大鞠家殺人事件

著者 :
  • 東京創元社
3.51
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本棚登録 : 372
感想 : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028510

作品紹介・あらすじ

大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場――戦下の昭和18年、婦人化粧品販売で富を築いた大鞠家の長男に嫁ぐことになった陸軍軍人の娘、中久世美禰子。だが夫は軍医として出征することになり、一癖も二癖もある大鞠家の人々のなかに彼女は単身残される。戦局が悪化の一途をたどる中、大鞠家ではある晩“流血の大惨事”が発生する。危機的状況の中、誰が、なぜ、どうやってこのような奇怪な殺人を? 正統派本格推理の歴史に新たな頁を加える傑作長編ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 大阪商人の大家、大鞠家で起こる殺人劇! クラシカルな世界でミステリーを堪能できる傑作 #大鞠家殺人事件

    戦時中の大阪、化粧品会社で財をなした大鞠家。屋敷には大鞠家一族や丁稚奉公が暮らしていた。ある日長男が結婚することになり、お嫁さんが嫁いできた。
    彼女は一族を次々に襲う事件に巻き込まれていく。果たして犯人は誰なのか…

    重厚感がスゴイ。

    これだけボリュームがあって、読みづらい大阪弁や古い言い回しがある小説ながらも、読ませるのがかなり上手。読む手がまったく止まりませんよ。
    少しずつ事件や謎を見せられるので、読み手を煽りまくるのが手法が大変秀逸。

    登場人物もこの時代ならではのキャラクターばっかり。みんな活発に生きているさまが手に取るようにわかりました。
    特に主人公である大鞠家に嫁いできたお嫁さんが気丈でカッコいいんですよ!一人きりなのに愚痴ひとつを言わず、しっかり前だけを見てる姿は惚れちゃうっ

    本作の最も優れた読みどころは、やっぱり戦前、戦時中の大阪浪花の雰囲気が味わえるところ。
    大阪の商人文化、栄華ある大家、お家騒動、丁稚奉公たち、戦時中の暮らしなどなど… 重厚感たっぷりに読み手を魅了してくれます。しかも大阪商人の大家という、まるで縁遠かった世界での殺人劇です。この時代にタイムスリップできちゃう作品、素晴らしいっ

    ミステリーもなんとも不思議で、正直何一つ真相が全く分からず終盤を迎えてしまいました。ただ何の根拠もなく、犯人はこいつくせぇなぁ~という目星はついちゃいましたが。

    本作トリックは及第点くらいなんですが、隠されていた真相や犯人の動機が素晴らしかったです。なんですかこの外れさた感じの謀略は! これぞミステリーですよ、最高!

    ちょい残念なのは、世界観、重厚感は十分で最高なんですが、その割にミステリーや物語としての切れ味として普通な点。もう二つくらい工夫や驚きがあると満点かなと思いました。

    しかし本作も2022年度のミステリーランキングを賑わす一冊になりそうです。
    現代では味わえない戦時中、大阪商人のお家を堪能できる本作、ハイテクデバイスばかり弄ってネットの渦の中にいる方に、是非オススメしたい作品でした。

  •  戦時中の大阪・船場を舞台にした、雰囲気たっぷりの探偵小説。古き良き探偵小説のエッセンスをちりばめた感じ。
     本当に犯人に実行できるのか厳しそうなところも含めて。
     毅然とした美禰子の姿が好もしい。

  • クラシックミステリが好きで、とりわけ“一家・一族(ファミリー・クラン)もの”が好物の私(横溝正史氏の金田一事件ファイルは勿論コンプリート済)。
    もう、このタイトルには、ホイホイされちゃいますよね!

