    米軍についてしっかりと書かれているので
    読み応えがあります。
    前作もナチスの話が絡んでいたので
    このあたりの時代の知識の深い作家さん
    なのでしょうか…オーブランの時から
    気になっていたので、これからも新作を
    楽しみにしています。

  • 頭から尻尾まで豊かな読み心地で、作品の世界にのめりこめる。第二次世界大戦を舞台に、アメリカ軍の若き兵士たちの戦場での毎日を綴りながら「日常の謎」解きをプラス。主人公たちが戦闘もおこなうがメインの仕事は料理というのがひと味ちがう。「暗唱シーン」、大好きです。ごく普通の若者たちが次第に狂気に呑まれていく過程が、人を殺めて賞賛される戦争そのものの異常さを浮き彫りにする。

  • いくつかの要素を持った作品だ。
    ①戦争もの
    ②謎解き
    ③青春もの
    ④友情もの
    表紙のイラストはセンスが良く、食事を連想するものだし、タイトルが“コックたち”だが、“戦場のグルメもの”ではない。
    むしろ不味い。
    粉末卵最悪!(笑)

    主人公・ティモシー(ティム)・コール。アメリカ人。
    おばあちゃんのレシピ本を眺めるのが好きだった。
    世界恐慌で経済が破たんし、やがて第二次世界大戦に突入すると、彼は軍に志願することを考える。
    愛国心はもちろんあったが、安定した給料をもらって家族を支えたい、戦死しても見舞金は出るだろう。そして、徴兵ではなく志願で入隊した方が、ボーナスが50ドル多く出てお得。そして少しの英雄願望。
    それが理由。
    決して彼が軽かったり甘かったりと言うわけではなく、若者たちの志願理由はだいたいそんなものではなかっただろうか。

    ヨーロッパ戦線が舞台となる。
    ノルマンディー上陸作戦から始まり、数々の悲惨を見届けなければならなかった。
    初陣の恐怖から、いきなり放り出される目を覆うような酸鼻、世話になった人との別れ、生死の明暗を分けるちょっとしたタイミング。
    どこかで慣れていく部分と、どうしても慣れない部分。
    彼が「なぜ戦うのか?」と自問し始めるのは、だいぶ泥沼にはまってからである。

    戦争ものを読み終わる時…
    終戦の瞬間の安堵感、帰還した兵士の「自分は故郷の人たちとは違ってしまった」という疎外感、失った仲間ばかりに思いが向く、そして虚しさ。
    何度もそういったものを感じるのだ。

    プロローグ
    ティムがコックとして配属されるまで。

    第一章 ノルマンディー降下作戦
    ティムたち特技兵(コックも含む)は戦闘ももちろん行うが、主な任務は「支援」
    「サポーティング・ヴィクトリー!(勝利を支えよ)」を胸に、緊張で震えながら降下するが、いきなり友軍の死体を踏みつける。
    ・ライナスが大量の使用済みパラシュートを回収しているのはなぜか。

    第二章 軍隊は胃袋で行進する
    後方の野戦基地で給養。
    ・徴兵ポスターなど、軍の広告モデルを務める、いけすかない美男・ロス大尉と、粉末卵がいきなり600箱も無くなった謎。
    有色人種差別。

    第三章 ミソサザイと鷲
    オランダで市街戦。
    コックの仕事はなく、戦闘に専念する。
    待機のために家を貸してくれたおもちゃ職人夫妻の秘密とは?
    ヤクトパンターの脅威。

    第四章 幽霊たち
    幽霊を見るのは、多くの人間を殺しても罪を忘れていない証拠なのか。

    第五章 戦いの終わり
    途中からコック仲間に加わった、ダンヒルの秘密。
    友情が試されるとき。

    エピローグ
    ベルリンでの再会。

    ーーーーーーーーーーーーーーー
    途中から死亡フラグが読めるようになり、つらくてしかたなかった。

    メガネはどこに消えた?

  • すごく良かった。謎解きや料理の部分は楽しんで読みましたが、それよりも戦争の惨たらしさ、主人公たちの友情や戦う葛藤のほうが強く強く印象に残っています。
    とても読み応えのある一冊でした。

  • 第二次世界大戦中、アメリカの片田舎に住む料理好きの青年ティムが特技兵として戦争に行く。ノルマンディ上陸作戦などヨーロッパ戦線を戦闘員として参加もする。

    想像していたのとは違って、料理の話はあまり出てこなかった。予備のパラシュートを集める兵隊の話や粉末卵が無くなる話、アメリカ人になりすますドイツ人の話などの連作ミステリー短編集。

    惨たらしい戦争の様子の描写も細かい。たくさんの人も亡くなるが、そんな中でも友情を育み必死で生き抜く主人公。最終章で戦後何十年も経って仲間たちが集まる。

    戦争で孤児になった子どもを引き取って育てている主人公や、戦争の影を背負いながら戦後を生き抜いた友人たちの姿に感動した

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著者プロフィール

深緑野分(ふかみどり のわき)
1983年、神奈川県生まれ。神奈川県立海老名高等学校卒業。パート書店員を経て、専業作家に。2010年、短編「オーブランの少女」で第7回ミステリーズ!新人賞の佳作に入選、作家デビュー。同作は2013年に単行本で刊行。2016年、『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、第18回大藪春彦賞候補、第13回本屋大賞候補に。2017年、第66回神奈川文化賞未来賞(奨励賞)を受賞した。2018年、『ベルリンは晴れているか』で第160回直木賞ノミネート。

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