キネマトグラフィカ

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 700
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027858

作品紹介・あらすじ

老舗映画会社に新卒入社した“平成元年組”六人の男女が、とある地方の映画館で再会する。今はそれぞれの道を歩む同期の彼らが、思い出の映画を鑑賞しながら二十五年前に起きた“フィルムリレー”に思いを馳せる。フィルムはデータに、劇場はシネコンに……四半世紀の間に移り変わる映画の形態。そして映画と共に生きた彼らの人生もまた。何のために誰のために駆け抜けてきたのだろう。哀惜と希望が感動を呼ぶ傑作エンターテイメント。

感想・レビュー・書評

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  • 映画会社に勤める同期男女六人のお話。
    バブルが弾ける直前に入社し、入社後は不景気。携帯電話もない時代。ポケベルを鳴らすために公衆電話に並ぶとか、会社を中継点にして連絡を取るとか、FAXで資料を送るとか‥‥よくもまぁ、そんなんで社会が回ってましたよね、懐かしいなぁ‥‥
    入社四年目の六人。仕事も順調にこなせるようになってくる頃だけど、何かが違う、こんなはずじゃなかったと感じている六人。六人それぞれの目線でリレー形式に物語が進んでいく。
    上司や取引先との関係、理想と現実とのズレ、若い頃は特に悩みが尽きないと思う。それでも皆、自分なりのやり方で今日も明日も働く。
    そして、四半世紀ぶりに再開する六人。見た目も変わって体調不良も出てくるお年頃だけど、皆まだまだ悩みつつも吹っ切れていて、歳を取るのも悪くないな、と思わせてくれる物語でした。

  • 古内さん、映画会社で勤務されていたとは知らなかった。
    その頃の体験をヒントに書かれたそうで、リアルな描写が多かった。
    仕事の裏側が見られたようで面白かった。

    平成時代が丸々舞台になっているけど、こんなに昔だったっけ?という位、時代を感じた。(ポケベルとか、18mmとか)
    働き方も、女性蔑視や長時間労働など問題多数で、今の時代がかなりましだと思えるほど。
    映画好きでも、この会社はちょっとキツいなと思った。

  • 平成元年に新卒だった6人が30年後に集結する。
    若手時代に特に印象的だったケヌキリレーのエピソードを思い返して、それぞれの立場や仕事への思いなどを振り返る…エモエモエモな小説でした。

    咲子のように女性が職場で男性と肩を並べて働くこと、麗羅のように忖度せずに正しいことを発言すること、栄太郎のように会社組織で自分をすり減らすより自分らしく働ける環境に身を置くこと。
    ここ30年で大きく変わってきた価値観が分かりやすくストーリーに落とし込まれてた!

    地方映画館や映画にかかわる仕事の変遷についても知れた。

  • 五十代の男女六人それぞれがかかわった、二十代のころのとある一夜の顛末。若かりし頃の彼らは、まだ社会を歩み始めたばかりだったけれど、すでに世の中が幸せばかりではないことに気づき出していた。

    「持っている人は、気づかない」
    その事実にそれぞれが違う形で直面し、けれど正しくかどうかはわからないままに人生を歩んでいく。映画界の在り方も大きく変わる中で、世間の不合理と闘いながら、自分らしさを失わないように、必死に、一日一日を。

    ハイスペックなキャラとして描かれる麗羅ですら、すっとただのひとりの女性なんだと感じさせる側面も描かれていて、六人それぞれに少しずつ親近感を覚えることができました。生きたキャラクタが描かれていたからこそ、現実を生きる辛さが描かれていながらも、映画館のひそやかな暗闇につつまれているような静かな安心感を感じることができました。

  • びっくりするような感動はないのですが、うんうん、皆それぞれがんばってたんだよね、今だってこれからだってがんばって生きていくんだよね、という感想をもちました。特に咲子にはすごく共感しました。制度上は男女平等が整ってきたとはいえ、日本人の心にしみついた男女の役割分担。だんだんなくなっていくといいな、と思います。

  • お仕事小説というよりは青春群像劇。
    地方の映画館の閉館に
    かつて映画会社に勤めた同期が集まり
    当時を思い返す。
    あとがきによれば作者自身が映画会社に勤めていた経験があるらしい。
    マカン·マランシリーズが良かったので読んでみたが
    他の作品も読んでいこうと思わせる良作だった。
    [図書館·初読·8月18日読了]

  • 流浪の月の巻末にこの本の広告が出ていて、気になって読んでみた。

    平成元年に映画会社に入社した同期たちの話。
    アラフィフとなった彼らが再会し、若い時をロードムービー的に思い出す構成になっている。
    中年期の男女が若い頃を思い出すとき、男性は過去を美化し、女性は過去をなかなか美化できないものだなと思った。
    実際、このころ女性が働くのは、今よりもっと大変な時代だったんだろう。

