戦場のコックたち

著者 :
  • 東京創元社
3.80
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本棚登録 : 2241
感想 : 353
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027506

作品紹介・あらすじ

1944年、空挺部隊のコック兵となった19歳のティム。過酷な戦いの間に、気晴らしで仲間とともに「日常」で起きる事件の謎解きに興じるが──気鋭渾身の初長編。

感想・レビュー・書評

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  • 「ベルリンは晴れているか」でミステリー要素を散りばめた戦争不条理を読んで、この本も興味があり手に取った。ノルマンディー上陸作戦から始まる。主人公のティモシー・コール。役割は戦場でのコック。今回もミステリー要素が面白かった。600箱の粉末卵の謎、不要となったパラシュートをかき集める兵士の目的、聖夜の雪原をさまよう幽霊兵士の正体など。ロシアのウクライナ侵攻が行われる今、ドイツの他国侵攻と重なる。ロシアの民間人への酷い蹂躙。この悲劇が80年前に起きていたとは。浅く深く掘り下げる深緑作品は、また読んでみたい。⑤

    人間は忘れる生きものだ。やがては明らかな過ちさえも正当化する。

  • 第二次世界大戦にコックとして従軍したアメリカの若者の話。
    日本人作家が丁寧に描いています。

    1944年、ティムの周りでも出征する人が増えてきた。
    徴兵されるより志願するほうがカッコイイかな、とティムも志願することを決めます。
    おばあちゃんのレシピを見るのが好きだったティムは、炊事担当の特技班へ。
    素直なティムには、キッドというあだ名が付きます。

    班のリーダーは冷静な眼鏡くんのエド。普段はおとなしいが頭が切れるホームズ役です。
    班の面々は学園モノっぽい乗りだけど、置かれた状況は‥

    使用済みパラシュートが大量に集められたのはなぜか。
    粉末卵がなくなってしまった理由は?
    軍が駐留する地域の住民にも謎が‥
    戦場で起きる謎というのが一筋縄ではいかず、バラエティに富んでいて、よく調べてよく考えてあると感心しました。

    ごく普通の男の子が、命がけで戦うのもスリルがあってカッコイイかなというぐらいの気分で志願し、ノルマンディー降下作戦に参加。
    ヨーロッパ戦線ねぇ‥ノルマンディーですか‥
    もうすぐ終わる時期ではありますが。

    普通の男の子が経験した戦争。
    直面した状況が詳しく書かれているので、読むのはちょっと大変ですが、良心的な内容を素直に読めるように書いてあると思います。
    なめらかな文章に「翻訳物でもこんな読みやすいのもあるのね」とふと思い、いやこれは日本人が書いたんだったわと気づきました、2度(笑)
    エピローグも良かったです。

  • 第二次世界大戦、ヨーロッパでの作戦に参加したアメリカのコック兵の物語。
    彼らは仲間の胃袋を管理するのが仕事だが、訓練を受けた兵士なので戦闘にも参加する。
    本来の仕事の合間に、なぜか予備のパラシュートを大量に集める仲間がいたり、粉末卵が消えてしまったり、ちょっとした謎解きがあって面白かった。粉末卵って、説明されてもいまいち想像できないけれど、すごく不味そうだ。
    そんな風に気を緩める場面があるかと思えばそこはやはり戦場で、長くいるうちに段々と心が削られていくのが伝わってくる。
    仲間との賑やかなやりとりがあったり、人を助けたりもしたのに、それを覆ってしまうぐらい、全てが終わったところで取り返しがつかないという虚しさや寂しさが胸に広がった。

  • 戦場と料理

    戦場にも料理が必要だ。
    食べなければ、戦えないのだから。
    違うものを2つ組み合わせると、面白くなるんだなあと実感しました。特に料理のくだり。設備の整わない、食料も十分でない戦地でいかにおいしく食べてもらおうと、あれこれ模索する主人公の目線がすてきです。

    • まことさん
      えりりんさん♪こんにちは!

      コメントありがとうございます。
      私の、レビューの方のコメント欄に返信したので、お暇なときに見てください。
      えりりんさん♪こんにちは!

      コメントありがとうございます。
      私の、レビューの方のコメント欄に返信したので、お暇なときに見てください。
      2020/04/17
  • 生涯一度きりの謎解き。キャラクターも時代設定もとてもよかった。

  • 深緑さんの本は前作がとても良かったのでぜひ読んでみようと思った。
    けど戦争ものだったのでかなり苦戦。しかも海外のだし。
    丁寧に書かれててわからないなりに、圧倒されて読みました。
    エドが死んでしまうのは悲しかった。
    キッドはいい人だ。

    でも戦争は性格を歪めてしまうというか、本当に2度としてはいけないものだ。

  • 戦争冒険小説かと思いきや、戦場という非日常における“日常の謎”を解き明かす本格ミステリ的味わいもある。しかしながら、謎解きだけでは終わらない深みが本書にはある。第二次世界大戦中のヨーロッパ戦線における米軍空挺師団。そこに所属する“戦場のコックたち”を主軸に繰り広げられる、戦争ならではの衝突あり、友情あり、悲劇ありのヒューマンドラマが圧倒的に面白いのだ。等身大の若者が葛藤し、苦難を乗り越えながら成長していく様はグッとくる。特に物語終盤の劇的な展開には胸を打たれた。余韻が残る読後感も良い。
    およそ30人もの登場人物を描き分ける筆力。緻密な取材に基づいた戦禍のリアリティが凄い。まるで翻訳小説か?と見紛う程の臨場感だ。戦時中の具体的な食糧や料理が登場するのも特徴的。“粉末卵”は食べてみたいような、みたくないような(笑)
    著者が影響を受け、本書のベースにもなったドラマ「バンド・オブ・ブラザーズ」もいつか観てみたい。

