王とサーカス

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 3299
レビュー : 519
  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027513

感想・レビュー・書評

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  • 王とサーカスという題名に象徴されるが、この本にはミステリーという範疇を超えた深みを感じた。
    今まで、テレビや新聞で事件を見聞きするたびに感じる、引っかかりが何なのかを、この本は伝えてくる。
    「悲劇は楽しまれるという宿命、自分に降りかからない惨劇はこの上もなく刺激的なこと」ラジュスワルの言葉は潜在的な認識を表にださせた。
    知は尊いとした時に、では知の意味は何か。多くの人たちが、それぞれの視点で書き伝える事で、この世界がどういう場所なのかがわかっていく、完成に近づいていく事で、自分はどんな世界に生きているのかを認識できると、万智は悟るが、「尊きは脆く、地獄は近い」という八津田の最後の言葉は、重い。何事にも表裏があり、信念や使命感が必ずしも正しいものではなく、間違った道しるべになる事を歴史は示している。
    本の中でのサガルの行為は、真実が持つ深い影ではないだろうか。
    作者の文章はとても巧みである、ちょっとした描写、食事、カトマンズにいることをリアルに感じさせるとともに、舞台の小道具のように意味を持ち、やがて繋がりを読み進めめるうちに感じ始める。
    一気に読み終えてしまった。

  • 大刀洗万智のフリー記者としての初仕事であり、取材すること報道することに対する意味を見つけていくネパールでの事件。ネパール王族殺害事件を題材にとりながら、それ以外のネパールの国情、そして報道による影響といった重いテーマを思いがけない事件の真相としてエンターテインメントにしている。
    17-75

  • 記者 太刀洗万智がネパールに訪れた際に遭遇した王宮虐殺事件に端を発した事件の情報源と思われる人物の謎の死の真相を追っていき、謎の死が起きた背景に太刀洗が徐々に迫っていき、記者として王宮事件と謎の死の絡みをどう正確に伝えつつ、やがて謎の死の真相にもたどり着いたときに太刀洗が事件の真相の背後にあったものを目の当たりにして何を感じたかという物語で、なかなか面白い展開で、あっという間に読了したような感じでした。
    なかなか面白いシリーズものになるのではないか?と思います!

  • 読了後すぐの感想は、重い。
    読後感はあんまり良くなかったけど、折に触れてシーンや台詞を思い出す。
    サガルが突きつけた現実は答えのない問いで、これから何度も思い出しては考えることになるだろうなと思った。

  • 読み始めた瞬間から、砂埃が舞い色彩が乏しく混沌としたネパールの都市カトマンズへと引きずりこまれた気分になる。
    2001年に実際に起きたネパール王族射殺事件を題材としている。
    日本人フリーライター太刀洗万智が事件を取材する中で、異国の慣れない事情や慣習や、奇妙な人間関係に翻弄されながら、時に立ち止まり、時に戸惑い、真剣に悩む姿が、そして、心の移り変わりが、丁寧に描かれていた。
    悲劇とは、どう伝えられるべきなのか?日本や世界各地で毎日のように起こる悲しい出来事、悲惨な出来事を、人はメディアを通して知り、かわいそうと思い、同情し、時に涙を流し、時に怒るものだが、しばらくすれば記憶の隅っこへと追いやられてゆく。でもその出来事の当の本人はどうか?哀しい思いつらい思いをして世間晒されて、そして忘れられて行くって、どんな思いなんだろう?
    今後のメディアの在り方を今一度考えてみる良い機会になったであろう。

    「もしわたしに記者として誇れることがあるとすれば、それは何かを報じたことではなく、この写真を報じなかったこと。それを思い出すことで、おそらくかろうじてではあるけれど、誰かのかなしみをサーカスにすることから逃れられる。」

  • ネパール王族の惨劇、不可解な軍人の放置死体、そしてその背中に刻まれたメッセージに遭遇するフリージャーナリスト大刀洗万智。彼女をして舞台は動き出す。ミステリーとしても十分堪能でき、同時に歴史的事実とフィクションを絡め報道の意義を問う社会派小説としての面も持ち合わせる。悲劇がサーカスの見世物となって世界に晒される事実に揺れ惑う万智、真実は一つでも書き手伝え手が介在すればその数だけの事実になる。何より伝えるのは誰のため、自己満足、利権、会社であるならば伝えぬことも報道。舞台の曲芸師たちの拍手喝采が聞こえそうだ。

  • 作品の舞台であるネパールに馴染みも興味もさほどなかったので、街や人々、習慣などの描写になかなか馴染めず読み進められるか最初は苦労したが、それを補って余りある太刀洗万智(主人公)の活躍とキャラクターにどんどん引き込まれた。

    タイトルの意味は途中(序盤に近い)に出てくるけど、すごくストンと落ちると言うか大きく納得するし、登場人物のキャラクターの濃さや裏表の描き方がとても興味をそそられる!
    作家の意図するままなのかもしれないけど犯人が何となくわかった状態で最後まで引っ張られるようにして読めた。

    太刀洗万智シリーズをどんどん読みたいなぁー。

  • 展開が上手い。引き込まれて読んだ。
    「多分こういうことだろうな」という想像の元、順当に色々と明らかになっていくのだけれど、最後に一捻りある。思わぬところから銃口を向けられていたのだと、気づいた瞬間少しゾワっとくる。
    面白かった!

  • ミステリとかそういうジャンルわけじゃない、小説として良かった。
    一人の記者の事件とそれを見る目に対する真実や生き方を事件に関わるうちに苦闘しながら見つけ、見つめていく。
    そして、事件の真実に至る。
    ミステリとして、伏線がちゃんと張られていてミステリの面白さを味わえる。
    それを含めていい作品です。

  • 2001年6月1日にネパールの首都カトマンズ、ナラヤンヒティ王宮で発生したネパール王族殺害事件。別の取材でカトマンズを訪れていたフリーライター太刀洗万智は、この千載一遇のチャンスを生かしてフリーライターとしての地位を確立しようと事件の真相を追いかけるが……

    この小説で題材となっているネパール王族殺害事件は実際に起こった事件で、情報統制されたことで未だに多くの謎が残っているそうです。

    “自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ。意表を衝くようなものであれば、なお申し分ない。恐ろしい映像を見たり、記事を読んだりした者は言うだろう。考えさせられた、と。そういう娯楽なのだ。”

    自分の信じる真実を世の中に伝えるということはどういうことか。そんな問いに真摯に答えている作品でした。

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著者プロフィール

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年、岐阜県生まれの小説家、推理作家。金沢大学文学部卒業。
大学在学中から、ネット小説サイト「汎夢殿(はんむでん)」を運営し、作品を発表。大学卒業後に岐阜県高山市で書店員として勤めながら、2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューに到る。同作は「古典部」シリーズとして大人気に。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。『満願』は2018年にドラマ化された。直木賞候補にも度々名が挙がる。
その他代表作として週刊文春ミステリーベスト10・このミステリーがすごい!・ミステリが読みたい!各1位となった『王とサーカス』がある。2018年12月14日、集英社から新刊『本と鍵の季節』を刊行。

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