    初の女性セールス、ママさんプロデューサー、物珍しさから付けられる肩書き。
    そして、結局のところ「女の敵は女」なのだというエピソード。
    読んでて、動悸がするほど苦しかった。
    女性が仕事をガムシャラに頑張って苦しむ姿は私は心底苦手だ。読んでると自己投影しすぎてしまい、苦しくなる。
    前記の広告では、働く全ての人へ!というアオリが書いてあったと記憶しているけど、実際に働いて現在進行形で苦しんでいる人には、こういう話はなかなかキツいのではないかと思う。
    第一線を退き「昔は良かったよなぁ」なんて言える年配者向けの本なのかな。

    ダブルブッキングの果てにフィルムを抱えて全国リレーとか、非合理的すぎて美談には感じられなかった。
    アラフィフの現在も、頑張ってきた人が報われたかと言えば微妙であり、もの悲しい読後感だった。
    悲しいけど、現実はこんなものなのかもね。
    映画業界の現実を考えれば、ハッピーな現在!になるはずもないが…
    だからこそ希望が持てる話を読みたかった。

    頑張れば頑張るほど、報われるより苦しむ、それが仕事、なのだろうか…

  • 老舗だが売れ筋ではない映画会社に
    同期入社した6人の男女の物語。

    そのうちのひとりが
    会社を辞めて経営していた映画館の
    閉館を機に集まることに。
    すでに半数が違う場所で生きていて
    社内に残ったものにもいろいろなことがあった。
    最後の上映を前にして
    彼らの胸に去来する26年前の
    〝全国フィルムリレー〟の思い出とは。

    うわ〜。
    なんか、もろ同世代やん。
    バブルで浮かれている時代に就活して
    働き出したらすぐ下降線で
    まだまだ上下も男女も、ちっとも均等じゃなくて。

    一章ごとに語り手が変わるため
    はじめの人物の持っていた情報で
    苦手なヤツっぽい仲間も
    本当は違うことを考えてたのがわかったりします。

    あと、映画業界の特殊事情も
    ちょっとだけ裏がのぞけますよ〜。

  • 平成の時代、映画館の閉鎖とシネコンの隆盛を目の当たりにしてきた世代として、この物語の主人公たちの人生に想いを馳せながら楽しく読めた。
    昔の映画ってこんなふうだったんだなあと感慨深くなる場面もあったり、自分も16ミリフィルムは借りて上映会したことも思い出したりと、いろいろ懐かしさも。
    名画の監督名がたくさん出てくるが、さすがに一部しか分からなかった(ジム・ジャームッシュ!)。映画がメインであるものの、主人公たちの恋愛模様、家族、そして何よりも女性が普通に社会で働くようになる前段階の葛藤。でも最後は爽やかなエンディングに希望と前進を届けてくれるのがさすがです。

    • ひろりんさん
      上映会されてたのですね!!

      ホントエンディングは流石ですね(*´꒳`*)
      上映会されてたのですね!!

      ホントエンディングは流石ですね(*´꒳`*)
      2022/11/10
  • 図書館で借りたもの。
    老舗映画会社に新卒入社した“平成元年組”6人の男女が、2018年春、ある地方の映画館で再会する。今はそれぞれの道を歩む彼らは、思い出の映画を鑑賞しながら26年前の“全国フィルムリレー”に思いを馳せ…。

    好きな感じかな~と思ってたけどなかなかページ進まず…。

    登場人物の一人が
    『研究や勉強はできても、根回しだとか、相談だとか、説得だとか、交流だとか、そういうことが、人好きしない自分にはうまくできない。
    社会では、知識以上に、打たれ強さと、ある種の腕っぷしがものをいう。
    自分には、それがない。
    “オタク”で“内弁慶”の自分は、人に好かれない。』
    って思ってて、自分のことかと思った。

    この人が、明るい奥さんに救われたように、私も夫に救われたな。

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著者プロフィール

1966年、東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。『銀色のマーメイド』で第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、2011年にデビュー。17年、『フラダン』が第63回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選出、第6回JBBY賞(文学作品部門)受賞。他の著書に「マカン・マラン」シリーズ、「キネマトグラフィカ」シリーズ、『風の向こうへ駆け抜けろ』『蒼のファンファーレ』『鐘を鳴らす子供たち』『お誕生会クロニクル』『最高のアフタヌーンティーの作り方』『星影さやかに』などがある。

「2021年 『山亭ミアキス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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