【2020年本屋大賞 大賞受賞作】流浪の月

著者 :
  • 東京創元社
4.36
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  • (9)
本棚登録 : 9322
レビュー : 964
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028022

作品紹介・あらすじ

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人間を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

感想・レビュー・書評

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  • どこかに理性が残ってた。邪魔だった。

    この、わたしの中にある理性のような、正義感のようなものはなんなのだ。
    気づけば、「善意をふりまく側」になって読んでいた。
    仕事でずっと、子どもと関わっている。中には、壮絶な環境で育った子もいる。だからたぶん、そっち側の立場で読んでしまったのだろう。その仕事をするために、国家資格だって取った。だからもう、感覚として染み込んでしまっているものがある。
    資格取得のための授業で叩き込まれるものは、人間に対する尊厳だ。そしてその尊厳を日常生活で具現化したものが、配慮なんじゃないかと思う。この作品でいうところの、善意だ。その感覚がずっとついてまわるものだから、もはや善意が、「偏見」となってつきまとい、わたしの心を支配する。

    「壮絶な環境」、それによって勝手に「壮絶な環境で育った子ども」のストーリーが作られ、その子に関わる大人が配慮をする。当然のことだ。そしてそれは経験として積み重なっていく。そのストーリーは、ある子どもとある子どもには通用したかもしれない。けれど、他の子には通用しないかもしれない。にも関わらず、偏見として身についてしまった善意が威力を発し、さらに経験を強固にする。さらなる善意が身につく。善意の雪だるま。そんなものただのはりぼてなのに。

    こうした方がいい、読み進めながら何度も思った。然るべき手続きをふんだ方がいい、警察に相談した方がいい、するすると、わたしの心は声を発し、物語の進行にブレーキをかける。それなのに、ページをめくる手が止まらない。この矛盾はなんなのだ。わたしの心は、グラグラと揺さぶられる。自分の中にあった偏見。それを改めて見つめる。下記にあるインタビュー記事で、同様に戒めをしてる人も多いんだなって、わかった。

    「4章 彼のはなしⅠ」で、そんな理性と偏見なんて一気にぶっ飛んで、苦しくて泣いた。

    全部で313ページ。これほどのページを費やしても、その中で強く強く、誰かのことを想っても、その思慕には名前がない。この二人の関係性にも名前がない。その名前のない世界の中で、生きるということ。つきまとう情報と好奇の目。不安と恐怖。けれど、二人でいたら、二人にさえ、わかりあえる確かなものがあれば、そこにあるのは安心と平穏、なのかもしれない。「いつ」とか「どこで」が問題じゃない、出会いって。

    インタビュー記事を読んだ。
    「家族の絆」の美しさと正しさに、追い詰められていく人もいる、と題されたインタビュー。
    https://mi-mollet.com/articles/-/23471
    凪良さんがBL出身の作家さんだというのは別のインタビューで知っていて、文の描写はまさにBLという作品から飛び出してきたかのように感じられるほど、美しく儚げだった。
    インタビューの中で、「家族」や「絆」に違和感を持っていると語る凪良さん。血縁、というだけでがんじがらめにされる社会。すべて血縁で片付けられると、そこにはまらない人たちは苦しくなる。そんな苦しさを抱えている人にとっては、紛れもなく救いの作品になる。

    読み終わってから、パタンと、本を閉じる。改めて見る表紙の写真。この本を開く前とは、全く印象が違って見えた。

    ※このレビューはnoteにも記載させていただきました。
    https://note.com/tattychannel/n/ndb8920083b84

    • まことさん
      naonaonao16gさん♪おはようございます。

      コメントありがとうございます(*^^*)
      こちらこそ、いいねをたくさんありがとう...
      naonaonao16gさん♪おはようございます。

      コメントありがとうございます(*^^*)
      こちらこそ、いいねをたくさんありがとうございます。
      今、ステイホームで名画をたくさん観ていらっつしゃるのですよね!
      『流浪の月』はよかったですよね~!
      アイスクリームはみるだけで、なんかじーんとしましたね。
      naonaonao16gさんは、いつも、作品の深いところまで、よく考えて、御自分ならではのレビューをされていて、感心しています。
      私は、あまり考えないでただ、「感動しました」みたいなかんじになってしまいます。
      『流浪の月』は今のところ、今年読んだ私のベスト1かなという気がしています。
      2020/05/29
    • まことさん
      naonaonao16gさん♪おはようございます。

