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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784488029043
作品紹介・あらすじ
「紫式部の和歌を屍に添えて汚す者は許せん。
下手人を突き止める!」
『小倉百人一首』に選出された和歌が事件解決の手掛かりに――
若き藤原定家が、名歌の絡んだ五つの謎を解く!
一一八六年。平家一門の生き残りである、亡き平頼盛の長男、保盛はある日、都の松木立で女のバラバラ死体が発見された現場に遭遇する。生首には紫式部の和歌「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲隠れにし 夜半(よは)の月かな」が書かれた札が針で留められ、野次馬達はその惨状から鬼の仕業だと恐れていた。そこに現れた、保盛の友人で和歌を愛してやまない青年歌人・藤原定家は「屍に添えて和歌を汚す者は許せん」と憤慨。死体を検分する能力のある保盛を巻きこみ、事件解決に乗り出す! 後に『小倉百人一首』に選出された和歌の絡む五つの謎を、異色のバディが解く連作ミステリ。
■目次
「一 くもがくれにし よはのつきかな」
「二 かこちがほなる わがなみだかな」
「三 からくれなゐに みづくくるとは」
「四 もみぢのにしき かみのまにまに」
「五 しのぶることの よわりもぞする」
感想・レビュー・書評
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平頼盛を探偵役にした〈平家物語推理抄〉シリーズの続編。といっても頼盛の死後、その息子・保盛をワトソン役、歌人で友人の藤原定家をホームズ役にしているのでスピンオフといったところか。
頼盛の検死の技術は保盛が受け継いでいるが、推理するのは苦手。逆に定家は自身でも聞き込みなどは行うが、保盛の検死や物的・状況証拠等から推理を展開する。
切断遺体が一度焼失し再び現れた謎、密室からの消失、火事の原因、宮中行事のなかでの怪死など、事件も様々で趣向を凝らしてある。
探偵役が定家ということで和歌も絡んであり、そちらからの視点も興味深い。
キャラクターとしては、保盛は武士としてのキャリアを積み重ねてきただけに残酷な場面にも冷静、だが和歌は苦手としているのに対し、定家は虚弱体質で出世とは無縁だが和歌に対する情熱は誰よりも熱く、和歌を汚したり貶めたり、間違った解釈も許さないという激しい気性。
突然激昂して語尾に『っ!』が多用されるのは面白いと見るか、鬱陶しいと見るか、好みが分かれそう。
面白いバディものではあるが、個人的には最後の章は蛇足だったように感じた。
二人の関係が良いままだったのでホッとしたけれど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歌人探偵ミステリの一冊。
時は1186年、藤原定家が平保盛とタッグを組んで和歌に絡んだ五つの事件を解き明かす連作短編ミステリは時代を味わい謎解きに唸る面白さに満足感いっぱい。
和歌をこよなく愛するがゆえに穢されては黙っちゃいられない性分の定家と、亡き父、平頼盛の想いを継いでひたすら目立たず生きようとする保盛のバディが時に明るく時に陰鬱に物語を彩りどんどん彼らと事件に魅了されるほど。
しっかりとした組み立ての謎解き、扇の向こうに透ける真実に毎回感心。
和歌の存在意義といい綺麗なまとめ方が気持ちよさまで運んでくれた。 -
たったの三十一音で情景を表す歌人に、そして詠まれた歌への、興味が高まりました。国語の教科書に出てきたなくらいの知識しかなかったので、作中の解説は自分にとって新鮮でした。
また、当時の生活の様子について日本人なのに知らないことも多くて、びっくりでした。
ただ、ミステリとして読むには、
定家の話し方と、女性の名前の覚えにくさが気になって気になって‥読むのに時間がかかる感じでした‥
おもしろくはあったけど、求めてたのと少し違ったのでごめんなさい‥ -
【収録作品】
一 くもがくれにし よはのつきかな
二 かこちがほなる わがなみだかな
三 からくれなゐに みづくくるとは
四 もみぢのにしき かみのまにまに
五 しのぶることの よわりもぞする
探偵役は藤原定家。相棒は、頼盛の長男・保盛。
一 紫式部の和歌×『今昔物語集』の鬼の話。バラバラ殺人の謎。
二 西行 × 『伊勢物語』の悲恋伝説。密室からの人間消失。
三 在原業平 × 『沙石集』 和歌の見立て殺人。
四 菅原道真 × 『棠陰比事』 和歌に込められた過去の事件の真相
五 式子内親王 × 『栄華物語』 道長の姉超子の急死事件と似た、庚申講の席での女房の連続怪死事件。
定家の奇矯な振る舞いに引くが、謎自体はオーソドックスで、時代の空気感がよく出ている。和歌も有名なものばかりなので、とっつきやすい。 -
面白かったです。
が、定家が興奮した時の話し方がちょっと… -
コバルト文庫やティーンズハートが大好きな文学少女だった私が、苦手だったものがあります。
作家の自分語り強めなあとがき
これがもう心の底から苦手だった。今で言う共感性羞恥に近いのかな。とにかく、自分の作り出したキャラクターを「作品外でいじり倒す」言動が耐えられなかった。
「作者が作品を語り終えた瞬間に、そのキャラを使って二次創作するな」
っていうのが、後になって二次創作を多少齧った私が行き着いた結論でした。本編がシリアスだとその虚しさもひとしおでしたね〜。
