戦場のコックたち

著者 :
  • 東京創元社
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レビュー : 294
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027506

感想・レビュー・書評

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  • 本屋さんで手に取った時、その装丁や物語に描かれた舞台から、てっきり翻訳小説だと思った。第2次世界大戦のヨーロッパ戦線なんて、当事国の作家であろうが、日本の作家であろうが、膨大な調査の上に想像力を積み上げていくしかないだろうと、変に納得する。巻末の主要参考文献の多さにも同じく納得と敬服。

    『このミス』2位と、ミステリーとして評価されているが、青春小説として十分読みごたえがあった。僕らの青春にもクラブの仲間がいて、若い感性で物事をとらえ、情熱があふれていた。この小説の主人公の青春には、そこに戦争があり、殺す・殺されるという状況があった。戦争とはいえ人を殺すという経験は年齢を重ねるにつれダメージが大きくなるだろう。失われた命が過ごすはずであった人生を想うと押しつぶされそうになる。
    大戦40年後のおだやかなエピローグは東西体制が崩壊したからこその場面だ。東西体制が崩壊するまでにもどれだけの戦いと犠牲があったことか。その戦いと犠牲にも40年たたないとエピローグは訪れないだろう。

  • 久しぶりに読みごたえのあるものに出合いました。
    序盤のちょっとした謎解きは終盤に起こる大事件の布石だったんですねぇ。

    ミステリーとしても十分驚かされたし、人種問題や、人間の人格を変えてしまう戦争というものの真実を見せつけられた思いです。

    作者はまだ若いのに、まるで見てきたような描写には、驚くほどたくさんの参考文献を読まれてたんですね。

    初めてページを開いた時は、これは難しいんじゃないかと思ったけれど、読み始めたらもうぐいぐいいっちゃいましたよ。(笑)

  • え、ノルマンディー上陸作戦…から?
    これはひょっとしたら苦手なジャンルの小説か?作者は日本人なのに、連合国側からの第二次世界大戦のヨーロッパでの攻防を…という内容にまずためらってしまいました。が…
    戦争中だって当たり前だけど、食事はとらなきゃならない。というわけでの戦場のコックたちのストーリー。
    一見、日常の謎を解いてゆくという手法ではありますが、やはりそこは戦場。読み続けるのが切ない箇所も多々あったのですが~
    そして明かされ始める個々の人物の事情等々。こんなに心地よい涙を流したのは久しぶりでした。映像化が可能なら是非とも!

  • 戦場に帰りたくなる。こう書かれていたとき、どうしてだろう、と腑に落ちませんでした。だけど、続く、おいていかれたくない、自分の知らないところで戦況が変わる、家族同然の仲間が死ぬのはいやだ、という主人公の思いにはっとしました。
    仲間外れにされる恐怖というのは、だれしも持つものです。戦場は兵士の居場所で、そこから爪弾かれるのはおそろしいのかもな、と思いました。だけど休暇はほしくて、でも、戦場には戻りたい。この矛盾にキッドの青春を感じ、死んでいった仲間たちを思いました。戦場が青春。死の記憶に結びつきながら、それはぎらぎら輝いているようです。
    読みはじめてすぐにあっこのひと死んじゃう、と思っていて心の準備をしていましたが、それでも最後のあたりでうるっとしました。あの遺書はやさしさのかたまりです。大好きです。
    きっとあの遺品の最後も、あの子らしく、もういいだろ、と去っていったんだと思います。もしかしたら親友に向けた謎かけかもしれません。
    よく生きてからこっちに来いよ、答えはそんなところです。

  • 1944年、合衆国軍のコック兵となった19歳のティム。彼と仲間たちが戦場で遭遇したささやかだが不可思議な謎とは――戦いと料理と〈日常の謎〉を連作形式で描く、著者渾身の初長編!

  • 戦場で華々しく戦う仲間を支えるための、コックとしての視点から描かれた物語。
    コックとはいえ兵士なので、戦いもするけれど、裏方仕事だからこそ見える戦争について、友や民間人との関わりが丁寧に表現されていたと思う。
    エピローグまできちんと登場人物の行く末を追ってくれていて、読了感が良かった。
    人に薦めたいと思えた一冊。

  • 第二次世界大戦中、あのノルマンディー上陸作戦から始まる、ヨーロッパ戦線の最前線が舞台。ふだんは戦闘に参加して、食事時になると特技兵としてコックの腕を振るう、主人公ティムとその仲間たちのお話。

    ミステリーだったのか。ん?ミステリー、なのか?
    と思いながら読み終えて、結局再度一から読み直しました。
    舞台設定が秀逸すぎるというか、背景がすごすぎて、ミステリー要素が霞んでいる。

    最後のエピローグを読むときは、ビリー・ジョエルの『レニングラード』が頭の中に流れていました。それからさらに30年、私たちは、あなた方が望む世界を作れていない。

  • 戦場部分はもちろんキツイのだけど、兵士同士の会話の部分がどうしてもほんわかして緊張感が薄れる感じ。どっちつかずになっちゃってるんじゃないかと思え、そこが若干もったいない気がしました。戦場の描写が細かくて、ベルリン、、でも思いましたが筆致力はさすが。やはり、どちらに集中して読んだらいいのか最後まで戸惑ってしまいました。

  • 読後感。
    戦争だから楽しい話ではないけれど、余韻が良い。
    時間を置いてもう一回読み返したい。

  • 日本人にとって必ずしも情報入手が簡単でない、米国軍内部及び第二次世界大戦中のドイツの状況など、どうしたらここまでの詳細情報を得られるのかと驚く。もしその情報源が書籍資料に頼っているのだとしたら、かなりの量になるだろう。

    自分自身米国軍基地の近くで育ち、基地内部の生活に触れたことのある者として、ここに書かれている周辺情報は事実に限りなく近い。ただし詳細故に、細過ぎるというか、クドイと思わざるを得ない部分もある。

    唯一「?」と思わせる箇所は、ワシントン州が雪が多く寒さの厳しい場所として描かれている所かな…

    読み始めは「どこがミステリーなの?」という感じだったが、"謎解"きから各人の生き様へと変化してゆくに従って読み応えが増して来る。



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著者プロフィール

深緑野分(ふかみどり のわき)
1983年、神奈川県生まれ。神奈川県立海老名高等学校卒業。パート書店員を経て、専業作家に。2010年、短編「オーブランの少女」で第7回ミステリーズ!新人賞の佳作に入選、作家デビュー。同作は2013年に単行本で刊行。2016年、『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、第18回大藪春彦賞候補、第13回本屋大賞候補に。2017年、第66回神奈川文化賞未来賞(奨励賞)を受賞した。2018年、『ベルリンは晴れているか』で第160回直木賞ノミネート。

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