      返信ありがとうございます。
      naonaonao16gさんのレビューはいつも御自分...
      naonaonao16gさん♪おはようございます。

      返信ありがとうございます。
      naonaonao16gさんのレビューはいつも御自分のお仕事や環境に照らし合わせて、真摯なご意見書かれているところがいつもすごいなあと思っています。
      自己中だなんて思いません。
      表現力があられるのだと思います。
      私には絶対書けないレビューです。
      私はあんまり自分というものを持っていないのかなと思っています。
      こんな私ですが、これからもどうぞよろしくお願いします(*^^*)
      2020/05/30
    • まことさん
      naonaonao16gさん♪こんにちは。

      心に染みる言葉、どうもありがとうございます♡
      嬉しかったです。
      naonaonao16gさん♪こんにちは。

      心に染みる言葉、どうもありがとうございます♡
      嬉しかったです。
      2020/05/31
  • フォロワーさんが、皆さん絶賛されているので、図書館で予約待ちをして、期待して読みました。
    大変読みやすい、流麗な文章と、ストーリーでした。

    最後に読み終わって、余韻に浸りながら、表紙をあらためて眺めると、主人公二人の幸福を象徴するような、アンティークの食卓の上にストロベリーアイスクリームの盛られている写真があって、全部、意味がわかり、じーんとしました。

    まず、最初に読みながら、ずいぶん昔読んだ、姫野カオルコさんの『ツ、イ、ラ、ク、』を思い出し、次に吉田修一さんの『さよなら渓谷』なども思い出しましたが、どちらとも全く違う新しい話で、心の深いところの結びつきの話でした。
    文と更紗、梨花の三人の結びつきは本当によかったです。


    以下途中までのストーリー(これから読まれる方は気をつけてください)

    家内更紗は8歳の時に父の湊が亡くなり、母の灯里は湊を亡くした寂しさを埋めるために恋人とどこかへ行ってしまい、伯母の家に引き取られます。
    そこには更紗の、大好きだった父母の思い出のものは何ひとつなく、大嫌いな従兄の孝弘にわいせつ行為を強要されますが、誰にも言うことができません。

    そんな時、公園でみかけるロリコンと噂される佐伯文という19歳の大学生の家についていき、更紗は父母との思い出をそこで再現し、再び更紗は自由を手に入れ、帰りたくなくなります。文は更紗に嫌なことは何ひとつせず、好きなことをさせてくれて、眠るときは、別室で眠ります。

    そんな楽しい夢のような2カ月が過ぎて、二人が動物園に出かけた日、更紗は人々から指さされ、文は少女誘拐犯として逮捕されてしまいます。
    「ふみいいい、ふみいい」と泣きながら更紗は警察官に抱き抱えられ、文と引き離されてしまいます。

    更紗は警察で本当のことを言いそびれ、文は懲役を受けます。
    大人になった更紗は二人目の恋人と暮らしていますが、恋人のことを特に好きではないことに気が付いています。恋人には結婚をせまられています。

    そんな時、更紗は『calico』という深夜営業のカフェで、文、その人をみつけますが。文は更紗に全く気が付いていないようで…。

    • naonaonao16gさん
      まことさん、こんにちは!
      いつもいいねありがとうございます。
      ついにわたしも読みましたー。表紙の感想、わたしも同感です。そしてこのアイスの数...
      まことさん、こんにちは!
      いつもいいねありがとうございます。
      ついにわたしも読みましたー。表紙の感想、わたしも同感です。そしてこのアイスの数は、梨花とも読み取れるな、とも思いました。「心の深いところの結びつき」、とても素敵な表現です。
      2020/05/28
    • naonaonao16gさん
      まことさん、こんにちは!

      コメントありがとうございます。
      この時期を利用して、映画もたくさん観てますー(笑)
      わたしは自分が一番刺...
      まことさん、こんにちは!

      コメントありがとうございます。
      この時期を利用して、映画もたくさん観てますー(笑)
      わたしは自分が一番刺さったところを掘り下げるというか、自分と重ねまくっているという、かなり自己中なレビューだと思うのですが、そのように感心してくださるとは…ありがとうございます。

      わたしは内容を相手に伝える、というのがものすごく苦手なので、まことさんのレビューすごいなあと思います。とても内容がわかりやすいですよー!

      この作品は確かにベスト1候補に入りますね!
      2020/05/29
    • naonaonao16gさん
      まことさん、こんにちは!

      お返事ありがとうございます。
      たくさんの嬉しいお言葉を、ありがとうございます。とても嬉しいです。
      一点、...
      まことさん、こんにちは!