    大阪・船場の豪商一族「大鞠家」で起きた、連続殺人事件・・・。その背景にある謎を巡る物語でございます。

    いわゆる“二段組み”構成なので、一見ヴォリューミーなのですが、読みやすいので割とスラスラ進みます。
    第二章あたりまでは、大鞠家の歴史や船場商家ならではの独特の奉公風習など、当時の時代背景についてのお話が続きます(ここに伏線があるのですが)。
    そしてついに殺人が起こる第三章から話が動きだして、次々と起こる殺人と、過去に起こった創業者の長男の失踪事件との関係や、夜中に現れる謎の“赤毛の小鬼”の謎など、“ワクワクゾクゾク”しながら引き込まれていきます。
    同時に戦時下ならではの薄暗い事情についても語られていて、そこに結構な行を割いている為“脱線”のように思ってしまいそうになりますが、そういうことを踏まえての内容ということなのでしょうね。
    因みに、途中で“探偵”がセンセーショナルに登場しますが、これがマジでとんだ“道化”でした。
    そして、終盤で一気に真相解明と伏線回収がされていくのですが、“謎解きをする人物”が唐突に登場した感と、上記の創業者の長男失踪のくだりを含め、ちょっと雑な印象なので動機や経緯をもっと丁寧に述べてほしかったなと思います。
    というわけでクラシカルなミステリの雰囲気を堪能させて頂きました。
    古典へのオマージュもあるので、その辺りもお楽しみ頂けるかと思います。

    • 111108さん
      あやごぜさん、こんばんは!

      金田一コンプリートされてるんですね、すごい‼︎私はちゃんと読んだのははるか昔に何編か‥。ドラマ化よくされてるの...
      あやごぜさん、こんばんは!

      金田一コンプリートされてるんですね、すごい‼︎私はちゃんと読んだのははるか昔に何編か‥。ドラマ化よくされてるので読んだつもりになってます。

      この本気になってたもののとてもボリューミーなので「今はまだ」と敬遠してました。あやごぜさんレビュー読んで挑戦したくなりました。‥連休とかゆっくり時間とれる時に、かな(*´-`)
      2023/02/21
    • あやごぜさん
      111108さん。コメントありがとうございます♪

      そうなのです~。横溝さんの文体と相性が良かったのもあって
      「金田一耕助ファイルシリ...
      111108さん。コメントありがとうございます♪

      そうなのです~。横溝さんの文体と相性が良かったのもあって
      「金田一耕助ファイルシリーズ」(『本陣殺人事件』から『病院坂の首縊りの家』まで)次々読んでいたら、コンプリートしちゃいましたww。
      111108さんの仰る通り、映像化されている作品も多いので、内容知っている感じになりますよね~。
      機会があれば、再度原作に手を出してみるのも一興かもです(^^♪

      で、本書ですが、確かに二段組み構成でヴォリューム感はありますし、
      謎解き以外の時代背景部分が長くて、ちょっと冗長なところもあるのですが、個人的にはクラシカルな雰囲気をたっぷり堪能できて良かったです。
      111108さんも気になっていたとの事で、ゆっくりお時間とれる時にでも是非読んでみて下さいませ~♪
      2023/02/22
    • 111108さん
      あやごぜさん、お返事ありがとうございます!

      金田一コンプリートの理由で横溝さんの文体との相性、素敵ですね♪確かに読みたくなる口調?みたいな...
      あやごぜさん、お返事ありがとうございます!

      金田一コンプリートの理由で横溝さんの文体との相性、素敵ですね♪確かに読みたくなる口調?みたいな文体ありますよね。
      読んだつもり名作をきちんと読みたい今日この頃なので、横溝さんも探してみます。
      時代背景部分にも興味あるのでこの本も読みたいです、そのうちに(^ ^)
      2023/02/23
  • 大阪船場で化粧品事業で富を得た大鞠家。
    戦時中、大鞠家の長男に嫁いだ美禰子は夫が軍医として出征したため、大鞠家に身を寄せることになる。
    創業者の妻でいまだに大鞠家で権力を握る多可
    多可の娘、大鞠家を表向き仕切る喜代江
    喜代江の婿の茂造
    喜代江の長女、月子
    次女の文子
    戦時下で化粧品は売れなくなり、次男も出征、何かにつけて美禰子に嫌がらせをする、喜代江と月子。そんな中、大鞠家で事件が起きる。