で、なんで突然こんな自分語りを始めたかと言うと、本作のダブル主人公の1人である藤原定家。彼のヒートアップした時の言動にね、そのあとがきを思い出させられたんですよね…。なんかちょっとクドイ語り口というか……。キャラキャラしてるっていうか……。
おっとこれは苦手な感じかな〜大丈夫そ?と読み進めたら、あれ、意外に本筋はミステリしてるじゃないか、と言うわけで、気付けばラストの見事な伏線回収ですよ。あれは全く予想してなかった。幾つか違和感は拾ってたんだけど、まさかこのキャラ造形に気を取られてる間にしてやられるとは…。
和歌が添えられたバラバラ死体
密室から消えた女
和歌に見立てられた死体と盗賊事件
火事の真相を解く鍵となる和歌の謎
衆人環視の中で起こる連続殺人
うーん、すごい。
トリック自体はシンプルなんだけど、この世界観で和歌を駆使して見事にミックスしたのが見事と言うほかありません。
作品としては星4いきたいんだけど、定家のキャラが惜しい!というわけで星3つ。 -
和歌と本格ミステリという謎解きが面白かった。定家を探偵に平家の保盛との掛け合いや時代背景が興味深かった。百人一首で有名な定家を何故か温厚な性格ではと勝手に思っていたので、若き定家が病弱で気難しく激しい人物像に描かれていたのに驚きました。
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恐る恐る読み始めたのだが、なかなか面白かった。定家を探偵役に和歌が絡んだミステリというのはケレン味があり、思いつきそうでなかなか思いつかない、思いついてもなかなか書けない設定だと思う。作者に拍手である。
個人的には、当時の生活に対する蘊蓄がとても興味深かった。しっかり調べてあるし、それがうまく物語に溶け込んでいて感心した。和歌が絡むということについては、作品によってばらつきがある感じがしたが、連作を最後まで読んで「なるほど」と思わせてくれたのはよかった。それでも、和歌についてはもうひとつ掘り下げてほしいような気持ちもあった。なんといっても定家を出してくるくらいなのだから、もっとびっくりさせてほしいというのが本音である。
肝心のミステリとしては、さまざまな趣向の事件を取り揃えてくる作者のサービス精神と頑張りは感じたけれど、肝心のトリックのところで「ちょっと小粒かな」と思わないでもなかった。ただ、それが鎌倉時代の文物と自然に組み合わさっていくのは見事で、そのあたりが見せどころなんだなと楽しく読めたので、それはそれで良いのだと思う。連作の中では、西行のエピソードが一番印象に残り、物語としての結末も含め「お見事」と思った。他の短編の中には「そんなの可能?」って首を傾げるようなものもあったけれど。
一番不満だったのは探偵役の造形で、エキセントリックな探偵役という、ホームズあたりから始まった典型をあまりにすんなりなぞっているようで、正直それだけは興醒めであまり感情移入ができず魅力的に感じられなかったのが悔しい。やたら出てくる「っ」とか。ワトソン役も含めて、本当にわかりやすく、安心してよめるものではあるのだが。
全体としてはとても楽しい読書になった。ぜひ「百人一首」完成まで読みたいものである。 -
前作の主人公の息子・平保盛と藤原定家が謎解きをする。どの事件も和歌が関連しているので定家の力の見せ所。和歌は知っていてもその意味合いは薄っぺらにしか知らなかったから、事件との関連や定家の蘊蓄でとても造詣が深い内容になっている。
樋洗童(ひすましのわらわ)なるものの存在(貴人のしもの世話をする)を初めて知りました。定家の為人はかなりエキセントリックだがそこも面白さのひとつ。保盛が亡き父を偲ぶ場面が多々あり、前作を思い出してしんみりする。蝶の模様の狩衣着てるところでは胸が熱くなりました。 -
ミステリーを久しぶりに読みましたが、読みやすかったです。時代考証もきっちりされていて、勉強になることも多い一冊でした。発想が面白く、ワクワクしてページを捲ることができました。
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歌人・藤原定家が探偵役の連作短編集。語り手の平保盛は途中で気づいたが『蝶として死す』の頼盛の息子で、折に触れて父の偉大さを回想しているので前作を思い出してほろりとする。
定家が事件に首を突っ込む理由が、死体に和歌が添えられているのが和歌が汚されたと怒り心頭なのが面白い。この定家のキャラクタはエキセントリックすぎてちょっと退くが、鎌倉時代ならではの習俗やトリックがあって楽しめた。 -
頼盛さんは物静かだったけどずいぶん騒がしい主人公来たな。
そして初めてあとがきがあったので思わず先に読んでしまった。暴力はいけません定家さん。 -
左注までいくと、さらに味わい深いかな。
それにしても、定家は探偵にまでなってしまったか。 -
「けのこりのゆき」「かいごのはな」って、確かに風流だけど、呼び名としては呼びにくくないか…?
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鎌倉時代ならではの登場人物、トリックが面白かった。最後にちょっとした読者騙しの種明かしがあり、してやられた感がありました。全く気付かなかった。続編が出ることを期待してます。
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前二作品の主人公、平頼盛を偲ぶ話が盛り込まれていてホロリとしました。良かったです。
藤原定家にクセがあるために、定家推しの方にはどう映るのかなぁ…
屍が少しグロテスク。弱い方は気を付けてください。 -
913/ハ
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