      お返事ありがとうございます。
      たくさんの嬉しいお言葉を、ありがとうございます。とても嬉しいです。
      一点、とても強調してお伝えしたいなと思ったことがありまして、お返事致しました。
      あんまり自分というものをもっていないとおっしゃっていらっしゃいますが、そんなことはないです!フォロワーさんとまことさんとのやりとりを他の作品で目にすることもありますが(読んでてすみません…)、そのやりとりに心が和みますし、本の知識や幅の広さに、いつも感心しています!
      なので、そんなこと言わないでください!この作品を読んで、他の作家さんと結び付けたりとかできるのも、たくさんの作品に触れているからこそです!その世界観こそが、まことさんらしさだと思いますよ(´▽`)
      なんか偉そうになってしまい恐縮ですが…どうしてもお伝えしたかったので…!

      こちらこそ、これからもどうぞよろしくお願い致します!!
      2020/05/30
  • フォローさせていただいている方のレビューで知った作品。
    はじめましての作家さんでしたがすごく良かったです。

    カテゴライズできない、したくない二人の関係。
    でもふたりにとってはお互いが替わりのきかない存在。
    それが痛いほど伝わってきた。
    読み進めるほどにページをめくる手が止まらず、ふたりが最終的にどうなるか知りたくてたまらなかった。

    文章は読みやすく、比喩もストンと解った。

    凪良ゆうさんはデビュー10年以上の中堅の作家さん。
    BL作品を精力的に書かれてきたそうだ。

  • 出来事にはそれぞれの解釈がある。

    その出来事に対して自分の価値観や考えという"フィルター"を通して理解したと思い込み、決めつけることがここまで人を傷つけることになるのかと知った。

    特に子供は周りの大人のことを本当によく観察していて人間性の形成に大きな影響を与えることも。

    度を超えた"正しさ"は"歪み"になるという表現、勉強になります。

    今まで味わったことない言語化できない感情がふつふつと湧き上がりながら読んでた。

    いつか朝からハムエッグにケチャップかけて食べて、オールドバカラでスカリーワグをストレートで飲みながらトゥルー・ロマンス観て途中でピザ頼む1日送ろう。

  • 溺れた。

    凪良さんの言葉選び、表現力に感服。

    何度も美しい言葉の波に溺れ、二人の、狂おしいほど伝わるもどかしい思いに終始溺れた。

    握った手のひらから確かに伝わる想い。

    決して愛だの恋だの一般的な枠にはめられたくない、言葉で理解してもらえない想いのせつなさに心は何度も収縮を繰り返した。

    お互いがすっぽりハマる場所。自由に心をのばせる場所。

    そんな大切な場所を世の中の色眼鏡の暴力に奪われるその苦しみさえもが波に姿を変えて心に襲いかかった。

    読了後、真っ先に浮かんだのは満月。
    どっしり堂々と輝く、二人の心で満たされた満月を願いたくなる。

    一気にこの世界にのみこまれた圧巻の作品。

    • まことさん
      くるたんさん♪

      そしてまた、くるたんさんのレビューが素晴らしいと思いました。
      この世界観を満月で表現するなんて凄い!!
      くるたんさ...
      くるたんさん♪

      そしてまた、くるたんさんのレビューが素晴らしいと思いました。
      この世界観を満月で表現するなんて凄い!!
      くるたんさんならではの表現だと思いました。
      ほおっとため息がでそうな素晴らしいレビューですね(*^^*)
      2020/03/16
    • くるたんさん
      まことさん♪
      ありがとうございます♪恥ずかしいです(/−\)

      ほんと、二人が一緒にいられたら、毎日心が満たされていたら…って思いますよね♪
      まことさん♪
      ありがとうございます♪恥ずかしいです(/−\)

      ほんと、二人が一緒にいられたら、毎日心が満たされていたら…って思いますよね♪
      2020/03/16
  • 外出自粛要請にはなるべく従ってはいるが、通院や食料品の買い物で外に出て、その際に本屋を見かけるとやっぱり立ち寄ってしまう。
    ついつい長居してしまうから、感染対策上よくないと分かってはいるんだけど。
    完全に書籍依存性ですね。ギャンブル依存症でパチンコ行ってしまうおじさん達と大して変わらない。

    この本も、そんな感じで本屋に立ち寄った時購入。

    凪良ゆうさんは、初めての作家さん。
    BLをずっと書いてきた方とのこと。
    僕にとってはBLって何?って世界。本屋大賞ノミネート作品の中でも最も縁遠い作品だと思っていた。