    週刊文春ミステリーベスト10 3位
    このミステリーがすごい! 2位
    本格ミステリ・ベスト10 12位
    本屋大賞 7位
    SRの会ミステリーベスト10 3位
    ミステリが読みたい! 2位

  • 「ベルリンは晴れているか」もそうだったけど、戦争を舞台に、エンターテイメントを上手く絡めて物語を描かれていてると思う。そして壮大で、背景の緊迫さがひしひし伝わってきて、状況描写が細かい。身近で起こっているような、自分もその場にいるような感覚に陥る。だから登場人物たちに感情移入しやすく、伝わってくるものが大きい。戦争はどれほど凄惨で、どれほどの人を、尊い命を簡単に奪い、どれだけ無駄で馬鹿馬鹿しく、この上なく悲しいものか思い知らされた。

    エンターテイメントだけではなく、私たちに大事な後世に伝えていかなければいけないものも伝わってきて、そしてその世界にどっぷりつかり、素晴らしい作品だった!

  • 年末から読んでいた本書が今年一冊目の読了本。
    ベルリンは晴れているか、より面白かった。
    戦争のごはんの詳細は、期待したほどは描かれていなかったけど、戦時中のなんでもあり感と、そのなかで普通のひとがどんな心理になっていくのかは、誠実に描かれていて、戦争のことを何も知らない私の真に迫った。

    やはり戦争なので、ネームドキャラもばんばん死ぬ。
    おいおいおい、とつぶやきまくる。
    細かくキャラが多いのであまり覚えきれないけど、エド、ライナス、ワインバーガーがいいなと思った。
    上官の秘密、あまり明確には書かれていないね。たぶん、そういう?ことね。


    読み味はあえて軽く作ってあるんだろうなあ。
    映画を見ているような台詞回しに、作者のそういう方面への愛が感じられました。

  • いくつかの要素を持った作品だ。
    ①戦争もの
    ②謎解き
    ③青春もの
    ④友情もの
    表紙のイラストはセンスが良く、食事を連想するものだし、タイトルが“コックたち”だが、“戦場のグルメもの”ではない。
    むしろ不味い。
    粉末卵最悪!(笑)

    主人公・ティモシー(ティム)・コール。アメリカ人。
    おばあちゃんのレシピ本を眺めるのが好きだった。
    世界恐慌で経済が破たんし、やがて第二次世界大戦に突入すると、彼は軍に志願することを考える。
    愛国心はもちろんあったが、安定した給料をもらって家族を支えたい、戦死しても見舞金は出るだろう。そして、徴兵ではなく志願で入隊した方が、ボーナスが50ドル多く出てお得。そして少しの英雄願望。
    それが理由。
    決して彼が軽かったり甘かったりと言うわけではなく、若者たちの志願理由はだいたいそんなものではなかっただろうか。

    ヨーロッパ戦線が舞台となる。
    ノルマンディー上陸作戦から始まり、数々の悲惨を見届けなければならなかった。
    初陣の恐怖から、いきなり放り出される目を覆うような酸鼻、世話になった人との別れ、生死の明暗を分けるちょっとしたタイミング。
    どこかで慣れていく部分と、どうしても慣れない部分。
    彼が「なぜ戦うのか?」と自問し始めるのは、だいぶ泥沼にはまってからである。

    戦争ものを読み終わる時…
    終戦の瞬間の安堵感、帰還した兵士の「自分は故郷の人たちとは違ってしまった」という疎外感、失った仲間ばかりに思いが向く、そして虚しさ。
    何度もそういったものを感じるのだ。

    プロローグ
    ティムがコックとして配属されるまで。

    第一章 ノルマンディー降下作戦
    ティムたち特技兵(コックも含む)は戦闘ももちろん行うが、主な任務は「支援」
    「サポーティング・ヴィクトリー!(勝利を支えよ)」を胸に、緊張で震えながら降下するが、いきなり友軍の死体を踏みつける。
    ・ライナスが大量の使用済みパラシュートを回収しているのはなぜか。

    第二章 軍隊は胃袋で行進する
    後方の野戦基地で給養。
    ・徴兵ポスターなど、軍の広告モデルを務める、いけすかない美男・ロス大尉と、粉末卵がいきなり600箱も無くなった謎。
    有色人種差別。

    第三章 ミソサザイと鷲
    オランダで市街戦。
    コックの仕事はなく、戦闘に専念する。
    待機のために家を貸してくれたおもちゃ職人夫妻の秘密とは?
    ヤクトパンターの脅威。

    第四章 幽霊たち
    幽霊を見るのは、多くの人間を殺しても罪を忘れていない証拠なのか。

    第五章 戦いの終わり
    途中からコック仲間に加わった、ダンヒルの秘密。
    友情が試されるとき。

    エピローグ
    ベルリンでの再会。

    ーーーーーーーーーーーーーーー
    途中から死亡フラグが読めるようになり、つらくてしかたなかった。

    メガネはどこに消えた?

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著者プロフィール

深緑野分(ふかみどり・のわき)
1983年神奈川県生まれ。2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年刊行の長編『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、16年本屋大賞ノミネート、第18回大藪春彦賞候補。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9回Twitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞ノミネート、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。19年刊行の『この本を盗む者は』で、21年本屋大賞ノミネート、「キノベス!2021」第3位となった。その他の著書に『分かれ道ノストラダムス』『カミサマはそういない』がある。

「2022年 『ベルリンは晴れているか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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