真実の10メートル手前

著者 :
  • 東京創元社
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レビュー : 283
  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027568

作品紹介・あらすじ

高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と 呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と 合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める……。太刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。『王とサーカス』後の6編を収録する垂涎の作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 記者の太刀洗万智が探偵役の短編集。
    怜悧なヒロイン登場です☆

    だいぶ前に「さよなら妖精」で遭遇した出来事を胸に秘め、フリーのジャーナリストとなっている太刀洗万智。
    あまり表情が動かないクールな雰囲気の女性ですが、真実を追究していく熱さを秘めているようです。

    「真実の10メートル手前」
    ベンチャー企業で有名になった兄妹だが、破綻して、妹は行方不明に。
    妹の行方を追う万智は‥

    「正義感」
    駅のホームの転落事故。
    偶然、居合わせ太刀洗がとっさにとった行動とは?

    「恋累心中」
    高校生の心中が土地の名前を結びついて美化されるが‥
    取材に赴いた記者が、太刀洗と同行して、気づいた真実とは?

    「名を刻む死」
    老人の孤独死のいきさつとは。
    発見者の高校生のことが気にかかる万智は‥

    「ナイフを失われた思い出の中に」
    事件を自白した少年の手記を読み解く万智。
    真犯人を見つけることが出来るか‥?

    「綱渡りの成功例」
    災害で埋もれた村の生き残りの老夫婦の話に、ひっかかる点があり‥?
    これはちょっと、気がつく必要も報道する意味もあまり感じられませんでした。
    ほかの大問題に絡んでくるという構成なら、ともかく。
    取材していく中で何かに引っかかるが、それを使えるかどうかわからないという問題が起きる、ことは理解できるので、そういう話が無意味とは言いませんが。

    すべて題材が凝っていて、現代性もあり、このヒロインを形作ろうという工夫が感じられます。
    かなりクールでやり手といった印象ですが、若者への共感はあるようですね。
    すべて解決するわけではなく、事件現場に踏み込む感覚があります。
    独特な苦味やひやりとするような鋭さを味わいつつ。

  • 調べることが好きで、人よりも上手。それを生活の手段にしているだけ。正当とか間違っているとかを考えて仕事をしているわけではない。一見クールでシニカルな主人公。実は純真で、優しく、正直者、加えてとても恥ずかしがり屋だ。明晰な洞察には何度も舌を巻いたが、最も心惹かれたのは情の篤さ。弱い人をほっとけない、悪に対しては徹底した敵意でぶつかる。連作短編で主人公の魅力が少しずつ明らかになっていく。気づいたらすっかり心は主人公に持っていかれている。誰にでもお薦めできる名作だ。

  • 癖はあるが切れるジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。粒揃いの六編。

    「王とサーカス」が予約待ちなのでその間にこの作品を読む事に。

    推理小説と思っていたけどちょっと違った。最初の作品など、えっ、これで終わりと驚いてしまった。
    太刀洗の事件に対する思いとどう報道すべきかの苦悩、メインはここだった。事件の謎が解けても推理を披露するのではなくただ報道する。警察ではなくジャーナリスト、そう思って読んでいくと面白くなる。ここで終わり?って思った、「真実の10メートル手前」のタイトルもグッと深くなる。
    だけど、太刀洗万智の人物像が掴めないので最後まで物語にのめり込めなかった。特に「ナイフを失われた思い出の中に」の太刀洗がわからない。
    ミステリとしては「恋累心中」が面白かった。ゾゾっとする。
    報道としては「綱渡りの成功例」が考えさせられた。ふたりのした事が報道の仕方によっては非難を浴びる事になるのだろうか。
    「王とサーカス」長編なので不安だけど、読んでみたら太刀洗万智の事がもっとわかるのだろうか。

  • 記者・太刀洗万智の仕事を描く、6作品。
    それぞれ別の人物の目を通して、万智の仕事や人となりを浮き彫りにする。

    推理の冴えはもちろん素晴しいが、万智が、スクープや手柄にこだわる、一般的な記者のイメージとは一線を画している点はいくつかある。

    ・聞き込み相手の心情に寄り添っていること。
    ・質問が意表をついていること。
    ・そして、矛盾しているようだが、質問が核心をついているという事。
    この、「質問」に関することは、綿密な調査とひらめき…そして、取材対象の心情に深く入り込んでいるからこそ思いつけるのだと思う。

    しかし、万智自身が一番に心を砕いているのは、そうやって得た「情報」の取り扱いである。
    世間に対してどういう形で公表するか、どう理解してもらうのがいいのか、あるいは公表しないのか。
    彼女の、常に謙虚であり思慮深い姿が好もしい。

    「あまり愉快なことにはならないと思いますよ」という口癖と、何でも出てくるドラ●モンのポケットのようなバッグはご愛嬌。

    『真実の10メートル手前』
    ベンチャー企業が経営破たん。
    マスコミの露出も高かった、美人広報担当が行方不明。
    後輩のカメラマン・藤沢吉成が相棒。

    『正義感』
    ホームから人が落ち、電車にひかれる人身事故。
    びっくりするような万智のやりかた。
    相棒は、元同級生のあの人?