    しかし、読み始めたら最後まで止まらない。

    ぐいぐい引き込まれて、心を芯から揺さぶられた。
    力がある小説。だからこその大賞受賞。

    また新たな視点を得た。
    帯に「新しい人間関係の旅立ち」とあるとおり、親子愛や性愛ではない結びつき、家族愛とも少し違う気がする、ただそばにいたい、そんな関係性が切実に描かれている。

    主人公の更紗や誘拐犯の文の生き辛さは、想像してもしきれない部分もあるのだろうけれど、リアリティがあり感情移入させられた。

    とても心が広がりました。


    ところで、今日で祝ブクログ歴1年、らしい。
    もっともっと、たくさん本を読みたいな。

    • 地球っこさん
      たけさん、こんにちは。
      いつもレビュー楽しみにしてます。

      ところで、
      ブクログ1周年おめでとうございます⭐

      1年でとてもたく...
      たけさん、こんにちは。
      いつもレビュー楽しみにしてます。

      ところで、
      ブクログ1周年おめでとうございます⭐

      1年でとてもたくさん読まれて、レビューも書かれてすごいですね!

      これからも、たけさんのレビュー楽しみにしてます(*^^*)
      2020/05/26
    • たけさん
      地球っこさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!

      ブクログはじめて、読書がますます楽しくなりました。
      「自由気ままに本が読める」...
      地球っこさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!

      ブクログはじめて、読書がますます楽しくなりました。
      「自由気ままに本が読める」ことは本当に幸せですね。
      これからもよろしくおねがいします!
      2020/05/26
  • はぁ、終わってしまった。もの凄く惹きつけられました。映画で言うと、アカデミー賞作品賞クラスの衝撃や余韻を感じます。よくこんな物語を考えてくれたなと作者に敬意を表したい。最初から最後まで首根っこを掴まれっぱなしでノンストップ一気読み。非常に心地よい読後感。思い返しても「あぁ」とため息が出てしまうようなストーリー。今年の本屋大賞は傑作揃いのようですが、この作品は、いやぁ参った。参りました!えっ、まだ読んでないんですか?それはもったいない!読書の充実感と心地よい疲れに酔いしれます。間違いなくお勧めしたい作品!!

    • まことさん
      こんにちは!
      コメントありがとうございます(*^^*)

      フォロワーの皆さん、絶賛でしたが、kanegon69さんのレビューも短いけれ...
      こんにちは!
      コメントありがとうございます(*^^*)

      フォロワーの皆さん、絶賛でしたが、kanegon69さんのレビューも短いけれど
      かなり、印象的でした。
      今、風邪をひいていて、出かけられないので、家で、凪良ゆうさんの他の作品を、大人買いしようかと考えています。
      2020/03/15
    • kanegon69 さん
      まことさん、コメントありがとうございます。最近は、簡潔にレビューをまとめることに注力しています。見てくださる方が、さっとどんな作品かわかるよ...
      まことさん、コメントありがとうございます。最近は、簡潔にレビューをまとめることに注力しています。見てくださる方が、さっとどんな作品かわかるように。

      「美しい庭」はオススメですよ!
      2020/03/15
    • まことさん
      「美しい庭」是非、読んでみます(*^^*)
      「美しい庭」是非、読んでみます(*^^*)
      2020/03/15
  • 「ふみぃぃぃー!ふみぃぃぃー!」
    絶叫する少女は、幼女誘拐事件の被害者として、インターネット上に残っている。

    感想を言葉にしにくい。読了後、何度も感想を書こうとして何度も消した。

    更紗は仲の良い両親の元で奔放に育っていた。しかし平和で楽しい日々は、父が亡くなり母が出奔したことで終わりを告げる。更紗は伯母の家に引き取られるが、そこに更紗の居場所はなく、毎日が地獄だった。公園で雨に濡れながら本を読んでいるところに、『ロリコン』と噂されている若い男に家に来ないかと誘われ、ついていく更紗。
    男は「文(ふみ)」という名の大学生で、更紗の嫌がることはせず、更紗はようやく心安らかに眠れる安息の場所を得る。二人は互いを尊重しながら2ヶ月を共に過ごすが、ねだって連れて行ってもらった動物園で、更紗は被害者として保護され、文は幼児誘拐犯として逮捕される。

