王とサーカス

著者 :
  • 東京創元社
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レビュー : 519
  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027513

感想・レビュー・書評

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  • 正しさとはとても曖昧なもので、だから人は壁にぶつがる度に何が正解なのかを考えるのだと思う。そこから導き出した答えに救われる人がいる一方で、傷つく人がいるかもしれない。誰も傷つけず、傷つかず幸せになる方法があればいいのだけれど、幸せの裏に必ずしも悪がないとは言い切れないから難しい。ハラハラぐらぐらと息苦しくなるほど気持ちを揺らつかせながら一気に読んだ。そして考えた。正義って何だろ。正義って難しい。でもみんなが生きやすく幸せである世界の完成がやがて訪れることを願わずにはいられない。

  • 2016年の「このミステリーがすごい!」1位
    米澤さんの作品を読むのは「満願」に続いて2作目。

    ネパールで王族が殺害される。
    現地を訪れていたフリーライターの太刀洗万智は、情報提供者を見つけ接触を図るが、新たな殺人が起き・・・。

    あんまりミステリーっぽくなくてストーリーに入り込めないかも?と思っていました。
    しかし謎解きの面白さもありながら、時間外に外を歩いていたら警官に問答無用で撃たれかねない、そんな状況で不審な行動はできないのに密会をしちゃうハラハラ感・押し迫る原稿の入稿タイムリミットなどスピード感もあり飽きずに読めました。

    それとは別に、ジャーナリストの在り方や、報道することは本当に正義なのかを問いてくる。
    こればっかりはね…正解が見つからない。人の立場によって正義は変わるもの。
    ネパール国カトマンズの貧しい子どもたちの現状とその背景にもちょっとドキッとしたものの意外性はないし、「報道=悪」を強調したいのか無理矢理絡めてきたなぁ…という感じがしなくもない。
    そこも落としどころで伝えたかった部分なのかもしれませんが、頭抱え込まれて目の前で演説されてる感じがしちゃって辛かったです(汗)

    これはこれで面白かったけど、結局解き明かされない部分もあり、
    純粋にミステリーを楽しむというよりは読後感は重く、しばらく悶々と考えてしまう作品でした。。。
    普段何気なくニュースを見たりそういう雑誌を読んだりすることは娯楽になるのでしょうかね…。
    なんだかんだで総評価は高めです。(ぇ

    この方の違うテイストの作品を読んでみたい。

  • 『しかしその危険は、わたしが考えているものとは違った。わたしはわたしが信じてきた価値観にナイフを突きつけられている。』

    「確かに信念を持つ者は美しい。信じた道に殉じる者の生き方は凄みを帯びる。だが泥棒には泥棒の信念がら詐欺師には詐欺師の信念がある。信念を持つこととそれが正しいことの間には関係がない」

    「もう一度言うが、私はお前を責めようとしているのではない。お前の後ろにいる、刺激的な最新情報を待っている人々の望みを叶えたくないだけだ」

    「自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ。意表を衝くようなものであれば、なお申し分ない。恐ろしい映像を見たり、記事を読んだりした者は言うだろう。考えさせられた、と。そういう娯楽なのだ。」

    「たとえば私が王族たちの死体の写真を提供すれば、お前の読者はショックを受ける。『恐ろしいことだ』と言い、次のページをめくる。もっと衝撃的な写真が載っていないか確かめるために ー あるいは、映画が作られるかもしれない。上々の出来なら、二時間後に彼らは涙を流して我々に同情を寄せるだろう。だがそれは本当に悲しんでいるのではなく、悲劇を消費しているのだと考えたことはないか? 飽きられる前に次の悲劇を供給しなければならないと考えたことは?」

    「お前はサーカスの座長だ。お前の書くものはサーカスの演し物だ。我々の王の死は、とっておきのメインイベントというわけだ」

    『ニュースのほとんどは、ただ楽しまれ消費されていく。後には、ただかなしみを晒されただけの人々が残る。』

    『しゃがみ込んで膝をつく。そっと手を合わせて、目を閉じる。
    あなたともう一度、話をしたかった。さようなら。』

    「軍人も密売人になれる。密売人も誇りを持てる。誇り高い言葉を口にしながら、手はいくらでもそれを裏切れる。ずっと手を汚してきた男が、譲れない一点では驚くほど清廉になる。…どれも当たり前のことじゃないか。あんた、知らなかったのか」

  • 2001年、ネパールで皇太子による国王一族大量殺人事件が起こる。偶然、ネパールを訪れていた日本人フリーライター、太刀洗万智はそんなビッグニュースを報道できるチャンスをつかみ、事件の情報提供者を見つけ、接触を図る。が、それは新たな殺人事件のはじまりだった。

    小国で実際に起こった大事件を背景にして、報道の意義を問う社会派小説。センセーショナルな国王の死によって世界の注目をあびたネパールだが、その報道は他国から見れば観衆を楽しませるサーカスの演し物に過ぎない。サーカスを披露したところで、ネパールが得るものはあるのか。

    本書は報道に携わる人間にとって永遠のテーマ「真実を伝えることは誰のためなのか」を追求する。そのうえで、ミステリーとしての謎解きのおもしろさが並立する。と、作者の意欲はわかるけど、実際の大事件と架空の殺人事件があまりリンクしていないような・・・。