    大阪の土地勘が無いもので、大阪に思い入れがあったらもう少し世界に入れたのかな。
    時間があちこちに飛ぶので混乱。
    戦前戦後の大阪商人については興味深かった。丁稚さんっていうとドリフで番頭(いかりや)さんに怒鳴られて叩かれてるイメージで。
    時代小説も読んでるけど、名前や立場がこんなだったなんて。
    「たかが殺人…」とちょっと被るけど、こういう戦争の描き方は構えずに読めて、より身近に感じた。
    あちこちに推理小説の有名どころと似たようなシーンがあって、もしかしてとニヤニヤするけれど、いろいろ盛り込み過ぎて、バタバタな感じ。
    犯人はすぐにわかっちゃうし、そこは残念ー。
    多一郎、美禰子夫妻がもっと活躍しても楽しそうなんだけどな、多一郎の生真面目で不器用な感じ面白いのに。

  • 船場の言葉は谷崎文学を彷彿とさせるし、お家柄や血のつながりやら旧家の跡継ぎもんだいやらは江戸川乱歩や横溝正史を思い起こさせる。プロローグからグイグイと引きずり込まれそれはもう楽しい(?!)殺人事件の始まり始まり!
    しかも、探偵と名乗る輩の登場もあり……

    骨董品、お宝状態のミステリ小説の紹介もあり、わたくし的には大ヒットいえいえ、ホームランでした。

  • 結末のミステリーは摂って付けたような寓話(著名な探偵小説をもじる)のようになるが、人の恨みは世代を超えて続くものだと恐ろしさも感じた。親族の絆はやはり一番強く、腹違い・養子縁組などの「絆」とはいざとなるとまるっきり違うということを物語っている。

  • ドラマ化したら、雰囲気ありそうなドラマになりそう。

  • 202301

  • なかなか評価の難しい一冊。戦時下の大阪船場という舞台を描いた独自性や読後感はすばらしいけれど、作者の「探偵小説」に対する思いや小説観にどれほど共感できるかでミステリ部分の評価はかなり変わりそう。癖のある文体、馴染みの薄い舞台に加えて視点と時点もめまぐるしく変わるため、読みづらさもある。万人には薦めづらいけれど、個人的には先が気になり夢中で読んだし、読み応えを感じた良い読書だった。

  • 大阪・船場の商家を舞台にした著者の自負いわく「前例のない作品」。豊かな語りで楽しく読める正統派ミステリだ。


    「だから…みんなを殺したんです」(p14)

    現代部分のいきなりの告白で、物語は幕を開ける。すると、時代は明治へ飛んで、パノラマ館での跡継ぎの失踪事件とくる。大正、昭和とくだって、ついに連続殺人の幕が開ける。ひとくせもふたくせもある人物が配置されて、ぐいぐい読ませる。動機もトリックも、この時代の商家ならでは。そして、犯人は…。

    実に面白かったのだが、減点部分は探偵だな。唐突というかね。

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著者プロフィール

一九五八年大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。
一九八六年、「異類五種」が第2回幻想文学新人賞に佳作入選。
一九九〇年、『殺人喜劇の13人』で第1回鮎川哲也賞受賞。
代表的探偵「森江春策」シリーズを中心に、その作風はSF、歴史、法廷もの、冒険、幻想、パスティーシュなど非常に多岐にわたる。主な作品に『十三番目の陪審員』、『グラン・ギニョール城』、『紅楼夢の殺人』、『綺想宮殺人事件』など多数。近著に『大鞠家殺人事件』(第75回日本推理作家協会賞・長編および連作短編集部門、ならびに第22回本格ミステリ大賞・小説部門受賞)。

「2022年 『森江春策の災難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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