    施設で育ち、恋人と共に暮らす更紗は、15年後、文と再会する。

    「文とずっと一緒にいたい」

    それぞれが思うところの常識や正義がある。
    時代や文化や地域や宗教や、育った環境や教育や、色々な背景で変わってくるけれど、圧倒的多数の人が考える常識や正義から大きくはみ出ている二人の関係。
    二人の関係に名前はない。
    いつまでもついて回る『更紗ちゃん誘拐事件』、二人は加害者と被害者であり、善意の人々からは非難を受け続ける。その『善意』という名のある種の暴力性に、誰もが無頓着だ。
    しかし誰かと共に生きたいと願うことに、他人の許可が必要なのだろうか。それも、ニュースで聞きかじったことのあるだけの全くの赤の他人の。

    いきなり蒸発して以降、娘が全国ニュースで行方不明になっていると報じられても、その後発見されても、最後まで現れなかった母。
    子供を重荷に感じ、自由を得たくなる気持ちはわからないものではないけど、ここまで娘を捨てきれるものなのか。ちょっとこの母だけは本当にわからなかった。
    …というのも私の常識や正義の押し付けになるのかもしれない。
    真実は外野からは見えないのだから…。

  • 【あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも"文"、わたしはあなたのそばにいたいーー。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。】

    "事実と真実はちがう"

    全ての物事において、その当事者意外が見えているのは氷山の一角にすぎない。

    何ごとも自分の価値観で、推し量ってはいけない。

    物事をどう感じているかなんて、本人にしか分からない。

    それを理解した上で人と接しているのが、"文"であり"更紗"。
    理解しているが、その接し方では物足りないのが"谷さん"
    全く理解していないのが"亮くん"
    だと感じました。

    読んでいて苦しい…
    でも考えさせられる。
    重い雰囲気の中で、"文"、"更紗"、"梨花"のやり取りに心が和みました(^^)

    この物語がハッピーエンドかどうかは、"更紗"と"文"にしか分かりません。

  • 初読みの作家さん
    読みながら、グイグイ引き込まれていった
    美しい表現、巧みな心情描写
    「あなたはどう考える?」と、読者を揺さぶり、課題を突きつけられる
    素晴らしい作家さんに出会えたことに感謝!

    読み進めていきながら、どう感想をまとめたらいいのだろう、これは難しい!頭を悩ませた
    それぐらい頭を後ろから殴られたような衝撃、常識を覆し、揺さぶられた

    干からびて固まってしまった木綿に染み込んで、どんどんほぐれて元の布地に戻っていく、私が私の形に戻っていく。自由な私を取り戻せる文の存在
    男女の愛を越え、生きる意味を取り戻させてくれる更紗の存在

    文も更紗も何も悪いことはしていない。ただ一緒にいる、それだけのことを、なぜ責められるんだろう。それも15年も経った今になって

    犯罪加害者と被害者としてしか見ることができない世間は、15年経っても彼らを追い詰め、苦しめる
    日本のどこに行っても、見つけ出し、みんなの前に晒す
    SNSは、容易に15年の月日を現在に引き戻してしまう

    『事実と真実』は違う
    もしかしたら私は、私達は、大きな間違いを起こしているのかもしれない
    上っ面しか見えていないのかもしれない
    憶測、偏見、それを煽り、増長させるようなマスコミの報道やSN S
    よほど自分がしっかりしないと、その流れに飲み込まれ身をまかせてしまいそうになる

    価値観が多様化する中、固定観念を捨て、物事を多面的に見るよう、柔軟な考え方をするよう、自分に言い聞かせているつもりだが、
    この本もまた、私を揺さぶり、試し、鍛えてくれることになった

    ー ねえ文、今度はどこに行く?ー
    ーどこでもいいよー
    どこへ流れていこうと、ぼくはもう、ひとりではないのだから。

    余韻の残るエンディング
    洗いたての風になびく髪、シャプーの香りがするような更紗の自由さ・強さが救いだった
    もう二人を引き離すものはないだろう


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著者プロフィール

凪良ゆう(なぎら ゆう)
小説「花丸」冬の号『恋するエゴイスト』(白泉社)でデビュー。『雨降りvega』(イラスト:麻々原 絵里依)、『365+1』(イラスト:湖水 きよ)などの作品を手がける。主にボーイズラブ系で活動。
作品多数。主な作品に、『積木の恋』『未完成』『美しい彼』『ショートケーキの苺にはさわらないで』『おやすみなさい、また明日』『2119 9 29』『雨降りvega』など。
『悩ましい彼 美しい彼3』がBLアワード2020 BEST小説部門第1位を獲得。

凪良ゆうの作品

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