  • ミステリーを含みつつも、一つの国の転換期と、人が人としてどう生きていくかが描かれた濃いお話だった。
    サガルと主人公の会話が印象的だった。
    結果として行けなかったけど今年ネパールに行こうと計画していたことを思い出した。この事件を知らないままネパールに行こうとしていたなんて恥ずかしい。これからはどの国でもただ行くだけでなくちゃんと予習して行かなきゃ。

  • 元新聞記者の太刀洗万智は、フリー転身後の最初の仕事の
    事前取材としてカトマンズを訪れる。
    そこで、王族一家殺害事件が発生する。
    いち早く事件を報じるBBC。
    事件をひた隠しにする政府。
    民衆たちの怒りが渦巻く異国カトマンズの地で真実を求めて取材を続ける。

    何を伝え、何を伝えないのか。
    当事者にとっての報道とは?
    偽善。自己満足。。。

    1週間のカトマンズ滞在の中で物語は進む。
    章立てが細かくされているので、昼休み時間を利用した
    読書に最適。
    登場人物もあまり多くなく、時系列に展開していくので
    非常に読みやすかった。

    偉大なことを成すには、二つの要素が必要。
    一つは、計画。
    もうひとつは、時間。
    ただし、不足気味の。

    う~ん。その通りだなぁ。

    (市図)

  • 知ろうとするということは尊いという信条のもとで記者を続けてきた主人公。その信念がネパール国王の死とその真相に迫ろうと接触した軍人の死によって大きく揺らぎます。

    物語の終盤は、軍人が誰に何のために殺されたのかを追う展開となり、最後に犯人も明らかになります。意外な結論に驚きはしましたが、記者とはどうあるべきかを問い続ける主人公の苦悶の方が印象に残りました。

    『王とサーカス』というタイトルは、幾分風変わりだと読む前は思っていましたが、話の中盤に出てくるエピソードを読むと納得が行きました。語り手は後に殺される軍人ですが、例えが明快で、報道の在り方を厳しく問う内容に記者ではない私でさえも深く考えさせられました。

  • 「2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」疑問と苦悩の果てに、太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは?

    『さよなら妖精』の出来事から10年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生をも左右するような大事件に遭遇する。2001年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクションにして、米澤ミステリの記念碑的傑作!」


    物悲しい話だった。
    これまたビターエンドなのだけれど、やっぱり読後感が悪くなくて、むしろ少しすっきりというか、「遠い国、自分とはまったく関わりのない国に、どう思いを馳せるか」という事を真剣に考えてしまうような。
    『満願』と同じく、「信念を持つこととそれが正しいことの間には関係がない」「人によって何が大事なのか、何が正しいのかは誰にもわからないし重要ではない」という事を思い知るというか。人の業の深さに打ちのめされそうになる。 

    主人公はフリーのジャーナリストなのだけれども、最近某有名人の逮捕でその母親が会見を開いた際、彼女に向かって浴びせられる数多くの質問に、非常識とかいや当然だとかってTVでもネットでも騒々しかったけれど、それとも相まってジャーナリズムとは、「知る権利」とは?ってことを深く考えさせられた。

    「知ること」「伝えること」がテーマらしいのだけれど、あまりにそれが重かった。
    人間の探究心、好奇心、知識欲。それらは果たして悲劇を消費することの免罪符にはなりうるの?と。
    誰かの身の上におこった悲劇を、サーカスのように、娯楽として享受し楽しむ。そういう人の側面をまざまざ見せつけられるかのよう。
    ミステリの各賞総なめした作品だけれど、むしろジャーナリズムに関する問題提起的なテーマを持った小説だなーと。
    勿論、実際にネパールで起きた王族殺害事件を下敷きに、最後の最後で小説内事件の真相が明かされた時、読み手の胸に来る衝撃を与える等、物語とミステリの絡みも素晴らしかったです。
    必ず『さよなら妖精』を読んでから読むべき。

  • 重たい空気がずっしりとあるのだけれど、どんどん先が読みたくなる。面白い、と一言で言いきれないところが面白い。
    フリーの記者となった太刀洗万智が取材で訪れたネパールで、王族殺害事件が起こる。更に身近で起きた殺人事件による1人の死体を前に、太刀洗は伝えることの意味に思い悩む。
    2016/9/27

  • ネパール国王の暗殺という非常時にいあわせてしまった旅行者のかけだしフリーライター。緊迫したドタバタ感あり、ほんの数日のことだがいろんなことが凝縮されて中身の濃い運命を変える出来事だった。実際の記事を読んでみたい気がした。

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著者プロフィール

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年、岐阜県生まれの小説家、推理作家。金沢大学文学部卒業。
大学在学中から、ネット小説サイト「汎夢殿(はんむでん)」を運営し、作品を発表。大学卒業後に岐阜県高山市で書店員として勤めながら、2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューに到る。同作は「古典部」シリーズとして大人気に。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。『満願』は2018年にドラマ化された。直木賞候補にも度々名が挙がる。
その他代表作として週刊文春ミステリーベスト10・このミステリーがすごい!・ミステリが読みたい!各1位となった『王とサーカス』がある。2018年12月14日、集英社から新刊『本と鍵の季節』を刊行。

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