真実の10メートル手前

著者 :
  • 東京創元社
3.66
  • (94)
  • (317)
  • (261)
  • (32)
  • (4)
本棚登録 : 1749
レビュー : 285
  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027568

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 調べることが好きで、人よりも上手。それを生活の手段にしているだけ。正当とか間違っているとかを考えて仕事をしているわけではない。一見クールでシニカルな主人公。実は純真で、優しく、正直者、加えてとても恥ずかしがり屋だ。明晰な洞察には何度も舌を巻いたが、最も心惹かれたのは情の篤さ。弱い人をほっとけない、悪に対しては徹底した敵意でぶつかる。連作短編で主人公の魅力が少しずつ明らかになっていく。気づいたらすっかり心は主人公に持っていかれている。誰にでもお薦めできる名作だ。

  • 2017年の「このミステリーがすごい!」3位
    2年連続で「このミス」1位だった米澤さん。
    今作は前作の「王とサーカス」のフリージャーナリスト太刀洗万智を軸にした短編集。
    ●収録作●
    「真実の10メートル手前」「正義漢」「恋累心中」「名を刻む死」「ナイフを失われた思い出の中に」「綱渡りの成功例」

    前作では重たい内容だったけど、今回は身近な事件をクローズアップしたものが多く読みやすかった。
    どの話もテーマと結論がまとまっていて面白かったけど、中でも「名を刻む死」が良かった。
    一人暮らしの老人の孤独死を発見した少年のもとに太刀洗が訪れる。
    「いつかこんなことになるんじゃないかと思っていました」という言葉を飲み込む少年が抱えていた真実とは。
    太刀洗万智が少年にかけるラストの台詞が印象深い。
    真相を暴かれたことと、太刀洗の言葉で、少年の心が軽くなるといいのだけど。
    あと、普段あまり感情を表に出さないクールな太刀洗さんだけど、少年の推論を聞いた後に年齢を再確認、「ちょっといいね」という台詞に太刀洗の緩みというか、気を張っていない姿が垣間見えてうれしくなった。

    またこのシリーズ読みたいな。

  • 面白かった!

    連作短編ではあるけれど、各話を通して主人公の万智の記者という仕事への向き合い方がわかってくるのが良い。

    「真実の10メートル手前」「正義漢」なんかは、1つ1つ謎を明らかにしていく場面が精密で、主人公カッコイイ!と夢中になれる。

    心情を吐露しないままの主人公ではなくて、彼女の記者としてのスタンス、戦っているものまで書かれているのが良い。

  • 1991年4月。遠い異国から来た少女、マーヤ。彼女と出会った高校生たちは日常に溢れた謎を解きながら交流を深めていく。異国の少女との出会いと別れを描いた「さよなら妖精」の登場人物の一人であった大刀洗万智のその後を描いたのがこの作品です。

    「王とサーカス」へと繋がる新聞記者時代を描いた表題作「真実の10メートル手前」を含めた今回の短編集では、常に真実を追い求める彼女の姿を見ることが出来ます。

    また、今作で彼女は記者として、ジャーナリストとして、真実を追い求めるだけではなく、その真実を本当に報道すべきかどうかという事も常に考えているように思感じられました。

    「真実」を伝えることで罵声を浴びる事もあれば、人を悲しませ、憤らせる事もある。それだけでなく、その真実は「他者」を、時には「自身」を傷つける事もあるでしょう。それらの責任と危険を負いながら真実を追い続ける彼女の姿には考えさせられるものがあります。(特に前者は「綱渡りの成功例」、後者は「正義漢」を参照)

    インターネットやSNSが発達した事で、今では誰もが情報を簡単に発信することが出来る様になりました。時にはメディアより早く事件の情報を発信する人もいるでしょう。

    その時、あなたは罵声を浴びる覚悟を、他者や自分を傷つける責任と危険を負う覚悟を持って「報道」を行っているのかと。

    その覚悟と責任、痛みを背負いながら真実を追い求める彼女の姿を通して、作者はミステリー小説として謎を問いかけてくるだけでなく、読者の「情報」に対する姿勢をも問いかけている様に見えました。

  • *その地名から恋累心中と 呼ばれた高校生の心中事件。徐々に浮彫りになる違和感、滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。『王とサーカス』後の6編を収録する垂涎の作品集*

    「王とサーカス」は未読ですが、主人公の太刀洗万智にすっかり魅了されました。冷静で繊細で思慮深く、常に何かを自身に問うて生きているような姿が、一般的なジャーナリストとは一線を画しています。単純に真実を解き明かすだけが正義ではない、という作風も良かった。短編ですが、一つ一つ丁寧に読み込みたい一冊。

  • 太刀洗万智に初めて出逢いました。なんて興味深い記者でしょう!短編6話からなる本、いずれも面白いですねぇ♪福岡に太刀洗町 があるので尚更身近に感じながら読めました。

  • 引き続き太刀洗シリーズ。短編集。

  • 太刀洗万智を、三人称で語った短編集。どの話も面白かった。

  • 太刀洗万智は、栗山千明のイメージ。すっきり甘すぎず、苦すぎず。心地よい後味の作品。

  • 分かりやすい疑問が散りばめられていて、結末も分かりやすい。
    でも、そこに至る過程に個性を感じる。
    それが、著者の力量というものだろうか。

    大刀洗万智、という主人公を聖人にしないよう著者が配慮している気がしながら読んだ。

著者プロフィール

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年、岐阜県生まれの小説家、推理作家。金沢大学文学部卒業。
大学在学中から、ネット小説サイト「汎夢殿(はんむでん)」を運営し、作品を発表。大学卒業後に岐阜県高山市で書店員として勤めながら、2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューに到る。同作は「古典部」シリーズとして大人気に。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。『満願』は2018年にドラマ化された。直木賞候補にも度々名が挙がる。
その他代表作として週刊文春ミステリーベスト10・このミステリーがすごい!・ミステリが読みたい!各1位となった『王とサーカス』がある。2018年12月14日、集英社から新刊『本と鍵の季節』を刊行。

真実の10メートル手前のその他の作品

米澤穂信の作品

ツイートする