    『恋累心中』
    高校生男女の心中事件。
    記者・都留正毅に、現地の取材コーディネーターとして万智がつけられる。
    最初はやりにくさを感じていた都留だが…
    重く哀しい、そして読みごたえのある話。

    『名を刻む死』
    60代男性の孤独死と、第一発見者の中学生。
    優秀だが優し過ぎる中学生に、あえて鬼になることを示す万智がカッコいい。

    『ナイフを失われた思い出の中に』
    「16歳の少年が3歳の女児を刺殺した」という事件を万智がどう扱うか。
    妹のかつての友人を訪ねてきた、海外国籍の青年と、報道の在り方について語る。

    『綱渡りの成功例』
    台風による水害と土砂崩れで、3軒の家が孤立した。
    土砂に埋もれなかった70代の夫妻のみが多くの人手と時間を掛けて救出される。
    夫妻は、必要以上に申し訳なさそうにしていた。
    地元の、万智の後輩である大庭と。

  • 米澤さんの本は『満願』に次いで2冊目。

    ジャーナリスト太刀洗真智が事件を追う短編集。
    表題作『真実の10メートル手前』のみ東洋新聞所属だが、後の5編ではフリーになっている。
    フリージャーナリストとしてとしての独自の視点が面白い。

  • 2017年の「このミステリーがすごい!」3位
    2年連続で「このミス」1位だった米澤さん。
    今作は前作の「王とサーカス」のフリージャーナリスト太刀洗万智を軸にした短編集。
    ●収録作●
    「真実の10メートル手前」「正義漢」「恋累心中」「名を刻む死」「ナイフを失われた思い出の中に」「綱渡りの成功例」

    前作では重たい内容だったけど、今回は身近な事件をクローズアップしたものが多く読みやすかった。
    どの話もテーマと結論がまとまっていて面白かったけど、中でも「名を刻む死」が良かった。
    一人暮らしの老人の孤独死を発見した少年のもとに太刀洗が訪れる。
    「いつかこんなことになるんじゃないかと思っていました」という言葉を飲み込む少年が抱えていた真実とは。
    太刀洗万智が少年にかけるラストの台詞が印象深い。
    真相を暴かれたことと、太刀洗の言葉で、少年の心が軽くなるといいのだけど。
    あと、普段あまり感情を表に出さないクールな太刀洗さんだけど、少年の推論を聞いた後に年齢を再確認、「ちょっといいね」という台詞に太刀洗の緩みというか、気を張っていない姿が垣間見えてうれしくなった。

    またこのシリーズ読みたいな。

  • 経営破綻したベンチャー企業の広告塔だった社長の妹を追って山梨へ向かう太刀洗。
    人身事故のホームで見かけた厚顔な取材記者。
    三重県の高校生の心中事件。
    二人が別々の場所で見つかったのは何故なのか。

    この話がどうつながっていくの!と読み進めて、ここであれ?と思う。
    なんと短編集だった。
    太刀洗が日本各地で、高校時代の友人の兄と、取材で出会った中学生と、大学の後輩と、事件を取材しながら真相にたどり着く。
    このタイトルが秀逸。
    まさに真実のちょっと手前に太刀洗は立っている。その先に踏み出すのかどうなのか。
    このシリーズは報道についていつも考えさせるね。

  • 「高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と 呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と 合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める……。太刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。『王とサーカス』後の6編を収録する垂涎の作品集。」


    『さよなら妖精』『王とサーカス』に続く作品。
    前作と同じく、ジャーナリズムとは?を深く考えさせられるのだけれど、こちらの作品は、報道の手前にある、深層部分の真実とは?プライバシーを暴くこと、事実や真実を包み隠さず伝えることは本当に正しいのか?等、「伝える側の悲哀」を描いているように感じた。
    時として、「本当の事」が「正しい」のではないんだよなー。
    このシリーズは、主人公の大刀洗万智の成長譚とも取れるので、続いてくれるとうれしい。自分も色々考えさせられる。

  • 経営破綻したベンチャー企業の経営者兄妹が、詐欺の疑いをかけられた後、行方不明になった。
    経営には関わっていない末の妹の弓美は、以前取材で知り合った記者太刀洗万智に、姉の捜索を依頼してきた。
    手がかりは、姉からかかってきた電話の通話記録だけだった。

    様々な事件に関わった人間が、太刀洗万智の取材によって真実を突き付けられる短編集。

  • フリーの雑誌記者、大刀洗万智の連作短編集。

    新聞記者だった時代の話が「真実の10メートル手前」
    それ以外は雑誌記者になってからの話。

    雑誌記者という立場で、凛として事件の核心に迫っていく万智。突き止めた真実はどれも切なく重い。

    特に高校生の心中の真実を暴く「恋累心中」、3歳の姪を刺殺したと主張する若い叔父の話「ナイフを失われた思い出の中に」はやるせなかった。

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著者プロフィール

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年、岐阜県生まれの小説家、推理作家。金沢大学文学部卒業。
大学在学中から、ネット小説サイト「汎夢殿(はんむでん)」を運営し、作品を発表。大学卒業後に岐阜県高山市で書店員として勤めながら、2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューに到る。同作は「古典部」シリーズとして大人気に。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。『満願』は2018年にドラマ化された。直木賞候補にも度々名が挙がる。
その他代表作として週刊文春ミステリーベスト10・このミステリーがすごい!・ミステリが読みたい!各1位となった『王とサーカス』がある。2018年12月14日、集英社から新刊『本と鍵の季節』を刊行。

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